転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第93話となります。

グラブルの転スラコラボ、やっぱりガビルはいませんでしたね…


青娥とシズ③

支部長室は静まり返っていた。

 

青娥さんの友人。カバルさんたちの仲間。世界の英雄。シズエ・イザワが亡くなった。俺にその事件を説明したことでその事実と改めて直面し、彼女と面識のあったフューズさん、カバルさんたちは重苦しい表情を浮かべている。

 

そして、俺も彼らと同じような顔で俯いていた。

 

自分はシズさんのことをほとんど知らない。彼女の顔も、声も。趣味も、好きな食べ物も。分かることは、フューズさんたちから今聞いたことだけだ。

 

それでも、俺は彼女の死を悼んでいた。心優しい英雄で、青娥さんの大切な人であった彼女のことを。

 

そして漸く理解したのだ。あの青娥さんが、あれだけ悲しんでいた理由を。

 

 

 

「・・・・・・・・・何も、知らなかったんだな。俺」

 

 

 

ぽつりと、そう言葉が溢れた。皆の視線が集まるのを感じながらも、俺は顔を俯かせたまま続ける。

 

 

 

「名前を貰って、修行を付けて貰って、色んな所に連れ回されて・・・・・・少しは青娥さんと仲良くなれたと思ってたけど、やっぱりあの人にとって、俺はなんでもない存在だったのかな・・・」

 

「・・・・・・まだ出逢ったばかりなのだろう?それなら仕方あるまい。それに、あいつはあまり自分のことを話さんからな」

 

 

 

フューズさんが優しい声色で俺に語り掛ける。ゆっくり顔を上げると、フューズさんは俺を見つめ微笑んでいた。その時、エレンが俺の膝に手を乗せる。

 

 

 

「アクトさん。私ね、友達や恋人・・・大切な関係だからって、お互いのことを全て知ってなくちゃいけないなんて、そんなことはないと思うの。秘密があったって、知らないことが多くったって関係無い。その人のことを、自分がどう思っているか・・・・・・それだけじゃないかしら」

 

 

 

ね?と、エレンは俺に優しく笑い掛けた。普段とはまるで雰囲気の違う彼女を前にして、俺は面食らってしまう。年相応に明るいお転婆な少女という印象だったが、こんな大人びた顔も出来たのか。

 

 

 

「そうそう。つーか、アクト!んなこと言ったらお前より青娥と付き合いが長いのに、何も知らなかった俺たちは何なんだって話になるからな!」

 

 

 

そう言ってカバルさんはからからと笑った。それを見てギドさんは苦笑し、エレンとフューズさんは呆れたような視線を彼に向ける。

 

・・・・・・励ましてくれたのだろうか。

 

 

 

「・・・・・・はは。ありがとうございます、カバルさん」

 

「ん、何がだ?・・・っと。それより、だ。なぁアクト、お前はこれからどうしたいんだ?」

 

 

 

突然カバルさんからそう問われ俺は目を丸くした。これからどうしたいか・・・か。

 

 

 

「青娥は強ぇ奴だ。放って置いてもその内立ち直るとは思うが・・・・・・それまでどのくらい時間が掛かるか分からねぇ」

 

「そもそも本当に立ち直れるんでやすかね・・・・・・アクトくんと同じように、あっしらも姉さんのこと深くは知りやせんし。腕っぷしは強くても、心は弱いのかもしれやせんよ」

 

 

 

俺が何も言わないでいると、カバルさんとギドさんが目の前でそう話す。どちらの言葉も正しいように感じて、どうすればいいのか何も分からなくなる。

 

 

 

「俺、は・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・青娥の奴は、お前の前でも好き勝手してたんだろ?」

 

 

 

煮え切らず、俺は再び俯いてしまう。そんな俺を見てフューズさんが口を開いた。その言葉を聞いた俺は、フューズさんが何を言いたいのか分からないままとりあえず頷く。

 

 

 

「なら、お前も好きにやればいい。それで今度は、あいつを困らせてやりな」

 

 

 

するとフューズさんははそう言って、にっと口角をつり上げてみせた。

 

きっと、その時の俺は間抜けな顔をしていたのだろう。ぽかんとした俺の顔を見つめ、フューズさんはくつくつと笑った。

 

 

 

「もぉ、ギルマスってばぁ。困らせた結果、青娥さんが怒ってアクトさんと喧嘩にでもなったらどうするのよぉ」

 

「俺の考えじゃ、そう悪いことにはならねぇよ。アクトならな」

 

 

 

頬を膨らませるエレンにフューズさんはそう返す。その自信はどこから来るのだろうか。

 

 

 

「それで・・・・・・どうしたいんだ?アクト」

 

 

 

再びフューズさんがこちらを向き、カバルさんがしたものと同じ質問を俺に投げ掛けた。やはりその質問にすぐには答えられず、俺は視線を宙に彷徨わせる。けれど、答えを待ってくれているフューズさんの穏やかな表情を見て、時間を掛けてでも自分なりの答えを出そうと考えた。

 

そうして俺は目を閉じ、心の奥底と向き合う。自分は一体どうしたいのか。あの時、青娥さんと会って何を思ったのか。

 

 

 

そうだ、俺は悲しかったんだ。

 

青娥さんの家に行って、あの人に会って、あの人のあんな顔を見て。

 

会話も出来ずに追い出されたことがじゃない。いつも楽し気な笑顔を浮かべていた青娥さんがあんなに悲しい顔をしていたこと。それがとても悲しかった。だから───

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・青娥さんに、笑って欲しい」

 

 

 

どれだけ身勝手で、傲慢だと言われても構わない。青娥さんより弱く、出逢ってまだ間もない子供が何を言っているのかと馬鹿にされたって。それでも、俺は思ったのだ。

 

 

 

「俺は、笑顔の青娥さんが好きだから」

 

 

 

そして、願ったのだ。彼女の笑顔を護りたいと。

 

 

 

「・・・・・・そうかい」

 

 

 

俺の答えを聞いたフューズさんは短く呟く。するとソファに全身を預け、こちらを見つめたまま微笑んだ。

 

 

 

「あいつに対してそんな風に思えるのはお前くらいだろうさ、アクト。青娥の奴、弟子に恵まれたな」

 

「アクトさん、私たちも協力するわ!」

 

「そうでやすね。あっしらも青娥の姉さんには世話になってやすから」

 

「おう!それに、青娥がいつまでもあんな顔してたら調子狂っちまうしな!」

 

 

 

フューズさんの言葉の後、カバルさんたちがそう申し出て来た。俺は自分の表情が綻ぶのを感じながら、皆を見回して頭を下げた。

 

 

 

「皆・・・・・・ありがとう。ありがとうございます・・・!」

 

「いいんでやすよ。困った時はお互い様でさぁ」

 

「そうそう!・・・・・・けどぉ、具体的に何するの?」

 

 

 

ギドさんの優しい言葉に頷いたエレンは少し間を置いてから首を傾げた。そんな彼女に俺は曖昧に笑ってみせる。

 

 

 

「・・・・・・俺に出来ることはいくつも無いよ。とりあえず、やれるだけのことをやるつもりだ」

 

 

 

答えになっていない返答を聞いて、エレンは困ったように眉を寄せる。彼女の表情を見た俺は苦笑しつつごめん、と謝り、それから窓の外に視線を向けた。話し込んでいる内に空は暗くなり始めている。

 

 

 

「フューズさん。この時間でも店ってまだ開いてますか?」

 

「ん?あぁ・・・・・・イングラシアと比べるとブルムンドは田舎だが、ここロンドは一応首都だ。多少は夜も賑やかだよ」

 

 

 

フューズさんの返事を聞いて俺は安堵した。あとは欲しい品が見つかることを祈るのみ・・・・・・おっと、まだ問題があったな。

 

 

 

「えっと、カバルさん。早速協力して欲しいんですけど・・・・・・金、貸してくれません?」

 

「えっ」

 

 

 

予想外な言葉だったのか、カバルさんは目を丸くする。申し訳無いとは思うが、俺は無一文なのだ。今回は青娥さんからお小遣いを貰ってないし。

 

 

 

「任せてアクトさん!お金ならいくらでも貸すわ!・・・・・・リーダーが!」

 

「青娥の姉さんの為でやす!勿論貸しやすよ!・・・・・・リーダーが!」

 

「テメーらもちったぁ出せよ!?」

 

 

 

すると、エレンとギドさんがカバルさんの代わりに元気よくそう答えた。二人の言葉に思わず声を荒らげるカバルさんを見て俺は小さく笑う。仲が良さそうで何よりだ。

 

 

 

「ったく・・・・・・んじゃアクト、さっさと行こうぜ。何が必要なのかは知らねえが、それが売り切れちまったら嫌だろ」

 

「そうですね。それじゃあカバルさん、それにエレンとギドさん。金とか店への案内とかよろしくお願いしますね」

 

 

 

カバルさんに促された俺はソファから立ち上がる。それを見て同じく立ち上がったエレンとギドさんにそう声を掛け、支部長室から出ようとドアへ足を進めた。

 

 

 

 

 

 

「───待て、アクト」

 

 

 

と、その時。フューズさんから呼び止められ、俺は足を止め振り返る。

 

 

 

「はい?どうしたんですか、フューズさん」

 

「・・・・・・カバル、ギド、エレン。悪いが席を外してくれ。なに、すぐに終わる」

 

 

 

先程までとは違い、フューズさんは神妙な面持ちをしていた。彼は言葉を選んでいたのか、少しの間の後でカバルさんたちにそう告げる。三人は不思議そうにして一度顔を見合わせたが、やがてカバルさんが頷いてみせた。

 

 

 

「よく分かんねぇけど・・・・・・分かったぜギルマス。じゃあアクト、俺らは先に外で待ってるからな」

 

「分かりました。それじゃ、また後で」

 

 

 

ひらひらと軽く手を振ってカバルさんは部屋を出ていく。エレンとギドさんもフューズさんに軽く会釈してから、カバルさんに続いた。

 

最後に部屋を出たギドさんに部屋の扉が閉められると、支部長室が一瞬沈黙に包まれる。一体何の用があるのか、やや緊張しつつ俺はフューズさんに声を掛けた。

 

 

 

「・・・・・・えっと、フューズさん。俺に話っていうのは・・・?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「あの、フューズさん・・・?」

 

「・・・・・・言うつもりは、無かったんだがな」

 

 

 

何も答えないフューズさんにもう一度訊ねると、彼は俯いたままぼそりと呟いた。どういうことかと俺が眉を顰めていると、フューズさんは天井を仰ぎ溜め息を吐いた。

 

 

 

「カバルたちにも話していないことだが・・・・・・シズがギルドに来た時、俺に青娥への伝言・・・いや、遺言を残していったんだ」

 

「遺言・・・?」

 

「多分、もう帰って来られないと思うから・・・なんて抜かしやがってな。縁起でも無い、自分のダチへの伝言くらい自分で伝えろと言ったんだが・・・・・・」

 

 

 

そこでフューズさんは一旦言葉を止める。結局、シズさんの言葉通りになってしまった。そのことに何か思うところがあるのだろう。

 

少しの間、フューズさんは黙ったままだった。だが、やがて意を決したかのように、真剣な眼差しで俺を見た。

 

 

 

「こうなっちまったなら仕方ない。きっと、俺よりもお前の方が適任だろう。頼むアクト、青娥の奴に伝えてやってくれないか?シズの奴が、あいつに向けて残した想いを・・・・・・」

 

 

 

そう前置きして、フューズさんはシズさんと最後にした会話の内容を俺に語り始めた。

 

 

 

 

 

もしかすると、俺の想いや行動は青娥さんからすると本当に必要が無くて。ただの余計な御世話でしか無くて、彼女をただ怒らせることになるのかもしれない。

 

それでも。もしそうなったとしても、その結果怒り狂った彼女に何をされようとも。

 

この命に代えても、シズさんの残した想いだけは青娥さんに伝えなければならないと、俺は強く心に誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・もうすっかり夜だな」

 

 

 

空を見上げ、一人呟く。ロンドには既に夜の帳が下りていた。ここまでの道ですれ違った人たちも、昼間と比べてかなり少ない。

 

そんな時間に、俺は再び青娥さんの家の前まで来ていた。先程と違うのは、背中に大きなリュックを背負っていることか。その中にはカバルさんたちに買ってもらった色々な物が詰め込まれている。

 

ちなみに、カバルさんたちとは買い物を済ませた後に解散している。自分たちも青娥さんのことは心配だが、今回は俺に任せたいとのこと。お願いね、と祈るように俺の手を握ったエレンの顔を思い出す。エレンたちの為にも、出来るだけのことをしようと改めて心に決めた。

 

 

 

「・・・・・・よし」

 

 

 

意を決して再び青娥さんの家のドアを叩く。返事が無いだろうとは思っていたが、一応数秒程待ってからドアを開けた。

 

 

 

「お邪魔します」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・アクトくん」

 

 

 

家の中は電気が付いていなかった。外にある街灯の光と月明かりだけが室内を照らしており、僅かな明かりを頼りに辺りを見たところ、昼間と同じく散らかったままだった。

 

俺の声に遅れて反応し、青娥さんがゆっくり顔を上げる。窓から射し込む明かりに照らされたその顔には、やはりまだ陰りがあった。

 

 

 

「・・・・・・また来たんですね」

 

 

 

青娥さんが消え入りそうな声で語り掛けてくる。俺はそれに答えることなく、暗い室内を歩きながら目を凝らす。すると、昼間立ち寄った雑貨店で見掛けたインテリアと似たデザインのそれを見つけた。確か、魔力を込めることで光を放つ家具だったか。

 

俺はそれに触れ、明かりを灯す。ずっと暗い部屋にいたからか、青娥さんは眩しさに目を細めた。

 

 

 

 

「っ・・・・・・・・・さっき言いましたよね、一人にしてくださいって。私のことは放っておいて、もう帰ってください・・・・・・聞いてますか?」

 

 

 

視線を合わせることなくそう青娥さんは続けるが、俺はその言葉に答えない。反応が無いことが気に障ったのか、青娥さんは少しだけ刺のある声を出す。

 

彼女のそんな言葉に少し胸が痛む感覚を覚えつつも、俺は平静を装って青娥さんに向き直る。訝しげにこちらを見る青娥さんを前に、俺は深呼吸をして───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ご飯にしましょう!!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

 

 

そう、大声で宣言した。ぽかんと、呆気に取られた顔をして。青娥さんは間の抜けた声を漏らす。

 

 

 

「・・・・・・あの・・・・・・あの?アクトくん・・・?」

 

 

 

珍しく、青娥さんは困惑した様子を見せた。

 

いきなりこんな訳の分からないことを言ったら怒られるのでは、と不安ではあったが、とりあえずいきなり攻撃されたりはしなさそうで一安心である。シズさんの話を聞いてからある程度時間が経っているので、少しは落ち着いたのだろうか。

 

 

 

「・・・・・・青娥さん、昼から何も食べてないですよね。俺もなんです。だから、一緒に食べませんか」

 

「はぁ・・・?・・・・・・・・・要りません。余計なことしなくていいから、帰って・・・」

 

「材料はあるんで心配しないでいいですよー。あ、キッチン借りますね」

 

「だから人の話聞いてます・・・?」

 

 

 

青娥さんの言葉を無視して勝手に話を進めると、彼女は益々困惑した。俺は青娥さんに見られないよう、背中を向けて小さく苦笑する。それから背負ったリュックを下ろし、中に詰め込まれた物を取り出し始めた。

 

今言ったように、リュックの中に入っていたのは食材や調味料だ。カバルさんたちに手伝ってもらったのは食材等の調達である。欲しい物が見つかるか不安だったけれど、四人で街中を走り回った結果なんとか揃えることができた。金まで貸してくれて、三人には本当に頭が上がらない。

 

そんな彼らの期待に応える為にも、自分が今出来ることを精一杯やろう。そんな想いを胸に、俺は調理を始めるのだった。




もしかしたらリムルやシオンたちのフェイトエピにガビルの名前くらいは出るのかもしれませんが・・・・・・リムルは後で育てるだけでいいけど、シオンとディアブロは・・・ガチャが・・・
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