転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第76話となります。

明けましておめでとうございます(遅)。今年もよろしくお願い致します。


腐肉竜(ドラゴンゾンビ)

ドラゴンゾンビの発動した魔法、『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』に闘気で立ち向かう俺。魔素量自体はドラゴンゾンビの方がこちらより上ではあるが、青娥さんとの修行により『気闘法』の練度が上がったお陰か、俺の攻撃はドラゴンゾンビの魔法をなんとか食い止めることができていた。

 

 

 

「アクトさん、大丈夫ですか!?」

 

「今のところはな・・・・・・!」

 

 

 

フラメアが心配した様子で、凄まじい吹雪から自分たちを庇っている俺に声を掛けてきた。不安そうな声に俺は振り返ることなくそう返す。しかし、単純な魔素量はあちらが上だ。フラメアにはあぁ言ったが、このまま真っ正面から撃ち合いを続けると不利なのは間違いなく俺だろう。

 

ちなみに俺が闘気を撃っている体勢だが、『ドラゴンボール』の登場人物である『ベジータ』の必殺技、『ファイナルフラッシュ』のそれである。何故か咄嗟にこの構えとなってしまった。多分『かめはめ波』より撃ちやすかったのだろう。

 

 

 

「それよりフラメア、『呪怨束縛(カースバインド)』はこっちに戻ってきてないか?」

 

「ふぇ?えと・・・・・・は、はい!どこかに行ったきりでこっちには一つも・・・」

 

 

 

俺に問われたフラメアは冷気の余波に身を震わせながらも辺りを見回してからそう答えた。よし、とりあえず一安心だ。俺の真後ろ付近は安全だが、左右や上などには俺の闘気によって割られた冷気が拡散しておりフラメアとフォスは迂闊に動けないのである。当然、『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』を受け止めている俺もだ。

 

そんな状態で『呪怨束縛(カースバインド)』に襲われたら少し面倒なことになっていただろう。まぁ、だとしても多分何とかなっていたと思うけれど。

 

 

 

「・・・・・・ふぁっ!?た、大変ですアクトさん!スフィア様が!」

 

 

 

と、俺が呑気にそう考えていた時、フォスがある場所を見て声を上げた。『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』を食い止めながら顔だけ動かしフォスの視線の先を追う。そこには先程と同じく空中で『呪怨束縛(カースバインド)』に追われるスフィアの姿があった。

 

しかし、最初とは様子が違っている。スフィアからの顔から余裕が消えているのだ。

 

 

 

「クソが!この数は流石に・・・ッ!」

 

 

 

自身を執拗に狙う『呪怨束縛(カースバインド)』たちを見ながらスフィアはそう吐き捨てる。実は『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』が撃たれた際に俺たちから離れた『呪怨束縛(カースバインド)』だが、それらは全てスフィアへと向かっていたのだ。

 

 

 

「スフィア様っ!」

 

「アクトさん、どうしましょう!?このままじゃスフィア様が!」

 

 

 

フォスが焦った様子で俺に縋る。ここまで地面と空中を高速で飛び回り、スフィアはなんとか『呪怨束縛(カースバインド)』を躱し続けていた。しかし、その『呪怨束縛(カースバインド)』の数が増えてしまった以上、そろそろ限界だろう。

 

 

 

・・・・・・だが。

 

 

 

「・・・・・・スフィアなら問題ねぇ。何もするな、フォス」

 

「アクトさん・・・・・・!?」

 

 

 

俺の返した言葉を聞いて、フォスは信じられないといった顔を浮かべる。その時、スフィアの方を見ていたフラメアがあっと声を上げた。

 

 

 

「チッ、囲まれた・・・・・・!」

 

 

 

再びそちらに視線をやると、スフィアが『呪怨束縛(カースバインド)』たちに囲まれているところだった。とうとう逃げ場を無くしたスフィアだが、その表情から闘志はまだ消えていない。しかし流石に疲労も見えており、絶対絶命と言える状況だった。

 

 

 

「スフィア様ーっ!」

 

「やめろフォス!危ないからここにいろ!」

 

「そんなの分かってるです!『呪怨束縛(カースバインド)』に生気を吸いとられたら、私くらいの戦士じゃきっと死んじゃうです・・・・・・それでもっ!」

 

「そうじゃねぇ───焼け死ぬぞ?」

 

「ふぁっ?」

 

 

 

飛び出して行こうとするフォスを止めた俺は、僅かに口元を緩めてそう告げる。どういうことなのかと振り返ったフォスが訝しげに俺を見た次の瞬間、俺たちの頭上を『彼』が通り過ぎて行った。

 

 

 

 

 

 

火炎大魔嵐(ファイアストーム)ッ!!!」

 

 

 

そしてその声と共に手にした槍から紅蓮の炎を数度巻き起こした。出力を調整しながら複数回撃ち出されたその炎はスフィアを避け、『呪怨束縛(カースバインド)』のみを次々と飲み込んでいく。炎に飲まれた『呪怨束縛(カースバインド)』たちはまるで生き物のようにもがいていたがそれも一瞬のことで、やがて跡形も無く消滅していった。

 

 

 

「ガビル・・・・・・!?」

 

「無事であるか、スフィア殿!」

 

「やっぱり、なんとかなったな」

 

 

 

飛行し、スフィアの側へ移動するガビルを見て俺は安堵した。そう、先程から俺が割りと余裕を持っていた理由・・・・・・それはガビルの存在である。

 

実は、ドラゴンゾンビはガビルにだけ『呪怨束縛(カースバインド)』を一つも放っておらず、彼はほぼ放置状態になっていたのだ。もしかするとあの魔法には射程距離があり、そのせいで少し離れた位置にいたガビルには攻撃出来なかったのかもしれない。しかし、スフィアに近い実力を持ったガビルを視界に入れることもなく放置していたというのは不可解だ。

 

魔法を二つ同時に使用したり、その魔法による攻撃同士をぶつけ合わないようにしていたドラゴンゾンビだが、実はそこまで知能は高くないのかもしれない。

 

 

 

・・・・・・・・・それか、ガビルだけなら呼び出したアンデッドたちで十分倒せると踏んでいたのかもしれないけれど。まぁ、それはそれで相手の実力を見極められない間抜けということになるが。

 

 

 

「済まぬ皆、待たせてしまったな。少しばかりアンデッドたちの処理に時間を掛けてしまったのである!」

 

 

 

スフィアの隣、空中から俺たちを見渡しながらガビルはそう言った。今気付いたが、ここと上の階層を繋ぐ階段付近が静かになっている。言葉通り、ドラゴンゾンビが呼び出したアンデッドたちを全てガビルが片付けてくれたのだろう。

 

 

 

「・・・・・・ったく、借りが出来ちまったな」

 

「わはは、気にすることはないぞスフィア殿。仲間を助けるのは当然のことであるからな!」

 

「へっ、そうかよ」

 

『ガビルさーん。調子に乗るのはその辺にして、早くアクトくんたちを助けて頂けますぅ?』

 

 

 

苦笑するスフィアへ笑って答えるガビル。そんな彼に魔封牢に映る青娥さんはジト目でそう呼び掛けた。青娥さんのどこか冷たい声に体を僅かに震わせながら、ガビルは慌てた様子でドラゴンゾンビへと向き直る。

 

 

 

「あっ、はい・・・・・・ごほん。済まぬなアクト殿、今助けるのである!」

 

「頼むなガビルー!」

 

「うむ!では行くぞ───超龍槍撃(ドラゴンクラッシュ)ッ!!!」

 

 

 

少しずつ『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』に押され始めていた俺の声を受け、ガビルは最早自身の得意技とも言えるアーツを放った。と、その時。ガビルの行動とほぼ同時にドラゴンゾンビは眼だけを動かし、彼と闘気の一撃を視界に捉える。

 

 

 

「オォオオオオンッ!!!」

 

「なにっ!?」

 

 

 

するとドラゴンゾンビは顔を俺へ向けたままガビルの方へ片手を上げる。そして短く鳴くとその手から更に『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』を発動した。

 

 

 

「グォオオオオオオ・・・・・・ッ!?」

 

「届いたはいいが、大して効いてねえぞガビル!」

 

 

 

ガビルの『超龍槍撃(ドラゴンクラッシュ)』は凍てつく白銀の嵐を突き抜け、ドラゴンゾンビの顔面に直撃した。ガビルの方がドラゴンゾンビより魔素量は下だが、『超龍槍撃(ドラゴンクラッシュ)』が鋭く圧縮された闘気だったので『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』を貫いてドラゴンゾンビまで届いたのかもしれない。あとは、俺へ撃ち続けている方の『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』に力を割いていて、ガビルに撃ったそれは全力では無かったのかもしれないが。

 

しかし、その『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』によって『超龍槍撃(ドラゴンクラッシュ)』の威力はかなり殺されてしまったらしく、直撃を受けた筈のドラゴンゾンビは大したダメージを受けていないようだ。

 

それと、問題がもう一つ。ガビルの『超龍槍撃(ドラゴンクラッシュ)』は『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』を突き抜けただけで打ち消してはいないということだ。

 

 

 

「くっ!火炎大魔嵐(ファイアストーム)ッ!!!」

 

 

 

自身とスフィアに迫る白銀の渦を前に、ガビルは焦った様子でバーニングランスを振るう。今から回避は無理だと悟り、槍から巻き起こした炎を盾代わりにして吹雪を防ごうとしているのだろう。

 

 

 

「ぬぅううう・・・・・・!スフィア殿、我輩が抑えている内に奴を!」

 

「任せな!」

 

 

 

視界を埋め尽くすほどの『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』から自身と傍にいるスフィアを守る為、ガビルも『火炎大魔嵐(ファイアストーム)』を広範囲へ展開する。俺へ放たれたものと比べると威力は控えめだが、それでも十分強力だ。白銀の渦に対し炎を放出し続け何とか持ち堪えながら、ガビルはスフィアに呼び掛けた。

 

 

 

「おぉおおおおおおおおッ!!!」

 

 

 

ガビルに力強く応えたスフィアは、ぶつかり合う火炎と吹雪を避けながら、正しく獣のような咆哮と上げ空中を駆けて行く。スフィアが安全な場所まで移動したのを確認したガビルは小さく微笑み安堵する。その時、限界を迎えたのかガビルの炎が押し負け、吹雪に飲み込まれた。

 

 

 

「ぬわぁああああああああああああっ!!!?」

 

「ガビル!?・・・・・・・ッ、だぁあああッ!!!」

 

 

 

絶叫を聞いて一度はガビルに振り返ったスフィアだったが、すぐに前を向きドラゴンゾンビへ猛攻を仕掛けた。一見、ガビルを見捨てたかのようにも見える彼女の行動だが、俺には分かる。スフィアもガビルを心配してはいるのだ。

 

しかし、ここでガビルを助けに行ってしまえば、彼が必死に作り出した反撃のチャンスを無駄にしてしまう。戦士であるスフィアはそれをちゃんと理解しており、ガビルの分までドラゴンゾンビにダメージを与えることで彼の覚悟に報いようとしているのだろう。

 

 

 

「オォオオオ・・・・・・!」

 

「当たるかよ、木偶の坊!」

 

 

 

空中を駆けて来るスフィアを叩き落とそうと、ドラゴンゾンビは翼や片手、それと尻尾を振るう。しかし『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』を俺に撃ち続けている為に大きく体を動かせないようだ。いくら魔素量で上回っているとは言え、そんな攻撃がスフィアに当たる訳も無く、彼女は苛立った様子でそう吐き捨てながら、『飛翔走』を巧みに駆使しそれらを躱していく。

 

攻撃を回避されたドラゴンゾンビはガビルへやったように片手をスフィアへ向け『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』を放つが、それもスフィアは簡単に回避する。そしてスフィアはドラゴンゾンビへ接敵し、雷を纏った体で攻撃を開始した。

 

 

 

「ガビルさん、スフィア様、アクトさん・・・・・・!ど、どどど・・・・・・どうしよう・・・!青娥様っ、少しは助けてくださいよぉ!」

 

『えー?ダメですよフラメアさん。これはアクトくんたちの修行だって言ったじゃないですかぁ。それに、絶対に手を出すなとスフィアさんに言われてますし?』

 

「そうだとしてもっ!アクトさんがこんなにピンチになってるのは青娥様のお願いを聞いて私を同行させたせいなんですよ!?しかもあのドラゴンゾンビを捕獲もしろだなんて!」

 

 

 

スフィアがドラゴンゾンビと攻防を繰り広げる中、『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』を受け止め続けている俺の背後では涙目のフラメアが青娥さんに必死に食い下がっていた。しかし、フラメアって結構ハッキリ物を言える奴なんだな。俺だったら青娥さんにあんな風には言えないかもしれない。

 

 

 

「私がいなければ・・・・・・難しい条件が無ければアクトさんはあんな魔物なんかとっくに倒しちゃってます!アクトさんは、あんな魔物なんかに絶対に負けないんですからぁ!」

 

 

 

青娥さん相手に物怖じすることなく、フラメアは瞳に涙を浮かべながらそう断言した。

 

・・・・・・いや、フラメア。信頼してくれるのは嬉しいけど、流石にドラゴンゾンビが相手じゃ絶対は無いかな・・・寧ろ不利なんだけど、魔素量的に。

 

 

 

『・・・・・・・・・しょうがないですねぇ。確かにフラメアさんの言う通り、アクトくんたちには無理ばかり言ってますし』

 

「自覚はあったですね・・・・・・」

 

『と、言う訳でぇ・・・・・・ほんのちょーっとだけ、お手伝いしてあげましょーう♪』

 

 

 

やがてフラメアの訴えに折れたのか、青娥さんは諦めたように小さく息を吐いた。呟いた言葉にフォスが苦笑していると、突然青娥さんの姿が魔封牢から消えた。まさか俺たちを助ける為にこちらに転移してきたのか?そう思った俺は周囲を見渡しながら『魔力感知』を使うが、特に青娥さんは見当たらないしその反応も無い。

 

 

 

『お待たせしました~♪』

 

 

 

と、どういうことかと少し考えていたらすぐに青娥さんは戻ってきた。勿論、こちらにではなく魔封牢に映る何処かにだ。

 

 

 

「えっ、あの・・・・・・青娥さん?今どこに行ってたんです?てか、手伝いは・・・・・・」

 

『ふふ、御心配無く。ちゃんとしてありますよ♪』

 

 

 

 

困惑する俺に青娥さんはいつもの笑みを浮かべながらそう返した。彼女は「心配無く」、「ちゃんとしてあります」と言ったがそれがどういうことなのか分からない。

 

流石に『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』をこれ以上受け止め続けるのも厳しくなったきたところだ。フラメアとフォスたちの安全を第一に考えて、スフィアには悪いが素直に青娥さんへ助けを求めようとした、その時。

 

 

 

 

 

 

『──おっ、本当に繋がった。おーい、大将ー?』

 

「はっ?」

 

 

 

突如、脳内に見知らぬ声が響く。この感覚は・・・・・・『念話』か『思念伝達』か?

 

 

 

『え、っと・・・・・・大将って俺のこと?つーか、誰?』

 

 

 

もう一度『魔力感知』を発動し周囲を確認するが、怪しい人物は見当たらない。こいつは一体どこから話し掛けてきてるんだ?

 

 

 

『おいおい、誰とは酷ぇなー!』

 

 

 

予想外の展開に困惑しつつ、声の主に対し警戒しながら訊ねると、そいつは呆れた様子でそう言った。どこか陽気で軽そうな印象を持たせるそいつの声だが、何故か初めて聞く気がしないのである。

 

 

 

そんなことを考えていると、やがて声の主は名を名乗り、そしてそのまさかの正体に俺は目を剥くこととなった。

 

 

 

 

 

 

『───俺だよ俺。シーザーだよ!』

 

『あぁ、なんだシーザーか・・・・・・・・・えっ!?シーザー!?』




シーザーの初喋り回(鳴き声除く)でした。
しかし戦闘描写は難しいですね・・・もっと勉強しなければ。
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