仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー) 作:ヨマザル
クリーチャー名:マーチン(屍生獣:ゾンビ)
性能:破壊力 - B / スピード - B /射程距離 - C / 持続力 - D / 精密動作性 - E / 成長性 - (無し)
能力:DRESSによってマンドリルをベースに生体改造を受けた生物兵器がさらにゾンビに変わったモノ。本来ゾンビになると精神力が衰え、その分怪力になる。しかし、すでに元々の生体改造で本来のポテンシャルをすべて引き出されていたため、ゾンビとなっても肉体能力にほとんど変化がない。逆に精神力の減衰でスタンド能力が弱まっている為、むしろ弱体化している。
クリーチャー名:レッド・ヘルム(モデュレイテッド・バオー)
性能:破壊力 - A / スピード - B /射程距離 - C / 持続力 - E / 精密動作性 - D / 成長性 - E
能力:モデュレイテッド・バオーが生体改造を受けた巨大なヒグマに寄生した姿。モデュレイテッド・バオー自体はオリジナル・バオーよりも戦闘能力が低い。しかし、生体改造を受けたヒグマの戦闘能力自体が人間をはるかに上回っているため、結果としてオリジナル・バオーを超える戦闘能力を誇っているものと想定される。
スタンド名:ドアーズ
本体:オルダス
外観:DIOの横顔が刻印されている12枚のコイン(10セントコインに似ている)
タイプ:特殊型
性能: ( )内は特殊能力の性能
破壊力 - 無し / スピード - 無し /射程距離 - E(A) / 持続力 - A / 精密動作性 - 無し / 成長性 - B
12枚のコインのどれか一つが張り付けられた任意のドアを接続する能力。つなげられるのは『表』のコインと『裏』のコインが張り付けられたドア。瞬間移動の能力ではなく、移動には距離に応じた時間がかかる。
1999年 11月 9日 未明 [M県K市 名もなき高原]:
リリリリィ、リリィィ、リリィ…リッ……………………リリリ
ヴォ――ッ、ヴゥォォ――…ヴッ…………………ヴォ―――
夜の森は、虫やカエルの声がそこらじゅうから響いている、意外とうるさいものだ。
逆に、その音が急に止んだら何か危険が迫っている事、例えば『ゾンビが迫ってくる』と言った事がわかるわけだ。
今も、急に虫の音が止んだところがある。
ホル・ホースは、音の止まった個所を調べるために忍び足で森の中を進んでいった。そしてポッカリと音が止んだ場所を覗き込む……すると、薄暗い中モゾモゾ動く影がチラッと見えた。ヒトか、あるいはツキノワグマほどの大きさの影だ。
その動くものをサーモグラフィーで覗いてみると、熱原は映っていない。つまり、その動く影の体温は、外気とまったく同じ温度だということだ。
間違いなかった。
メギャン!
ホル・ホースは自分のスタンド:暗殺銃エンペラーを手の中に出現させた。
ゾンビだ。
近づいてきた影を見、てホル・ホースの理性がそう判断した時には、すでにエンペラーの弾丸は発射された後であった。
ゾンビは ――自分の獲物:ホル・ホースが近づいてきたことを認識できないまま―― 頭部を撃ちぬかれ、一言も声を発する事もなく倒れた。
「ヘッ」
手ごたえからして、完璧に致命傷だ。
倒れたゾンビを一顧だにせず、ホル・ホースは周囲の警戒を続ける。もうすでに、ホル・ホースの頭の中には先ほどゾンビの事など、欠片も意識に残っていなかった。
超一流の暗殺者であったホル・ホースは、銃を撃つにあたって、一切の気負いも、タメを作ることも無い。 彼にとって、敵を殺すために行う作業 ――スタンドを具現化し、操作するための特別な思考―― は、まるで『パンにバターを塗るような』当たり前の作業なのだ。
標的を認識すると同時にスタンドを具現化させ、間髪入れずに撃つ。そして、余韻に 浸ることもなく頭を切り替え、次のなすべき行動 ――撤退―― に移り始める。
ホル・ホースはその一連の流れを、ほとんど習い性のように、息を吸うように自然にやってのけることが出来る稀有な才能があった。
スタンドを具現化させ、銃を撃ち、ターゲットを殺す。そこには特別な感情が入り込まない。
伝え聞くところによると、イタリアマフィアの骨のあるギャング達は『ぶっ殺す』と言う言葉は使わないのだそうだ。なぜなら、真のギャングなら『ぶっ殺す』と思った時にはすでに行動に移っているからだという。
だが、ホル・ホースは、自分はその一枚上手を行くと自負していた。なにしろ相手を『ぶっ殺すと思う』必要さえないのだから。
時計を確認すると、深夜5時少し前だ。ポルナレフと見張りを代ってから3時間がたっている事になる。
夜明けまでは後1時間、もうすぐもっとも危険な時間帯が終わる。
「だが油断するなよ、オイ……ホ」
ホル・ホースは自虐的な笑みを浮かべた。 油断すればどうなるか、それは11年前にさんざん思い知らされていた。
見張りを続けながら、ホル・ホースは過去を、あの日、DIOの死を知らされた時のことを改めて思い出していた。
◆◆◆◆◆
11年前のその時、俺:ホル・ホースがいたのは病院のベッドの上だった。ちょうど、承太郎達の襲撃に失敗して入院していた時だ。
DIOの消滅を伝えに来たのは教団の幹部だと名乗る男だった。
「DIO様が死んだ」
その男は淡々と俺にそう伝えた。
「なんだってェ?」
「あの男たち……ジョースターの者どもが、ディオ様を………」
男は俯いて、言葉を切った。その拳が固く握られ、ブルブル震えているのを、俺は見つけた。
その話を聞いたとき、俺はマジで驚いたね。確かに承太郎達は強かった。だが、その『強さ』は、しょせん俺達と同じ次元のモノであった。俺がチョッピリだけ体感した、ディオの『次元を超えた』強さとは比較にならない。
俺は、承太郎達はディオに一瞬にしてやられると確信していたのだ。
(そうかよ……ヤツラ、やりやがったか……)
不思議と ――イヤ、不思議じゃあないか。俺はディオに忠誠を誓ったが魂まで売っちゃぁいなかったからな―― その話を聞いた時に初めに俺が感じたのは、『喜び』の感情だった。
男は、俺の横で何やら話し始めた。
「だが、まだあの方の魂は消滅したわけではない。これから我々はDIO様の復活に全力を尽くす。そう、あの方もまた一度われらの代わりに受難を引き受け、そして復活するのだッ!復活の暁にDIO様は、必ずやわれらを天国に導いてくださるであろう」
その男の話声はダンダンと甲高くなっていき、最後になると半分白目を向いてあたりかまわず絶叫していた。
(狂信者だ、完全にイッちまってるゼ……コリャア手におえねぇ)
俺はゲンナリとしてその男を観察した。
「そうかい……アンタたちの幸運を祈るぜ」
「ホル・ホース、貴様にも働いてもらうぞ……DIO様は確かに貴様を『認めて』おられた、その『力』を我らに差し出すのだ」
その男は、にやっと笑って懐に手を入れようとした。
その時、男がなぜ懐に手をやったかは知らない。なぜなら、俺はその瞬間 ――男が懐に手を突っ込む前に―― 男の眉間を打ち抜いたからだ。
◆◆◆◆◆
その後、ホル・ホースは間髪入れずにエジプトを脱出した。
あの時同じ病院に入っていたスタンド使いの兄弟の行方は今も知れない。振り返ると、すぐにエジプトを脱出したのは正解だったのだ。
エジプトを脱出後、ホル・ホースはほとぼりを覚ますためにアルジェリアやスペインにしばらくの間潜伏していた。
当時のことは思い出したくない。
手持ちの現金もほとんどなく、知り合いの女を訪ねてはその日暮らし……のみじめな毎日だったからだ。
そんな逃亡の日々に転機が訪れたのは、それから一年後、やむなく受けたアメリカ政府からの依頼であった。
依頼は、当時中東で長く続いていた戦争にからむ、生存率の低い危険なヤマだった。だが手持ちの現金がカラになっていたホル・ホースは、背に腹を代えられる状態ではなかったのだ。 それに、どれほど危険な山であっても、成功した暁にはアメリカ政府に恩を売り、DIOの作った組織から隠れられる事が出来るのだ。
複雑な思いを抱えながらも、ホル・ホースは、その依頼を受諾した。
それからというもの、ホル・ホースはアメリカ政府のエージェントとして、文字通り世界を飛び回っていた。
ポルナレフとコンビを組み始めたのは、初めてのヤマから二年目の事だ。始めのころこそギクシャクしていたのだが、近接戦闘に特化したポルナレフと、遠距離に強いホル・ホースとは相性が良く、二人が組むとミッションの難度が驚くほど下がった。
それ以来二人は、不本意ながらアメリカ政府よりコンビとして取り扱われてきた。
7年前の世界一危険な都市シウダー・フアレスでのヤマ、3年前の南アフリカのヨハネスブルクでのヤマなど、他のエージェントにはできない危険な荒事は必ずこのコンビに回され、そして乗り越えてきたのだ。
エージェントになってから10年、ポルナレフと組み始めてもう8年も経つ。
年月が経ったものだ。
そうやって、ヤマを踏むごとに、ホル・ホースは昔のヘマも、DIOから受けた圧倒的な恐怖も、いつしか思い出すことが少なくなっていた。
しかし今、ジョウスケ・ヒガシカタとその仲間を見ていると、どうしても承太郎とその祖父ジョセフ・ジョースターのことを、そして11年前の恐怖を再び思い出してしまう。
加えて、ゾンビやハンターと呼ばれたクリーチャー……
ホル・ホースは身震いした。
あれらはその昔、DIOが戯れで作ったものとほぼ同じ姿をしていた。無関係なはずはなかった。
どんなに気のせいだと自分を納得させようとしても、この一件の陰にDIOの影を感じざるを得ない。
DIO……あの男のことを思い出すだけで ぞくり と寒気を感じ、ホル・ホースは体を自分の掌でこすった。
あの圧倒的な恐怖、威圧感、かなわないという気持ち、あこがれる気持ち、押しつぶされそうな恐怖、不安……もうあんな思いは二度としたくなかった。
「……へっ……」
ホル・ホースは苦笑いした。 ビビり過ぎだ。あの男は、11年前に確かに死んだはずだ。
リリリ……鈴虫のうるさい鳴き声が、またしても一瞬、静かになったような気がした。
◆◆
億泰達と合流した翌朝、仗助は日が昇り始める前から、テントの中で目をさましていた。
どうやらテントの下に石があったらしい、その石が仗助の背中をゴリゴリとつつき、その痛みで目を覚ましたのだ。
仗助と一緒のテントに寝ている杜王町の男子コーコ―セー達は、みな気持よさげに眠っており、起きる気配はまったくなかった。テントの中は昨晩のゾンビの襲撃の後に開かれた宴会 ――と言ってもその場に出たのはオレンジジュースとポテチだけだが―― の跡で、壮絶なまでに汚れていた。
……隣で、噴上の肩に億泰が頭を乗せて眠っていたようにも見えたが、きっと気のせいだろう。 ウン。
そもそも本当ならキモすぎるし……
完全に目を覚ました仗助は、するりとテントを抜け出した。
テントの外は薄明かった。まだ周囲の様子はぼんやりとした影しか見えない。物音も、ほとんど聞こえなかった。
「うぅ――サミっ」
仗助はブルッと体を震わせた。まだ日中は残暑が残っているが、朝はもうずいぶんと肌寒い。少し考えて、仗助は早朝の林を歩いて回ることにした。少し動かないと、体が凍えそうなのだ。見張りを兼ねられるし、体も暖まる。一石二鳥だ。
仗助がしばらく森を歩いていると、ぽっかりと開けた小さな野原があった。そして、その野原の中央に、ポルナレフが1人で立っているのが見えた。
ポルナレフは小石を投げては自分のスタンドでその小石に穴をあけるという事を何度も繰り返している。
良く見ると、ポルナレフが投げた一つの石には5つの穴が開いていた。どの小石もほとんど同じサイズの同じ大きさの穴が開いている。恐ろしいほどの技の冴えだ。
おはよう。
仗助が近づいてくる気配に気がついたポルナレフが、スタンドを引っ込めてニカっと笑った。
「誰かと思ったら仗助君か……早いな、ジョースターさんは旅の間一番遅くまで眠っていたが……息子の君は、早起きなんだな」
「いろいろ考えていたら眠れなかったんす」
仗助が言った。
「ポルナレフさんこそ、こんな朝早くから何してるんすか?」
「スタンドの正確な操作の為の練習だ」
ポルナレフが言った。
「……二十年以上昔に、とある理由から始めた、スタンドの操作を素早く正確に行うための修行さ」
そうか、もう二十年か……ポルナレフは感慨深げに空を見上げた。
「もう練習する理由なんてないんだがな、すっかり習慣づいてしまって、今じゃもう止めようにもやめらねぇ――ってヤツだ」
仗助は、そんなポルナレフにかける言葉が思いつかず、しばらく黙って立っていた。
「……失礼した。年寄みたいなセリフで嫌になるが、ちょっと昔のことを思いだしてな」
ポルナレフは、そう言うと、仗助をまじまじと観察した。
「……なるほどな、君がジョースターさんの息子だと聞いたときは驚いたが、確かにこうやって見ると……少し面影があるかもな」
仗助は、ちょっと微妙な表情を浮かべた。
「あのぉ……じじいと……いや、父親と比べるのはやめて欲しいっス」
「おおッと!そうだった。君の事情は聞いている……スマンな、俺はデリカシーにかけていたぜ。失礼した」
許してくれ とポルナレフは深く頭を下げた。
「いや……えぇ――と、確かに嬉しくないッス。でも、そこまで真剣な話じゃあないっス……頭下げるの、止めてくださいよォ――」
仗助はあわてた。
「ジジイも俺も、実は周りが気を使うほどには気にしてないんスよ。俺たちは……おれは納得してます。ただ、それに付いてはお互い口にしないほうが楽ってだけっス」
仗助は、足を止めてポルナレフに正面から向かい合った。
「……ところで、ポルナレフさんに少し教えてほしいことがあるっス」
「先ほどの詫びもある。何でも言ってくれ」
仗助は大きく息をすって、一息に話し始めた。
「俺は……俺は、一昨日知り合いの人達を、自分のスタンドで倒……イヤ……殺してしまいました………二人ともいい人でした。でも、一旦ゾンビになっちまったら、俺には二人を『治せ』なかった………ただ、『殺す』しかなかった……この手で……」
仗助はクレイジー・ダイヤモンドを出現させ、じっとそのスタンドの手を見た。
「ポルナレフさん……ゾンビって一体なんなんすか。それに奴ら……ドレスはその育朗って人の体に何をしたんすか?」
本当に、彼らはもうもとに戻れないんすか。最後の質問は、ほとんど怒鳴り声だった。
「……残念だが、一度ゾンビや寄生虫バオーにおかされたものを助ける術は、見つかっていない」
ポルナレフが真剣に答えた。
「これは確かだ。君はできる事をやったんだよ。仕方がなかった」
「……」
仗助はがっくりと頭を落とした。
「なんで、あんな生き物が存在するんスか。『吸血鬼』 とか、『寄生虫バオー』とか、あんな生き物が自然に生まれるとは思えないっス」
「そうだ。もちろんあれは自然に生まれたものでは無いゼ」
ポルナレフは、少し考えて、付け加えた。
「……そうだよな、仗助クン、君には俺の知っていることを話しておこう。本当なら口外できない秘密情報って奴だが、キミは知っておいた方がいいだろう。君自身にも関わりがある話だしな……」
ポルナレフは切り株を見つけて腰かけると、仗助にも座るよう促した。
「長い話だ。事を完全に理解するためには、君の曽祖父であるジョナサン・ジョースター氏の代からの因縁と、彼の孫、君の父親であるジョースターさんが若いころに経験した戦いにさかのぼって説明する必要がある……」
「ジジイが若い頃に経験した戦い……第二次世界大戦の事ッスか……ジジイはパイロットとして日本と戦ったって聞いてます」
「いや、違う……確かに第二次世界大戦はとても重い話だが、今からするのはそれよりチョッピリ昔の話だ」
ポルナレフは、仗助の父、ジョセフ・ジョースターについて、語り始めた。