転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第80話となります。

転スラアニメ三期の放送が始まりましたが、悲しい出来事もありました。『魔物の国の歩き方』、連載中止となってしまいましたね・・・とても残念です。

岡霧硝先生の回復を祈っております。


青娥の思惑

ユーラザニアを後にした俺たちは、青娥さんがフラメアと交わした約束を果たす為にジュラの大森林にある兎人族(ラビットマン)の里を目指していた。コビーたちも一緒で、彼ら犬頭族(コボルト)のキャラバンを護衛しながらの大人数での冒険である。

 

一日目の道中では何度か魔物に襲われはしたが、シーザーならまだしも俺とガビルの相手にはならない奴ばかりだったので全て返り討ちにしてやった。勿論俺たちやコビーたちに怪我は無い。そんな訳で、魔物との戦闘以外では特にトラブルなどは無く順調に目的地へ進んで行った。

 

強いて言えば、途中にあった小川にフラメアが落ちたくらいだろうか。迂回するのが面倒だと青娥さんがぼやいたので、俺とガビルが『飛空法』で飛びながら馬車を持ち上げ向こう岸に運ぶことになった。その際、フラメアは馬車に乗ったままでは申し訳無いからと下に降り、水面から突き出た大きな岩の上を飛んで小川を渡ろうとしたのだが、見事に足を滑らせ小川へダイブしたのである。川底が浅かったのは不幸中の幸いだろう。

 

ずぶ濡れになったフラメアは少し恥ずかしそうに笑っており、特に怪我は無さそうだと分かり俺は安堵した。そして丁度昼時だったので、小川を渡った先で休憩を兼ねて昼食を取ることに。フラメアと青娥さんに手伝ってもらい、今回も俺が中心となって作ることになった。ちなみにガビルとシーザーはその間、周囲の見張りである。

 

 

 

そんなこんなで完成した初日の昼食だが、青娥さんがラウラでの宴の時のように「オシャレな料理が食べたーい♪」と大分ざっくりとしたリクエストをしてきたので、ユーラザニアで貰った野菜を使いラタトゥイユを作ってみた。しかし流石にそれだけでは足りないだろうと思ったので、ガビルに頼んで牛鹿を狩ってきてもらうことに。これは一部だけラタトゥイユに使って、それ以外の部位はシンプルに焼いて食べた。

 

そう言えばラタトゥイユを作ると言った際、それは野外で作れるものなのかと青娥さんは首を傾げていたっけ。確かにラタトゥイユは世界三大料理の一つに分類されるフランス料理ではあるが、郷土料理だからか作るのはそこまで難しくは無い。実際、元の世界でそれを野外で作っている動画を見たことがある。プロが紹介しているレシピを見ると手を出し難いと思うかもしれないが、普通に家庭で作る分にはそこまでハードルが高い料理では無いのだ。

 

俺のラタトゥイユのレシピも結構簡単で、まず牛鹿の肉で作った挽肉とトマトや各種調味料でミートソースを作る。出来上がったそのミートソースを大きめの鉄板皿に流し入れ広げていき、その上に薄く輪切りにしたナスにトマト、ズッキーニと緑と黄色の瓜をぐるりと円を描くような形で綺麗に並べる。ミートソースが見えなくなるくらいしっかり重ねて並べたら、タイムとローズマリー、塩胡椒をして大さじ一杯のオリーブオイルを一回し。あとは蓋をして強火で三分程煮込むだけだ。

 

これだけでも十分なのだが、青娥さんが空間魔法を使ってチーズを取り寄せてくれたので、削ったそれをラタトゥイユの上に乗せてみた。溶けたチーズが上に乗ってるとより美味しそうに見えるのは何故だろう。

 

話を戻して、完成したラタトゥイユだが、我ながら良く出来たと思う。流石に一人一皿とはいかなかったが、コビーたちにも行き渡るよう大量に作ったので少しくたびれてしまった。けれど、皆が美味しいと喜んでくれたから作った甲斐はあった。中でもフラメアは肉も食べるが野菜も好物らしく、野菜を沢山食べられるラタトゥイユを特に嬉しそうに食べてくれた。後でレシピを教えて欲しいと頼まれたくらいである。

 

 

 

そんな楽しい昼食と休憩を終えた後、俺たちは再び兎人族(ラビットマン)の里へ目指し歩き出した。小川を越えてからは穏やかな道が続いており、辺りの景色を眺めながら皆と他愛も無い会話をして、美味しい夕食を食べて一日目は過ぎていった。二日目も一日目とほぼ同じで楽しい旅となり、何度か魔物に襲われはしたものの、それらはシーザーとガビルがすぐに退治してくれたし何も問題は無かったと言えよう。

 

 

 

そして、ラビットマンの里を目指して三日目の今日。先程昼食を終えた俺たちが周囲を警戒しつつのんびりしていると、馬車から外の景色を眺めていたフラメアが何かに気付いたように声を上げた。

 

 

 

「・・・・・・あっ!アクトさん、もうすぐですよ。あとはここを道なりに行けば里に着きます」

 

 

 

前方を指差しながらフラメアが俺に告げる。見ると、先程まで歩いていた場所と比べてしっかりとした道があった。コビーたち行商も訪れるようだし、里の兎人族(ラビットマン)たちが整備しているのかもしれない。

 

 

 

「そっか。しかし兎人族(ラビットマン)の里・・・・・・どんな所なんだろうな」

 

「私も行ったことが無いので少し気になりますね」

 

「あはは、そこまで期待されるとなんだか申し訳ないなぁ・・・・・・ユーラザニアに行った後だから尚更。でも意外と──」

 

 

 

 

 

「止まれ!」

 

 

 

と、その時だった。突然馬車よりも高い位置から男と思わしき声が響く。何事かと馬車から外の様子を伺うと道の右側が坂になっており、その上からいくつかの人影がこちらを見下ろしていた。数は・・・・・・五人か。

 

 

 

「なんだあいつら?人間・・・・・・じゃないな。頭に動物っぽい耳があるし」

 

「あー・・・・・・えと、その・・・・・・里の兎人族(ラビットマン)たちです」

 

 

 

気まずそうな顔でフラメアが俺に囁く。どうやら同じ里で暮らす同族らしいが、フラメアと違って頭にある兎耳が垂れている。まるでロップイヤーのようだ。性別によって耳に特徴があるのかと一瞬思ったが、連中の中にいる女の兎人族(ラビットマン)も耳が垂れているので恐らく個体ごとの差なのだろう。ちなみに彼らのような耳を持つ個体は伏せ耳、フラメアのようにぴんと伸びた耳を持つ個体は立ち耳と呼ばれるらしい。

 

狩りでも行っていたのか、剣や槍等で武装した彼らは坂から降りてくるなり馬車の前へ立ち塞がる。すると何やら五人でこそこそと話し始め、やがて一人の男が剣をこちらに向け口を開いた。

 

 

 

「お、お前たち!この先に何の用だ!」

 

 

 

少し怯えた様子で伏せ耳の男はそう叫ぶ。どうしたのだろうと疑問に思っていると、男が何かをちらちらと見ていることに気付いた。その視線の先を追ってみると、そこにはガビルが・・・・・・いや、ガビルを乗せたシーザーがいた。

 

 

 

「やっぱりあれ、レッサードラゴンよね・・・・・・!?」

 

「あ、あぁ・・・・・・なんだってあんな化物がここに・・・・・・!」

 

「グルル?」

 

 

 

男の仲間らしき兎人族(ラビットマン)たちもシーザーを警戒しているらしい。何故青娥さんや俺とガビルではなく、真っ先にシーザーにのみ反応したのか。

 

恐らく彼らは『魔力感知』のスキルを持っていないのだ。その為、魔物のランクでしか危険度を計れないのだろう。シーザーの種族、レッサードラゴンのランクはB+。ドラゴニュートである俺とガビルはBランクだと思われているだろうし・・・・・・

 

・・・・・・待てよ?『魔力感知』のような解析系のスキルが無かったら、俺とガビルがドラゴニュートだということも分からないんじゃないか?俺の外見は人間と全く変わらないし、ガビルも今は翼を仕舞っている。翼が無ければガビルは他の個体より角が立派なリザードマンに見られてもおかしくはない。

 

しかも俺たちは今、同行しているコビーたちが怯えないよう妖気をかなり抑えている。であれば、この集団で一番危険な存在はシーザーだと彼らが勘違いするのも無理はない。

 

 

 

「あのー・・・・・・」

 

「あっ!?お前は族長の娘!」

 

 

 

妙な空気の中、フラメアがおずおずと馬車から出ていった。剣を向けていた男は馬車から現れたフラメアに気付くと目を見開く。フラメアの登場が予想外だったのだろう、男だけじゃなく一緒にいる仲間の伏せ耳たちも動揺している様子が見られた。あと、フラメアの父親って族長だったのか。

 

 

 

「えっと、ですね・・・・・・とりあえずその剣を下ろして落ち着いてくれません?ほら、商人のコビーさんたちもいますし」

 

「な、なに?」

 

「えー・・・・・・お久しぶりでございます・・・・・・」

 

 

 

そこで漸く目の前の連中はコビーたちに気付いたようだ。まぁ、コビーは行者の役目をしてくれてたし、それ以外の犬頭族(コボルト)たちは安全の為に馬車の中に隠れていたから無理も無いが。

 

伏せ耳たちが戸惑う中、コビーは彼らの前までコビーは歩いて行くと礼儀正しく頭を下げる。そこで漸く警戒が解けたのか、五人組は一度顔を見合わせた後で武器を下ろした。

 

 

 

犬頭族(コボルト)の行商隊か・・・・・・しかし、今回は随分早く来たな。前回までの間隔だとまだしばらくは来ないと思っていたぞ」

 

「えぇ、その・・・・・・何と言いますか、とにかく色々ありまして。それと、こちらの方々につきましては心配要りません。今回特別に雇った護衛でございます」

 

「護衛だと?」

 

 

 

そう呟いて伏せ耳の男は再びこちらを見る。が、俺と青娥さんに関しては一瞥しただけで、主にガビルとシーザーの方ばかり見ていた。まぁ、ただの人間だと思われているのであればそれも当然と言えよう。

 

 

 

『・・・・・・アクト殿。なんだか妙な展開になってきたが、どうするのだ?』

 

『あー・・・・・・とりあえず挨拶でもしとく?』

 

 

 

ガビルが俺を横目でちらりと見てから『思念伝達』でそう投げ掛けてくる。それを受け、俺はこめかみ辺りを指で軽く掻きながらそう返した。ガビルが頷いたのを確認し、馬車から降りようとしたその時。俺が動き出すよりも早く青娥さんが馬車から降り、伏せ耳たちの前へ立った。

 

 

 

「お取り込み中失礼致します。初めまして、兎人族(ラビットマン)の皆様」

 

「ん?あぁ、二人組の人間の片割れか。お前らは一体何故この商隊と一瞬にいるんだ?そこにいるリザードマンの召使いか何かか?」

 

「それにつきまして説明を。まずは、御挨拶が遅れ申し訳ありません。私の名は青娥。こちらに居られる上位魔人、アクト様の付き人でございます」

 

「はっ!?」

 

 

 

予想外過ぎる青娥さんの発言に俺は思わず声を荒らげ目を見開く。しかし俺の声は伏せ耳たちが発したそれ以上の驚愕の声にかき消された。

 

 

 

「じょっ、上位魔人だとぉ!?」

 

 

 

ガビルとシーザーに向けられていた伏せ耳たちの視線が今度は俺に集中する。いや、彼らだけでなくガビルやフラメアたちもこちらを見ていた。青娥さんの付き人発言についてどういうことか教えてくれ、とでも言いたげな顔をしているが、それはこちらのセリフである。どういうことなの?

 

 

 

「こちらの商隊、そしてフラメア様とは旅の途中で偶然出会いまして。知り合ってまだ日も浅いのですが、アクト様はフラメア様を大変気に入り部下にしたいと仰られたのです」

 

「ふぇっ!?」

 

 

 

今度はフラメアが声を上げた。あわあわとしながら俺を見つめてくるが、俺は首を横に振って何も知らないと無言で訴えることしか出来ない。

 

 

 

「ぞ、族長の娘を部下に!?上位魔人が!?」

 

「いや、しかしそいつは・・・・・・!」

 

「えぇ、フラメア様から聞き及んでおります。兎人族(ラビットマン)の中で唯一のネームドであるフラメア様は次期族長になる定めであると」

 

 

 

困惑する伏せ耳たちを気にすることなく青娥さんは淡々と言葉を続ける。隣にいるガビルが「よく口が回る・・・・・・」と小声で呟き、それを聞いた俺は小さく苦笑した。

 

 

 

「それに関して、現族長であるフラメア様のお父様、そして長らく里を支え続けてこられた長老様とお話したいことがあります。その旨を、どうかお二人へお伝え頂けますでしょうか?」

 

 

 

そこまで言って、青娥さんはぺこりと頭を下げた。そのままの姿勢で待つ青娥さんを前にして、伏せ耳たちは再び彼らだけでこそこそと何か話し始める。やがて、俺たちをどうするか結論が出たのか、先程こちらに剣を向けていた男が一歩前へ歩み出た。

 

 

 

「・・・・・・・・・族長の方はそこにいる娘に言え。長老へは俺が取り次いでやる」

 

「まぁ!ありがとうございます!」

 

 

 

伏せ耳の返答を聞くと、青娥さんは顔を上げてにこりと笑顔を見せる。しかし、あれは普段俺たちに見せているそれとは違う。なんとなく、俺の勘ではあるが、作り物の笑顔といった感じだ。伏せ耳たちを警戒している・・・・・・というよりは、好ましく思っていないのだろう。

 

 

 

「とにかく、まずは里へ案内する。こっちだ、付いてこい」

 

 

 

男はそう言うと片手で招くようなジェスチャーをし、他の伏せ耳たちと共に歩き出した。それに遅れて反応したコビーが馬車に飛び乗り再び馬車を動き出させる。彼に続いてシーザー以外の俺たち四人は馬車に乗ると、まるで隠れるように奥の方へ移動して青娥さんを問い詰めた。

 

 

 

「どっ、どどどどどういうことですか青娥様ーーっ!!?」

 

「あらあら、声が大きいですよフラメアさん。彼らに聞こえてしまったらどうするんですか?」

 

 

 

なんてことは無さそうにけらけらと青娥さんは笑う。フラメアの気持ちは非常に分かるが、青娥さんの言う通り伏せ耳たちに怪しまれては多分困ることになると思い、俺はどうどうとフラメアを宥めながら青娥さんを見た。

 

 

 

「まぁ・・・・・・青娥さんのことだからフラメアにとって悪いようにならないように考えがあるんだろうけど」

 

「ちゃんと事前に我輩たちに説明して欲しいのである。流石に少しは慣れてきたがな」

 

 

 

苦笑する俺と嘆息するガビルを見て青娥さんはくすりと微笑む。先程、伏せ耳の男に見せたものとは違い、今度は自然な笑顔。少なくとも俺にはそう思えた。

 

 

 

「ふふふ、ごめんなさい。アクトくんとフラメアさんがどんな反応するかなーって思ったら、つい♪」

 

「つい、じゃないですよぉ、もぉ・・・・・・」

 

 

 

悪戯っぽく笑う青娥さんにフラメアは耳をしなしなにして項垂れる。そんな彼女を見てもう一度くすりと笑ってから青娥さんは俺たちに説明を始めた。

 

 

 

「何故私があんなことを言ったのかと言うと、フラメアさんとの約束を果たす為です。自由に里の外へ出られるようにね」

 

「それはなんとなく分かってますけど、それがなんでフラメアが俺の部下になるだなんて話に?」

 

「実はラウラを発つ前に、里から出る策についてフラメアさんと少しお話したんですよ。お父様はまぁいいとして、長老派の連中を全員物理的に分からせればそれで済むのでは?と申し上げたんですが、何故かフラメアさんに断られてしまいまして」

 

 

 

さらりと物騒な発言をしつつ、青娥さんが不思議そうに首を傾げた。冗談なのか本気なのか分かりづらいその発言に口元を引きつらせる俺たちには触れず、青娥さんは言葉を続ける。

 

 

 

「なのでその場では一旦保留にさせてもらい、ここまでの道中でずっと考えていたんです。それで昼食を食べている最中に多分穏便に済む方法を思い付きまして。少し回りくどくはありますけれど」

 

「じゃあその時に話してくださいよ・・・・・・」

 

「ごめんなさーい♪」

 

 

 

 

俺がそうぼやくと、青娥さんはあまり反省して無さそうな声色で謝った。本来なら怒ってもおかしく無いが、青娥さん相手だと不思議と許せてしまう。彼女の人柄なのか、彼女が俺たちよりも遥かに強力な力を秘めているからか、それともまた別の理由なのか。それは、俺にもよく分からないけれど。

 

 

 

「内容としては非常にシンプルです。先程伏せ耳の方たちに説明したように、上位魔人であるアクトくんがフラメアさんをスカウトしに来たという体で里の外へ連れ出すだけですよ」

 

「・・・・・・それだけでこっちの頼みを聞いてくれますかね?フラメアの話を聞く限り相当頭の固い連中みたいだけど」

 

「アクトくんも、一般的な魔物は力を何よりも重んじる考えなのは知っているでしょう?だからフラメアさんと同じネームドかつ、自分たちよりも圧倒的な強さを持つアクトくんの言うことなら聞いてくれる可能性はあります」

 

 

 

青娥さんの作戦に眉を顰めていると、俺の疑問を解くべく青娥さんは詳しく説明してくれた。そんなに簡単な話なのだろうか。

 

 

 

「それに、力に物を言わせている点については初めの案と大して変わりませんけれど、こちらは彼らにもメリットがありますから」

 

「メリット?」

 

「うむ、恐らく上位魔人であるアクト殿との繋がりが出来るということであろうな」

 

 

 

今度はガビルが俺の疑問に答えた。彼の考えを肯定するように青娥さんが頷いてすぐにフラメアが何かに気付いたようで、「あっ」と小さく声を上げる。

 

 

 

「そっか。今の森はヴェルドラ様がいなくなって各地で混乱が起こってる・・・・・・各種族のいざこざだったり、森の外から人間や魔物がやってきたり・・・・・・だから私たちみたいな弱い種族からすれば、トラブルを力で解決出来る上位魔人という後ろ盾は喉から手が出るほど欲しいですもんね」

 

「成程・・・・・・そう考えると確かにフラメアが族長になるより、こっちの方が魅力的に見えるな」

 

「それに、上位魔人の頼みを断ったりなんてしたら後が怖いですからね、普通♪」

 

 

 

フラメアの推察に俺が頷いていると、青娥さんが口元に手を当てくすりと笑った。意地の悪いことを言うと思ったが、力の無い種族からすればそれは当然の考えなのだろう。実際、青娥さんが初めてリザードマンの住処に来た時、首領は青娥さんの力を恐れてすんなりと彼女を受け入れていたし。

 

まぁ、仮に彼らが断ったりしても何かするつもりは無いのだろうけど。勿論俺もだ。

 

 

 

「・・・・・・青娥さんの狙いは分かりました。けど、こういう役目ならガビルの方が良かったんじゃ?」

 

 

 

納得はしたものの、まだ気になることがあった。フラメアを引き抜く上位魔人役が何故ガビルではなかったのか。確かに実力で言えば俺の方が少し上だが、ガビルはリザードマン族の次期首領で既に多くの部下を持ち、皆から信頼されている。こういった役目ならばガビルの方が適任かと思うのだが。

 

 

 

「んー・・・・・・正直、アクトくんの言うようにガビルさんに任せようかとも思ったんですけれどね」

 

「じゃあ何でです?」

 

「首領の許可無く勝手なことをさせたらガビルさんが怒られるでしょう?それに、一応ガビルさんはリザードマン族の次期首領・・・・・・一種族のトップとも言える存在が他種族を支配下に置いたとなれば、余計ジュラの大森林内の混乱を招きますので」

 

 

 

真顔で、少し俺から目を逸らしながら青娥さんはそう答えた。それを聞いた俺は一瞬目を見開く。

 

・・・・・・もしかして青娥さん、ガビルの立場が悪くならないように気を使ってくれたのか?

 

 

 

「・・・・・・ガビルのこと、ちゃんと考えてこの案を出してくれたんですね。ありがとう、青娥さん」

 

「お、おぉ・・・・・・そうであったか!済まぬな青娥殿、感謝するのである!」

 

「・・・・・・・・・あは。もう・・・・・・別にお礼を言われるようなことじゃないんですけどね」

 

「・・・・・・・・・ふふふ」

 

 

 

俺とガビルから感謝の言葉を送られ、青娥さんは一瞬きょとんとした表情を浮かべる。その後、僅かに困ったような表情で小さく笑った。隣でその様子を見ていたフラメアも、どこか微笑ましそうに口元を緩めていた。

 

 

 

「はははっ。そうだ、青娥さん。ついでにこの時間であっちに着いてからどう動くのか教えてくださいよ」

 

「はいはい、良いですよー」

 

「うむ。我輩の出番は無さそうだが、一応聞いておくとしようか」

 

 

 

俺たちもフラメアの近くに座り、青娥さんとの作戦会議・・・・・・と言えるほどのものではないが、この後の動きについて詳しく話し合うことにした。

 

勿論、その間も周囲の警戒は怠らない。ガビルも馬車の中に入ってしまっているが、まだシーザーが外にいるし、先頭を伏せ耳たちが歩いている。それに俺とガビルは中で『魔力感知』を発動させているので、魔物が接近すれば必ず分かるだろう。

 

 

 

そうして兎人族(ラビットマン)の里に着くまでの間、俺たちは穏やかな時間を過ごすのだった。




アクトくんが作ったラタトゥイユはYouTubeで観られる「ポケモンたちとのキャンプ旅」第3話で紹介されていたレシピを少しいじりました。まぁ私が考えるようなレシピなんて探せばいくらでもあると思いますけどね。
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