仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー)   作:ヨマザル

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ヌ・ミキタカゾ・ンシ(支倉未起隆) その4

「コーコーセイ諸君、君たちもスタンドを出せッ!」

ポルナレフが、背中越しにクルリと振り向いて、皆に警告した。

「敵が来るぞッ!身を守るんだッ!」

 

ポルナレフの言葉は、正しかった。

やがて、森の木陰から、一行をぐるりと取り囲むようにして人型の『何か』が現れたのだ。

その『何か』は、吼え声をあげながら、ポルナレフ達におそいかかった。

 

「Gyaxaaaaa!」

「UkyaaaAAAA!」

 

それは、判別不能の声を上げながら、小柄な大人程度の大きさの怪物であった。

怪物が、両手の大きなかぎ爪を振り回しながら飛びかかってきた。

その背格好は、人と言うよりもゴリラに近く、その頭部はまるで肉食恐竜のように巨大で、口からは巨大な牙が見え、涎がまき散らされていた。

 

「おいッ……なんだこれは」

噴上が叫んだ。

 

「ウッ……うぉおおおおォ~~ツ! ザ・ハンドッ!」

億泰はあわててスタンドを出現させ、おそってくる敵を迎え撃とうとした。

だが、億泰のスタンドが一体を蹴り飛ばした次の瞬間、別の怪物が、億泰めがけておそいかかってくるッ。

ザ・ハンドはバランスを崩しており、億泰の身を守れない……

 

絶対絶命!

だが、コーコーセーの傍らには、歴戦のスタンド使い達がいた。

「チャリオッツ!」

「エンペラーッ!」

二人のスタンド攻撃が同時に炸裂した。

億泰におそいかかろうとした怪物が、ぶっとぶッ!

 

突然の襲撃にもかかわらず、ポルナレフのスタンド:銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)は正確な動きで近づく敵を一刀両断にし続けていた。

一方、ホル・ホースのスタンド:皇帝(エンペラー)が、ポルナレフの間合いから離れた敵を打ち抜いていくッ

 

スキャットッッ!

バシュッ!

 

それは、コーコーセー達がまだ状況を把握しきれないわずかな時間であった。

二人の熟練したスタンド使いは、近くの敵を一気に殲滅した。

 

「まだだ、まだやってくるぜェ」 

ホル・ホースが言った。

そして、ホル・ホースは自分の拳銃型スタンド:皇帝から、10発の弾丸を宙に向って続けざまに放った。

 

ギュュィィィ――――ンッッ!

 

ホル・ホースが放った弾丸のスタンドは、一行の回りを高速で回転し始めた。

「へへへッ ―― これがホントの弾幕ってやつだぜ……お前ら、うかつに手を出すなよ、ドタマがぶっ飛んじまうぜ」

 

弾丸が、まるで結界のように、ホルホース達の周囲を巡るッ。

うかつに近づいてきた新たな敵が、『弾丸の結界』に近づいた。次の瞬間、頭部を吹き飛ばされ、悲鳴も上げることなく倒れた。

 

「Cgyaaaaaaa!」

「Gukyaaaaaaaaa!」

自分の仲間が次々に倒れていっても、怪物は気にかける様子もなく、黙々と『弾丸の結界』に近づいていく。そして次々と倒れていった。

ついには、結界の外には、怪物の死骸がまるで壁のように折れかさなった。

 

「しかし、こいつらはナニモンだぁ?」

ポルナレフは首をかしげた。

「こんな奴ら、今まで見たこともねーぜ」

 

おそってきた敵は、『人間を醜く変形させたような格好をした』異形の生物達であった。

肌は緑色、ホル・ホースの胸ぐらいの身長ながらも、鋭い牙と爪を踏み鳴らしている。

 

「まさに怪物だな…………しかし、どうやらコイツ等は、スタンドを見ることはできないようだなぁ」

ホル・ホースは新しいタバコを咥えると、格好付けてパチンとオイルライターを鳴らし、火を着けた。

「見えないなら楽勝ッ……飛んで火にいる夏の虫よぉ。ヒヒッ。このままエンペラーの弾幕にドンドン突っ込んでよぉ、自爆しちまいな」

 

しかし、いくらエンペラーの銃弾が強力でも、それだけでは怪物たちを完全に足止めすることは出来なかった。

ついに、何体かの怪物が、何発か被弾しながらも、回転する弾丸の壁を抜けることに成功した。『弾丸の結界』を抜けた怪物は、迷うことなく一行に迫ってくるッ。

だが、エンペラーの弾幕を抜けた先には、さらに強力な『剣』が待ち構えていた。

 

「おそいぜッ」

おそってくる怪物を見つけ、ポルナレフの目が光った。

チャリオッツが右手の剣を一閃させた。すると、近づいてきた怪物が一瞬で切断された。やはり、悲鳴を上る暇もなく、地面に崩れ落ちた。

一体、もう一体と、ポルナレフは手負いの怪物を、着実に、素早く、倒していくッ。

 

離れた位置からの皇帝での銃撃、そして近距離でのチャリオッツの剣撃、銃と剣の組み合わせは、恐ろしいほどの強さを発揮していた。

 

「白人のおっさん二人……強ぇえ~~~」

億泰、未起隆、そして噴上は、未だに状況が理解できず、目を白黒させていた。

億泰と噴上も、スタンドを出してはいた。

だが、億泰は怪我のせいで満足に動けず、噴上のハイウェイ・スターでは、怪物に致命傷を与えることはできなかったのだ。

 

「誰がおっさんだ」

ポルナレフは毒づきながら、おそってきた怪物に剣をふるい続けた。

 

……と、一体の怪物に剣を突き刺そうとしたチャリオッツの剣が、止まった。

 

ネチョリ……

 

見ると、剣先に、黄色のスライムのような物がまとわりついている。

スライムは、じわじわとチャリオッツの剣を溶かし始めた。

 

「!?……マジか、こいつは やべー」

ポルナレフは顔色を変え、剣を抜こうとあちこちチャリオッツを振り回した。

しかし、いくら剣を振っても、チャリオッツの剣にはスライムがまとわりついている。

とることができなぃ!

 

「任せなさ――いぃッ!」

その時、億泰が自分のスタンド:ザ・ハンドを出現させた。

 

ガオン!

上手くスライムを振り払えないチャリオッツに代わり、ザ・ハンドが黄色いスライムを、剣ごと削り取った。

「おりゃッ!」

 

「すまない……助かったよ」

ポルナレフは、億泰に親指を立てた。

「フフフ……空間を削るスタンド……か。強力なスタンド能力だよな……俺には君の能力の恐ろしさが良くわかるよ。さすがは日本のコーコーセーだ」

ポルナレフの脳裏に思い起こされていたのは、自分がエジプトに旅した時の記憶か……

 

「おォ~~。怪我してなけりゃ、もっと手伝えるんだがよォ~」

億泰は、ポルナレフの話す英語が全く分からないまま、適当に返事を返している。

 

「おい ――本命がおいでなすったぜ」

ホル・ホースが銃を向けた先に、怪物ではない、二人の人影が見えた。

 

いつの間にか、ホル・ホースの弾丸も、先ほどの黄色いスライムにすべて食われてしまっていた。

一行を囲んで敵から守っていた弾幕は、もうなかった。

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

 

「フフフ……ポルナレフ、ホル・ホース、お前達の事はよぉぉうく知ってるわ」

「あら、オクヤス達じゃあない。良かった。無事だったのね……シンパイしてたのよォ、スミレちゃんをとられて、今頃泣いてるんじゃあないかしらってぇ」

姿を表した二人の女性が、嘲った。

 

「マキシム……」

「ネリビル……」

育朗と未起隆は、それぞれが知っている相手の名前を呼び、はっと互いを見つめあった。

 

「オウ………スミレ先輩は、どこだァ~~ッ?」

億泰の問いに、ネリビルが 答えた。

「あら、億泰くん……元気そうで嬉しいけど……でも今回もアナタには用はないのぉ……」

引っ込んでいてね。

 

ネリビルがパチンと指を鳴らすと、また新たな怪物が現れて、一行を取り囲んだ。

「かわいいでしょ、こいつらはハンターって言うの。わが組織の最新の研究成果よ」

ネリビルはおぞましい悪臭のするハンターの顎を、まるで猫を相手にするようにくすぐった。

ハンターはネリビルにくすぐられ、その醜悪な顔でうっとりと、目をつぶった。

 

「何だ?奴らは」

敵の正体の見極めがつくまで、突っ込むなよ。

ポルナレフは、高校生達にそう指示した。

 

だが育朗は、ポルナレフの指示に首を振った。

「スミレ……僕は……時間がないッ。……僕はこうしてはいられないんだ」

育朗が、覚悟を決めた表情になった。

そして、突然ポルナレフ達から離れ、ネリビル達に向かって、 ハンター達のただなかに、1人で踏み込んでいく……

 

「!?よせッ!育朗クン」

ポルナレフはチャリオッツを出し、あわてて育朗の後を追おうとした。

だがその行く手は、飛びかかってきた、別のハンター達に阻まれた。

 

「チッ!ホル・ホースッ!!」

ポルナレフは、自分の目の前に立ちふさがるハンターを切り刻みながら、――拳銃使いの相棒―― ホル・ホースに怒鳴りつけた。

「おめーが何とかしろッ!」

 

「とっくにやってるぜッ!すでにエンペラーは、育朗の援護をしているッ」

ホル・ホースは何度もエンペラーを発射し、育朗の周りに弾幕を張ろうとしていた。

「だが……十分じゃねェッ!敵の数が多すぎるし、育朗が素早すぎるッ……敵だけを狙って倒せるほど、エンペラーは小回りの利くスタンドじゃねーンだよォ!」

ホル・ホースは毒づいた。

 

「Gzyuuuaaa!」

ホル・ホースの弾幕をかろうじて逃れたハンター数体が、育朗の目の前に現れた。ハンターは、育朗めがけて一斉にとびかかるッ

 

「うぉぉぉおっ」

育朗は、地面に転がっていた木の棒を拾い上げ、ハンターにたたきつけるッ

へし折れた木の棒を投げ捨て、背後から迫るハンターを横っ飛びで避けた。

跳び蹴りを放ち、ジャンプして飛びかかってきたハンターを、迎撃する。

 

「Gzyuaaa!」

蹴りを喰らったハンターが、悲鳴をあげてぶっ飛ぶ。

 

「負けるかぁぁあああ!」

着地した育朗が叫んだ、次の瞬間ッ

 

グジャァッ!

 

一体のハンターの鉤爪が、育朗の腹部を深くえぐった。

 

「うっ……」

悲鳴をあげる間も無く、育朗は前のめりに倒れた。

腹部の血が広がり、地面に血の海が出来上がる……

 

「な……なんだとォ――」

ホル・ホースは、『皇帝』の弾丸を発射した。

倒れた育朗の首をねじ切らんとしていたハンターは、 その銃弾をまともにこめかみに受けた。

ハンターは脳を破壊され、どうっと、育朗の上に折り重なる様に倒れた。

 

「おっ!おい……」

億泰は、信じられないとばかりに、力なくつぶやいた。

 

「育朗ッ!馬鹿野郎ッ」

噴上は顔を歪めた。

「お前……スケに会うまで、死に切れないんじゃ無かったのかよ。チッ・チクショー……捨鉢になりやがって」

 

「せめて……これ以上体が傷つかないようにしてあげないと」

未起隆が、鎮痛の表情で蛇に変身した。

敵をすり抜け、育朗が倒れた場所に、駆け寄ろうとする。

 

その『未起隆が変身した蛇』の尻尾を、ポルナレフが引っ張った。

「!?……待つんだッ」

ポルナレフが、育朗の体を指さした。

「まだ育朗は……イヤ、バオーは、これ位じゃあやられたりしない……まあ、もう少し見てろ」

 

「なっ!」

未起隆は、文句を言おうと口を開け、あるモノを目にして、また口を閉めた。

コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ"

 

「バ……ル……バ…………」

地に伏す育朗の体から、人とは思えない、唸り声が聞こえ始めた。

見る見る間に、育朗の体は反り返り、そして、膨れ上がっていく……

「バル……バルバル……」

 

「バルンゥッ!」

不意に育朗の体がはねおき、人間には不可能なほどの大きな跳躍を見せたッ!

 

「なっなんだぁ~~」

 

「あれが、バオーだっ。気をつけろッ。あれに敵だと認識されたら、死ぬゾッ」

ポルナレフが叫んだ。

 

育朗の体:バオーは、空中にいる間も変貌を続けていた。

髪の毛まで含めた皮膚が、青白く硬質化し、時にバラバラとはがれ、額には黒い触角状の『何か』が飛び出すッ

 

「こっ……こりゃあヤベェーな」

ホル・ホースが言った。

 

コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ"

 

彼らの目の前に、『バオー』が仁王立ちしていた。

それは、まさに『異形の怪物』、『現代の獣人』であった。

彼らが見たのは、

 ―元の体に比べ一回り以上も膨れ上がった体格

 ―蒼白く、人とは思えぬ無機質な質感を持つ肌

 ―無表情な顔、無機質な肌、蝋を溶かしたように崩れた目元と、その下にのぞく黄色い目

 ―まるで彫刻された炎のように一つにまとめられ、逆立った蒼白い髪

 ―額がパクリと割れ、そこから覗く”紅い”感覚器

そして、不気味さを増しているのが、その動きであった。明らかに知性ある人としての行動・しぐさが、その動きからは読み取れないのだ。

 

バフッ

 

と、バオーの体から、何か青白い霧の様なものが噴き出した。その霧は、少し離れた所で再び集まっていく。そして霧は、育朗の姿形をとった。

それは、橋沢育朗のスタンド:ブラック・ナイトの能力。言わば 育朗の生霊であった。

 

『……あれが、僕』

ブラック・ナイトとして姿を表した育朗は、初めて見る『自分自身が変異した姿:バオー』を、その異様を、食い入るように 見ていた。

『あれが、僕の中に巣食うモンスター……邪悪ッッ……』

育朗は、苦悩の表情を浮かべた。

 

「バルバルバルバルバルバルッ!」

バオーが吠えた。

「こ……これが、オリジナル・バオーのアームド・フェノメノン……」

ネリビルがうっとりした声で言った。

「ああ……素晴らしいわぁ」

 

「Ugiiy!」

ハンターがバオーにおそいかかるッ!

 

「バルンッ!」

バオーはとんぼ返りをきって、その突撃をかわした。

そして空中で、体をねじって頭を下にした。倒立した姿勢で、ハンターの頭を掴むッ!

 

「Agiiixty!!」

同時に、バオーに掴まれたハンターが激しく苦しみ出した。

 

「オイオイ……、野郎が掴んだ頭が溶けてるぜ……」

ホル・ホースは、咥えていたタバコをポロっと落とした。

 

バオーに頭を掴まれたハンターは、バオーの手から逃れようと、手足をバタバタと振り回し、必死に暴れていた。

その頭が、まるでろうそくの様にドロドロと溶けはじめている。

ハンターは絶叫を上げた。

だが、やがて振り回していた手足の動きが止まり、抵抗むなしく、全身がドロドロに溶けていった。やがて、そこにあるのはピンク色のドロドロした塊だけとなった。

 

「……あれは、バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン。フフフフ……溶かされた両腕がうずくわ……でも、さすがね……オリジナルはあんなに強力な酸を出せるのね……」

ネリビルが、ウットリした口調のままつぶやいた。

「やはりオリジナルの力は、モデレイテッド・バオーの何倍も強力なのね……」

 

「バルバルバルルッ!」

バオーが舞い、跳ね、群がるハンターにおそいかかった。

 

バオーに視覚は関係ない。

感覚は、全て額から飛び出す触覚から感じる『匂い』で賄っているッ。

だがら、バオーに死角は存在しない。

だから、ハンターが身を隠しながら背後から襲ってきたとしても、問題なく対応出来るッ!

 

見る間にバオーは、四方八方からおそい掛かってくるハンターたちを蹴散らした。

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

 

しかし、すべてのハンターを倒しても、バオーが感じている『嫌いな匂い』は、まだ消えないッ!

敵を、『嫌な匂い』を、追いかけ、バオーは 無造作にホル・ホースの作り出した銃弾の結界に踏み込んで行った。

 

もちろんスタンドに、『匂い』は無い。

よってバオーには、スタンドの銃弾は知覚できないッ。

バオーが、吹き荒れるエンペラーの結界に、無防備に頭を突っ込む……

 

バオーが 『銃弾の結界』に入る直前、ホル・ホースは自らのスタンド:皇帝を引っ込めた。

「おっかねぇえええ―――― 間違って撃っちまったら、俺が育朗の奴に襲われかねねーぜ」

ホル・ホースは、冷や汗をぬぐった。

 

「こ……この馬鹿野郎ッ……」

大慌てで、ポルナレフはホル・ホースの頭を殴った。

「まだ周りにハンターどもがいるんだぞッ……ボケっ!お前が結界を解いちまったから、奴らが入り込んでくるじゃねぇかッ!」

 

「ああ……」

ホル・ホースは頭をかいた。

「スマン、ハンターどもを忘れてたぜ」

 

「バァバババァアアア!」

ホル・ホースの結界がなくなると同時に、ハンター達がおそってくる!

 

「バルバルバルバル!」

バオーの両腕から、鋭い刃が飛び出した。バオーが発現する武装現象の一つ、リスキニ・ハーデン・セイバー・フェノメノンだッ

バオーはその刃を自在に振るい、ハンターたちをあっという間に切り刻んでいく。

 

「ホル・ホースッ!テメッッ!このバカ野郎ォ」

ポルナレフも、自らのスタンド:シルバーチャリオッツを出した。

ポルナレフとシルバー・チャリオッツは、バオーの背後を弧を描くように回る。そして、バオーの後方に構えていたハンター達に剣を突き立てた。

シルバー・チャリオッツの動きは、バオーに勝るとも劣らないスピードであった。

しかも、訓練を積み、経験を重ねたその動きには、一切の無駄が無いッ

 

「バルバルバルッ」

シュパシュパシュパッ!

 

バオーとポルナレフの連携攻撃により、ハンター達はあっという間に、細切れにされた。

 

「これが、バオー……素晴らしいわ……でも、寄生虫バオーは、まだ成長途中…『変わった』ばかりね。私にはわかるわ……フフフ………」

マキシムがうっとりと言った。

「今はまだ、バオーは本能のまま戦い続けているだけ……そうよ、いわば、バオーはまだ赤ん坊よ。ならば、今ならバオーを倒せるわ……私のイエロー・テンパランスでねぇ!」

 

「ハッ………アンタ1人じゃ、無理よ」

ネリビルはスタンド:カントリー・グラマーを出現させ、何やらハンターに命令した。

指示に従い、ハンターが4体、バオーの回りを取り囲んだ。

その全身に、イエロー・テンパランスを身にまとっている。

 

「バルンッ」

バオーが、ハンターにリスキニ・ハーデン・セイバーを突き立てた。

だが、その刃はイエロー・テンパランスに阻まれ、ダメージを与えられなかった。

逆に、バオーの刃を侵食していく……

「バルバル!」

バオーは自らの刃を、切り離した。それでもなお、わずかに皮膚に残ったイエロー・テンパランスのスライムも、バオーの皮膚ごと、バラリと剥がれ落とす。

一瞬、バオーの装甲の下に、体液で赤くただれた育朗の地肌が見えた。

すぐにまたバオーの体液が浸みでてカタマり、新たな装甲となって表面を覆った。

 

ハンター達は巧みな連携で、バオーを誘導していく。

その先の地面には、地面に薄く広がるスライム イエロー・テンパランスが広がっている……

 

「チッ、させるかぁッ」

ポルナレフはネリビルの意図を理解した。あわてて、バオーの元に近寄ろうとする。

だが、その前に、別のハンターたちが障壁となり、ポルナレフの進路をふさいだ。

「ドッ……どきやがれ、このやろッ!」

ハンターを切り刻みながら、ポルナレフは歯噛みした。

 

「フフ……育朗を追うのは、イエロー・テンパランスで全身を覆ったハンターどもよ……直接攻撃を喰らえば、このスタンド:イエロー・テンパランスが攻撃した箇所に取りつく……例え取りつく前にすべてやられても、今度は地面を覆ったイエロー・テンパランスがバオーの体に食いつくってワケよ」

ネリビルが、得意そうに言った。

「完璧な作戦よッ! 頭は使いようッ!知性の無い化け物あいてなんて、楽勝よ……」

 

「グキァャッ!」

ハンターが、人間のようにムセ、口から何かを吐き出しかけた。

その口から、銀色の、拳程の塊が、顔を出す……爆弾だッ

 

「フフフ、更に、ハンター共に取り付けておいた、戦車一台を簡単に吹き飛ばす爆弾を作動させた……本能のみで闘うオリジナル・バオーでは、この罠は理解出来ないハズよッ」

勝った!

マキシムが、勝ちほこった。

 

『それはどうかな……まだ僕がいる……僕なら、バオーを止められるはずッ!』

その時、上空から戦いを見ていた育朗の『幽体』が、バオーの目の前に現れた。

『バオーッ、力を貸せッッ!』

育朗が叫んだ。

育朗、いやスタンド:ブラック・ナイトは、全身から管のようなものを出現させた。

『管』はバオーに向かって伸びていき、その体にもぐり込んでいく。

そして、『管』に引っ張り込まれるようにして、ブラック・ナイト本体もバオーに近づいていき、バオーの体内にもぐり込む……

『アナタたちの思うようには、させない……』

バオーの体内に戻る直前、育朗は、ネリビルとマキシムを睨み付けて、言った。

 

ブラック・ナイトが入り込むと、バオーの動きが、止まった。

 

「……何か、なにかヤバいわ。ハンターどもよ、少し早いが、今、バオーに取り付けッ!」

ネリビルが、叫んだ。

「とっとと止めをさしてッ!」

 

『遅いッッ!その前に攻撃させてもらうよ……ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノンッ!』

育朗の顔 ――正確には育朗のスタンド、ブラック・ナイトの顔―― がバオーの胴体からぴょこんと飛び出し、叫んだ。

 

バオーが、再び動き出すッ!

両手を高く差し上げる。その腕が、光りだす。

 

バリバリバリバリッ!!!

 

バオーの両手から、まるで雷のように、電気が放出された。

その電気が、イエローテンパランスに守られたハンターたちに流れていく。高圧電流にさらされたイエロー・テンパランスが、ハンターの肉体が、蒸発していく。

雷に打たれた爆弾が、停止する……

 

バシュッッッ!!!

 

雷は、バオーの周囲を荒れ狂うように飛び交い始めた。

その雷は、ますます大きくなっていく……

やがて、育朗=バオーの周囲を囲んでいた、無数のハンター達は、皆、全身を黒焦げにして息絶えた。

 

「……とんでもねーな」

その余りに強烈な破壊力に、ポルナレフとホル・ホースが顔を見合わせた。

 

「……」

噴上と、億泰、未起隆も、顔を見合わせた。

 

「バルンッ!」

ハンターたちを全滅させたバオーは、次に、マキシマムとネリビルに向き合った。

『さあ、次は君たちだッ』

 

ゆっくりと近寄っていくバオーに対し、マキシムとネリビルは両腕を上げた。

「育朗……まって……私たちは、もともとアナタと戦う気はないのよ……ただ、アナタと話したいの。それだけよ」

 

バオーの動きが止まった。青白く光る育朗の幽霊が、バオーの体から顔を出した。

『スミレはどこだ』

育朗の幽霊は、ネリビルとマキシムを睨み付けた。

 

「アナタ、スミレちゃんが気になるのでしょ?」

マキシムが下卑た笑みを見せた。

 

コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ"

 

『何……だ……って』

育朗が、動揺した。

 

そこに、二人が畳み掛けるように誘惑を始めた。

「あなた、スミレちゃんに会いんでしょぉ?」

 

「スミレちゃんに会いたいのなら、私たちと一緒に来たほうがいいわよン」

 

『スミレを……まさか』

育朗の声に、隠しきれない恐怖の声色が混じる。

 

「育朗クン、そうよ、スミレちゃんは私たちの手元にいるわ」

ネリビルが言った。

「彼女を助けてほしかったら、アンタが私たちの仲間になる事ね。どう、約束できる?」

 

『……この周りにいるハンター達を、ひかせろ……それから、ポルナレフさん達には、もう手を出さないと約束しろ』

育朗は、重々しく、言った。

 

「その条件を飲んだら、あなたが私たちについてきてくれるって言うのなら……約束するわ」

 

『……約束する』

 

「よせっ……育朗クン 馬鹿な真似はよすんだ」

ポルナレフがあわてて、育朗の下へ走ってきた。

 

「そうだぜ育朗よォ、俺たちを信じてくれ。かならずスミレって女は助け出すぜ」

ホル・ホースが、少し離れた場所から育朗に声をかけた。

 

「言っておくけど、ホル・ホース達が邪魔をしたら、『生きているスミレちゃん』には会えないからね」

マキシムが意地悪く付け足した。

 

「おい……調子にのるなよ」

ポルナレフは、シルバー・チャリオッツの剣をマキシマムに向けた。

「誰を人質に取ろうが、ここでお前たちをぶちのめしちまえば問題はねーぜ。逆にお前たちを、人質に取ってやることも、簡単に出来るんだぜ」

 

そのポルナレフの手を、そっと育朗が止めた。

『ポルナレフさん……』

育朗は、哀しげにポルナレフに向き合った。

『ボクは……絶対にスミレを危険にさらせません……お願いです……分かってください』

 

「育朗、俺たちを信用しろ。奴らの口車には、乗るな」

ポルナレフは、育朗の両肩をつかんだ。

「もし奴らについて……」

 

「……ポルナレフさん、ちょっと待ってくれよ」

そのとき、噴上のスタンド:ハイウェイ・スターがポルナレフの スタンドを抑えた。

ポルナレフのスタンドを羽交いじめしたまま、噴上は極めて正常なリアクションを見せた。

「育朗よぉ……そのスミレってスケが、お前の探していた女達なのか」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

 

『……そうだよ』

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

 

その答えを聞き、ふぅっと、噴上はため息をついた。

「なら話は簡単だ……俺は、育朗に味方するぜ」

 

「おい、相棒。そりゃあ無いだろう」

ホル・ホースが言った。

「アマチュアっぽいことはしたくねーんだ。冷静に考えろッ!リスクがちょっとだけ高いだけで、そんなに悪い状況じゃねーだろ?」

 

「……」

育朗は答えない。

その顔が、だんだんと決意を帯びた表情に変わっていく。

 

「噴上クン……待つんだ。君は事情がよくわかってない」

ポルナレフが噴上の肩を掴んだ。

「君は、育朗クンの体に潜む『バオー』が、どんなに危険かわかっていない」

 

「そんなのカンケ―ねぇぜ……俺は、育朗が自分のスケを助けるのに『協力する』と言った」

噴上は、顎を撫でながら言った。

「それが、今だぜッ!」

その声は、少し震えていた。だが、噴上は、すべての気力を振り絞って、ポルナレフに向き合った。

 

「噴上クン……残念だ」

ポルナレフは、チャリオッツを出現させた。

 

「……口じゃ勝てないから、実力行使ってわけかい?」

 

「言ってろ、噴上クン……」

噴上に向かって、ポルナレフが舌打ちした。

 

そのポルナレフの体に、『網』が覆いかぶさった。

『網』の一部が姿を変え、未起隆の顔が現れた。

「!?待ってください、ポルナレフさん。僕もです。事情は良く分かりませんが、僕も噴上さんに賛成します」

未起隆が姿を変えた『網』が、ポルナレフの体を拘束した。

 

「……俺もだ……その……納得できねぇことはあるがよぉ~~」

億泰も立ち上がった。

「俺は、俺の心に従うぜ」

 

話し合いは、いつの間にかポルナレフ/ホル・ホース組 対 高校生組の様相を呈していた。

未起隆は、ポルナレフを拘束している。その正面には、億泰と噴上が今にもかみつきそうな顔をしてポルナレフを見ていた。

育朗は、決意を決めた顔つきで、ただ空を見ていた。

 

どうすべきか、ポルナレフはまだ自由にな動かせる左手で、自分の頭をかいた。

正直、未起隆の拘束を切り裂き、億泰と噴上、そして育朗を制圧するのは簡単だろう。だが、もしそうしてしまえば、高校生たちを必ず傷つけてしまう。

「……チッ」

ポルナレフは、何かしようとしたホル・ホースを制し、チャリオッツを呼び戻した。

「わかったよ……育朗クン、俺の気が変わる前に行っちまいな」

 

『……皆さん、すみません』

育朗は皆に頭をペコリと下げ、ネリビルとマキシマムと共に森の中に消えていった。

 

     ◆◆

 

「おい……、育朗の奴、ホントに行っちまったぜ」

ホル・ホースが肩をすくめた。

「良かったのかよ」

 

「ああ……これで、気はすんだか?」

ポルナレフは、コ―コーセー達をにらみつけた。

 

「……なんだよ……俺は間違ってねーぞ」

ポルナレフと噴上は、しばらくにらみ合った。目をそらしたのは、噴上が先だった。

 

「まぁいい。今から育朗の後を追うぞ」

ポルナレフが言った。

「噴上クン、君のスタンドで追跡を開始してくれ」

 

「言ったろ?俺は育朗の邪魔はしねーッ」

 

「誰も邪魔をしろと言ってるわけじゃなぁいッッ」

ポルナレフが肩をすくめた。

「逆だ……いいか、あの女の所属する組織は、狂信者の集まりだ。……奴らは目的を達したら、スミレって娘も、育朗クンも、むごたらしくバラすぞ」

 

「なんだってェ」

 

「俺は嘘は言わん。……だから、しばらく奴らを追い、スミレと育朗クンの身に危害が加えられそうになったら 助け出す必要があるんだ。わかったか?」

 

「ムゥウウウ……わかったぜ……しかし、俺がやるのは追跡だけだ」

噴上が答えた。

「それ以上はやらねーぜ。育朗に対する義理ってやつだ」

 

「俺達も行くぜ」

億泰が口を開いた。

「さっきは育朗を逃がしたがよォ。ポルナレフさん、うまいこと言えねぇ~~んだが、あのくそ婆どもにゃあスミレ先輩を奪われた貸しがあるぜェ。貸しを返してもらわないとなぁ~~」

 

「そうだな。受けた借りは、返しておくべきだ」

ポルナレフが言った。と、少し離れた位置に立つ、相棒の所業が目に入った。

「おい、ホル・ホース、お前どうしたんだ?」

 

話し合いから早々に抜け出して、倒れたハンターたちを調べていたホル・ホースは、青い顔で震えていた。

 

コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ"

 

「おい……やべーぞ、ポルナレフ」

ホル・ホースが言った。懐から煙草とライターを取り出す。煙草をくわえ、オイルイタ―のファイァ・スターターを回す。だが、いくら回しても シュッ という音がするだけで、火は出ない。

「くっそ……タバコに火がつけられねー」

 

「なんだ、お前何でブルッてる」

 

「俺はな、昔こんな化け物どもを見たことがあるんだよ……こいつら……そっくりだ」

 

「おい、グダグダ勿体つけるな!」

 

「こいつら……そっくりなんだよ……」

ホル・ホースは、加えていたタバコを落とした。

「こいつら、DIOの作り出した『ゾンビ』に、そっくりなんだよぉ!!」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

 

「ばかばかしい。あの戦いで、やつは絶対に死んだ。俺はこの目で、やつが太陽の光によって灰になったのをみたぜ。間違いね〰〰ッ。たとえ奴らが狙ってる育朗クンの体を手に入れたって、奴の魂までは戻らねー」

ポルナレフは、震え声で無理やり笑ってみせた。

「DIOの野郎がよみがえることなんざ、『絶対に』ありえねぇ」

 

ホル・ホースは、かぶりを振った。

「ポルナレフよォ。お前、ディヴィーナ・ダービーの事を知ってるか?」

 

「誰だぁ、そいつは」

 

「ダービー兄弟の長女だよ。能力は兄貴たちと一緒だ」

 

「ダービー兄弟か……あいつらは強敵だった。ゲームに負けた奴らの魂を封じ込める能力だった……!?まさか……」

ホル・ホースが言わんとしていることに気が付き、ポルナレフは顔色を変えた。

 

「そうだよ。あの女のスタンド能力は、『戦いに敗れて死にかけた奴らの魂をコインに封じ込める』……そして……それを『別の誰かに移し替える』……そんな能力だ」

 

「おい、俺たちは、そんな奴しらねーぞ」

ポルナレフが言った。

「あの時戦った奴らに、そんなやつはいなかった」

 

「あったりめーだ。あの女には戦闘能力はまるでなかったからな。スタンド能力も弱くって、死にかけの奴らの魂を封じ込めるのが精いっぱいだったぜ……兄貴たちと違って、ゲームやギャンブルで負かした相手の魂を封じる事も出来なかった……つまりディヴィーナは、相手に“勝って”からじゃあないと効果を発揮できねー能力を持っていた。戦闘にはまるで使えねー能力だ。だから、お前たちが来た時は、こっそり館の陰に隠れていたはずだぜ」

 

「おい……まさか」

 

「そうだよ……そのまさかさ……ディビーナの奴は、承太郎とDIOの戦いの場にいたのかもしれねー。本当の事はわからねーぜ。なにせディビーナは、そのあと消息を建っちまったし、俺はそのとき入院してたんだからなー。だが、可能性はあるぜ……俺は、……ディビーナは『DIOの魂をコインに変えて持っている』と思う!」

 

「ばかな……あのDIOが……生き……」

その時、絶句したポルナレフの持っている衛星電話が、けたたましく鳴り響いた。

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