転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第67話となります。

気付けばもう七月・・・暑さで体調を崩さないよう気を付けなければ。


フラメア

ラウラを出発し、ガビルの語る物語を聞きながらダンジョンへ向かっていた俺たち。

 

途中、ガビルが話を盛ったり勘違いしているところを俺が指摘しつつも、妙に引き込まれるガビルのトーク力のお陰で楽しい道中だった。ただ、いつかのオーガ(青娥さん)に奇襲された件については特に訂正しなかったけれど。青娥さんから本当のことを話していいかまだ確認取ってなかったし。

 

 

 

そんなこんなで大体三十分程経った今。俺たちは遂に目的地のダンジョン──・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ありがとうございます!『牙狼族(がろうぞく)』に襲われた時は、もう駄目かと・・・!」

 

「いやいや、間に合って良かったぜ」

 

 

 

・・・・・・・・・の、目と鼻の先くらいの場所で、魔物に襲われていた人・・・・・・じゃなくて魔物を助けていた。

 

先程、もうすぐ例のダンジョンに着くと言ったところだった。下から複数の悲鳴が聞こえたので何事かとそちらを見ると、群れを成した狼のような魔物たちが馬車を襲撃していたのである。放ってはおけないと俺たちは短く声を掛け合うと急いで地上へ降り、馬車に乗っていた人たちを助けた、という訳だ。

 

ちなみに、彼らを襲っていた魔物たちは全て討伐済みだ。この狼のような魔物は『牙狼族(がろうぞく)』と言うらしい。そこそこの数ではあったが、俺たち四人とシーザーに掛かればどうってことはなかったな。

 

・・・・・・『牙狼族(がろうぞく)』で思い出したが、リムルは今頃何をしているのだろう。確かゴブリンと『牙狼族(がろうぞく)』を纏めているんだったな。カイジンさんたちとうまくやれているだろうか。

 

 

 

「ふぁあ・・・・・・無事で何よりですコビーさん」

 

「あぁ、あなたはフォスさん!本当に何とお礼を言えば良いのか・・・・・・」

 

 

 

ぼんやりと俺がそんなことを考えている中、二足歩行している犬のような魔物は礼を言いながら今度はフォスに頭を下げていた。見たところこの馬車には他にも何人か乗っているようだが、どうやら皆同じ種族らしい。俺はぺこぺこと頭を下げ続けている彼を見ながら二人に近付きフォスに訊ねた。

 

 

 

「なぁフォス、お前そいつと知り合いなのか?名前を知ってるみたいだが」

 

「はいです。あの人は『犬頭族(コボルト)』のコビーさんです。この辺りじゃ有名な商人さんなんですよ。近くの町やラウラの入口あたりで何度か話したことがあるです」

 

 

 

俺の問いにフォスは笑顔を浮かべながら返してくれた。そこから俺は更に彼・・・コビーについての説明を受ける。

 

コビーというあの『犬頭族(コボルト)』は商人で、ユーラザニアにもよく行商に来ているそうだ。最も、首都のラウラには弱い魔物は入れないので、ラウラでは手前で商品を卸すだけで、通常の商売は他の町や村でしているそうだが。

 

そんな彼らだが、主な商売先はユーラザニアのような大きな国などではなく、交易路が無いような小さな村などらしい。ジュラの大森林に暮らす様々な種族の村などにも行商を行っているそうだ。ガビルは知らなかったのでシス湖には来ていなかったのかもしれないが。

 

あと、以前に青娥さんから聞いたことだが、『犬頭族(コボルト)』は劣化獣人と呼ばれる弱い種族らしい。個体によって多少差はあるようだが、ラウラに入れないことからやはり皆魔素量は低いようだ。この場にいる中で『牙狼族(がろうぞく)』に勝てそうな奴は多分一人もいないだろう。こいつら、よくこれで今まで行商なんてやってこれたな・・・・・・

 

 

 

「俺は初めて見たぜ。商人の相手とか、そういう雑用みてえなことは他の連中の仕事だしなー」

 

「雑用かもしれぬが、物流の要たる商人たちは国にとって重要な存在であるよ」

 

 

 

興味無さそうに呟いたスフィアにガビルがそう告げる。その言葉にスフィアはんー、と小さく唸りながら眉を顰めた。どうやらスフィアは戦闘がメインでそれ以外のことは苦手らしい。きっとそれらの業務はアルビス辺りが中心になってこなしているのだろう。

 

 

 

 

「ところでフォスさん、こちらの方々は?見たところライカンスロープではない方もいるようですが・・・・・・」

 

「ふぁっ、はい!まずこちらに居られるのが獣王戦士団、三獣士がお一人のスフィア様です!」

 

「さっ、三獣士!?」

 

 

 

コビーが目を見開く。本人の名前や顔は知らなくても、やはりユーラザニアの幹部である三獣士については知っているのだろう。驚いているコビーの視線を受けてスフィアはひらひらと軽く手を振った。

 

 

 

「それと、彼らは色々ありまして、カリオン様からの命を受け共に行動中のドラゴニュートのお二人です!」

 

「アクトだ。よろしく」

 

「ガビルである!」

 

「えっ、あ・・・・・・アクトさんとガビルさんですね!私は『犬頭族(コボルト)』のコビーと申します!皆様、この度は本当にありがとうございました・・・・・・!」

 

 

 

続いてフォスがコビーに俺たちを紹介する。それに気付いた俺とガビルが名乗ると、コビーは慌てた様子で自己紹介をして再び俺たちに頭を下げた。

 

 

 

「しかし、何だってこんなところに『牙狼族(がろうぞく)』が?ユーラザニア国内には生息していない筈だが・・・・・・」

 

「ふぁっ!そう言えばそうです!あの魔物は東の帝国とジュラの大森林が隣接する平原の辺りにしかいない筈です!」

 

「それが、あちらの奇妙な洞窟のような所から現れまして・・・・・・」

 

 

 

スフィアとフォスの疑問にコビーはそう答え、ある方向を指差す。そこにはまるで地面から盛り上がるようにして出来たかまくらのような物があった。きっとあれが例のダンジョンだろう。

 

 

 

「以前この街道を通った時には無かったものなので何だろうと眺めていたら突然『牙狼族(がろうぞく)』が飛び出してきて・・・・・・いやはや、参りました」

 

「ダンジョンの中から・・・・・・?」

 

 

 

コビーの言葉を聞いたスフィアは考え込むように口元に手を当て口を閉ざす。真剣な面持ちになったスフィアを気にしてか、ガビルが彼女に声を掛けた。

 

 

 

「スフィア殿、どうしたのである?」

 

「ん、いやな・・・・・・これまでの調査結果の中に、ダンジョン内部の魔物が外へ出たなんて報告はなかったからよ」

 

「そうなのか?けど、そこまで多くを調べた訳じゃねぇんだろ?なら、これまでのは偶々そうだったってだけじゃねえか?」

 

「うーん、そうかもしれねえが・・・・・・」

 

 

 

何か引っ掛かるのか、スフィアは俯いたまま唸る。成程、やや粗野というか、血の気の多い部分もあるが、真面目で戦闘能力もあるからこそスフィアは獣王戦士団の三獣士にまで登り詰められたのだろう。

 

 

 

「なぁに、気になるのならそれも含めて調べれば良いのである。その為にここまで来たのだからな!」

 

「・・・・・・そうだな。ここで考えてたって仕方ないねえし・・・・・・それじゃ・・・」

 

「───なんだって!?」

 

 

 

ガビルの言葉にスフィアは顔を上げ、今度こそダンジョンへ向かおうとしたその時だった。仲間の『犬頭族(コボルト)』と何やら話していたコビーが声を荒らげた。近くにいたフォスが「ふぁっ!?」と驚き、俺はそれに小さく笑いながらコビーの方へ振り向く。

 

 

 

「なぁ、どうかしたのか?」

 

「は、はい・・・・・・それが、ここまで一緒に旅をしてきた方の姿が見えないようで・・・!」

 

 

 

俺が訊ねたところ、コビーは不安そうにそう答えた。どうやら一大事らしいと察した俺とガビルは互いに顔を見合わせ、それから再びコビーに視線を戻し続きを促す。それを受け、もう一人の『犬頭族(コボルト)』が詳しい事情を話し始めた。

 

 

 

「『牙狼族(がろうぞく)』に襲われた時、彼女が囮を引き受けてくれたんだ・・・・・・この中だと自分が一番足が速いから適任だと!そう言うと彼女は俺たちが止める間も無くどこかへ駆け出して・・・・・・」

 

「なんと!も、もしや『牙狼族(がろうぞく)』に・・・・・・?」

 

「・・・・・・んん、多分それは無いと思うです。辺りに漂ってるほとんどの血の臭いは『牙狼族(がろうぞく)』のものですから。もっと遠くの方で食べられちゃってたりしたらちょっと分からないですけど」

 

 

 

不安そうに呟くガビルに、フォスが鼻をすんすんと鳴らしながらそう告げる。流石はライカンスロープ、動物らしく鼻が利くんだな。

 

 

 

「私もそう思います。彼女の素早さは中々のものでした。『牙狼族(がろうぞく)』と言えどそう簡単には捕らえられない筈です」

 

「それを聞いて少し安心したぜ。で、彼女ってことは女の『犬頭族(コボルト)』か・・・・・・」

 

「あ、あぁいえ・・・・・・すみません。その方は『犬頭族(コボルト)』では無いんですよ。道中偶々出逢って、ここまで共に旅をしてきたんです」

 

 

 

言い忘れていたと、コビーがそう付け加えた。同族・・・・・・『犬頭族(コボルト)』の仲間じゃ無かったのか。しかし、他種族を助ける為に危険を顧みず自ら囮になるなんて、誰にでも出来ることじゃない。どうか無事でいて欲しいと俺が祈っていると、コビーがその人の名前を告げた。

 

 

 

 

 

 

「彼女の名前は『フラメア』。『兎人族(ラビットマン)』の『名持ち(ネームド)』です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い、空気の淀んだ道をひたすら走る。どこへ向かっているかなど分からない。ただ、後方から響く獣の咆哮から遠ざかろうとしているだけだ。

 

 

 

私、『兎人族(ラビットマン)』の『フラメア』は今、危機的状況に陥っている。旅の途中で『犬頭族(コボルト)』の人たちで組まれたキャラバンと出会い、色々あって彼らと共にユーラザニアまで向かっている途中だったのだが、そのキャラバンが『牙狼族(がろうぞく)』の群れに襲撃されたのだ。

 

数十匹はいるであろう『牙狼族(がろうぞく)』が突如街道の側にあった穴から現れ、キャラバンの皆はパニックに陥った。コビーさんたち『犬頭族(コボルト)』は『兎人族(ラビットマン)』と同じで弱い種族だ。旅をする以上、多少は鍛えていたり武装している人もいたのだが、あの数の前には無意味に近い。

 

そこで私は一人囮を買って出て、キャラバンを襲う『牙狼族(がろうぞく)』たちをある程度引き剥がすことにしたのだ。逃げ足には自信があったし、あのままキャラバンの人たち全員で奴らと戦うよりはずっとマシだったと思う。私一人で半分とまではいかないが、かなりの数を引き付けることが出来た。残りのあの数ならもしかするとコビーさんたちでもなんとか出来るかもしれない・・・・・・犠牲は確実に出るだろうけれど。

 

 

 

しかし、『牙狼族(がろうぞく)』に追われている時に咄嗟にこの穴・・・・・・いや、ダンジョンか。ここに飛び込んだのは不味かったかもしれない。けれど、何も考え無しに入った訳では無いのだ。遮蔽物の無い平原ではいずれ囲まれて蹂躙されるのは目に見えていた。実際危ない場面もあったし。もう一つ理由はあるが・・・・・・とにかく、どこか逃げ切れそうな場所はないかと辺りを見回しながら思案した結果、ここに逃げ込むに至ったのである。

 

それはさておき。キャラバンから飛び出してずっと走り通しなのでどこかで一息吐きたいが、未だに背後から複数の『牙狼族(がろうぞく)』が追って来ている。こんな状況ではとても休む時間など無い。まだ限界では無いものの、そろそろ両足が悲鳴を上げそうだ。

 

しかし走り続けているこの脚より、血で赤く染まった片腕の方が問題だろう。逃げている際、数に押されて『牙狼族(がろうぞく)』の攻撃を受けたのだ。もう動かすことが出来ない・・・・・・ということは無いが、出血が酷い。これでも自分は魔物、その内傷は塞がるだろうが、問題はこの血だ。血の臭いを嗅ぎ付けて『牙狼族(がろうぞく)』や他の魔物が襲ってくるだろう。恐らく、隠れることも難しい。

 

 

 

「あーぁ、馬鹿なことしちゃったかなぁ・・・・・・!」

 

 

 

自嘲気味に笑う。こんなことならキャラバンを見捨てて一人で逃げた方が良かったのではないかと。いつものように──自分が生まれ育った、古臭い価値観に囚われたあの村から逃げるように。

 

けど、出来なかった。一月にも満たない短い時間ではあったが、リーダーであるコビーさんを始め、『犬頭族(コボルト)』の皆はとても良い人たちだった。種族が違う自分にも優しくしてくれて、ここまで一緒に旅をさせて貰った。

 

そんな人たちが『牙狼族(がろうぞく)』に襲われているのを、ただ見ていることなど出来なかったのだ。そして、見捨てるなんてことも。

 

 

 

「とにかく、なんとか『牙狼族(がろうぞく)』を撒いて外に・・・・・・!?」

 

 

 

この状況をどう抜け出すか考えていたその時だった。エクストラスキル『危険察知』が警告を発し、慌てて立ち止まる。このスキルは自身の身に危険が迫ると知らせてくれる便利なスキルだ。このダンジョンに入ることを決意したのもこのスキルのお陰である。

 

と、その時。

 

 

 

「グルルル・・・・・・!」

 

「あ、アーマーサウルス!?」

 

 

 

周囲を見渡していると、前方の曲がり角からのそりとアーマーサウルスが現れた。『身体装甲』というスキルで常に強固な鎧を身に纏っているB-ランクの魔物である。『兎人族(ラビットマン)』や『犬頭族(コボルト)』どころか、『牙狼族(がろうぞく)』すら上回る強力な魔物だ。

 

アーマーサウルスはその巨体で道を塞ぎながらこちらを見下ろす。これでは先に進めないと私は来た道を戻ろうとしたが、背後から来るものを見て硬直した。

 

 

 

「ガルルァッ!バウッ、ワウッ!」

 

「ひっ!」

 

 

 

引き返そうとしたが、手遅れだった。いつの間にか『牙狼族(がろうぞく)』たちが目視出来る距離にまで迫ってきていた。何匹かはこちらを見失ったのか、ダンジョンに入る直前より数は減っているが、それでもこの狭い通路のような道ではあの数を避けては通れない。どちらへ逃げたとしても、奴らの爪と牙にこの身体は切り裂かれてしまうだろう。

 

それを想像した私は恐怖から腰が抜け、その場に座り込んでしまった。駄目だ、もう逃げ場が無い・・・・・・助からない。私はきっとここで死ぬのだろう。

 

 

 

「父さま・・・・・・ごめんなさい・・・っ!」

 

 

 

思わず口から零れたのは父への謝罪で。それが里を飛び出したことに対してのものなのか、こんなところで命を落としてしまうことに対してなのかは、分からないけれど。

 

ただ、これだけは伝えたかった。決して貴方のことも、里のことも、私は嫌いでは無かった。私が皆と違う考えを持っていた、それだけのこと。

 

ずしりと、アーマーサウルスが近付いて来る。顔だけそちらに向けると、私を補食しようとその大口を開けたところだった。迫る死の瞬間に震えながら、私はぎゅっと目を瞑り──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またお前か、クソトカゲ」

 

「ギュッ」

 

 

 

若い男の人の声と、ゴシャッ!という何かが潰れるような音を聞いた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・ふぇ・・・・・・?」

 

 

 

覚悟していた痛みが一向にやって来ないことを不思議に思い、ゆっくりと目を開く。そこには鮮血を撒き散らして崩れ落ちるアーマーサウルスと、綺麗な桃色をなびかせた背中があった。

 

 

 

「え、はぇ・・・・・・?」

 

「動くなよ」

 

 

 

何が起きたのか理解出来ずにいる私に男の人はそう告げると、振り向きざまにすらりとした脚を私の頭上で振るった。同時に、『牙狼族(がろうぞく)』の短い悲鳴が頭上で響く。どうやら私に飛び掛かっていたらしく、それに遅れて気付いて振り向くと、その『牙狼族(がろうぞく)』は砕け散っていた。

 

 

 

「ふっ!」

 

「ガッ・・・・・・!?」

 

 

 

一匹仕留めた男の人は残りの『牙狼族(がろうぞく)』たちに両手を向け、何かを連続で発射し始めた。あれは魔法・・・・・・いや、闘気だろうか。それを球のように圧縮して放っているらしい。

 

やがて闘気の連射が終わると、そこにはもう動ける『牙狼族(がろうぞく)』は一匹もいなかった。

 

 

 

「す、凄い・・・・・・」

 

「・・・・・・っと。怪我は無いか?もう大丈夫だぜ」

 

 

 

そう言ってこちらに手を差し伸べたその人の顔は、とても優しい笑顔で。アーマーサウルスや『牙狼族(がろうぞく)』を簡単に倒せるくらい圧倒的な強さを持つ相手なのに、先程までの不安なんて全部どこかへ消えてしまう程に安心してしまい。

 

 

 

「・・・・・・・・・星三つ・・・・・・」

 

「は?」

 

 

 

その手を取ることも忘れて、思わず私はそう口走ってしまったのだった。




ちなみにダンジョンの入口はブレワイの祠っぽいイメージです
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