転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
もうすぐ忘年会シーズンだと思うと憂鬱になります。お酒は友達と飲みたいんですよね。
ダンジョンの再構成とフラメアのお陰で、運良くガビルたちと合流することが出来た俺たち。
初対面であるガビルたちとフラメアが簡単に自己紹介を済ませた後、魔封牢に映る青娥さんがフラメアを連れてダンジョンに潜るよう、俺たちに告げた内容をガビルとスフィアにも伝えた。ちなみに魔封牢と青娥さんについてもちゃんと説明済みである。
当初の俺のようにガビルもフラメアを一緒に連れていくことを初めは渋っていたが、スフィアの方は良い修行になると言って青娥さんの話にあっさり乗ってしまった。一度地上へ戻ってフラメアを安全な場所まで避難させ、それから改めてこのダンジョンに挑むという手順を踏むのが面倒だったと言うのもあるだろうけど。
やがてガビルも俺が青娥さんの話を了承したと知ると、それならばと頷いてくれた。迷惑を掛けて申し訳無いと何度も頭を下げるフラメアを宥め、この五人PT(青娥さんは除く)で改めて俺たちはダンジョンの調査をすることとなった。
そして現在──・・・
「────オラァッ!」
雷を纏ったスフィアの拳がスケルトンの頭部を撃ち抜いた。奴らにとっては唯一の急所とも呼ぶべき部位を破壊され、スケルトンはその場に崩れ落ちる。それを確認することもなく、スフィアは流れるような動きでその個体の傍にいた別のスケルトンに殴り掛かった。
「よっ!はっ!でぇりゃぁああっ!」
全て一撃で、周囲にいるスケルトンをスフィアは次々と倒していく。そんな彼女を離れた所から狙う魔物たちがいた。剣ではなく弓を手にしたスケルトン・・・・・・『
「させぬのであるっ!」
その時、射線上にガビルが飛び出した。ガビルはそう叫びながらバーニングランスを振るいスフィアへ放たれた矢を全て打ち落とす。すると、その様子を横目で見ていたスフィアが声を上げた。
「おいおい、余計なことすんなって!そいつらのことくらいちゃんと気付いてたっての」
「む?そ、そうであったか。済まぬなスフィア殿、つい体が動いてしまい・・・・・・」
「そうかよ。まっ、一応礼は言っとくぜ!ありがとな!」
怒っているかと思いきや、スフィアはにかっとガビルに笑い掛けると再び魔物たちを蹂躙していく。そんな彼女にガビルは一瞬目を丸くしていたが、やがてふっと口元を緩めると、スフィアを狙ったスケルトンアーチャーたちへ突っ込んで行った。
「たぁーーーっ!」
そしてフォスもガビルたちのように魔物たちと戦っている。スフィアやガビルのように一方的に敵を倒している訳ではないが、複数の敵を相手に上手く立ち回り、確実に一体ずつ仕留めていた。
「あわわわわわ・・・・・・!」
「大丈夫、大丈夫だぞー・・・・・・」
次から次へと襲ってくる魔物たち。それと、そいつらを片っ端から返り討ちにするスフィアたち三人を目の当たりにし、フラメアは俺の背中で怯えている。最早何度言ったか分からない言葉をフラメアに掛けた俺は、この凄まじい大混戦の真っ只中で一人苦笑していた。
俺たちは今、魔物が大量にひしめく部屋で戦闘を行っている。元の世界で遊んでいたゲーム風に言うのなら、さながらモンスターハウスとでも言うべきこの場所で何故こんなことになっているのか。その理由は、少し前に遡る。
ガビルたちと合流してからは、特にこれと言ったトラブルも無く俺たちは順調にダンジョンの中を進んでいた。道中、魔物とは何度も遭遇したが、スケルトンやブラッドボアなど高くてBランク程度の魔物ばかり。そんな奴らにこのメンバーが苦戦することなど全く無く、毎回雑に処理し続けていた。
そんなこんなで、どんどんダンジョンの下層へ降りて進み続けていた俺たちだが、とある部屋の近くまで来た時にフラメアの『危険察知』が発動したのである。
もしかするとそこに特Aランク級の魔物がいるかもしれない。ここはフラメアの安全を考え別のルートから行こう・・・・・・と俺は提案したが時既に遅く、手強い敵がいるのではと目を輝かせたスフィアがそこへ突っ込んでしまったのである。彼女を止めようと慌ててガビルも後を追ってしまい、仕方なく残った俺たちもこの部屋へ入ることに。
そして、待ち受けていた大量の魔物たちとの戦闘が始まったという訳だ。恐らくフラメアの『危険察知』は質では無く量に反応したのだろう。
「・・・・・・・・・暇だな」
ガビルたちの戦いをやや離れたところから眺めながら一人呟く。ちなみに俺は魔物たちに突っ込むことはせず、フラメアの側で待機している。本当は俺も皆のように戦いたいのだが、スフィアに止められてしまったのだ。
今回の冒険はフォスに経験を積ませる為でもあるのにこの中で一番強い俺が戦いに加わったら、大体Bランク程度の魔物の群れが相手では大した修行にもならずすぐに終わってしまうだろう、とのこと。フラメアは戦えないのだし、誰かが傍にいて守ってやらないといけないとも言われ、俺はこうしてフラメアの護衛に専念しているという訳だ。
しかし、それならスフィアとガビルがフォスと一緒に戦っているのはどうなのかと言うところだが、フォスだけに任せるのは流石に不安なのと、自分たち二人は俺よりは弱いからセーフ、らしい。どういうことだよ二つ目の理由。
まぁ、フラメアを守る奴もいないと不味いのは確かだし別にいいんだけどさ。
「・・・・・・ごめんなさいアクトさん。何度も守ってもらっちゃって」
「ん?あぁ、気にしないでいいよ。戦うのは俺たちの役目だ、フラメアはフラメアに出来ることをやってくれればいい。さっきみたいにな」
そう笑い掛けると、フラメアは少し安堵したのか表情を綻ばせる。彼女の笑顔を見て俺も少し安心し、再び目の前で行われてある戦いに目を向けた。
スケルトンにスケルトンアーチャー。それと、その二種族と違って武器を何も持たずにふらふらと襲い掛かってくるのは『
他にはブラッドボアやジャイアントベアに牙狼族と、どれもこのダンジョンに入ってから出会った魔物ばかり。恐らく今挙げた種族がこのダンジョンに生息している全てなのだろう。最奥にいるかもしれない、核となる魔物は除いて。
『ふふふ、皆さん本当に頼もしいですわ。これなら私の出番は無さそうですね』
「かもしれませんね。けど、念の為にいつでもこっちに来られるようにしといてくださいよ?」
魔封牢に映る青娥さんの言葉に俺は苦笑しながらそう返す。気が付いたら通信を切られていた、なんてことは無いと信じたい。
しかし、正直フォスにはサポートが必要なのではと思っていたが、少し彼女を侮っていたようだ。あの様子なら多少苦戦はしても負けることは無いだろう。
「うっし、あとはあいつらだけだな!」
と、そんなことを考えている内に戦いに終わりが見えてきた。スフィアのその声を聞いて彼女たちの方へ視線を戻すと、あれだけいた魔物たちはほとんど倒され、残っているのは十体ほどのスケルトンとスケルトンアーチャーたちだけだった。
「ふっ、ここは我輩に任されよ!喰らえッ!
「────ッ!?──・・・・・・!」
そう言ってガビルはスフィアより前に飛び出すと、バーニングランスを勢いよく振るった。ガビルの込めた魔素によってそこから放たれるのは『元素魔法』、『
「わはははははっ!見たか、我輩たちの力を!」
「はっ、雑魚がどれだけ集まったところでこの俺には勝てねえよ」
「やったですー!」
敵の全滅を確認したガビルが槍を頭上へ掲げ高らかに笑う。スフィアはあまり喜びを表情に出していないが、フォスは嬉しそうに笑いながらぴょんぴょんと跳ねている。
「皆お疲れ」
「お疲れさまでした皆さん!本当にお強いんですね・・・・・・!」
フラメアと共に三人の元へ歩いて行きそう労った。俺たちに気付いたガビルは槍を下ろすと笑顔のまま迎えてくれる。
「おぉ、アクト殿。済まぬな、一人でフラメア殿を任せてしまって」
「いや、お陰で楽が出来たよ。少し退屈ではあったけどな」
「だろうな。戦ってた俺ですら満足してねぇくらいだし」
そう言ってスフィアはからからと笑う。結構な数の魔物を薙ぎ倒してたと思うんだが・・・・・・多分、量より質ということなのだろう。
「よーし!それじゃあ魔石とか、使えそうな物を回収しちゃいますね!」
ガビルたちとそんなやり取りをしていると、フラメアがそう言いながら倒した魔物たちの方へ駆け出した。先程まで怯えていたというのに、彼女の変わり様を見て俺は思わず目を丸くする。
「張り切ってるな、フラメア」
「はい、いつまでも凹んでる訳にはいきませんから!これ以上アクトさんたちに迷惑を掛けたくないし・・・・・・私に出来ることがあるなら、それを頑張ってやりたくて」
『あら、良い心掛けですね。それでは、お金になりそうな物はちゃんと集めてくださいませ』
「任せてくださーい!」
青娥さんに元気良く答えると、フラメアは魔物たちの死骸から魔石を取り出し始めた。どうやら彼女なりに色々と考えていたらしい。これならもうフラメアの心配は要らないだろうと俺は内心安堵し、それから手持ち無沙汰なのもあって戦利品の回収を手伝った。
そして戦利品の回収を終えた俺たちは、再びダンジョンの最奥を目指して進み始める。何度か戦闘はあったものの、先程のモンスターハウス以降は特にこれと言ったトラブルに見舞われることは無く、順調に探索することが出来た。
そして、次の階層へ行く為の階段の前まで辿り着いた時だった。
「・・・・・・皆さん、気を付けてください。この下・・・次の階層に『危険察知』が発動してます・・・!」
緊張した様子でフラメアが俺たちへそう警告した。その言葉を聞いた俺たちは階段の前で一度立ち止まり、警戒を強める。
「下に降りていきなりであるか・・・・・・また先程のように大量の魔物が待ち構えているのであろうか」
「さてな。もしかすると次がダンジョンの最奥で、核になってる魔物がいるのかもしれないぜ」
下の階層へと続く階段を見据えながら、スフィアはガビルにそう返した。俺たちは現在、地下四階にいる。スフィアに聞いたところ、これまで調査した他のダンジョンも大体五階層くらいだったらしいので、次が最奥の可能性は確かにあるだろう。
『さて。どうしますか、アクトくん?』
考え込んでいた俺に、青娥さんがいつもの笑みを浮かべながら訊ねた。振り返ると、魔封牢越しに彼女と視線が合う。こちらをじっと見つめる青娥さんの綺麗な瞳に少しどきりとしながらも、俺はゆっくりと口元を緩ませた。
「・・・・・・ここまで来たんだ。今更引き返すなんて言わないし、言わせないでしょう?」
『ふふっ、よくお分かりで♪』
期待していた答えだったのか、青娥さんはそう言って優しく微笑む。その時、隣で俺のその言葉を聞いていたスフィアも少し嬉しそうに口角をつり上げた。
「へっ、当然だ。もしここで帰るなんて言い出したらぶん殴ってでも奥まで連れてってたぜ」
「ふっ、アクト殿はそのような無粋な真似はせぬよ。とは言え、もしもの時は迷わず引くとしよう・・・・・・む、そう言えば青娥殿が何とかしてくれるのだったか?」
スフィアにそう告げてから、ガビルは首を傾げてそう呟く。そう、ガビルの言う『もしも』が起きたとしても青娥さんがいる以上何も心配は無い。とは言え、出来ることなら青娥さんの手を借りずに自分たちだけでダンジョンを攻略したいな。
「・・・・・・よし。それじゃあ行こうぜ皆」
「うむ!どんな敵が現れようと、我輩たちに掛かれば楽勝である!」
俺がそう促すとガビルが隣に並び立ち、こちらを向いて自信満々と言った表情でにかっと笑う。彼の行動に俺は目を瞬かせたが、やがて彼につられるようにして笑顔を返した。
それから俺たちは階段を下って最下層と思われる場所へ到着した。階段で移動中も一応警戒は続けていたが、罠が仕掛けられていたりだとか、上と下の階層から魔物に挟み撃ちにされるなんてことも無かった。
「広いな。さっきのモンスターハウスくらい・・・・・・いや、もしかするとそれよりもか?」
周囲を見回しながら呟く。どうやらこの階層は広い部屋が一つあるだけで他の部屋などは無いらしい。やはりここがダンジョンの最奥なのだろう。
「何も無ぇな・・・・・・核らしき魔物も魔鋼塊も」
スフィアの言葉通り、俺たちが今いるフロアには何も無かった。
正確に言うと、魔物の死骸だけはある。生きている魔物の姿は無いが、何故かそれらの死骸だけ辺りにいくつも転がっているのだ。妙な静けさに包まれた生者のいないこの空間を不気味に思っていると、フォスが何かに気付いて小さく声を上げた。
「あっ。アクトさん、あそこだけ山になってるです」
「山?・・・・・・あぁ、死骸のね・・・」
フォスの指差した方に視線を向けると、フロアの中央辺りが盛り上がっていた。地面とは違う肉々しい色がほとんどなことから、どうやらあの場所に魔物たちの死骸がいくつも積み重なっているらしい。よく見るとブラッドボアやジャイアントベア、それにアーマーサウルスなど、このダンジョンで見掛けた魔物だったと思われる肉塊がいくつかある。意識し出すと、段々と腐臭が気になり出してきて思わず片手で鼻を覆った。
「うーん・・・・・・他には、特に何もないです?」
「妙であるな。何も無いというのであれば、フラメア殿の『危険察知』は一体何に反応したのか・・・・・・」
他に気になる物が無かったからか、フォスとガビルはそれぞれ呟きながら死骸の山に近付いていく。とりあえず俺も二人に続いて歩き出した、その時だった。
「───だ、駄目ッ!」
突然フラメアが大きく叫んだ。それと同時に周囲の地面が大きく揺れ出す。またダンジョンの再構成が始まったのかと一瞬思ったが、先程の揺れとはどこか違う。それにすぐに収まった。
「アクト殿、あれを!」
「あれ、って・・・・・・・・・!?」
何事かと地面を見ていた俺だが、ガビルの声を聞き慌てて顔を上げる。そして、目の前で起きた光景に目を見開いた。
なんと、フロアの中央辺りにあった死骸の山が隆起し始めていたのだ。積み重なっていた魔物の死骸がぼろぼろと崩れ落ちていく。だが、その山が無くなることは無かった。
いや、そうではない。始めからそれは死骸の山などでは無かった。死骸の山だと思っていたそれは、ほとんどが一体の魔物の体だったのだ。
「オォオオオオオオオオオオオオオン・・・・・・!!!」
不気味な咆哮と共に、その魔物の姿が明らかになる。長い首と尻尾、さらに翼まで有し、俺たちの何倍もある巨体。シーザーと似通ったその姿・・・・・・間違い無い、ドラゴンだ。
しかし、とてもシーザーと同じ龍族の魔物とは思えなかった。
動いている。なのに生気が感じられない。鱗や皮が剥げ、部位によっては腐敗した肉どころか、骨すら覗いている痛々しい体だった。
『『
それが、あの魔物の名なのだろうか。
僅かに驚いているような声を出した青娥さんに振り向くこともせず、俺たちは眼前に立つ禍々しい存在を見上げる。言葉も無く驚愕する俺たちを、死した竜が澱んだ瞳で見つめていた。
次回、ボス戦です。