転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
今回も少し早めにお届け出来ました。
青娥さんに連れられブルムンドにやってきた俺は、首都ロンドにある
俺とフューズさんが互いに簡単な自己紹介を済ませた後、青娥さんは話があるとフューズさんに切り出した。それを聞いたフューズさんは嫌そうに顔を歪めていたが、きっとこれまでも青娥さんに色々と苦労させられてきたのだろう。そう察した俺は思わず苦笑してしまった。
そんなフューズさんだが、大きな溜め息を吐いてから
やがて部屋に通された俺たちはフューズさんと向かい合う形でソファに座り、今日ここに来た理由を説明したのだった。まぁ、俺は青娥さんの隣で座っていただけだったけれど。
「・・・・・・
支部長室へ通されてから約十分後。青娥さんから報告を受けたフューズさんは片手で顔を覆い目を伏せた。俺は隣に座る青娥さんをちらりと見てからフューズさんに訊ねる。
「やっぱり、相当危険な魔物なんですか?」
「あぁ。と言っても俺は・・・・・・先代のギルマスですら直接見たことは無いがな。なにせほぼ伝説と言える化物だ」
そう答えながら、フューズさんはゆっくりと顔を上げた。額に汗を浮かべて、なんだか先程出会った時よりもくたびれたように見える。
「そのオークロードの出現はほぼ確定です。なので、一応報告だけはしておこうと思いまして」
「あぁ、正直助かったぜ。普段からこれくらいマトモなことだけしてくれりゃあ完璧なんだがな」
皮肉を交えてフューズさんはそう返す。しかし青娥さんは特に気にした様子も無くいつものように笑みを浮かべていた。青娥さんのその顔を見て、フューズさんは悪態をつく。
「ったく、こいつは本当に・・・・・・・・・っと、そうだ。青娥、悪いんだがカバルたちを迎えに行ってやってくれんか?」
「はい?カバルさんたち、ですか?」
青娥さんが目を丸くする。そう言えば、カバルさんたちの姿は下に無かった。クエストでどこかに出掛けているのだろうか。
「実は、こないだお前が空間魔法であいつらを連れて帰ってきた後のことなんだが。報告を受けた後でもう一度ジュラの大森林の調査を依頼したんだ」
一応、一日だけ休みをやったが、とフューズさんは付け加えた。さらっと言ったが、ブルムンドからジュラの大森林にある封印の洞窟まで向かい、そこの調査を終えてから次の仕事までに与えられる休みが一日だけって、いくらなんでも厳し過ぎると思う。しかも、またほぼ同じ場所へ行かなくてはならないなんて。もしかして割りと雑な扱いを受けているのではと、俺は心の中であの三人に同情した。
「うわぁ・・・・・・それは流石に私も引きますよ。いくらなんでもハード過ぎでは?そもそも、カバルさんたちの実力では封印の洞窟の調査は少し厳しいかと」
「それくらい分かってるさ。だが、今回は『シズ』も一緒だから多分問題無いだろう」
「えっ?『シズさん』が来てたんですか!」
『シズ』・・・・・・『シズさん』。その名を聞いた瞬間、青娥さんの表情が少し明るくなる。心なしか、その声も弾んでいた気がした。それが気になりつつも、俺は特に口出しをせず二人の会話を見守る。
「あぁ。カバルたちが報告に帰って来た時、丁度シズもここにいてな。あいつらの話を聞いて何か思うところがあったのか、ジュラの大森林に同行したいって言い出したんで四人で調査するよう依頼したんだよ」
「え~、久しぶりにシズさんと会えそうだったのに~」
ぶー、と青娥さんは口を尖らせフューズさんを睨んだ。とは言っても本気で恨んでいる訳では無い。それを理解しているのだろう、フューズさんは小さく笑ってから青娥さんに謝罪した。
「それについてもだが、カバルたちに一日しか休みを与えなかったのも悪いと思ってるさ。だが、青娥。あいつの・・・・・・シズの状態はお前も知ってるだろう?だから、何かやりたいことがあるんなら早くしてやらねえとって思ったんだ」
「・・・・・・そうですね」
青娥さんが僅かに俯き目を細めた。なんだか急に元気が無くなったような・・・・・・今のやり取りからするに、もしかしてその『シズさん』と言う人は病気かなにかで余命僅かだったりするのだろうか。
「お前が転移魔法で送ってくれたお陰であいつらもそこまで疲労してなかったし、なにより今回は封印の洞窟じゃなく森自体の調査だ。あいつらなら問題ねぇさ」
フューズさんはそう言いながら立ち上がると、窓の外の景色を眺めた。
・・・・・・いや、封印の洞窟の外にも強力な魔物は・・・・・・寧ろ外の方が危険な気がするんだが。オーガはもうほとんどいないだろうけど、牛頭族に馬頭族や、ナイトスパイダーなんかもいるし。
「とは言え、オークロードが現れたって言うんじゃ流石に役不足だ。シズだって全盛期の力はもう無いと言っていたし、ここらで引き上げさせるべきだろう」
「でしょうね。今のシズさんでもオークジェネラル一体だけなら十分倒せると思いますが・・・・・・」
全盛期の力が無くてもB+ランクの魔物を倒せるのか、その人。本当に何者なんだよ。
「・・・・・・とにかく、そういう訳だ。悪いが頼まれてくれ。あいつらの現在地が分からんからちと手間だとは思うが」
「はぁーい。まぁ、シズさんにも会いたいですし構いませんよ」
フューズさんが改めて頼むと、青娥さんは呑気な声で了承した。それを聞いたフューズさんは安堵したのか表情を和らげる。
「──その代わり。一つ、お願いがあるんですけど」
・・・・・・が、青娥さんのその一言で一気に表情を強張らせた。青娥さんは静かにフューズさんを見つめていたが、彼の様子が可笑しかったのか、口元に手を当てくすりと笑った。
「・・・・・・嫌ですわ。そう身構えないでくださいますぅ?そんなに難しいことじゃありませんから」
そう言ってからからと笑う青娥さんにフューズさんは訝しげな視線を向ける。滅茶苦茶疑われてるじゃん、と俺は一人苦笑した。
「本当だな・・・・・・?とりあえず、聞くだけ聞こう」
「もう・・・・・・で、お願いというのはですね。アクトくんに冒険者試験を受けさせてあげて欲しいんです」
突然自分の名前が上がったことに驚き、俺は思わず目を丸くする。事前に聞いていなかったことだ。フューズさんも少しだけ驚いた様子で俺をちらりと見る。
「そいつをか?カバルたちから報告を受けた際に少し聞いていたが、お前の弟子らしいな」
成程。初めて会った時のフューズさんの反応が気になっていたのだが、情報源はカバルさんたちか。
「えぇ。少なくとも、一人で封印の洞窟を探索できるくらいの実力はありますよ?」
フューズさんに答えながら、青娥さんは俺の頭に手をぽんと置いた。そのまま撫でられ若干恥ずかしくなった俺はその手をどかして青娥さんに向き直る。
「あの、青娥さん?冒険者になるなんて聞いてなかったんですけど・・・・・・」
「えぇ、今初めて言いましたので♪」
「何笑ってんだお前!弟子とくらいちゃんと意志疎通をしろ!」
おどけながら俺に答えた青娥さんにフューズさんは叱りつける。しかし青娥さんはけらけら笑うのみで全く気にしていない様子。きっとこれもいつもの光景なんだろうな・・・・・・
「さて、冗談はこのくらいにしまして・・・・・・アクトくん。あなたが私の元で修行を終えた後どうするのかは知りませんが、この世界で生きていくのであれば冒険者になっておいて損はありませんよ」
「確かにそうだな。青娥があぁ言ったということは最低限の実力はあるんだろうし」
「でしょう?と、言う訳で。冒険者になるメリットをギルマスであるフューズさんの方からどうぞー♪」
「俺がするのかよ!」
そう青娥さんにツッコんだ後、大きく溜め息を吐きながらフューズさんは再びソファに腰掛ける。そして渋々と言った様子で説明役を引き受けてくれた。なんだかんだ言いつつも優しい、そして苦労人っぽさが滲み出てきたフューズさんに申し訳無く思った俺は無言で頭を下げた。
さて。フューズさんの説明によると、
特に役立つのが大きな街の入口や国境の関所だ。なんでも一般人や商人は普通それらの場所を通る際の審査に時間がかかるそうだが、冒険者ならばそのギルドカードを提示するだけで審査をパス出来るらしい。そう言えばドワルゴンの入口の前にはかなりの行列が出来ていたっけ。今思えばあれも入国審査待ちだったのだろう。
「成程・・・・・・それなら確かに冒険者になっておいた方が良さそうですね。色んな所に行ってみたくはあるし」
「・・・・・・ところで、だ。アクト、お前さんはそもそもどこから来た?青娥とはどこで知り合ったんだ?」
説明を受けた俺が頷いていると、フューズさんがそう訊ねてきた。どう答えたものかと俺が言葉を詰まらせていると、青娥さんが口を開いて。
「実は、アクトくんって異世界人なんですよ。ジュラの大森林で偶然知り合いまして」
「ちょっ、青娥さん!?」
さらっと暴露してしまった。慌ててそちらを見るも、青娥さんはいつものように微笑むのみ。フューズさんにどう返したらいいか分からず、俺は咄嗟に『思考加速』を使って次に繋ぐ言葉を捻り出そうとした。
「──ほう、そうだったか」
「あ、あれ?」
しかし、フューズさんの反応は意外と素っ気ないもので。大して驚いていない彼を見て、逆に俺の方が驚いてしまった。
「えっと・・・・・・俺が異世界人だって聞いて驚かないんですか?もしかして、この世界だとそう珍しくもなかったり・・・?」
「ん?いや、珍しくはあるぞ。だが、そういった連中はこれまでそこそこ確認されているんだ。イングラシアにも何人かいるそうだし、シズだって異世界人だしな」
フューズさんから告げられた内容に俺は更に驚く。ユーラザニアでも名前が出た国だが、イングラシアには異世界人がいるらしい。しかも、例のシズさんとやらもそうなのか。一度会ってみたくなってきた。
「・・・・・・異世界人だと言うなら尚更冒険者登録はしておいた方が良い。どうせ決まった住所も無いんだろう?」
「ジュラの大森林で暮らしてまーす♪・・・・・・なんて言ったらほぼ確実に怪しまれますもんね」
「な、なに?アクト、お前あんな危険な場所で暮らしてるのか?」
住所が無いという言葉に俺がそうだと答えるより先に、隣にいる青娥さんがそう返した。それを聞いて少し驚いた顔でこちらを見たフューズさんに俺は頷く。
「あ、はい。シス湖でリザードマンたちと一緒に。種族は違いますけど、同じ魔物同士仲良く──」
「まっ、魔物ぉおおおーーーーーッ!!!?」
俺がそこまで言い掛けた時、今度は驚いたらしいフューズさんが叫びながらソファから立ち上がった。その声にびくりと肩を揺らした俺を気にすることなく、フューズさんが詰め寄る。
「嘘だろ!?全然気付かなかった!スキルか何かで化けているのか!?」
「いえいえ、これがアクトくん本来の姿ですよ。彼は異世界人ですが、同時に転生者でもありまして。こちらの世界に来て生まれ変わったら人間体のドラゴニュートになっていたそうなんです」
「ドラゴニュート・・・・・・主に魔王ミリム・ナーヴァの支配領に生息しているという種族か。しかし、異世界人の転生者とは・・・・・・」
顎に手を当てながら、フューズさんがじろじろとこちらを見る。物珍しそうなその視線がどうにもくすぐったさを感じ、思わず苦笑した。
「えっと・・・・・・フューズさん。やっぱり、魔物が人間みたいに冒険者になるのはマズイんですかね」
「む、むう・・・・・・そうだな・・・・・・」
そこでフューズさんは再びソファに腰掛けると、腕を組んで何やら考え込んでしまう。俺も詳しくは分からないが、
「青娥の修行のお陰か妖気は抑えられてる。外見は完全に人間。カバルたちの勘が確かなら、少なくとも悪人ではない・・・・・・・・・んん~~~~・・・・・・!」
「・・・・・・・・・!」
「────良し、許す!問題無い!」
しかし俺の心配は杞憂に終わり、長考の末にフューズさんはそう結論を出した。それを聞き、俺は安堵して口元が緩む。
「ふふっ、良かったですねアクトくん♪」
「はい!実は割りと乗り気になってたので駄目って言われたらどうしようかと・・・・・・フューズさん、ありがとうございます!」
「気にしなくて良い。冷静に考えれば、青娥だってお前と似たようなものだしな」
頭を下げた俺にフューズさんは小さく笑って答えた。今さらりと気になることを言った気がするが、それは一先ず置いておこう。
「それに、礼を言うのはまだ早い。あくまで冒険者になる許可を出しただけで、冒険者にしてやった訳じゃないんだからな」
「はい、勿論。フューズさんに認めて貰えるように頑張りますね」
「ふっ、そうか。まぁ、仮にも青娥の弟子だ。どのランクになるかはともかく間違いなく試験には受かるだろうよ」
弟子の俺にそこまで期待してくれているとは。やはりなんだかんだ言っても青娥さんは一目置かれているらしい。
「・・・・・・さて。話も纏まったことですし、私はそろそろシズさんたちを探しに行くとしましょう。フューズさん、少しの間アクトくんをよろしくお願いしますね?」
「おう。頼んだぞ、青娥」
「行ってらっしゃい青娥さん。青娥さんなら何も心配は要らないと思いますけど、気を付けてくださいね」
「ふふっ。ありがとうございます、アクトくん。では、行ってきまーす♪」
フューズさんの後に俺がそう声を掛けると、青娥さんはこちらを向いてにこりと微笑んでくれた。彼女がいつも見せてくれるあの笑顔だ。それを見て、つい口元を緩ませる俺に青娥さんはひらひらと手を振ると、次の瞬間には部屋から姿を消していた。今のは恐らくスキルの『空間移動』だろう。
「・・・・・・よし、俺たちも行くぞ。冒険者になる為の試験は別棟で行うが、まずはこの棟の一階にある受付で登録手続きをする。ついて来い」
「はい!」
返事をしてから、俺はフューズさんの後に続いて歩き出す。
そんな期待に胸を膨らませながら、俺はフューズさんと共に支部長室を後にするのだった。
いつもこのくらいのペースで投稿出来ればいいんですけどね・・・