仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー) 作:ヨマザル
噴上が教えてくれた場所にアンジェラが着いた時、そこにポルナレフはいなかった。
だが、仗助が残っていた。 仗助は、1人双眼鏡をのぞいて何やら探している様であった。
「仗助ッ!」
アンジェラが声をかけると、仗助がビクッと背筋を伸ばした。
思わず仗助が取り落とした双眼鏡は、ぱっと変身し、未起隆の姿に戻った。
「やあアンジェラさん」
双眼鏡から元の姿に戻った未起隆は、アンジェラに礼儀正しく挨拶をした。
正直、仗助の友達は皆奇妙な人ばかりだった。アンジェラが見たところによると、その「奇妙な」仗助の友人達のなかでは、未起隆が一番まともに思えた。
……あくまで比較的 だが。
「ちょっと、仗助、未起隆君、何を見ていたの……まさか…アンタたちアリッサさんとシンディさんの着替えを覗いていたんじゃあないでしょうね」
アンジェラはにやっと笑って、未起隆の脇腹を突っついた。今度は波紋なしだ。
「よっ……よせよ、何を言ってんだ!」
仗助が真っ赤になって否定した。
「……怪しいわねぇー。早人には黙っててあげるから、本当のことを言ってごらん」
アンジェラは、ニヤニヤしながら尋ねた。顔を赤くしている仗助を見ていると、ついつい色々と突っ込んでしまいたくなるのだ。 仗助が見せるリアクションが、いちいち可愛くて仕方ない。
「イエ……怪しくなんてありませんよ」
未起隆が、すまして答えた。
「……僕は宇宙人なので、人間の女性の着替えには興味ありませんし……もちろん人間の女性は美しいとは思いますが……」
「見てたのは、木だぜ」
仗助が言った。気のせいか、少し早口だ。
「でかい木を探してたんだ」
「木ィ?木なんて探してどうするの」
嘘つくんなら、もっとましな事を言いなさいよ。アンジェラは、腕組みをして仗助を見下ろした。
「いいや、嘘じゃあないぜ……いいことを思いついたんス」
今度は、仗助がにやっと笑った。
「上手くいけば、全員安全な場所へ送り届けられるッスよ」
◆◆
仗助のアイデアはシンプルであった。
それは、『スタンドで橇のようなものを作り、それに乗って海岸まで移動して、助けを呼ぶ』というものだ。ゾンビが外に出れない日中を利用して、海の近くへと移動するのだ。
キャンプに立てこもっている全員が参加した徹底した話し合いの結果、最終的に仗助のアイデアは皆に受け入れられた。
そして決まったのなら行動は早いほうがいい。一行は、その日のうちにキャンプをたたんで移動する事にした。
「もう決まったことなので、とやかく言いませんが、相当な距離の移動になるわね」
アリッサが顔をしかめた。
「海までは2日はかかると思わねば」
「いいや、ベイビー……あれを見ろよ。俺たちは、今日の晩までには海岸線につけると思うゼ」
ホル・ホースが指差す先を見て、アリッサは驚きの声を上げた。
ホル・ホースがアリッサに見せたのは、スタンドを使って乗り物を作っている様子だった。
「皆さんがただ『見ているだけ』で、独りでに木が加工されていく……これが……スタンドですか……」
スタンド使いではないアリッサの目には、木が独りでに形を変えているように見えるだろう。
スタンド使いであるホル・ホースの目には、仗助のクレイジー・ダイヤモンドが折り取り・繋ぎ直した木を、億泰のザ・ハンドが削る。そうやって作った丸木舟の上に、未起隆が人数分の座席に変身する……そんな様がはっきりと見えていた。
その間、噴上裕也はハイウェイ・スターであたりの様子を見張っていた。 そのスタンドが森の中に消え、定期的に噴上の元へ戻ってくるのも、見えた。
若きスタンド使いたちの頑張りで、まるでロケットのような形の木製の車が、あっという間に出来上がっていく。
「何か、カッコいいですね」
早人がはしゃいだ。
「この……車なら、何処だって行けそうだ」
「削るスタンドに、破壊した物を混ぜ合わせたり、直したりするスタンド、それに何でも化けられるスタンドか」
ホル・ホースは、感心したように言った。
「コーコーセー達、やりおるぜぇ。こいつら何でも作れそうだな……だが、こりゃあ、言っちゃあ悪いがあれだ……あの話に聞くネズミーランドのアトラクションそっくりだな。なんていうか、メルヘンチックってやつだ」
「そうっすねぇー」
仗助が笑った。
「まあ、見てくれは気にしないように、お願いします。でも、メルヘン ケッコーじゃねーっすか」
メルヘンな結末にしたいものっスね。
「みんな、車ができたぞ。乗り込んでくれ」
ポルナレフが、待機しているSW財団チームに呼びかけた。
「これが、車?どうやって動くのよ」
「いつ、こんなものを作ったのかしら」
ポルナレフの指示に従って、SW財団の職員と、早人が、丸木におずおずと乗り込んだ。
彼等の座る座席の四方を、スタンド使い達が固めた。丸木の前方にはポルナレフと噴上が、後方にはアンジェラと億泰を、そして真ん中にはホル・ホースと仗助が陣取った。未起隆は全員分の椅子とシートベルトの担当だ。
「それじゃ出発するわよ、しっかりつかまっていてねぇ」
全員の登場を確認すると、丸木の後方からアンジェラが朗らかに宣言した。
「スケーター・ボーイ!!」
アンジェラの肩から、スタンドが顔を出した。
猫のぬいぐるみを思わせるそのスタンドは、ピョンとアンジェラの肩から飛び降り、丸木に触れた。すると、丸木の前後に、早人の身長程もあるスタンドの車輪が出現した。
『丸木』が、『丸木車』になった。
車輪は、スタンド使いでない早人やSW財団の職員達には、見えない。
車輪がついて急に宙に浮き上がった『丸木車』に、非スタンド使い達からどよめきが上がった。
「目標は30km先の海岸だ。頼むぞアンジェラ」
「了解。ポルナレフさん、任してください」
一行を乗せた丸木車は、そのファンシーな外見にそぐわない滑らかさで動き、海を目指して勢いよく坂を下って行った。
「うわぁぁ!」
「早人ぉ、しっかりつかまってろよ……しかし、グレート。まるでジェットコースターだな、こりゃあ」
「うぉおおおおおお」
「お~早ぇ~~」
「余計な事をしゃべるなよッ、舌をかむぜぇ――っ」
一行を乗せた丸木車は奥深い森の中、木々や下ばえのシダや雑草を縫うように、グングンと加速していく。
「アンジェラのスタンド、やりおるな」
ホル・ホースは、顔をほころばせた。
「何て強力なスタンドだ……尊敬するぜ。この分なら、海まであと半日ってとこだ」
と、その時だ。噴上が、ピクピクと鼻を動かした。
「!?……ポルナレフさん、なんかヤバい。危険な匂いがするぜ!」
噴上が警告を発した。
「……こりゃあ、この間の怪物どもだ……来るぞ!」
「オイオイ、まじかよぉ~~」
億泰をはじめ、スタンド使い達は、自分のスタンドを出現させた。
コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ"
「シシャァァー!!」
「ウジャァァー!」
「ギャギャッギャッ」
突然、丸木車の前方から、横から、そして上方から、唸り声が鳴り響いた。
「来るぞッ!気をつけろッ!」
ポルナレフが叫んだ。
「そこだぜぇッ!」
ホル・ホースの銃が爆ぜる。
その先から悲鳴が上がり、物陰から小柄な人型の怪物 『ハンタ―』 がヨロヨロと現れ、倒れた。
そのホル・ホースの攻撃をまるで待ち構えていたかのように、ハンター達が丸木車の周囲、上方から姿を現し、おそいかかってきた。
「グレートォ。アンジェラぁ、絶対、丸木車を止めるんじゃねーぞ」
「仗助、わかってるわッ」
ガクンと、大きく『丸木車』が揺れ、スピードを増した。
だがハンターが、そのスピードをさらに越えて加速し、襲いかかるッ!
「この、ダボガッ!」
「けっ、切り刻んでやるゼッ」
「いくっスよ……『ドララララッ!』」
「ブヒャヒャヒャッ……エンペラーの、いい的だぜェ」
待ち構えていたスタンド使い達が、応戦する。皆、凄腕のスタンド使い達だ。襲いかかってきたハンターは、あっという間に撃退された。だが、すぐに次のハンターたちが、襲ってくる。
ハンターの数が、多すぎるッ
ジャルンッ!
丸木車の真ん中、仗助やホル・ホースの目の前にハンターが降って来た。
「うっ……うわぁぁああ」
ピーターが叫んだ。
不幸にも、突然ハンターが目の前に現れたのだ。
「ギュアアアアッ」
ハンターはピーターにおそい掛かった。次の瞬間、丸木車の上からピーターの姿が消えた。
「うぉおおおおおおお!」
ピーターは叫びながら丸木車から放り出され……そして、激しく激突して動かなくなった。
『ドラァッ!』
一歩遅れて、クレイジー・ダイヤモンドがハンターを吹き飛ばすッ!
「ピーターッ!いやああああぁぁあああ」
シンディが、悲鳴を上げた。
「!?マジーぜ……ピーターさんが落ちちまった……ホル・ホースのおっさん、後は頼むぜッ!」
仗助は、ピーターを追って丸木車から飛び降りるッ。
仗助は自分めがけて群がってきたハンターを吹き飛ばし、地面に横たわるピーターに向って全力疾走した。
「もう誰も殺させはしねーぞ!!!」
「仗助さん!」
早人が叫ぶ。
「アンジェラ、止めて!仗助さんが……」
「仗助ぇ!待ってろぉ~すぐそこに行くぜぇ」
億泰がどなった。
だが、仗助は大きく手を振って、助けに来ようとする者たちを止めた。
「バカヤローッ……俺は大丈夫だ。だから止まるなッ!降りるなッ!止まったらお前たちがハンター共にやられるっスよォ!アンジェラ、お前ら、そのまま行けぇ――ッ……早人ォ……しっかりやれよッ!」
叫ぶ仗助の周りを、木の上から飛び降りてきたハンターたちが追い越していく。
アンジェラは、仗助の方を振り返った。
アンジェラと仗助の目がぶつかり……そして、アンジェラは大きく頷いた。
グギュンン!
丸木車は加速をグンと増した。
仗助の姿はハンターの姿に隠れ、丸木車にいる一行の視界からは、あっという間に隠されてしまった。
『ドラララッ!』
スタンドラッシュの声も、微かになっていく……
「ダメです。億泰さんッ」
丸木車から飛び降りようとする億泰を、未起隆が必死に引きとめていた。
「てめッ、未起隆ァッ、止めるんじゃねぇ~」
「億泰サンッ!駄目です。僕たちは丸木車の人たちを守らなければ」
「だから、仗助をみすてるわけにゃいかね~だろがッ!」
「わかってるわよッ!でも先に行くようにって、仗助が言ったのよ。仗助は絶対に自分でなんとかするわ」
彼を信じるのよッ。
アンジェラが言った。
「……そんなこと言ってオメ~~自分たちが助かりたいだけじゃね~のか?」
「ちょっとアンタ、私が軽く言ってると思ってるわけ?」
億泰とアンジェラ、それに未起隆は口論を始めた。
そのそばに、ハンターが近づいてきた。
「おいおいおいおいッ」
ホル・ホースは丸木車の後方にせまるハンターに向けて、エンペラーを撃ち続けた。
「お前ら、まず今やらなきゃいけないことが口喧嘩か?ホントにガキか?」
「ギャン!」
「ギャルルッ!」
エンペラーの弾丸を喰らったハンターが、次々と倒れていく。
「こぉらッガキ共、自分のやらなきゃならん事をやりやがれ!!」
ホル・ホースは丸木車の後方に向かってどなりつけた。
と……
ドゴオォオオオン!
と激しい音がして、丸木車が一瞬宙を舞った。
森の中の小さな崖を飛び越えたのだ。
「ぐぉおおお」
エンペラーを両手持ちで撃っていたホル・ホースは、衝撃で飛び出そうとする体を支えきれず、丸木車から飛び出した。
「くっそおお、落ちてたまるか……エンペラーACT2 、サタニック・マジェスティー!」
ホル・ホースのスタンドが一度姿を消し、そして再び現れた。
機械人形に似たそれは、エンペラーの銃からいくつかの部品を剥ぎ取り、本体のプロテクターを増やした。
銃のうち残った部分は、ねじ回しやアイスピック、あるいは小刀のように小さくてとがっていた。
「オリャアアアアァッ!」
ホル・ホースが、その『小刀』を丸木車に突き刺すッ。
ギャルルルル
ホル・ホースめがけおそい掛かってくるハンター達の爪を、エンペラーAct2:サタニック・マジェスティーのプロテクターが防ぐ。
サタニック・マジェスティーは、力が弱い形態だ。ハンターの爪を、直接受け止めることさえできない。
だがプロテクターによって、その爪をそらす事はできる。
そう、これがホル・ホースの、まさに『とっておき』の能力だった。
暗殺銃の威力を弱めることで身にまとうことが出来るプロテクター:この能力をDIOに隠していたおかげで、エンヤ婆からの攻撃や、トト神の間違った予言による事故から身を守ることができたのであった。
バシュッ!
ホル・ホースの背中から、ロボットの様なスタンドの腕がにゅうッと現れた。その手に握った小さな『ピストル』が、襲ってくるハンターの喉にめがけて弾丸をうちこむッ
「ギィヤアアッ」
ホル・ホースを襲ってきたハンターは、喉を打ち抜かれて崩れ落ちた。
バシュッ!
バシュッ!
ホル・ホースが丸木車にしがみついている間も、ホル・ホースの背中から飛び出したスタンドの腕は『ピストル』を放ち続け、周囲のハンターを打ち抜いていく。
「ヒヒッ……そう簡単にこのホル・ホース様がやられるか……なにぃ!」
だがその時、ホル・ホースは致命的な問題 ――エンペラーを分解して作った小刀では自分の体重を支えきれない事―― に気が付いた。
ズリッ
ホル・ホースの体は、徐々に下にすべり落ちていた……このままでは地面に足がぶつかり、そして丸木車から振り落とされてしまうだろう。
その事実に気が付いたホル・ホースは、悲鳴を上げた。
「こりゃあまじーぜッ……ポルナレフ、助けてくれぇ!」
「やかましぃ……いい年こいて、テメーは何をやってるんだ」
丸木車の先頭にいるポルナレフが、毒づいた。
「仗助は自分から丸木車をおりた……それに比べればなんてことねーだろうがッ、それクレー自分で何とかしやがれっ」
「チャリオッツ!」
ポルナレフはシルバー・チャリオッツの甲冑を外し、分身させた。
大声を出すホル・ホースには目もくれず、前方に群がるハンターたちを分身したチャリオッツが一気に切り伏せていく。
「おい、見捨てないでくれぇー!」
ホル・ホースから情けない声を上がった。
ズリッ
さらにホル・ホースの体が落ちる。懸命に足を縮めるが、もうすぐ下には地面がある。
ホル・ホースの視点からは、地面は相当なスピードで後方に流れていた。
「うぉぉおおおッ」
ホル・ホースが悲鳴を上げた。
その時だ。救いの手が差し伸べられたのは。
「ホル・ホースさんッ、つかまってくださイ」
未起隆だ。未起隆は、自身の変身能力:アース・ウィンド・アンド・ファイヤの力でロープに変身し、ホル・ホースの目の前にぶら下がった。
「大丈夫ですか、いま引き上げます」
下半身をロープに変身させた未起隆は、ホル・ホースの体の周りにロープを回し、丸木車の上に引き上げようとした。
ゆっくり、ホル・ホースの体が、引き上げられる。
「ヒヒヒッ、助かったぜ相棒」
ホル・ホースは助けられる間も、後方に、上空に、エンペラーを連射し続けた。
「今の仕返しをしてやるぜ。ヒャヒャヒャヒャ〰〰全滅しちまいなぁ」
エンペラーの弾丸は四方に飛び、あっという間に射程内のハンターを射殺した。
しかし、まだまだ射程外からハンターが追いかけてくる。
「おいおい、一体何匹いやがるんだヨ」
ホル・ホースは毒づきながら、エンペラーを連射し続けた。
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一方、丸木車から飛び降りた仗助は、自身のスタンド:クレージー・ダイヤモンドがピーターを引き起こした所であった
ハンターにやられ、高速で走る丸木車から突き落とされたピーターは、だがまだ幸運なことにチョッピリ生きていた。
クレイジー・ダイヤモンドの能力で、ピーターの傷を治す。すると、ピーターはパチンと目を開き、復活した。
「!?……僕は……助かったのか?」
ピーターは、あっけにとられたように言った。
「ふぅ、グレートっ。意識が戻ってよかったッス」
仗助は止めていた息を吐いた。今度は、間に合った。
『ドラララッ!』
すかさずおそい掛かってくるハンターを、クレイジー・ダイヤモンドでぶち飛ばす。
ハンターは一体、一体、時には数匹同時におそい掛かってきた。
その都度クレイジー・ダイヤモンドがラッシュで瞬砕していく。
気が付くと、仗助とピーターの周囲を幾重にもハンターが取り囲んでいた。
「オイオイオイ、たかが二人にちょぃと大げさすぎね――ッすか?」
周囲を囲むハンターの数に気が付いた仗助は、冷や汗をぬぐった。
「仗助君、わざわざ助けてくれてありがとう。君は命の恩人だ」
ピーターが言った。
「だが、僕を助けたせいで、君まで危険な目に合わせてしまった……君は僕を置いていくべきだった」
「なぁに言っているンスか」
と、周囲を囲むハンターの輪に切れ目ができた。
その切れ目の奥をのぞいた仗助は、チッと舌打ちした。
「今更何を言ってるんすか。しかし、確かにグレートにやばい状況っすよォ―――ッ……ピーターのオッサン、悪いが自分の身は自分で守ってくれないっスか?」
「……当然だ、君の足手まといにはならないように努力するよ」
「グレートォ……じゃあ早速ですけど、少し離れてくれませんか」
仗助が真顔で言った。
「ちょっと面倒なことになりそうなんでよぉ〰〰」
仗助の視線の先には、橋沢育朗が立っていた。