転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
サブタイトルを毎回考えるの、地味に大変ですね。
「おぉ・・・・・・シス湖ってこういう場所なのか」
澄み渡る青空の下、アメルド大河という川を源とする巨大な湖・・・シス湖を眺め俺はそう呟いた。
ガビルたちリザードマンが暮らす地下洞窟。それはジュラの大森林の中央辺りにあるシス湖、その周囲に広がる湿地帯の地下にある。俺はとある理由から、その地下洞窟と繋がる出入口の一つから外へ出てきていた。
それは、昨日の夜のこと。
「ぼ、冒険って・・・・・・何を言い出すんですかガビル殿!?」
訓練場にて、予想もしなかったガビルの発言に親衛隊長は声を荒らげた。その声を特に気にせず、ガビルは笑みを浮かべたまま言葉を続ける。
「うむ!旅人殿にここジュラの大森林を見せてやろうと思ってな」
「ふむ・・・・・・ガビル様、一体何故?」
「爺よ、旅人殿が記憶を失っていることは聞いたか?ただの人間が魔物の楽園とも呼ばれるこのジュラの大森林に・・・・・・しかも記憶も仲間も無く一人でいるなどさぞ不安であろう」
「う、うん・・・・・・でも、今はガビルたちがいるからそこまででもないけどな」
爺さんからの問いに、ガビルを俺をちらりと見つつそう返した。こちらを見るどこか悲しげな瞳に少し居たたまれなさを感じつつも、誤魔化すように、しかし本音を伝えた。
「ははは、嬉しいことを言ってくれる!しかしだ、やはり記憶を失ったままというのは辛かろう。なので旅人殿の記憶の手掛かりを探すついでに、少しではあるがジュラの大森林を見せようと思ったのである。もしかすると、長くこの地に居ることになるかもしれぬからな」
「わーっ!流石ガビル様!優しー!」
「そ、それはそうかもしれませんが・・・・・・しかし、危険では・・・?」
「心配要らぬ!我輩が付いているからな!」
「だから不安なんだけど・・・・・・」
自信満々に胸を張るを見て親衛隊長は小声で嘆いた。幸いその声はガビルに届かなかったらしい。溜め息まで吐く親衛隊長の姿に苦笑しながら、俺は励ますように声を掛けた。
「あー・・・大丈夫だよ親衛隊長。俺も気を付けるから」
「すみません・・・・・・え?もしや行くつもりなのですか?」
「え?・・・・・・あぁ。全快って訳じゃないが、さっきも言った通り普通に歩けるし。それに、ガビルが一緒にいてくれるんだろ?」
腕をぐるぐると回して体が動くアピールをしながらガビルに視線を向けると、彼はうむ、と力強く頷く。完全にガビル頼りになってしまうのは申し訳ないが、折角健康で強い身体になったのだ。しかもここは異世界・・・じっとなんてしていられない。思いっきり体を動かしたい。
「・・・・・・分かりました。ガビル殿はともかく、貴方自身がそう望むのであれば仕方ありませんね」
「安心するがいい妹よ。旅人殿に無理はさせぬ。それに見せるとは言っても少しだけである。その日の内に帰って来よう」
「具体的にはどの辺りまで行かれるおつもりで?」
髭を撫でながら爺さんがガビルへ訊ねる。ふむ、と呟いて考える仕草をしたガビルは、少し間を置いた後で爺さんに答えた。
「うむ。地図で説明すると、オーガたちが暮らしているクシャ山脈・・・このシス湖からそこへ向かう途中にある池で旅人殿と出会ったのだ。確か位置的にはシス湖側だったか・・・・・・とりあえずそこにもう一度行き、記憶の手掛かりが無いか調べてみようと思う」
オーガたちはそのクシャ山脈という場所にいるのか。昨日会った銀髪と黒髪みたいな連中が沢山いる場所とか怖すぎる。
とはいえ、ガビルの言うように俺も昨日の場所を調べてみたい。またオーガたちに出会う可能性を考えると不安になるが・・・現状あの場所以外に、俺がこの世界に来た手掛かりがありそうな所は無いのだから。
「成程、その辺りまでであれば大丈夫でしょう・・・しかし、ガビル様。記憶がないので何とも言えませんが、旅人殿が冒険者のように力のある者と決まった訳ではありません。わざわざ言う必要はないでしょうが・・・戦闘はなるべく避け、お二人自身の安全を第一に考えてください」
「勿論だとも!」
「そんじゃガビル様、今日の訓練は軽めにしとくか。明日に響いたら嫌だしよ」
「うむ、万全を期すべき」
心配して、そう俺たちに注意する爺さん。ガビルが爺さんに返事をしたのを見てモスたちがガビルの隣に集まってきた。どうやらもう少し訓練をしたいらしい。どうやらガビルも付き合うらしく、面倒見が良いな、と俺は小さく笑った。
「・・・・・・そうだ。なぁ爺さん。ガビルたちの訓練が終わるまで、もう少しだけ色々と教えてくれないか?魔法とか・・・スキルとか」
「ホッホッホッ、構いませんよ。勉強熱心で感心感心・・・ガビル様と妹様の幼い頃を思い出しますねぇ」
そう笑いながら、俺の頼みをまたしても快く爺さんは引き受けてくれた。こうして俺はガビルたちの訓練が終わるまで、ざっくりとではあるが爺さんから『魔法』と『スキル』について、それとジュラの大森林についても最低限の知識を教わったのだった。
「どうであるか、我等リザードマンの領地は」
昨日の出来事を思い出していたその時、地下と繋がる出入口から準備を終えたガビルがやってきた。初めて会った時のように恐竜のような魔物・・・ホバーリザードに乗っている。
「ガビル。あぁ、良いところだと思う・・・・・・ん、こいつは昨日の?」
「うむ、我輩の愛馬ならぬ愛蜥蜴だ!」
「はは、なんだそれ。えっと、ホバーリザードだっけか。ガビルだけじゃなくて、お前にも礼を言わないとな・・・昨日はありがとう。助かったよ」
感謝の言葉を述べながらホバーリザードの顔を撫でる。嫌がられるかもと少し不安だったがそんなことはなく、ホバーリザードは目を細めどこか嬉しそうだった。
「ふふふ、どうやらこいつも旅人殿を気に入ったようである。それより、お主がここを問題なく歩けるようでなによりだ」
「流石に普通の地面の上みたくは無理だけどな。ガビルが用意してくれた靴のおかげだよ」
リザードマンたちはこういう水辺での戦闘が得意らしく、足を取られることなく平気で歩けるんだとか。だが、普通の人間や魔物では、このように足元がぬかるんでいるところばかりの湿地帯は歩き辛い。
しかし、自分が履いている靴はここのような水辺に対応している特殊なモノらしく、ガビルたちほどではないがそれなりに快適に湿地帯を歩けるのだ。しかも防水加工らしく全然濡れない。何で出来ているんだろうか。
「しかし、本当にホバーリザードに乗らなくて大丈夫であるか?昨日のように二人で乗って行くこともできるのだぞ」
「あぁ、そいつに無理させ過ぎるのもアレかなって。それに・・・・・・なんていうか、今は身体を動かしたい気分なんだよ」
ガビルの提案をやんわりと断りながらその場で軽く準備運動をする。気遣ってくれるのは有難いが、今はこのランドルの身体で思いっきり走ってみたいのだ。最も、マトモに走ったことなんて全然無いから少し不安ではあるのだけど。
「まぁ、もし限界になったらその時に頼むからさ」
「分かったのである。無理せず、辛くなったらすぐに言うのだぞ?・・・ところで旅人殿、その荷物は?」
「ん?あぁ、これか。今は秘密だ、後で分かるよ」
俺が背負っている荷物が気になるのか、ホバーリザードの上からガビルが訊ねる。これは爺さんに手伝ってもらって今朝用意したモノである。別に隠す程のモノではないのだが、悪戯心とでも言うのか、なんとなく中身については誤魔化した。
「ふむ・・・?まぁ良いか。よし、ではそろそろ出発するとしよう」
「あぁ、ガビルに付いて行くから先導よろしく」
「うむ!あまり飛ばさぬよう気を付けるから安心するが良い。行くぞ!」
その声と共に、ガビルは手綱を操りホバーリザードを走らせた。勿論、俺を気遣ってゆっくりと。
俺は大きく深呼吸をすると、一度も参加することのなかった学校のマラソン大会を思い出しながら、異世界の地を駆け出した。
今更ですが、もし違和感と言いますか、間違ってるところがあれば指摘してくださると幸いです。恥ずかしい話ですが、自分は転スラについて滅茶苦茶詳しい、という訳ではありませんので・・・