転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第94話となります。

気付けばもう12月なんですね。


青娥とシズ④

火にかけられた鍋がくつくつと音を立てる。その音をすぐ傍で聞きながら、俺は鍋の火加減に注意しつつネギをみじん切りにしていた。

 

 

 

「こっちは残しといて、と・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

俺は今、青娥さんの家のキッチンに立っている。ギルドでフューズさんたちと話をした後、俺に出来ることは料理くらいだと思い至ったのだ。とは言え、流石に俺の作った料理くらいで青娥さんの心を完全に癒せるなどとは欠片も思っていないけれど。

 

しかし、こちらの世界の調理器具も中々便利だな。こちらの世界の民家には当然電気やガス等は通っていないのだが、魔力や魔法によって大体のことは何とかなるようだ。

 

俺が鍋を乗せているカセットコンロのようなこの道具。これには刻印魔法が刻まれており、魔力を込めるだけで通常のそれのようにフライパンや鍋を熱することが出来るのだ。シス湖での修行中は俺が青娥さんやガビルに料理を作っていたのだが、スープ等を作る際にこれを使ったことがある。

 

 

 

それはさておき。青娥さんは今も座ったままで全く動いていない。だが、突然家に上がり込んで来るなり大声を上げて料理を始めた男が気になるのか、時折ちらちらとこちらに視線を向けていた。まぁ、そりゃ気になるよな。そんな奴がいたら。俺なんだけど。

 

その俺がそっちを見ると、彼女はどこかばつの悪そうな顔をしてふいっと視線を逸らしてしまう。そんな青娥さんを見て俺は少しだけ口元を緩めながら、視線を手元に戻して調理を続ける。そんなやり取りを、ここまで数度繰り返していた。

 

 

 

「次は、切ったネギと調味料を挽肉と合わせて・・・・・・」

 

 

 

にちにち、と捏ねる度に粘っこい音が鳴る。ぐっと手を押し込める度に指と指の間から挽肉がぐにゅりと抜けていくこの感覚は嫌いじゃない。本当はネギだけじゃなくニラも入れるのだが、ロンドでは見つからなかった。無くても十分美味しく作れるが。

 

 

 

「はは、醤油を作っといて良かったですよ。ニラはまだしも、これだけはどこを探したって見つからないと思うし」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

俺は挽肉に入れた調味料の一つ、醤油を見ながら言った。相変わらず青娥さんからの返事は無いけれど。

 

この醤油。異世界人である俺には馴染みの深い調味料であるが、こちらの世界には存在していなかった。まぁ、こちらの世界は中世ヨーロッパ風な世界観だし、予想はしていたけれども。

 

日本人である俺としては食生活に欠かせないので出来れば欲しかったし、まだ確定ではないが青娥さんも俺と同じ日本人だろうし、醤油の味が恋しくなったのだろう。俺が醤油を作りたいと言ったところ、青娥さんも協力してくれることとなり、シス湖での修行中に合間を縫って作ることとなった。

 

醤油作りには原料を蒸したり炒ったり、麹を作ったり、発酵させたりなど多くの工程があり、商品として完成するまで実際は一年以上かかるらしいと元の世界で聞いたことがある。だが、青娥さんの魔法や俺の『道具作成』をフル活用したことにより、なんと一月も掛からず醤油の手作りに成功したのだ。

 

 

 

「それじゃ、包んでいくか」

 

 

 

と、醤油についてはこの辺にしておいて。俺は用意しておいた沢山の生地を取り出した。

 

 

 

「・・・・・・・・・餃子・・・?」

 

 

 

その時、漸く青娥さんが口を開いた。俺は少し驚きながらもそれを表には出さず、彼女に振り返ってそれに答える。

 

 

 

「正解です。今から包んでいきますんで、もう少し待っててくださいね」

 

 

 

ちなみに餃子の生地だが、これも手作りだ。生地の材料を手に入れた俺は近くにあるというギドさんの家を借り、そこで生地を作らせてもらった。初めは手作業で作っていたのだが、いくらなんでもこれでは時間が掛かりすぎると思い『道具作成』を試したところ、なんとこれも作成に成功したのだ。

 

それでも、前半は手作業だったことや、それなりの量があったことから少し時間が掛かってしまった。これが無ければもう少し早く青娥さんの家に来れたのだが、全部の作業を青娥さんの家でやるのもどうかと思ったので仕方ないだろう。

 

 

 

「青娥さん、餃子を手作りしたことありますか?・・・・・・あー、いや。生地からじゃなくて、包んだことですね」

 

 

 

俺だって元の世界にいたなら生地は適当に買って済ませるだろうし。そんなことを考えながら、俺は餃子のタネを生地に包んでいく。

 

まず、タネを少し生地に乗せる。次に生地の上半分を水で濡らし、上に向かって半分に折る。この時、生地の間に左手の人差し指を挟んでおく。そうしたら右の親指で押して中心に向かってヒダを折って貼り付けていくのだ。左側も同じ要領でやるのだが、こちらは逆手になるので少し難しいかもしれない。

 

 

 

「これで、一つ完成!どうかな、青娥さん」

 

「・・・・・・・・・まぁ、いいんじゃないですか」

 

 

 

完成した餃子をちら、と見た青娥さんは視線を元に戻してそう告げた。彼女のそっけない態度に少し寂しさを感じつつも、俺は黙々と餃子を包んでいく。

 

 

 

「・・・・・・よーし、こんなもんかな」

 

 

 

やがて、それなりの数の餃子が出来た。まだ生地とタネは残っているが、一旦ここらで止めておこう。まだ食べられそうならまた作ればいい。

 

俺は手を洗ってから、魔力式のコンロと鍋を青娥さんのいるテーブルに運ぶ。その時、あることに気付いた青娥さんが鍋を見つめたまま口を開いた。

 

 

 

 

「・・・・・・焼くんじゃないんですか?」

 

「焼きの方が好きだったなら申し訳無いんですけど・・・今日は違うんですよね。空野家流の水餃子です」

 

 

 

そう謝りながら、俺は残しておいたネギや調味料を鍋に入れ味付けする。この後茹でる餃子から肉の旨味や塩気が出るので、そこまで濃くしなくても問題ない。

 

鍋に入れる餃子だが、大体三分ほど茹でると浮いてくる。そうなったら火が通った合図だ。それまで少しだが、青娥さんと何か会話をして待っていよう。

 

 

 

「・・・・・・俺の父さん、餃子が大好物なんです」

 

 

 

青娥さんと向かい合うようにして座り、俺はそう切り出す。何を話そうか迷ったが、この水餃子を作っているんだし、それについての話でいいか。

 

 

 

「ラーメン屋とか、中華を食べに行ったら必ず頼むくらいで。けど、俺と母さんはそこまで好きじゃなかったんです。俺はその日の体調とかその店の油、なのかな?それにもよるんですけど、食べた後はよく胃が荒れて・・・・・・母さんはそれに加えて臭いがキツイものはあんまり食べないんですよ」

 

 

 

嫌いな訳ではないんですけどね、と俺は付け加える。鍋の中の様子を確認しつつ青娥さんの顔を見ると、彼女の視線は下に・・・鍋に向いていた。聞いてくれているかは微妙だが、とりあえず俺は話を続ける。

 

 

 

「それで、俺たちも美味しく食べられる餃子を家で作ろうってことになりまして。母さんと二人で色々考えて・・・・・・完成したのがこれです」

 

 

 

ゆっくりと鍋の中身をかき混ぜながら、俺は目の前に座る彼女へそう語る。それから少し待つと、火が通った餃子たちがぷかぷかと浮いてきた。

 

 

 

「もう大丈夫かな・・・・・・・・・はい青娥さん、どうぞ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「少しは食べてくださいよ。じゃないと俺、帰りませんから」

 

 

 

俺は餃子をよそった器を青娥さんに差し出すも、青娥さんはそれを見たまま動かない。そんな彼女に小さく笑って、俺はそう告げる。すると根負けしたのか、青娥さんは一旦目を伏せ、それから顔を上げてゆっくり器を手に取った。

 

 

 

「それじゃ、いただきます・・・・・・・・・うん、やっぱりいつも通りの味って訳にはいかなかったけど、それでもよく出来てる」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

失敗していないか確認する為、俺は先に餃子を食べた。焼きとは違った、もっちりとして優しい味だ。異世界なので当然なのだが、家で作る際にいつも使う肉や生地では無いのと、足りない味をそれっぽい物で誤魔化した為に我が家の味とはいかないが、十分な出来だと思う。

 

そして、俺が食べ始めたのを見て、青娥さんも遅れて餃子を一口食べた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・美味しい」

 

 

 

餃子を嚥下し、少し驚いたように青娥さんはそう呟いた。齧られた餃子を見つめ、それからそれを口に運ぶ。俺は声に出さず、心の中で喜んだ。

 

 

 

「・・・・・・肉の風味はしっかりしてるのに、さっぱりしていて脂っこくない・・・」

 

「油で焼かずに茹でて、それと今回のはニラを抜いたバージョンだから余計に、ですかね」

 

 

 

不思議そうに餃子の感想を述べる青娥さんに俺はそう答えた。小さな声で、ふぅん・・・と反応した青娥さんを見て、俺はさらに続ける。

 

 

 

「さっきも言ったけど、母さんが普通の餃子はあんまり得意じゃないから家でもニラはよく抜いてたんです。けど、その内にこれが父さんの大好物になっちゃって。それ以来、ウチでは焼きより水餃子の方が多く出るようになったんですよね」

 

 

 

当時のことを思い出して一人懐かしむ。初めこそ物足りなさそうな顔をしていた父が、やがてリクエストしてくるほど気に入ってくれてたっけ。

 

 

 

「味に飽きたり、もっと濃い味が好きだったらタレを付けるんですけど、今日はそこまで用意出来なくて・・・・・・ウチだったら醤油だけじゃなくて食べるラー油だったり、醤油に酢と生姜とかニンニクなんかを混ぜたヤツなんかも──」

 

「・・・・・・・・・・・・聞かないんですか、何も」

 

 

 

俺が話している途中で、青娥さんがぽつりと呟いた。突然そう言われて俺は一瞬目を丸くするが、すぐに表情を戻す。

 

 

 

「・・・・・・・・・聞きませんよ、何も。聞いたところで俺には何も出来ないと思うし。俺に出来るのは精々料理を作るくらいです」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

俺の答えを聞いた青娥さんは沈黙する。俺と彼女の間に流れるこの空気に耐えきれず、俺は視線を宙に彷徨わせた。どうしたものかと次に話す話題を慌てて考えていた、その時。

 

 

 

「───気持ち悪い」

 

「・・・・・・・・・えっ?」

 

 

 

小さな声だったが、青娥さんのその言葉は確かに俺の耳に届いた。聞き間違いかとも思ったが、青娥さんが俺に向ける冷たい視線がそうでないことを物語っている。

 

 

 

「青娥、さん?」

 

「事情は聞かない、聞いたところで何も出来ない・・・・・・なら、何でここにいるの?あなたは一体何がしたいの?訳が分からない・・・・・・本当に、気持ち悪い」

 

 

 

大きな声では無かったが、その言葉にはどこか迫力があった。淡々と捲し立てるように青娥さんからそんなことを言われて俺は驚いた。

 

 

 

驚いた、のだが・・・・・・怒られるのは想定内だ。正直、俺の作った餃子が不味いと言われる方がショックだったと思う。

 

それよりも、どんな形であろうと青娥さんが感情を発露してくれたことが嬉しくて。つい口元を緩ませる俺を見て、青娥さんは不審な顔をしていた。

 

 

 

「・・・・・・嫌な思いをさせたのなら謝ります。それと、何もしてあげられないことについても。俺はただ、今の青娥さんを一人にしておけなくて」

 

「なに、それ。まさか、たかだか一、二ヶ月一緒にいただけの相手に情でも沸いた?・・・・・・少なくとも、私の力は知ってるでしょ。なら──私の機嫌を損ねて、殺されるかもしれないって思わなかった?」

 

 

 

そう言って、青娥さんは全身から妖気を滲ませた。全力がどれ程のものかは分からないけれど、この人がとんでもなく強いということは勿論知っている。俺なんか、一瞬で消し飛ばされるだろう。

 

けれど、何故か俺は今の青娥さんを前にしても、全く怖くなんて無かった。

 

 

 

「・・・そうですね。俺、青娥さんのこと好きですし。あぁ、変な意味じゃなくて、ですよ?」

 

「・・・・・・?」

 

「それに、信じてますから。青娥さんはそんなことしないって」

 

 

 

思っていた反応と違ったのか、物怖じしない俺を見て青娥さんは怪訝な顔をした。しかし、続く俺の言葉を受け、表情を歪める。

 

 

 

「信じる・・・?この私を?・・・・・・はぁ・・・私はあなたに自分のことを全然教えてないのよ?何も知らない相手にどうして好きだとか、信じてるなんて言える訳?・・・・・・ここまで馬鹿だとは、思わなかった」

 

 

 

理解出来ないと言った表情で、いっそ蔑むような声だった。こんな青娥さんは今まで・・・・・・いや、一度だけ見たことがある。ジュラの大森林で初めて会った時。リーチリザードから青娥さんを庇って怪我をした時だ。

 

こんな時だと言うのに妙な懐かしさを感じつつ、俺は青娥さんにこう訊ねた。

 

 

 

 

 

 

「青娥さんは、相手の秘密とか情報を全部知ったら、その人を好きになれるんですか?」

 

「・・・・・・・・・・・・は?」

 

 

 

ぽかんとした顔の青娥さんから、間の抜けた声が漏れた。俺の問いが予想外だったのか理解不能だったのかは分からないが、目の前の青娥さんの表情はどこか面白く、それと少し可愛さもある。俺は小さく笑って、それから自分の想いを口にした。

 

 

 

「エレンが言ってたんです。友達や恋人のような大切な関係だからって、お互いのことを全て知ってなくちゃいけない、なんてことはないって。秘密があったって、知らないことが多くったって関係無い。その人のことを、自分がどう想っているか・・・・・・それだけなんだって」

 

 

 

・・・・・・・・・そう。きっとそれだけなんだ。秘密があってもなくても関係ない。その人が好きか──大切なのか。ただ、それだけ。

 

 

 

「大切な関係だからといって何もかも秘密を明かさなきゃいけないわけじゃないし、秘密を明かしてないからってその関係が偽物ってわけじゃない。相手の秘密を言いたくない気持ちを尊重するのだって唯一無二の大切な関係性だと、俺は思います」

 

 

 

俺が青娥さんのことを何も知らないのだとしても。俺たちの関係は、俺たちの過ごした日々は、本物の筈だ。

 

 

 

 

 

「青娥さんと出逢ってから、今日までの日々。その時間で俺はあなたを好きになって、信じられるって思ったんです。たとえ、あなたのことを何一つ知らなくても」

 

「────────」

 

「・・・・・・ほら青娥さん、もう少し食べてくださいよ。今鍋に入ってる分くらいは何とかしないと」

 

 

 

若干の気恥ずかしさを感じつつ、俺は口を閉ざした青娥さんにそう促す。青娥さんは呆けた顔で暫くこちらを見つめていたが、やがてゆっくりと箸を動かし、何も言わずに再び餃子を食べた。静かにそれを味わい、飲み込む。

 

 

 

「・・・・・・美味しい」

 

「あはは、良かった」

 

「・・・・・・・・・シズさんにも、食べさせてあげたかった・・・」

 

 

 

すると青娥さんは、今にも消え入りそうな声で、しかし確かにそう呟いた。俺の前で彼女の名前を出したということは・・・・・・少しくらいは踏み込んでも良い、ということだろうか。

 

 

 

「シズさん・・・・・・ギルドで少し聞きました。英雄と呼ばれるくらい、凄い人だったと」

 

「・・・・・・はい」

 

「・・・・・・さっきはあぁ言いましたけど。ただの話し相手くらいなら俺にも務まるかな。話せば楽になることもある、なんて言ったりもするし」

 

 

 

彼女の反応が少し不安で、視線を合わせずそう告げた。ちら、と前を見ると青娥さんは俯いたまま。選ぶ言葉を間違えたかと俺は内心焦る。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・優しい人だった」

 

 

 

その時。青娥さんはそのままの姿勢で口を開いた。とりあえず怒らせてしまった訳ではなかったと俺は安堵し、続きを待つ。

 

 

 

「ずっと、ずっと頑張ってきたんだから報われて欲しかった。長生きして欲しかった。一緒にいられなくてもいい。ただ、幸せになって欲しかった・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・大方、話を聞いた相手はフューズさん辺りでしょう?」

 

 

 

静かに語る青娥さんを見つめていると、彼女は俺にそう訊ねてきた。誤魔化す理由もないので俺は素直に頷く。

 

 

 

「・・・・・・はい。シズさんが実は異世界人で、魔王にイフリートと同化させられて、何十年も若い外見でいられたのはその影響で・・・・・・勇者に助けられた、こととか。色々教えてもらいました。それと・・・・・・ジュラの大森林で、亡くなられたことも」

 

「やっぱり・・・・・・それじゃあ、私とシズさんのことも?」

 

「二人が五年くらい前に知り合ってからの友人で、青娥さんにとってシズさんは師匠でもある、とは」

 

 

 

俺の答えを聞いた青娥さんは、そう・・・と呟き目を伏せる。二人の事情を俺に知られたことが不愉快だったのだろうか。

 

しかし、それは俺の杞憂で。やがて顔を上げた青娥さんは無表情のまま、俺にこう言った。

 

 

 

「・・・・・・どうせ帰るつもりが無いのなら、私の一人言に付き合ってもらいましょうか」

 

「えっ・・・・・・!?」

 

「嫌なら、別にいいですけど」

 

「い、いやいやいや!そんなことないです!・・・・・・付き合いますよ、いくらでも」

 

 

 

驚き戸惑ってしまったが、なんとか息を落ち着かせて俺は青娥さんにそう答えた。初めは怒られたり、最悪拒絶されて攻撃されるかもしれないと覚悟していたけれど。意外と落ち着いていたのか、俺がこの場に居続けることを青娥さんは許してくれた。

 

 

 

「じゃあ、まず最初に・・・・・・アクトくん。私はあなたにずっと秘密にしていたことがあります」

 

「秘密にしていたこと・・・?」

 

「えぇ、それは──・・・」

 

 

 

青娥さんはそう前置きして俺をじっと見据えた。彼女の真剣な眼差しに俺は緊張しつつそう聞き返す。小さく頷いた青娥さんは、意を決した表情でこう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私───異世界人なんです」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・えっ、と・・・・・・青娥さん」

 

「はい」

 

「その・・・・・・・・・・・・・・・知って、ました・・・・・・」

 

 

 

うん、初めて出会った時から何度もそういう発言してたもんな、青娥さん・・・・・・これ、俺はどんな反応すれば良かったんだ・・・

 

 

 

 

 

「───ふ、ふふ・・・」

 

「・・・・・・え?せ、青娥さん・・・?」

 

「あははっ、そうですよね。これまで何度もボロ出しちゃってましたもんね、私」

 

「・・・・・・!」

 

 

 

その時。困惑する俺を見て、まるで耐えられないと言ったように青娥さんは肩を震わせる。そして、少しだけ・・・どこかぎこちなさはあったが、青娥さんは確かに笑っていた。

 

数時間振りに目にした彼女の笑顔。完全に元気を取り戻してくれた訳ではないけれど、青娥さんが笑ってくれたことが嬉しくて、俺は思わず微笑んでいた。




水餃子は大好きです。
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