転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
今月の頭に発売されたモンスターズ3、それと来週配信されるポケモンのDLC・・・・・・時間が、時間が足りない・・・・・・!
ダンジョンの最奥へと辿り着いた俺たちを待っていたのは、禍々しい威圧感を放つ竜。辺りに転がる死骸のように朽ちかけた肉体でありながら、今も尚動き続けるアンデッド・・・・・・『
「ドラゴンゾンビ・・・・・・!こいつがこのダンジョンの核か!」
「確かにボスっぽい風格だが、実際の強さはどんなもん──!?」
初めて見る敵を前にして、俺はとりあえず魔素量を測ろうとした。この距離ならダンジョンによる妨害効果があっても『魔力感知』が十分機能する筈。そう考えた俺はすぐに『魔力感知』を使用し、その結果に驚愕した。
「こ、この魔素量・・・・・・本気のアルビス殿・・・いや、アクト殿以上だぞ!?」
俺と同じく『魔力感知』を発動したのだろう。ガビルが信じられないといった顔で叫ぶ。そこまで圧倒的な差という訳ではないが、ガビルの言う通り、目の前にいるドラゴンゾンビは俺以上の魔素量だった。俺は内心慌てつつも、ドラゴンゾンビに視線を向けたまま魔封牢の青娥さんを呼んだ。
「青娥さん!このドラゴンゾンビって魔物のランクは!?」
『特Aランクです。上位魔人や上位精霊が位置するランクですが・・・・・・おかしいですね。本来のドラゴンゾンビはここまで強力では無いんですが、この個体は特A+くらいの強さかと』
俺の問いに青娥さんは冷静に答えてくれた。しかし、彼女からしても予想外の事態なのだろう。返ってきた声色から心なしか余裕が無さそうに感じた。
「くそ、なんでこんなに強いんだよ!まさかユニークなのか!?」
「んっ?ダンジョンの核になってる魔物は強さがワンランク近く上がってるって言わなかったっけか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スフィア?」
とんでもない発言が聞こえ、俺はゆっくりとスフィアへ振り返る。俺と目が合ったスフィアは「あ、やべ」とでも言いたそうな顔になり、それから数秒程間を置いた後で大きく笑い出した。
「・・・・・・・・・・・・あー・・・言って、なかった・・・・・・みたいだな!あっはっはっはっはっ!」
「あっはっはっはっはっ・・・・・・じゃ、ねぇええええええええええッ!!!なんでそんな大事なこと言い忘れてたんだよぉおおおおおおおおおッ!?」
「う、うるせぇな!これまで戦ってきたダンジョンの核は少し強くなったところで俺らの相手にはならなかったから忘れてたんだよ!仕方ねぇだろ!」
「何開き直ってんだお前コラァ!!!」
「やんのかてめぇコラァ!!!」
「アクトさん!スフィア様!今はケンカしてる場合じゃ・・・・・・・・・ひっ!?」
しょうもない言い争いを始めた俺とスフィアを諌めようとフラメアが間に割り込もうとする。しかしその瞬間、フラメアは小さく悲鳴を上げ身体を硬直させた。何事かとフラメアの視線の先を見て、俺は再び驚愕した。
「グ、ガ・・・・・・ッ!」
「ウゥウウウ・・・・・・!」
「ふぁっ!?し、死んでた魔物たちが生き返ったです!?」
なんと、死んでいた筈の魔物たちが起き上がり、俺たちを取り囲んでいたのである。その中には手足が一部欠損していたり、肉が抉れ骨や内臓が見えているなど、とても動けるような状態ではない魔物もいる。だと言うのに、そいつらは痛みに苦しむ様子も無く、残っている部位を使って無理矢理身体を動かしていた。
『いえ、違いますね。この魔物たちは精神を汚染されています』
「精神を・・・・・・?どういうことですか青娥さん」
『ドラゴンゾンビは『
青娥さんの告げた言葉の後、俺は改めて魔物たちの様子を確認する。確かに、途中で遭遇した他の個体とは随分様子が違って見える。目は虚ろだし、というか無い奴もいるし。なんというか、少なくとも正気ではないということだけは分かった。
『そして、このタイミングで一斉に動き出したということは、あのドラゴンゾンビがこの場にいるアンデッドたちを統率しているようですね。アレが今までこちらを攻撃してこなかったのはこうしてアンデッドたちで取り囲み、獲物であるアクトくんたちを逃がさないようにする為かと』
「むう・・・・・・いくら特Aランク・・・それがダンジョンの力で強化されてるからと言って、ただのアンデッドにそれほどの知能があるのであるか?」
「さぁな。本能とかそんなんじゃねえの?」
「テキトーだなぁ・・・・・・・・・ッ!?」
ガビルの疑問に雑に答えたスフィアに俺が苦笑した時だった。発動したままの『魔力感知』が、ある一点へ魔素が収束するのを感じたのである。そちらを見るとドラゴンゾンビが口に何かを溜めていた。口端から漏れ出る怪しい色をした煙にどこか危険なものを感じ身構えていると、魔封牢の青娥さんが俺に向かって声を上げた。
『『腐食吐息』です!アクトくん、皆の前へ出て防御を!』
「えっ!?あ、はいっ!」
言われるままに前へ飛び出したのとほぼ同時にドラゴンゾンビは首を振り下ろし、大きく開いた口からドス黒い色をしたブレスを放った。ボォッ!と音を立てこちらに迫るブレスを目前にした俺は、皆の前に盾のように立ち塞がり闘気を全身から放出させる。
「ぐっ、うぅううう・・・・・・っ!」
「アクト殿!済まぬ、大丈夫であるか!?」
「あぁ、これくらい何ともねぇよ・・・・・・!」
闘気を纏った身体に『腐食吐息』を浴びながら、俺は振り向かずにガビルへそう答えた。実際、『腐食吐息』自体からはダメージを受けていない。感覚的には常人なら吹き飛ばされそうな突風を受けている感じだ。俺は魔物だし、青娥さんに鍛えられているから何とか踏み留まれているけれど。
「あ、あのっ!本当に大丈夫なんですかアクトさん!?『腐食吐息』は喰らうとゾンビになるって・・・・・・」
『『腐食吐息』は『精神攻撃耐性』があれば防げます。耐性を持っていなかったり、大きなダメージを負っていたり等で弱っている者が喰らうとゾンビ化が始まってしまいますけどね。その進行度は対象の魔素量によりますけど』
心配そうに訊ねてきたフラメアに青娥さんがそう答えた。成程、初めて体験したがこれも精神攻撃に分類されるのか。言われてみれば何と言うか、浴び続けていると少し気分が悪くなってくると言うか、不安になってくると言うか・・・・・・そう、精神を掻き乱されているような感覚がある。まぁ、俺の場合それはほんの少しなので、とりあえずゾンビ化はせずに済みそうだ。
「そ、そうであったか・・・・・・しかしアクト殿。いくら青娥殿の指示とは言え、ゾンビ化してしまう可能性があるのに『腐食吐息』へ突っ込むとは無謀過ぎるぞ!」
「ご、ごめんガビル・・・・・・でも。青娥さんのこと、信じてたからさ」
そんなことを呑気に考えていると、心配した様子のガビルに俺は怒られてしまう。申し訳無いと謝罪しつつそう返すと、魔封牢の中で青娥さんがにんまりと笑みを浮かべた。
『はぁー・・・・・・本当に良い子ですねぇアクトくん。フラメアさん、この子は私が育てたんですよ♪』
「そそそそんなこと言ってる場合じゃないですよぉ青娥様ーーーっ!」
「魔物たちが来たですー!」
わざとらしさを感じる喜んだ素振りをしながら青娥さんはフラメアに話を振ったが、そのタイミングで周囲にいるゾンビ化した魔物たちが襲い掛かって来た。恐らく『腐食吐息』が通じなかったので直接始末しようとドラゴンゾンビが指示を出したのだろう。動けない俺に代わって、スフィアたちがそれらの迎撃を行う。
「チッ・・・おいフォス、あんまり派手に動くなよ!『腐食吐息』に当たっちまうからな!」
「は、はいです!」
「フラメア殿はアクト殿の背中にくっ付いているのだ!魔物共はこちらで対処する!」
「わっ、分かりました!アクトさん、失礼します!」
接近してきた牙狼族・・・のゾンビを槍で打ち払いながら、ガビルはフラメアにそう指示する。それを受け、フラメアは特に抵抗も無く俺の背中にしがみ付いた。
・・・・・・いやまぁ、緊急時だし仕方ないのかもしれないけど、少しフラメアは無防備過ぎるな・・・思春期の男子には中々辛い。今の俺は見た目だけとは言えランドルなので、取り乱したりはしないよう気を付けているけれど。
ちなみに俺の身体だけでは『腐食吐息』を防ぎ切れないと思うかもしれないが、闘気を大きく放出することで『腐食吐息』を受け止める範囲を無理矢理広げているのだ。これによって、俺の背後にいるスフィアたちの動ける範囲が大きくなっているのである。滅茶苦茶消耗するけど。
「・・・・・・そう言えばさ。スフィア、フォス、フラメア。お前らって『精神攻撃耐性』持ってんの?」
「無ぇ!」
「無いです!」
「ありませーんっ!」
「俺とガビルだけかよチクショウ!」
即答した三人に心の中で俺は頭を抱えた。いや、『腐食吐息』に当たらないよう気を付けて動いていた時点でなんとなく予想はしていたけど。先程の青娥さんの言葉からするに、『腐食吐息』を受けてもスフィアだけはすぐにゾンビ化はしないだろうが・・・・・・さて、どうしたものか。
「おい、どうする!ゾンビ共はうじゃうじゃいやがるし、アクトだっていつまでも防げはしねぇだろ!?」
「でぇいっ!・・・・・・仕方あるまい。アクト殿、済まぬがもう少しこのまま皆の盾となっていて欲しいのである。ドラゴンゾンビは我輩が叩こう」
ゾンビたちを殴り飛ばしながら声を上げるスフィア。彼女の言葉を聞いたガビルは少し考えた後、こちらに振り向きそう言った。俺は闘気の放出を続けながら顔だけ彼に向ける。
「叩くって、ガビル一人で倒せるのか?」
「ははは、そこまで自惚れておらぬよ。だが、本気の一撃を喰らわせることが出来れば流石に怯ませることくらいは出来る筈。いくらあのドラゴンゾンビがアクト殿以上の強さだとしてもな」
闘気の壁の向こうで、今も『腐食吐息』を吐き続けているだろうドラゴンゾンビに向き直りガビルはそう告げた。しかし本当によくずっと吐いていられるな、ドラゴンゾンビの奴。相当燃費の良いスキルなのだろうか。
「怯めばこの『腐食吐息』も一旦止まるであろう。その隙を突いて皆で一気に攻めるのだ。『精神攻撃耐性』を持つ我輩とアクト殿は正面から。スフィア殿は『腐食吐息』に注意しつつ側面から。フォスはフラメア殿を守っていて欲しい」
「それがいいかもな。ハッキリ言ってフォスじゃあいつに大きなダメージは与えられねぇ。無茶な突撃させるよりは、フラメアの守りに専念させた方がいいか」
「ふぁ・・・・・・分かったです。悔しいですけど、今の私じゃ力不足ですから・・・・・・フラメアさんには指一本触れさせないです!任せて欲しいです!」
戦力外だと言われ一瞬落ち込んだ様子を見せたフォスだが、すぐに気持ちを切り替えて気合いを入れた。笑ってそう答えたフォスを見たガビルは僅かに口元を緩め頷いた後、表情を引き締め槍を強く握る。
「・・・・・・では皆、準備して欲しい。狙うは頭部である。どれだけ強く、アンデットであると言っても、頭を破壊されれば奴とて生きてはいられまい。いや、まぁ既に死んではいるのであるが」
「任せろ、思いっきりぶちかましてやらぁ!」
「頼んだぜガビル!」
「うむ!はぁああああああああ・・・・・・!」
会話の最中もずっとゾンビたちの戦っていたスフィアと『腐食吐息』を防ぎ続けている俺の声を受け、ガビルは魔素をバーニングランスに収束させ始めた。その間、無防備になるガビルをゾンビたちが狙うが、それらは全てスフィアとフォスに阻まれ倒されていく。やがて全力の一撃を放てるまで力を溜め終えたガビルは、闘気の盾から横に飛び出しドラゴンゾンビに狙いを定めた。
「行くぞ!ドラゴンクラッ──!」
「────ッ!だ、駄目です!上ッ!」
「・・・・・・ッ!?ガビルッ!」
「オォオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!」
しかし、アーツを放とうとしたその時。俺の背中にしがみ付いていたフラメアが焦った様子で叫んだ。何事かとフラメアの言葉通り視線を上に向けた俺は、そこにあったモノに思わず目を見開く。咄嗟にガビルへ呼び掛けたその直後、『腐食吐息』を吐きながらドラゴンゾンビが吠えた。
『あれは・・・・・・『
「ぬ──おぉおおおおおおおおおっ!!!」
『
「ガビルっ!」
「ぐっ・・・・・・全員散れッ!」
いくつかはガビルの『超龍槍撃』で撃ち落とせたが、それでも『
「チッ!」
「ふぁあああっ!?」
「ひぅうううっ!」
幸い、誰も『
「皆、無事か!?」
「うむ、こんなもの・・・・・・ぬぉっ!?ゾンビや地面が溶けている!?」
スフィアたちと同じく攻撃を避けたガビルがこちらを振り返り驚く。その時、俺たちの位置がバラバラになったからかドラゴンゾンビが『腐食吐息』を中断した。様子を伺っているのか分からないが、丁度良いと思った俺はフラメアの安全に気を配りつつ辺りを見回す。
見ると、『
「ひぇ・・・・・・あ、あんなのが当たったら・・・・・・!」
『服が溶けてアクトくんに恥ずかしい姿を見られちゃいますね、フラメアさん?いやーん♪』
「いや全身溶けるわ!んなアホなこと言ってないで、今の攻撃は何ですか青娥さん!?」
『はーい♪今のは『元素魔法』の『
こんな時でも冗談を言う青娥さんに俺はツッコミつつ解説を求めた。やはりあの攻撃は酸だったらしい。魔法だとは思わなかったが。
「『元素魔法』・・・・・・ドラゴンゾンビって魔法も使えるのか」
『・・・・・・いえ。私も魔法を使うドラゴンゾンビには今回初めて遭遇しました』
少し驚きながら呟いた俺だが、その後に青娥さんから告げられた言葉でさらに驚く。それから青娥さんはフラメアに声を掛け、ドラゴンゾンビを観察しやすいように魔封牢を奴に向けさせた。
『・・・・・・『腐食吐息』と同時に魔法である『
『並列演算』・・・・・・青娥さんとの修行中に教えて貰ったことがある。確か、解析したい事象を思考と切り離して演算を行えるようになるスキル・・・だったか。ざっくり言えば二つ以上の事象に対応出来るような力だと、青娥さんは言っていたと思う。
「本来持っていない筈のスキルや魔法を使う個体・・・・・・やっぱりユニークなのか・・・?」
『んー・・・・・・スフィアさん。ダンジョンの核となる魔物はワンランク程強くなっているとのことですけれど』
「あぁ!つっても、解析系のスキルで視た訳じゃねえからどれも体感だけどよ。けど、大体そのくらい強化されてんのは間違いないぜ。アルビスもそう言ってたし、なっ!」
少し離れたところでゾンビたちと戦いながらスフィアが答える。ちなみに俺やガビルたちもそれぞれ襲い掛かって来るゾンビたちを返り討ちにしていた。一応戦闘中ではあるが、俺たちがバラバラに別れてからドラゴンゾンビは様子を窺っているのか特に何もしてこないので、こうして青娥さんと会話する余裕があるのだ。
『アルビスさんが言うなら恐らくそうなのでしょう。では、核である魔物が通常の個体では有り得ない行動を取ったことは?例えば、魔法を使ったりだとか』
「んん?・・・・・・いや、無ぇな!あくまで魔素量が増えただけだ!」
『成程・・・・・・ふむ』
スフィアから返ってきた言葉を聞いて青娥さんは何やら考え込む。俺は襲って来るゾンビたちからフラメアを守りながら青娥さんと会話を続けた。
「どうしたんですか青娥さん。何か分かりました?」
『んー、なんとも。ある程度予想は出来ますが・・・・・・これは直接
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんですか?」
俺の問いに答えた青娥さんはこちらにゆっくりと振り向き、いつもの笑みを見せた。その笑顔からどことなく嫌な予感がして、俺は表情を引きつらせつつ静かに訊ねる。
『あのドラゴンゾンビ──捕まえてください♪』
「・・・・・・・・・・・・はぁっ!?」
そして、そんな俺の心境を知ってか知らずか、青娥さんは予想通りとんでもないことを言い放ち、俺を驚かせるのだった。
家に籠ってゲームだけしてたいですね・・・・・・