転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
『魔物の国の歩き方』、再開が待ち遠しいです。
時間は少し遡り、『
俺たちは彼らと別れてからすぐにフラメアという少女を探し始めた。コビーたちの話を聞いてガビルたちもその子を助けたいと思ってくれていたらしく、俺がフラメアを探したいと頼んだところ、皆快く頷いてくれたのである。
そうしてフラメアを探し始めた俺たちだが、数分と経たずに彼女の居場所を突き止めていた。
「・・・・・・ここにフラメアがいるのか?フォス」
「はいです!ちゃんと匂いを辿って来たので!」
ふんす、と鼻を鳴らして自信有り気にフォスが答えた。フラメアを探す際に何か手掛かりはないかと考えた時、フォスが手を上げたのである。ライカンスロープである自分なら匂いで彼女の後を追えると。
そういうことならとコビーがフラメアの荷物から彼女の着替えを貸してくれたのだ。勝手に私服を使うのは気が引けたが緊急事態だ、フラメアもきっと許してくれるだろう。ちなみにスフィアもフォスと同じくライカンスロープだが、フォスに比べると嗅覚は劣っているらしい。それでも人間や他の種族よりは優れているそうなので一応フラメアの匂いを覚えていたが。
とにかく、フォスのお陰でこのダンジョンの中にフラメアがいることが分かったのである。
「・・・・・・しかし、なんでフラメアって奴はこの中に逃げ込んだんだろうな。そこに森だってあるのに」
そう呟きながらスフィアは奥にある森を見つめる。確かに木々に紛れながら逃げた方が助かりそうな気はする。仮にもジュラの大森林に暮らす魔物なのだ。木の枝を足場にして軽やかに森の中を飛び回るくらいは出来そうではある。
「確かにそうだな・・・・・・もしかすると逃げようとは思ったけど、その時は強い魔物がいたんじゃねえか?」
「んん・・・・・・確かにこの辺りにも魔物はいるけどよ、そこまで強力な魔物はいなかった筈なんだよな・・・・・・それに獣王戦士団が定期的に魔物を駆除してるから数も少ねえし、こんな得体の知れない場所に潜るよりは・・・・・・うーん・・・・・・?」
まだ気になるらしく、スフィアは小さく唸る。だが考えていても答えは出ないと判断したのか、やがて意識を切り替えるかのように首を横に小さく振るとダンジョンに向き直った。
「ふむ、入口は狭いな・・・・・・これではどちらにせよシーザーの同行は難しかったか」
ダンジョンの入口を覗きながらガビルが呟く。実は今、シーザーは俺たちと一緒にはいない。コビーたちの護衛として一緒に行動させているからだ。
先程スフィアが言った通り、この辺りは魔物の数が少ないと言っても全くいないという訳じゃない。それに『
なのでフォスがフラメアの匂いを覚えた後、とりあえず近くの町までコビーたちを護衛するようシーザーに頼んだのである。レッサードラゴンであるシーザーならこの辺りの魔物には負けないだろうとスフィアも判断したし、万一の時には俺の『魔物師者』でこちらに呼び出すことも出来る。ただし、その時はコビーたちを見捨てることになってしまうが。そうならないよう、シーザーが彼らを安全な場所まで送り届けられるよう祈りたい。
「中は広いといいけどな・・・・・・」
「狭いと動き辛いですもんね」
ガビルの隣で俺はフォスとそう話す。こちらは四人もいるんだし、戦闘の際に互いの邪魔にならないくらいの広さだといいんだが。出来ればシーザーが動き回っても問題ないくらいに。折角ここまで一緒に来たんだし、どうせならダンジョンにも全員で挑みたいからな。
「・・・・・・よし。それでは早速フラメアという少女の救出に向かおう。フォスよ、案内は任せるのである」
「はいです!任せるです!」
「んじゃ殿は俺が務めるか。中にどんな魔物がいるか分からねぇ・・・・・・まぁ、俺がいる限りどんな奴が出て来ようと問題ねえけどな。とりあえず、はぐれないように気を付けろよ」
「あぁ、頼んだぜ。ガビル、フォス、スフィア。絶対フラメアを助けような」
そうして、俺たちはフラメアの匂いを辿れるフォスを先頭にダンジョンへと乗り込んで行った。フラメア、どうか無事でいて欲しい。生きてさえいてくれたら俺たちが必ず助け出してみせるからと、心の中で強く思いながら。
そうしてダンジョンへ潜った俺たちだが、そこでは多くの魔物たちによる手荒な歓迎が待っていた。
フラメアを追い掛けていた奴らと同じかは分からないが、十匹近い数の『
敵の数は多かったが、幸いどちらの種族もランクはCランク相当。通路はやや狭いものの問題無く動ける程度にはスペースがあったので、そう苦戦することなく魔物たちを倒すことが出来た。しかしシーザーをここに呼ぶことは諦めた方がいいかもしれない。このダンジョン内で動き回るにはあの体だと大きすぎる。
そんなことを考えながら魔物たちを倒し、更に先へ進もうとした俺たちだったが、すぐに立ち止まることとなった。
「別れ道、であるか・・・・・・」
正面にある二つに別れた道を見据えガビルが呟く。そりゃまあダンジョンなんだし一本道な訳は無い。とは言え問題は無いだろう、こちらにはライカンスロープたちがいるのだ。
「フォス。フラメアの匂いがするのはどっちだ?」
「ふぁっ、えっと・・・・・・!」
フォスはそれぞれの道の匂いを嗅ぐ。ここまでフラメアの匂いを追ってきたフォスなら迷わずにフラメアの元まで行ける筈・・・・・・と、思っていたのだが。
「・・・・・・・・・あれ?た、大変ですアクトさん!どっちの道からもフラメアさんの匂いがするです!」
「えっ」
慌てながらこちらに振り返ったフォスからそう告げられ俺は言葉を失う。どういうことなのかと混乱していると、スフィアが前に出てフォスのように二つの道の匂いを嗅ぎ出した。
「・・・・・・マジだ。どっちからもフラメアって奴の匂いがするぜ」
「なんで両方の道から・・・・・・!」
思わず頭を抱える。もしかすると道に迷ってぐるぐる彷徨っているのか?いや、俺たちがここに入る前にダンジョンの構造が変化したのかもしれない。どちらにせよ、フラメアを見つけることが少し難しくなった。
「・・・・・・仕方あるまい、ここは二手に別れるのである。あぁ、フォスとスフィア殿は一緒になってはいかんぞ」
「だな。匂いを辿れるのは俺とフォスだけだし」
「・・・・・・『魔力感知』がちゃんと機能すればなぁ」
俺は溜め息と共にそう呟く。ダンジョンに入った当初、『魔力感知』を使えばフォスたちの鼻と合わせすぐにフラメアの居場所が分かるかと思ったのだが、何故かこの中だとうまく探知出来ないのだ。なんというか、ダンジョン内全体にモヤが掛かっている感じというか・・・・・・
魔素が充満しているせいか、とも一瞬考えたがそれは無いだろう。現にヴェルドラさんがいた封印の洞窟だってAランク近い魔物が発生する程の魔素で満ちていたが、こことは違って『魔力感知』は普通に使用出来ていた。恐らくこのダンジョン全体に何かしらの力が働いているのだろう。
とは言え全く『魔力感知』が使えない訳じゃない。あまり遠くまでは無理だが、ある程度の範囲内であれば十分探知出来る。どちらにせよ、フラメアを探すのには向かなそうだが。
とにかく、『魔力感知』が正常に機能しない現状では、フォスとスフィアの鼻以外にフラメアを探す方法は俺たちには無いのである。
「戦力を分散させることには些か不安もあるが・・・・・・我輩たちならば問題なかろう」
「そうだな。まだ他の種族がいるのかもしれねえけど、多分どうにかなる程度の魔物たちしかいないだろうし」
それに、今優先すべきは俺たちの身よりフラメアの安全だ。ネームドとは言え『
「それじゃ、どう組分けしましょうか?」
「ふむ。やはり戦力がバランス良くなるようにペアを組むべきであろうな」
「それならフォスはアクトと組めよ。この中で一番弱いのはお前で、一番強いのはこいつだからな。って訳で、二番目に強い俺は三番目に強いガビルと組むぜ!」
「ヴッ」
そう言ってスフィアはガビルの肩を叩く。また力が強かったのか短く呻いたガビルに苦笑しつつ、俺はフォスへと向き直った。
「じゃ、よろしくなフォス」
「ふぁっ!よろしくお願いしますです!」
「ん、んんっ・・・・・・ではアクト殿。何かあれば『魔物師者』で連絡を取り合おう」
ぺこりと頭を下げるフォスの隣で、肩を擦りながらガビルがそう言った。俺とガビルは『魔物師者』の『思念伝達』でどれだけ離れていても互いの状況が分かる。これもあってガビルは二手に別れることを考えたのだろう。
それどころか『魔物師者』に含まれる『魔物召還』を使えばガビルとはすぐに合流することも出来るのだが。しかし、召還出来るのは名付けをしたガビル一人だけ。つまりスフィアをその場に一人置いて来てしまうことになるので、それを使うことは無いだろうけれど。
「分かった。そっちは頼んだぜ、ガビル、スフィア」
「うむ!フォスよ、アクト殿をよろしく頼むのである」
「見習いとは言えお前も獣王戦士団の一人なんだ。気合い入れろよ?」
「はいです!行きましょうアクトさん!」
フォスはガビルへ力強く頷くと、俺にそう促し片方の道へ駆け出して行った。彼女の後に続こうとした俺は、そこで一度立ち止まってガビルへと向き直る。僅かだが彼と見つめ合い、そして互いに小さく頷くと、俺とガビルはそれぞれ走り出した。
そして、それから少し経った今。
「・・・・・・っと。怪我は無いか?もう大丈夫だぜ」
俺はアーマーサウルスと『
ちなみにフォスは一緒にいない。ほんの少し前までは一緒だったのだが、ここまであと少しと言ったところで魔物たちと遭遇してしまったのである。その時、二人でその場を切り抜けようとしていた俺にフォスが先に行くよう叫んだのだ。
どうしてなのかと俺が理由を訊ねるより早くフォスはこう続けた。フラメアの匂いは近いが、血の臭いもする。もしかすると彼女の身に危険が迫っているかもしれない、と。
それを聞いた俺はどうするべきか逡巡したが、その場をフォスに任せてフラメアの所へ向かうことにした。カリオン様から預かった子を一人にするのは気が引けたが、道中でフォスの実力は大体分かっている。少なくともあの場にいた魔物たちが相手なら、多少手こずるかもしれないが間違い無く勝てる筈だ。別れ道は無かったし、フォスなら匂いで俺の後を追えるからすぐに合流出来るだろう。
そんなことがあって急いでダンジョン内を駆けた俺は、フラメアを今にも食い殺そうとしていたアーマーサウルスと『
そのフラメアだが、事態を飲み込めないのか地面に座り込んでぽかんとしている。意図せず見つめ合う構図となり、俺はここで彼女の姿を確認することが出来た。
服装は、スリットの入ったミニワンピースの上から、肘より少し長めの丈をしたケープを羽織っている。腰にはポーチを付け、履き物は歩きやすそうなブーツ。綺麗な栗色の髪を腰辺りまで長く伸ばし、途中から二つの束に別れるよう黒い髪飾りで結んでいた。そして頭から生えた大きな兎の耳。元気が無いのか今は両方ともへにゃりとしているが、正しく『
「・・・・・・・・・星三つ・・・・・・」
「は?」
その時、フラメアが俺を見上げたまま小さな声でそう呟いた。どういうことなのか意味を訊ねようしたが、直前に彼女の腕が血で赤く染まっていることに気付き俺は目を見開いた。恐らくこの血の臭いをフォスは嗅ぎ取ったのだろう。
「お前、怪我してるじゃねえか!」
「ふぇ?・・・・・・あ、これ・・・?」
「気が付かなくて悪い・・・・・・あー、これでいいか」
俺は何か手当てに使える物はないかと辺りを見回したり自分の体を探る。しかし何も見付からず、俺は仕方なく服の一部・・・・・・SRランドルの衣装の、腰のひらひらした部分と言えば分かるだろうか?そこを破いて包帯代わりにすることにした。
「えっ、あのっ・・・・・・!そんな・・・服っ、破いちゃ・・・・・・」
「気にすんな・・・・・・っと。ひとまずはこれで我慢してくれ。ポーションでもあれば良かったんだけどな」
そう告げながら俺は服の一部をフラメアの腕に巻き始める。幸いそこまで傷は深く無さそうだし、弱いと言っても魔物だ。普通の人間よりは丈夫だしこの程度なら大事にはならないだろう。
そして腕に服の一部を巻き終え、再びフラメアの顔を見つめたその時。
「・・・・・・・・・・・・ぁ」
「えっ」
ぽろ、とフラメアの瞳から涙が零れ落ちた。予想外の事態に俺は驚いて言葉を失う。ど、どうしたんだ一体・・・・・・傷口が痛むのか?
・・・・・・いや。もしかすると、咄嗟だったとは言え目の前でアーマーサウルスを、それと彼女の頭上で『
「わ、悪い!怖がらせたか!?あ、あー・・・・・・その、落ち着いてくれ。俺はお前を助けに来たのであって、決して危害を加えたりは・・・!」
「・・・ち、ちがっ・・・・・・あの、あなたのっ、せいじゃ・・・なくて・・・・・・っ!」
黙ったままではマズイと思った俺は、とりあえず彼女を泣き止ませようと慌ててそう捲し立てた。するとフラメアは涙を拭いながら俺の言葉を否定する。
「そう、なのか?じゃあ何で・・・・・・まさか他にも怪我を・・・?」
「ちが、うんですっ・・・・・・・・・もう…駄目かと思って・・・・・・よく分からない場所で、魔物に襲われて・・・ここで死んじゃうんだって、諦めててっ・・・・・・そしたら、あなたが助けて、くれて・・・・・・優しくて・・・っ!それで・・・安心したら、その・・・・・・ぐすっ、うぅうう・・・!」
フラメアが嗚咽混じりにそう答えた。自分のせいでは無かったと分かり俺はほっと一息吐く。いや、ある意味俺のせいとも言えるのかもしれないが・・・・・・まぁ、嫌な思いをさせた訳では無いのだし別に良いだろう。
「怖かったよぉ・・・・・・!ふっ、ぅぐ・・・うぇええええん・・・・・・!」
「・・・・・・よく頑張ったな」
今になって先程までの状況を恐ろしく思ったのか、フラメアは声を上げて泣き出した。俺は一瞬呆気に取られたが、少しでもその恐怖を紛らわせられるようにと、震える彼女の手に触れる。
そうして俺はフォスが駆け付けて来るまで少しの間、フラメアの手を優しく握り、彼女の側に寄り添い続けていた。
フラメアの恐怖失禁シーンを書いてくれと友人に脅されていましたが鋼の精神で無視しました。もし要望があればオマケかなにかとしていつか書くかもです
それと、アクトくんの『魔力感知』がダンジョンでうまく使えない理由は次回辺りに・・・・・・