転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

83 / 127
お待たせしました、第83話となります。


豚頭帝(オークロード)

魔封牢で連絡を取ってから青娥さんが俺たちの元へ転移してくるまで一分も掛からなかった。

 

俺たちのすぐ傍に『空間移動』でやってきた青娥さんは周囲の状況を見て一瞬目を丸くする。焼け焦げたり、闘気によって抉れた地面。なによりオークたちの死体がいくつも転がっているのだ。ヘルモスを倒しに来た筈なのに、こんな状況で、しかも翼や前足が崩れているシーザーまでいたら流石に驚くだろう。

 

しかし青娥さんはこれといって動揺はせず。ただ戦闘を行った形跡のあるこの場を軽く見回してから、俺に説明を求めた。

 

 

 

「アクトくん。何があったんですか?」

 

「それが、オークが・・・・・・いや、その前にシーザーの怪我を何とかしてくれませんか!?」

 

「・・・・・・そうですね。それではアクトくん、こちらへ。治療しながら聞かせてもらいます」

 

 

 

オークと聞いて訝しげに眉を顰める青娥さんだが、すぐにシーザーの怪我を治療し始めた。神聖魔法を発動しながら、青娥さんは時折相槌を打って俺の話を静かに聞く。

 

 

 

「オークの群れがこんな所に・・・・・・それと、オークジェネラル・・・・・・?知らない魔物ですね。オークの上位種はハイオークのみの筈。ネームドでも無いとすると・・・・・・っと、もう大丈夫ですよ」

 

 

 

どうやら青娥さんですらオークジェネラルという魔物を知らないらしい。小さく呟きながら真剣な表情で考え込んでいた青娥さんだったが、シーザーが回復するとそれをいつもの笑顔でそれを俺に伝えた。

 

 

 

「シーザー!怪我の具合は・・・・・・」

 

『へへ、心配掛けちまったな大将。けどもう何ともないぜ!青娥の姉さんのお陰だな』

 

 

 

『思念伝達』でそう答え、シーザーは元気良く翼をはためかせてみせた。確かにその言葉通り、彼の体から一切の傷が消えている。崩れ落ちた翼も元通りだ。

 

 

 

「ありがとうシーザー、そしてアクト殿。貴方たちがいなければどうなっていたか・・・・・・本当にありがとうございます!」

 

「・・・・・・感謝する」

 

 

 

俺が安堵してほっと息を吐いていると、族長さんと伏せ耳がシーザーの前まで来て頭を下げた。伏せ耳の態度の変わり様に少し驚いたが、流石にあの危機的状況から助けられて礼も言わない程の恩知らずでは無いのだろう。

 

 

 

「・・・・・・ヘルモスを倒した訳じゃないけど。これで俺たちのこと、認めてくれるか?」

 

「あ、あぁ。勿論だ。俺からも長老に貴方たちの力は本物だと進言する・・・・・・いえ、させて頂きます!」

 

 

 

伏せ耳はそう言って、俺の前で片膝を付き頭を垂れる。そこまで仰々しくする必要は無いよと苦笑すると、伏せ耳は顔を上げて少し安心したように表情を和らげた。

 

 

 

「んー・・・・・・あ、見つけました」

 

 

 

その時、きょろきょろと辺りを見回していた青娥さんがどこかへ歩いて行く。どうしたのかとその後を追うと、俺が闘気弾で撃ち落としてから放置されていた一体のオークがそこに倒れていた。

 

 

 

「こいつは・・・・・・青娥さん、このオークがどうかしたんですか?」

 

「どうと言う訳では無いんですけれど。他のオークは全員死んでしまったので、こちらの方から今回の事情を教えて貰おうと思いまして」

 

 

 

こちらに振り返って青娥さんはそう答えた。彼女の言葉通り、オークジェネラルを含むオークたちはその個体を除いて全滅している。先程までの様子からこのオークが言葉を話せるかは不明だが、事情を聞く相手としては確かにこのオークしかいないだろう。

 

 

 

「さてさて。それでは色々聞かせて貰いましょうか。オークさーん、起きてくださいますー?」

 

「・・・・・・・・・・・・ブ、ウゥ・・・・・・」

 

 

 

再びオークに顔を向けた青娥さんはその場にしゃがみこんで声を掛ける。少しの間の後、意識を取り戻したオークはゆっくりと顔を上げた。そして目の前の青娥さんをじっと見つめていたかと思うと──

 

 

 

「ブ・・・・・・ガァアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

 

次の瞬間、叫びながら青娥さんに飛び掛かった。マズイと思った俺は慌てて青娥さんを庇おうと動いたのだが。

 

 

 

「あら怖い」

 

「ブギィアアッ!?」

 

 

 

しかし青娥さんは全く動じることなく小さく呟き、それと同時に突然オークがボッ!と音を立て発火した。間違いなく青娥さんの仕業だろう。魔法なのかスキルなのかは分からないが、俺が動くよりも早く・・・・・・って。

 

 

 

「いやいやいやいやいやいや!殺しちゃ駄目だろ青娥さん!?」

 

 

 

燃えるオークを眺めていた俺は、はっとしてから青娥さんにツッコんだ。話を聞こうとしていたオークはあっという間に丸焼けとなり、ぴくりとも動かない。

 

・・・・・・うん、間違いなく死んでるわ。

 

 

 

「ごめんなさーい♪いきなり襲い掛かってきたのでつい・・・・・・あーん、怖かった♪」

 

「一瞬で魔物焼き殺せる青娥さんの方が怖いよ・・・・・・」

 

 

 

わざとらしい怖がる演技をする青娥さんに俺は呆れながらそう返した。族長さんたちも今の一連の流れを見てドン引きである。

 

 

 

「・・・・・・それより、どうするんですか?話聞けそうな奴いなくなっちゃいましたけど」

 

「あ、それについては御心配無く。ちゃーんと考えてありますので♪」

 

 

 

頭を掻きながら訊ねたところ、青娥さんはにこりと笑ってそう答えた。すると青娥さんは焼死したオークに向き直り、死体の真上辺りに手をかざす。

 

 

 

「えっと・・・・・・何してるんですか?」

 

「はい、死んでしまったものは仕方ないので・・・・・・魂から調べようかと」

 

「魂?」

 

 

 

殺したのは貴女でしょうが。とは言わないでおいた。それはさておき、青娥さんが告げた言葉の意味が理解出来ず俺は首を傾げた。今、俺の聞き間違いでなければ『魂』って言ったよな・・・・・・?

 

 

 

「ふふっ、そうですね。アクトくんにはまだ教えていませんでしたよね、私のスキルのことを」

 

 

 

不思議そうな顔をしている俺が可笑しかったのか、青娥さんは小さく笑う。それから顔をこちらに向けぬまま言葉を続けた。

 

 

 

「私がいくつか持っているスキルの一つに『大仙人』というものがあるのですが、このスキルにはアンデッドを支配したり、人や魔物の魂に干渉することが可能となる権能が含まれているんですよ」

 

 

 

その説明を受け、俺はへぇと声を漏らす。ダンジョンにいたドラゴンゾンビが魔物のゾンビたちを操っていたが、それのようなスキルなのだろうか。

 

と、俺がそんなことを考えていると、青娥さんの掌に透明な、しかしうっすらと輝く球状のなにかが具現化した。

 

 

 

「うわっ、もしかしてそれが・・・・・・」

 

「はい、オークの魂です。今回はアクトくんにも見えるようにしてみました」

 

 

 

初めて見るそれに驚く俺へそう言いながら、青娥さんはオークの魂を差し出した。触っても良い、ということなのだろうか。興味はあったので魂に恐る恐る手を伸ばしてみると、俺の指先は魂に触れられずにすり抜けてしまった。

 

 

 

「ふふふ、ごめんなさい。見えるようになったとは言っても簡単に触れられるものじゃないんです」

 

「あー、そうなんですね。ちょっと残念かも」

 

 

 

苦笑しながら俺はそう返した。その反応に満足したのか青娥さんはもう一度くすりと笑う。それからオークの魂を調べようとしたのか、掌にある魂をじっと見つめ・・・・・・やがて首を傾げた。

 

 

 

「・・・・・・むむ?」

 

「ん?どうかしました?」

 

「それが、いつものように魂の情報を読み取れないんですよね。スキルはちゃんと発動してる・・・・・・と思うんですけれど。何と言いますか・・・・・・例えるなら、正しく書かれた文章の上に滅茶苦茶な文字や落書きが書かれて黒く塗り潰されている状態で・・・・・・」

 

 

 

俺にそう返した青娥さんはうーんと唸り出した。俺にはその状態があまり理解出来ないが・・・・・・青娥さんが普段簡単に出来ることが出来なくなっていると考えると、割りと大変なことのように思えてくる。

 

 

 

「読み取れない・・・・・・そういうスキルとか耐性をこのオークが持ってたってことですか?」

 

「いえ、流石に通常のオークがそれらを持っているとは思えません。そもそもこうして魂だけの状態では、普通の魔物ならスキルなどは基本使えませんし。恐らくですが、死ぬ直前のこのオークはマトモな精神状態では無かったのでしょう」

 

 

 

それを聞いて、俺は焼け焦げたオークの死体に目を向ける。確かにこのオークたちの様子は普通では無かった気がする。あの目付きは正気のそれとは思えない。

 

 

 

「それで、どうするんですか?他の奴らの魂も見てみます?」

 

「そうしましょう。アクトくん、確かオークジェネラルという魔物は言葉を発していたんですよね?」

 

「はい、二体とも」

 

「それなら少しは期待出来そうですね。あ、失礼しまーす♪」

 

 

 

すると青娥さんは笑みを浮かべたまま腰を屈め、俺の腰辺りに手を伸ばした。何をするのかと俺は少し驚くが、青娥さんは特に変なことはせず、ただ俺の腰に下げられていた魔封牢を手に取っただけだった。

 

 

 

「えっ・・・・・・とぉ?魔封牢がどうかしたんですか?」

 

「ふふふ。アクトくん、以前魔封牢について少し話した時に本来の用途は別にあるって言いましたよね」

 

 

 

そう問われた俺は頷く。ユーラザニアでダンジョンに潜っている時・・・・・・フラメアを助けた直後にそんな話をした筈だ。

 

 

 

「実はこの魔封牢・・・・・・周囲に存在する人や魔物の魂を吸収し、内部に封じ込めておくことが出来るんですよ」

 

「魂を封じ込める・・・・・・?」

 

 

 

どこか得意気に語る青娥さんに俺は眉根を寄せる。いや、なんとなく凄いことなのだとは分かっているのだ。ただ、魂をこの中に詰めておく意味が分からない。

 

 

 

「魂は器である肉体の命が尽きると、そこから抜け出て宙を彷徨います。そのまま放っておくとどこかへ飛んで行ってしまうし、最終的にはばらばらに拡散し壊れてしまうんですよ。しかし、この魔封牢があれば自動で魂を収容して、かつ拡散しないよう保護できるのでーす!」

 

「お、おぉ・・・・・・」

 

 

 

ふふんと鼻を鳴らす青娥さんに俺は微妙な反応しか返せない。しかしこの人、ちょいドヤってる笑顔も可愛いな・・・・・・いかんいかん、それは今どうでもいいんだよ。

 

 

 

「その・・・・・・魔封牢が凄い物だってのは何となく分かりましたけど、魂を保管しておく理由ってなんなんです?」

 

「それはー・・・・・・また今度♪」

 

「えぇ・・・・・・」

 

 

 

またもはぐらかされてしまった。まぁ、多分『大仙人』というスキルでアンデッドを操る時に使ったりするんだろう・・・・・・あれ?そう言えばアンデッドって魂があるのか?

 

俺が一人そんなことを考えていると、青娥さんは魔封牢に手をかざしていた。俺が扱った時とは違って、魔封牢が淡く輝き始める。やがて魔封牢の内部にある魔晶石から魂がゆっくりと出て来て、青娥さんの掌に収まった。

 

 

 

「よし、これがそのオークジェネラルの魂みたいですね」

 

 

 

取り出されたそれを青娥さんと一緒に眺める。見た目はさっきのオークの魂と特に変わらない。大きさもだ。

 

しかし青娥さんにはそれがオークジェネラルの物だという確証があるのだろう。疑う素振りなどせず、先程のように掌の上の魂をじっと見つめた。

 

 

 

「・・・・・・これは」

 

「ん?もしかして、その魂も駄目でした?」

 

「・・・・・・・・・いえ、今度は大丈夫です。さっきのオークと同じく読み取れない部分はありましたが、重要な部分は知ることが出来ました。断片的ではありますけれど」

 

 

 

少し間を置いてから青娥さんはそう答え、俺に向き直り真剣な顔を見せる。青娥さんの表情も気になったが、彼女の掌にあったオークジェネラルの魂がいつの間にか消えていた。そう言えば、さっきのオークの魂も見当たらない。俺が見落としただけでもう魔封牢の中に戻したのだろうか。

 

 

 

いや、今はそんなことどうでもいいな。青娥さんの話をちゃんと聞こう。

 

 

 

「アクトくんが倒したオークジェネラルとオークたちですが、どうやらジュラの大森林を手中に治めようとしていたみたいです。『豚頭帝(オークロード)』とやらに命じられて」

 

「『豚頭帝(オークロード)』?」

 

 

 

ロード、と名が付いているところから察するに、オークたちの親玉だろうか。恐らくはオークジェネラルより強いのだろうが、そんな魔物がまだこの森にいたとは。

 

 

 

「なんですって!?オークたちがそんなことを・・・・・・!」

 

「も、もしそれが本当ならとんでもない話だぞ!?ジュラの大森林全てを巻き込む大事件だ!」

 

 

 

近くで話を聞いていた族長さんと伏せ耳が騒ぎ出した。俺としてはあまり実感が湧かないが・・・・・・つまりは他種族が侵略戦争を起こしたということだろうか。もしそうであれば確かに一大事である。まさかオークの全軍があれだけの筈は無いし。多分あいつらは偵察部隊だとかそんなところだろう。

 

 

 

「なんだか厄介な話になってきましたけど・・・・・・どうします?青娥さん」

 

「そうですねぇ・・・・・・とりあえず、ラビットマンの里に戻りましょうか。一応ヘルモスはいなくなった訳ですし」

 

 

 

いつもの笑顔ではないが、どこか一人だけ呑気そうな青娥さんに思わず苦笑した。族長さんたちには悪いが、青娥さんにしてみれば他人事だしどうでも良いのだろう。あとオークロードとやらがどのくらい強いのかは知らないが、青娥さんより強いということは絶対に無い、というのもあると思う。確証は無いけれど、一ヶ月以上青娥さんの傍でその力の片鱗を見てきた俺はそう思えた。

 

 

 

 

 

そんなこんなで、青娥さんの『空間移動』でラビットマンの里に戻った俺たち。コビーたちのところで仕事の手伝いをしていたガビルにフラメアと合流した後、長老の間へ赴き先程起きた出来事を長老に説明した。ヘルモスを倒してこそいないが、それよりも強いオークジェネラルたちを倒したこと。なにより伏せ耳たちを奴らから守ったことを本人たちから伝えてもらったことで、長老たちからの信頼を得ることが出来た。長老から感謝の言葉を述べられ、本来の目的通りフラメアを自由にすることに成功したが、オークたちの侵略という新たな問題に直面したラビットマンたちは頭を悩ませることとなった。

 

 

 

「オークロードじゃと・・・・・・?もしや・・・・・・!」

 

「長老、何か御存知なので?」

 

 

 

重苦しい空気の中、長老は小さく呟きながらはっとして顔を上げる。その場にいる全員の視線が集まる中、族長さんにそう訊ねられた長老はゆっくり頷いてから語り出した。

 

 

 

「う、うむ・・・・・・これはジュラの大森林に伝わる話でな、儂も先代の長老から軽く聞いただけなんじゃが・・・・・・オークロードとはなんでも数百年に一度生まれるという、オークの特殊個体(ユニークモンスター)らしい」

 

 

 

ユニークモンスター・・・・・・俺やリムルと同じか。青娥さんが知らない魔物と言っていたオークジェネラルがそれだと思っていたけれど。

 

 

 

「先代はこうも言っていた。オークロードは味方の恐怖の感情すらも喰らうのだと」

 

「感情を・・・・・・?」

 

 

 

そう言えば、あのオークたちは実力差のある俺が相手でも恐れることなく挑んできたっけ。本当にオークロードが仲間の感情を喰ったかどうかは分からないが、もし奴の影響でオークたちの精神に異常が起きていたのだとすれば、青娥さんがスキルで魂から正確な情報を読み取れなかったことにも納得がいく。

 

 

 

「それ以上は先代も知らなかったようじゃがな。とにかく、恐ろしい存在であることに違いはあるまい。間違いなく、アクト殿が倒したというオークジェネラルよりも強大な力を持っている筈じゃ」

 

「あ、あのオークたちよりも!?そんな・・・・・・そんな化物が仲間を引き連れて攻めてきたら、俺たちラビットマンなんて・・・・・・!」

 

「いや、我等ラビットマンだけじゃない!本当にジュラの大森林全ての危機だぞ!」

 

 

 

この場に居合わせたラビットマンたちに動揺が広がっていく。彼らの中で一番強い伏せ耳ですら怯えているのがより彼らの不安を煽っているのだろう。一族を纏める立場である筈の族長さんと長老も俯いて口を閉ざしていた。

 

その時、ガビルがバーニングランスの柄を床にカンッ、と勢い良く打ち付けた。

 

 

 

「落ち着くのだ!ラビットマンたちよ!」

 

 

 

それから声を張り上げたガビルにその場の視線が集中する。視線を受けたガビルはラビットマンたちをぐるりと見回してからさらに続けた。

 

 

 

「お主たちが不安に思うのも無理は無い。オークたちを引き連れていたオークジェネラルのランクはB+程・・・・・・そしてそれらを従えるオークロードとやらは間違いなくAランクオーバーの魔物であろう。しかし、このジュラの大森林には我輩とアクト殿がいるのだ!恐れることなど何も無いのである!」

 

「そっ、そうですよ!アクトさんたちはとっても強いんです!その、オークジェネラルとかいう魔物にだって勝ったんです、オークロードだってきっと倒してくれますよ!」

 

 

 

ガビルの言葉に同意したフラメアも他のラビットマンたちにそう言い聞かせる。すると俺がオークジェネラルたちを倒したという事実が効いたのか、ちらほらと周囲から「確かに」とか「助かるかも」等の前向きな声が上がり始めた。

 

 

 

「あ、アクト殿・・・・・・!」

 

「あ、あー・・・・・・」

 

 

 

長老に祈るような瞳で訴えかけられ、俺は言葉に詰まる。ふと気付くと、ガビルに集まっていた視線が今は俺を向いていた。

 

・・・・・・これ以上なにかしてやる義理は無いと思うけど、見てみぬフリは後味が悪いか。それにガビルの言葉を無駄にしたくはないし、フラメアは友達だしな。仕方ない。

 

 

 

「・・・・・・その通りだ。貴方たちの安全は俺たちが保証する。だから落ち着いてくれ」

 

「お、おぉっ!」

 

 

 

そう告げると、この場にいるラビットマンたちがわっと沸き立った。安心したのか笑顔を浮かべたり涙を流す奴らがいる中で、俺の目の前までやってくるラビットマンが一人いた。長老である。

 

 

 

「アクト殿・・・・・・いえ、アクト様!ありがとうございます!貴方様の慈悲の心に返せるものはこの里には何もありませんが・・・・・・せめて、我等ラビットマンの忠誠を御受取りくだされ!」

 

 

 

初対面の態度はどこへやら、目元に涙を浮かべた長老は床に手を付いて頭を下げた。長老のその言葉を受け、他のラビットマンたちも慌てて俺の前に集まって頭を下げる。その光景を見て、俺は思わず口元を引きつらせた。

 

 

 

「ちゅ、忠誠かぁ・・・・・・」

 

 

 

そう言えば里を出る前にそんなことを言ってたっけ。なんだか妙なことになってしまったな、なんて考えながら俺は青娥さんをちらりと見る。俺の視線に気付いた青娥さんはくすりと微笑んで。

 

 

 

『頑張ってくださいね、アクトくん♪』

 

 

 

・・・・・・と、『念話』で伝えてきた。

 

それに答えることを俺はせず。ラビットマンが俺を認めたという事実が嬉しいのか、うむうむと満足気に頷いているガビルの隣で一人苦笑するのだった。




リムルより先にラビットマンたちを従えてしまったアクトくんでした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。