転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第88話となります。

夜は少しずつ涼しくなってきましたね。日中はまだまだ暑いですけど。


冒険者試験②

青娥さんがジュラの大森林へカバルさんたちやシズさんという人を迎えに行った後、俺はフューズさんに連れられ再び自由組合(ギルド)の一階にやって来ていた。

 

そこの受付で冒険者試験を受ける手続きをする為だったのだが、それらは全てフューズさんが受付嬢さんに話をつけて代わりに記入してくれた。恐らく異世界人だからこちらの世界の文字は書けないと思ったのだろう。修行の合間に青娥さんや爺さんから少しだけ読み書きを習ってはいたが、正直まだ自信は無かったので非常に助かった。

 

 

 

手続きを終え、いよいよ冒険者試験が開始・・・・・・かと思いきや。なんでも試験官が所用で自由組合(ギルド)にいないらしく、その人が帰って来るまで試験は受けられないらしい。連絡を取ったところ戻ってくるまで少し掛かるそうなので、俺はその間にフューズさんから冒険者についてより詳しく話を聞くことにした。

 

 

 

フューズさんが言うには冒険者の仕事は魔物の討伐だけでなく、採取や探索という部門もあるそうだ。その言葉通り、指定された素材等を取ってくるのが採取。未知のエリアやダンジョン等の調査をするのが探索だ。それぞれの部門の専用窓口も用意されており、先程フューズさんが俺の代わりに手続きをしてくれた場所が討伐部門の受付である。他には手に入れた素材やお宝を換金してくれる交換窓口や、民間人が依頼を出す為の手続きをしたりする一般窓口なんかもあるらしい。

 

それと、採取と探索の部門からでも冒険者になる為の試験は受けられるという。その二つの部門の試験はある程度の知識さえあれば比較的安全で簡単らしいのだが、どちらも実地試験なので首都であるロンドから出て行う為に時間が掛かるのだとか。少なくとも当日中に済むことはほぼ無いらしい。

 

そのことから、危険ではあるものの討伐部門の試験が一番お手軽で人気なのだそうだ。

 

 

 

「・・・・・・まぁ。採取部門も探索部門も向かった先で魔物と出くわすなんてざらだから、戦えるに越したことは無いんだがな」

 

 

 

討伐部門の受付カウンターに寄りかかりながらフューズさんはそう付け加えた。側にいる受付嬢さんが「そうですね」と相槌を打つ。

 

 

 

「あの、採取とか探索の時に討伐部門の人を護衛として連れていくのは駄目なんですか?」

 

「いや、何も問題無い。だが、そうなると人数が増えた分依頼の取り分が減るだろう?もしくは、誘った奴が護衛への報酬を用意しなきゃならん。懐に余裕のある冒険者はそう多くないからな・・・・・・要するに金の問題さ」

 

 

 

手で金のジェスチャーをしてみせるフューズさんに俺は苦笑しながら成程、と頷いた。確かに、護衛を雇うのにも金は要るよな。カバルさんたちみたくパーティを組んでたりしない限り、そういう報酬の取り分とかの問題で冒険者はソロが多いのかもしれない。

 

 

 

「・・・・・・ところでアクト。お前さんは冒険者になったらどうするんだ?やはり、青娥と組むのか」

 

「え?」

 

 

 

突然投げ掛けられたその問いに俺は目を丸くする。青娥さんとコンビを組んで、冒険者生活・・・・・・?考えたこともなかった。

 

 

 

「どう、なんですかね・・・・・・そういう話、青娥さんとは全然してないですし」

 

 

 

フューズさんにそう返しながら俺は頭を掻く。冒険者としての生活は面白そうだが、そうなるとガビルたちと一緒にいられる時間は減りそうだ。まさか魔物である彼を連れ回す訳にもいかないし。そもそもガビルはリザードマンの次期族長となる男。首領となる為の修行があるし、一緒に冒険をする時間はそう多く無いだろう。

 

ただ、ブルムンドの方がジュラの大森林より暮らしやすいだろうし、家くらいはこちらに建てておいても良いかもしれないな。

 

 

 

 

 

「──ギルマス。戻りました」

 

 

 

と、俺が一人そんなことを考えていた時。誰かがフューズさんに声を掛けてきた。声のした方へ顔を向けると、そこには一人の男が立っていた。

 

やや癖毛な黒髪で、口回りに無精髭を生やしたその男。フューズさんより歳は若そうだが、どこか彼と同じくらいくたびれた印象を受ける。

 

それと、片足が義足となり杖をついていた。

 

 

 

「おぉ、ジーギス。呼び出して悪かったな」

 

「いえ、別に・・・・・・その少年は?」

 

 

 

ジーギスと呼ばれたその人は杖をコツコツと鳴らしながらこちらに歩いてくる。その途中で、フューズさんの隣にいる俺をちらりと見てそう訊ねた。

 

 

 

「こいつはアクト。冒険者志望でな、すぐに試験を受けさせてやりたい」

 

「えっと・・・・・・初めましてジーギスさん。アクトと言います」

 

「試験官のジーギスだ。よろしく頼む」

 

 

 

フューズさんに紹介してもらってから一応俺は名乗った。頭を下げた俺を見てジーギスさんも短く自己紹介を済ませる。

 

 

 

「・・・・・・それでギルマス。試験を受けさせるのは構いませんが、確か試験を予約している者が数名いたかと」

 

「あー、そいつらは後回しでいい。アクトから頼む」

 

 

 

フューズさんの返事を聞いてジーギスさんの表情が険しくなった。順番を無視して試験を受けようとする俺が気に食わないのか、ジーギスさんは鋭い目付きで睨んでくる。きっと真面目な人なのだろう。他の人にも申し訳無いし、フューズさんに順番通りで構わないと伝えようか。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・特別扱いですか。理由を聞いても?」

 

「青娥の連れなんだ、こいつ」

 

「今すぐ準備致します・・・・・・!」

 

 

 

と、思っていたのだが。俺が青娥さんの連れだと知った途端にジーギスさんはがらりと態度を変えてそう答えた。そしてすぐにどこかへ歩いて行ってしまったのだが、その顔には冷や汗が浮かんでいたような気がする。

 

 

 

「・・・・・・あの、フューズさん。もしかしてなんですけど、青娥さんってここだと嫌われてたりします・・・?」

 

「あー・・・・・・そんなことは無いけどな。お前らがギルドに入ってきた時、他の連中に気さくに声を掛けられただろ?」

 

 

 

確かに、あの時声を掛けてきた人たちは青娥さんを嫌っているようには見えなかった。青娥さんにもそんな様子はなかったし。

 

 

 

「だが、その・・・・・・一緒にいるお前なら知ってるかもしれんが、青娥の奴はかなり我儘でな・・・自分の思い通りにならないと不機嫌になるわ、結局力尽くでどうにかするわ・・・・・・どうにかした後も、その時に文句言ってきたり邪魔してきた奴には暫くねちねち嫌味を言ってきたり、面倒臭い絡み方をしてくるからな・・・」

 

 

 

それがジーギスさんという訳か。いや、きっとフューズさんも被害を受けているのだろう。

 

でも・・・・・・俺にはそこまで酷いことしてないような・・・?確かに我儘というか、無茶振りは何度かされてるけど。

 

 

 

 

「・・・・・・その、なんかすみません・・・」

 

「いや、お前が謝ることじゃない・・・・・・とにかく、試験を受けに行くぞ。さっきも言ったが別の棟で行うからな、こっちに来てくれ」

 

 

 

思わず謝罪すると、まるで励ますかのようにフューズさんは俺の肩にそっと手を置いた。それからそう言葉を続けると、ジーギスさんと同じ方向へ歩き出す。俺は受付嬢さんに軽く頭を下げてから、彼らの後を追った。

 

 

 

二人に付いていくと、試験を受けるらしい別棟にすぐに着いた。俺たちが先程までいたエントランスと同じくらいの広さがある。それと、床に大きな魔法陣が描かれていた。

 

 

 

「ここが討伐部門の試験会場ですか?」

 

「そうだ。正しくは、あの魔法陣の中だがな」

 

「魔法陣の?」

 

 

 

フューズさんの言葉を聞き、俺は改めて床に描かれた魔法陣を見つめる。さらに周囲を見回すと、いつの間にかその魔法陣の中にジーギスさんが立っているのが見えた。俺は魔法陣の目の前まで移動して彼に声を掛ける。

 

 

 

「あのー・・・・・・ジーギスさん?俺はどうすれば・・・・・・」

 

「・・・・・・この中に入って来い。試験の説明はそれから行う」

 

 

 

ジーギスさんは目を伏せたまま答えた。隣に立つフューズさんをちらりと見ると、彼は静かに頷いてみせる。俺は一度深呼吸をして、それから目の前の魔法陣に足を踏み入れた。

 

 

 

「よし。では、討伐部門試験の説明をする。これから受験者であるお前にはこの魔法陣の中で魔物と戦ってもらう」

 

「魔物・・・・・・?」

 

 

 

ジーギスさんは確かにそう言ったが、周囲には何もいない。これから連れてくるのだろうか。

 

 

 

「この魔法陣は外に被害を出さない為のもの。そして受験者はこの中から一歩でも出たら失格とする」

 

「ふーん、結界かなにかを発動させる為の魔法陣なのか・・・・・・?」

 

「・・・・・・それでは、まずはEランク試験からだ。この魔物に打ち勝ってみせよ」

 

 

 

俺が魔法陣について考察していると、ジーギスさんは手にした杖で床を軽く叩いた。すると床に描かれているそれとは違う、小さな魔法陣が彼の目の前に出現する。

 

 

 

「行け──『狩猟犬(ハウンドドッグ)』!」

 

「うおっ!?」

 

 

 

そしてジーギスさんが叫んだ次の瞬間、魔法陣が光を放ち、そこから何かが飛び出して来た。

 

ドーベルマンを禍々しくさせたような姿をした『狩猟犬(ハウンドドッグ)』と呼ばれた魔物は吠えながら俺目掛け飛び掛かって来る。普通の人間ならば容易に噛み砕けるであろう、鋭い牙を剥き出しにし襲い掛かってくる魔獣を前にして俺は──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そい」

 

「キャインッ!?」

 

 

 

全く怯むことなく、その頭に手刀を叩き込んだ。

 

 

 

 

「───はっ?」

 

 

 

僅かに遅れて、その光景を見たジーギスさんが間の抜けた声を漏らした。彼の視線の先には俺の手刀を受けて地面に叩き落とされた狩猟犬(ハウンドドッグ)が静かに倒れている。一応言っておくが、殺してはいない。ちゃんと、かなり手加減はしているとも。

 

 

 

「おぉっ!見たかよオイ。あいつ、狩猟犬(ハウンドドッグ)を一撃で倒しちまったぜ!」

 

「結構やるな、あの兄ちゃん」

 

「へっ、何言ってんだ。所詮Eランクの魔物だぜ?」

 

 

 

ふと気付くと、いつの間にか魔法陣の周囲に多くの人が集まっていた。今の戦い(と言う程でも無いが)を見て各々が感想を言い合っている。彼らの視線が気になり、俺は魔法陣の外にいるフューズさんを呼んだ。

 

 

 

「えっと・・・・・・フューズさん?なんかギャラリーが凄いんですけど」

 

「ん?あぁ、気にするな。試験が始まるといつもなんだ。まっ、これも試験の一つだと思って我慢してくれ」

 

 

 

フューズさんは集まった人たちをちらりと見てから、こちらに向き直り小さく笑った。えぇ・・・・・・と思わず嘆いてから、俺は改めてギャラリーの人たちを見る。どうやらこの試験を娯楽の一つとしているらしく、彼らの中には酒や食べ物を片手に観戦している者もいた。賭事をしている人もいるかもしれない。

 

 

 

「・・・・・・・・・やるな。流石にあの邪仙と知り合いなだけはある」

 

 

 

フューズさんと話しながらそんなことを考えていた時だった。ジーギスさんが静かに呟く声が聞こえ、俺はそちらに向き直る。その時、倒れていた狩猟犬(ハウンドドッグ)が光に包まれたかと思うと突然この場から姿を消した。恐らくジーギスさんの仕業だろう。

 

 

 

「はは、どうも。ところでジーギスさん、狩猟犬(ハウンドドッグ)・・・・・・でしたっけ。あの魔物を呼んだり消したりしたのってスキルですか?」

 

「スキルじゃない、召還魔法だ。契約した魔物をどこからでも呼び出したり、用が済めば元居た場所に戻すことができる」

 

 

 

気になっていたことを訊ねると、ジーギスさんはそう答えてくれた。召還魔法だったとは・・・・・・意外だが、ジーギスさんは魔法使いだったらしい。普通の元素魔法などと比べ、召還魔法は何となく難しいイメージがあるが、青娥さんも使えるのだろうか?

 

 

 

「・・・・・・そんなことより続けるぞ。次はE+ランクだ」

 

 

 

ジーギスさんが杖で床を叩くと、再び小さな魔法陣が展開される。それは先程と同じように光を放ち、そこから新たな魔物が召還された。

 

 

 

「出でよ、『邪鬼妖精(ダークゴブリン)』!」

 

 

 

現れたのは子供くらいの大きさをした人型の魔物。両刃剣と盾を持ち、さらに黒い鎧を身に纏っている。どうやら名前からしてゴブリンの亜種か何からしく、以前ドワルゴンでちらっと見たリムルの仲間のゴブリンと少し似ている。違っているのは皮膚の色で、リムルの仲間の方は緑、目の前にいる奴は褐色だった。

 

 

 

「ギキキ・・・・・・キィイイアアアアアアアッ!!!」

 

 

 

召還され、俺を視認したダークゴブリンは不気味な笑みを浮かべると、甲高い鳴き声を上げながら突進してきた。盾を前にし、剣を引いた構え。恐らく突進の勢いのままに、俺の身体へ剣による刺突攻撃を行うつもりなのだろう。

 

最も、E+ランクの魔物の攻撃で俺はダメージなんて受けないが・・・・・・まぁ、大人しく攻撃を喰らう必要も無いし今度もさくっと終わらせよう。

 

 

 

「よっと」

 

「ギィッ!?」

 

「えっ」

 

 

 

俺の予想通り、ダークゴブリンは剣を突き刺そうとしてきた。しかし、それは俺の蹴りが奴の剣を破壊したことによって失敗に終わった。

 

得物を失ったダークゴブリンは俺の目の前で立ち止まり、折れた剣を呆然と見つめる。それから困惑した様子でジーギスさんに振り返るが、ジーギスさんも信じられないと言った顔で言葉を失っていた。

 

 

 

「武器が無くなりましたけど、まだこいつで続けます?」

 

「おいおい・・・・・・あのガキ、剣を砕きやがったぜ」

 

「本当に強いじゃねえか!」

 

「つ、次だ・・・・・・!」

 

 

 

観戦している人たちがざわめく中、ジーギスさんは悔し気にダークゴブリンを元居た場所へ送還させる。そして直ぐ様三体目の魔物を魔法陣から召還した。

 

 

 

「D-・・・いや、お前が相手ならDで良いだろう・・・・・・!やれ、『狩猟狼(ハウンドウルフ)』!」

 

「ガルルルルァアアッ!!!」

 

 

 

唸り声と共に魔法陣から飛び出してきたのは狼のような姿をした魔物。牙狼族に似ているが、名前から察するに恐らく狩猟犬(ハウンドドッグ)の上位種なのだろう。狩猟犬(ハウンドドッグ)やダークゴブリンよりも素早い動きで俺に襲い掛かってきたが・・・・・・

 

 

 

「ふっ!」

 

「グギャッ!?」

 

 

 

それでも俺の相手では無い。迫り来る狩猟狼(ハウンドウルフ)へ俺は威力を抑えた闘気弾を放つ。それなりの速度で放たれた闘気弾を狩猟狼(ハウンドウルフ)は回避することが出来ず、それの直撃を受けた狩猟狼(ハウンドウルフ)は衝撃によってジーギスさんの後方へと吹き飛ばされた。

 

 

 

「は、狩猟狼(ハウンドウルフ)も一撃で・・・・・・!?」

 

「ほぉ、闘気を使えるのか」

 

 

 

今の戦いを見て周囲の人たちが動揺する中、フューズさんだけ感心したように呟いた。俺は狩猟狼(ハウンドウルフ)がもう戦えないことを確認してからそちらに振り返る。

 

 

 

「はい。青娥さんに教えてもらいました」

 

「・・・・・・・・・そうか。お前は奴の弟子ということか」

 

 

 

フューズさんに返事をしたところ、少し遅れてジーギスさんが反応した。そちらに視線を戻すと、倒れた狩猟狼(ハウンドウルフ)がジーギスさんの魔法によって送還されていた。

 

 

 

「てっきり、冒険者に夢を見てるだけの若いツバメかと思ったよ。まさか、あの邪仙が弟子を取るとはな」

 

 

 

こちらを見据えながらジーギスさんは苦笑する。そういやカバルさんにも封印の洞窟でそんな勘違いをされていたっけ。

 

 

 

・・・・・・青娥さんって、どんな人が好みなのだろう。

 

 

 

「・・・・・・・・・何考えてるんだろうな、俺は」

 

 

 

俺は小さく首を振って、試験に集中しろと自分に言い聞かせる。それを見たジーギスさんは一瞬不思議そうな顔をしたものの、すぐに表情を引き締めた。

 

 

 

「それより、聞きたいことがある。アクト、お前は巨大熊(ジャイアントベア)吸血蝙蝠(ジャイアントバット)という魔物を知ってるか?」

 

「あー、はい。何回か倒したことがあります」

 

「・・・・・・もしや、と思ったが・・・C+ランク以上の強さはあるようだな」

 

 

 

俺の言葉を聞いてジーギスさんは口端をひくつかせる。彼だけでなく、観戦している周囲の人たち、さらにフューズさんも驚いているようだった。

 

もしかして、Bランクの冒険者だと言うカバルさんたちってかなり上澄みな方なのか?

 

 

 

「・・・・・・ギルマス。本気を出してもいいでしょうか?」

 

「なんだと?それは流石に・・・・・・」

 

 

 

そこまで言い掛けて、フューズさんは顎に手を当て何やら考え込み始めた。ジーギスさんはそんな彼を静かに見つめ、返答を待つ。

 

 

 

「・・・・・・いや、許可する。俺としてもアクトの実力を知りたい」

 

「ありがとうございます」

 

「万が一の時は俺が対処する。思う存分やれ」

 

 

 

やがて、フューズさんから許可を貰ったジーギスさんは軽く頭を下げる。万が一と言ったけど、今度は何を召還するつもりなんだ?

 

 

 

「・・・・・・飛び級だ」

 

「へっ?」

 

 

 

と、その時。ぼそりとジーギスさんが呟いた。

 

 

 

「お前の強さはある程度分かった。このまま順々にランクを上げていくのも面倒だろう。そこで・・・どうだ、一気にBランク試験を受けてみないか?」

 

 

 

ジーギスさんは笑みを浮かべながら俺に訊ねた。突然の提案に少し驚きつつも、俺はじっと見つめてくる彼に口元を緩めこう返した。

 

 

 

「・・・・・・特別扱いが許されるんなら、是非」

 

「ふっ、皮肉で返す余裕があるなら問題あるまい・・・・・・では行くぞ、俺が使役できる最強の僕を見せてやる・・・!」

 

 

 

ジーギスさんは小さく笑うと、これまでのように魔方陣を展開する。しかし、今回は少し様子が違った。魔法陣から放たれた光の中から妙な威圧感を感じるのだ。

 

それに、ジーギスさんの様子もおかしい。連続で召還魔法を発動したからある程度消耗しているのは分かる。しかし、今回の召還魔法はこれまでのそれとはレベルが違うのか、ジーギスさんは額に汗を浮かべながら目蓋を閉じて必死に魔力を高めている。

 

俺を含めこの部屋にいる全員が見守る中、やがてジーギスさんは魔法の発動準備を終え、大きく目を見開いて叫んだ。

 

 

 

 

 

「来い──!『下位悪魔(レッサーデーモン)』!」

 

 

 

ジーギスさんの声と同時に、魔法陣からぶわりと力の奔流が巻き起こる。その中心に現れたのは、山羊のような頭部を持つ人型の魔物。やや細身ではあるが、大きさは恐らく二メートル以上はある。その全身は暗めの赤い毛皮で覆われ、背中には蝙蝠のような巨大な翼を生やしている。それはまさしく、悪魔と言った姿だった。

 

これまで召還されてきた魔物とは明らかに格が違うそれの登場に、観戦している人たちに緊張が走る。フューズさんは動じていないが、悲鳴に近い声を上げてこの場から離れる人も少なくなかった。

 

 

 

「これが、悪魔・・・・・・!」

 

 

 

見上げる俺や、周囲の人たちの声など全く意に介さず。宙に浮いたそいつは、不気味な瞳をぎょろりと動かして俺を見下ろしていた。




ちなみにですが、今回ジーギスさんが召還したレッサーデーモンはリムルが戦った個体とは別の個体です。
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