仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー) 作:ヨマザル
スタンド名:ワン・ツリー・ヒル
本体:ディビーナ・O・ダービー
外観:身長100Cm位の小型スタンド ガーゴイルを女の子にしたような人型の外見
タイプ:特殊型
性能:破壊力 - 無し / スピード - 無し /射程距離 - D / 持続力 - A / 精密動作性 - 無し / 成長性 - D
能力:戦いに敗れ、死の淵にいる人間の魂を11枚の金貨に閉じ込める。人間の体をセフィロトの樹にみたててその11か所へ金貨をおいていくと、その人間に金貨に魂を封じられた人間の知識・経験・精神力等を与える事ができる。尚、11か所すべてに金貨を置くと、その金貨に封じられた魂を人間に移すことさえできる。
バオー (BAOH):
(1)バオー・アームド・フェノメノン
宿主の脳を麻痺させ支配下に置き、宿主の骨・筋肉・腱を何倍にも強化、治癒能力・代謝能力の活性化を行う。
宿主の頭部に独自の「触覚」を発現させ、これにより視覚・聴覚・嗅覚などの全感覚をまかなう。また、宿主の皮膚をプロテクターに変化させるため、宿主とは外観が大きく変わって見える。
(2)バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン
手のひらから金属や生物を溶かす強酸液を出し、対象を溶かしてしまう能力
(3)バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノン
両手首から皮膚組織を変化させた刃物状の武器を生成する能力
(4)バオー・シューティングビースス・スティンガー・フェノメノン
毛髪を高質化して射出する(毛針)能力、毛針は対象に刺さると自然発火する
(5)バオー・ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノン
体細胞より60000ボルトの高圧電流を放出させる能力
(6)バオー・ブル・ドーズ・ブルース・フェノメノン
指先からバオーの体液が詰められた小型の注射針を射出する静かなる能力。体液はそれぞれの指により 麻酔薬(人差し指)、睡眠薬(中指)、治療薬(薬指)、毒薬(小指)の四種類に変化させる事ができる。
尚、上記はオリジナル・バオーの能力。モディレイテッド・バオーは上記の内(1)-(4)までの武装現象しか発現しえないが、その代わりに治癒能力が増強されている。切断した四肢等の断面から 触手状の代替物を生成することさえできる。
コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ"
東方仗助と橋沢育朗、二人の男が向かい合った。
二人は、ほぼ同学年のように見えた。どちらも背が高く、印象的な外見であった。
だが、似ているのはそこまでだ。
東方仗助:身長185cm、まるでラグビーの選手のようなゴツイ体の上を持ち、イギリス系アメリカ人の血をひく、堀の深い顔立ちに、緑ががったアーモンド形の目を持つ、美丈夫だ。その頭には、特徴的なリーゼントヘアーがのっている。町中でであったら、10人中10人が恐怖を感じ、同時にどことなく信頼感を抱かせる、そんな容貌の男だ。
橋沢育朗:身長178cm、まるで芸能人のようにすらりとした体型に、スッキリ、爽やかな顔立だ。ツリ目ぎみの切れ長の目の上には、サラサラの長髪が風になびく。
その出で立ちからは、生真面目さと、優しさが感じられる。町中でであったら、いかにも女の子からキャーキャー言われそうだ。
育朗は、真っ黒なジーンズと長袖Tシャツを着ており、Tシャツには白抜きの模様で髑髏と牙と天使の羽が描かれていた。その胸元につけられた金色のピンバッチを見て、仗助は眉をしかめた。
コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ"
ハンターの群れが、後ろに下がった。育朗と仗助……そしてピーターの周りだけ、ポッカリと空間が空いた。
ピーターはあわてて近くの木によじ登り、二人から、そしてハンターからも距離を取った。
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「育朗クン、初めまして」
仗助はポケットに手を入れたまま、橋沢育朗に向って歩き出した。
「アンタの事は、噴上やポルナレフさんから聞いてます……元気そうっすね――ッ。安心しましたよぉ」
「君のそのあ……格好は……君は……そうか、君が、億泰君が言っていた東方仗助君だね」
初めまして と育朗が手を差し伸べた。
仗助が歩みを止めた。
差し出された手は、握らない。
「……それで、やっぱり気が変わって、俺らの所に戻って来てくれたんすか」
大歓迎ッス。と、仗助は不敵な笑みをうかべた。
「億泰や、未起隆 それから 噴上裕也が世話になったそ――っすね、そのお礼もしなきゃいけないっすねぇ〰〰」
「……仗助君……頼む、君に頼みがあるんだ」
育朗が苦しそうに言った。
「頼むから 皆を呼び戻してくれないか……君たちに危害は加えない。後三日だけ、ここに動かずいてくれたらそれでいいんだ……それから、スミレを僕の元へ連れてきてくれッ!」
「育朗ク〰〰ン、そいつは無理な相談っス。だってハンターたちを杜王町に近づけるわけにはいかないんすよ。誰かが警告しなきゃなんねー」
『ドラァッ!』
仗助は予告なしでクレイジー・ダイヤモンドを出現させ、周囲を囲んでいるハンターの一匹に石を拾って投げつける。
「Gaaaa!」
石はハンターの胴体に大穴をあけ、ハンターはひっくり返って動かなくなった。
「約束する……僕が杜王町に警告する、だからここは僕を信じて引き返させてくれないか……ハンター達は、責任をもって僕が抑える」
仗助は、首を振った。
「ところで、かっこいい格好してますね。どっかで着替えたんすか?そのピンバッチもいかすッス?」
ピンバッチのその "D"って刻印はどんな意味っすか?
仗助の質問に、育朗は答えなかった。
「もう一つ聞いてもいいかい、なんでアンタは『スミレ先輩が俺たちのところにいる』って思ったんだ」
「…………」
「いや……せっかくだが、今の先輩は信用出来ね〰〰」
仗助は、育朗の額を指差した。
そこには『木の芽のような肌色の突起』が突き出ており、時折ピクピクと脈うっていた。
「それ……知ってるぜ。肉の芽って奴っす……そいつに取りつかれた奴は、ある男に強烈に忠誠心を抱かされるらしいじゃねーか。DIOって言ったっけ?そいつの名はよぉ〰〰」
DIOと言う言葉を聞いて、育朗の顔が醜く歪んだ。
「何を言ってる?……僕は……僕の考えで……DIO様が正しいと信じているッ!」
その邪魔をするものは誰であろうと許さない。育朗は、はき捨てた。
「やっぱりかよ。今のあんたは育朗クンであって育朗クンじゃね――。だから、俺が 『治して』やるぜ……俺たちを止めたきゃ、俺を倒してからにするんだなぁ!」
ポキポキと、仗助が指を鳴らした。
「仗助君、君とは闘いたくなかったよ」
育朗が悲しそうな顔をした。
「君とはいい友達になれるかもしれないと、思っていたのに……」
「……俺も残念すよ…………さぁ、変わりな、バオーによぉー」
仗助が促す。その声に何か呼ばれるように、育朗は、二、三度身を激しく震わせた。体を大きくのぞけさせる。 全身から『黒い汗』がふきだし始める。その体が、一回り大きく、膨れ始める。
「仗助クン……俺はSW財団の保管している資料を読んで、バオーの能力を知っている……説明させてくれ……」
木の上からピーターが言った。
「いいかい、バオーの本体が人間の脳幹に潜む小さな寄生虫だって事は聞いてるな。仗助君、気を付けろ……」
「うっス」
仗助がうなずいた。
その目前で。育朗は瘧にかかったように、体を震わせつづけている……
ピーターは、早口で説明を続けた。
「まず寄生虫バオーが、宿主の生命の危機を感じ取る。すると、寄生虫バオーは宿主の脳を麻酔、分泌する体液が皮膚を硬質化しプロテクターに変えて行く。その体液は全身の筋肉も同時に膨張させ、人間離れした怪力を与える……」
育朗が体を震わせる度に、まるで昆虫が脱皮するようにパラパラと皮膚が剥がれ落ちた。その剥がれた皮膚の奥から、最強の生物兵器、バオーが徐々に姿を現していく。
その体から、青黒く透き通った育朗の『生霊』が抜け出した。
ピーターの声に、恐怖の色が混じる。
「いいか……バオーに視覚は必要無い。必要な情報は頭部から飛び出した触角から得る。蠕虫による生体武装をもつ兵器 ……Biologic Armed Ordnance by Helminth ……これが……これが、バオー (BAOH)だッ!」
わずかな間に、育朗の外見はすっかり変わっていた。
全身が青白いプロテクターの様な肌に包まれ、体も二回り大きくなっている。バオーの頭の触角が、まるでそれぞれ独立した生き物のように仗助の方にザワザワと動いていた。
育朗は『バオー』への変身を終えた。
仗助は、ポキポキと拳を拳を鳴らした。
「なるほど、そうっすか……これが『バオー』っすね〰〰。スゲーカッケ―な………グレートだぜ……ピーターのおっさん、もう少し安全なところまで下がってくれないっスか」
もっと木の上に登っていてください。仗助は、やさしい口調で言った。
バオーは獣のように四つ足で地面を引っ掻き、落ち着かない風に頭を 激しく上下させていた。 そこには、人がましい気配が、育朗の雰囲気がまったく感じられない。
「ウォォォーム!」
バオーが、けだもののような咆哮をあげた。
『行くよ……バオーッッ』
そこに、育朗の『生霊』……いや、スタンド:ブラック・ナイトが再び取り着くッ。
するとバオーは、突然これまでの獣じみた挙作をピタリと止めた。
そして 今度は、逆にひどく人間臭い挙作で立ち上がった。
バオーはグルグルと肩を回し、仗助に向かって拳を構える。ボクシングのような構えだ。
と、バオーの胸元から、育朗の幽霊がにゅうっと顔を出した。
『……仗助君、覚悟は出来たかい?いくよ』
「おお……いつでもいいっスよ」
仗助は、クレイジー・ダイヤモンドを突進させた。
クレイジー・ダイヤモンドと、バオーの攻撃が交錯するッ!
『ドララッ!』
「バルバルバルッ!」
クレイジー・ダイヤモンドの強烈なラッシュが飛ぶッ。
だがバオーはそのラッシュを避け、かわし、そして受け流していくッ!。
爆風のような攻撃をすり抜けて、バオーが、クレイジー・ダイヤモンドの懐に踏み込んだ。
そして……
『おしまいにしよう……僕の射程距離内に、入ったよッ!』
バオーが、仗助めがけて殴りかかる!
間一髪、仗助はバオーの一撃をスタンドで防御し、カウンターの一撃を放つッ!
バシンッ!
バオーと、クレイジー・ダイヤモンド&仗助が、互いに距離を取って向かい合った。
『噂通り、強い』
育朗がスタンドの幽体をバオーの胸から突き出して、言った。
バオーの体には、あちこち岩がめり込んでいた。
確かにクレイジー・ダイヤモンドの一撃は空をきっていた。だが、その拳が地面を爆発させるようにえぐっていたのだ。
その爆発で飛び散った岩が、バオーの体に命中した……と言う訳だ。
一方で、バオーの拳も、本体である仗助の左肩をわずかにかすめていた。
仗助は、脂汗を書いていた。
「とんでもね――……コイツ、生身でスタンドの攻撃についてこれるのかよ……しかもスゲーパワーだぜ。ちきしょー、ほんのチョピリ、紙一枚分かすっただけで左肩が脱臼しちまったぜ」
仗助はクレイジーダイヤモンドを操作して、はずれた自分の左肩を入れなおした。
「ぐあっ……いっ痛ってぇ――ッッ」
『だが手加減しない、覚悟してもらうっ!』
バオーは、仗助に向かって駆けだした。
『ドラァアアア!』
再び放たれるクレイジー・ダイヤモンドのラッシュ。
バオーは、その攻撃をトンボを切ってかわした。
着地後、まるで飛び込むようにして放たれた3度目のラッシュも、バオーはステップバックして避けた。
そしてラッシュの終わりにカウンターを入れるように、バオーは蹴りを放った。
『ドラッ』
クレイジー・ダイヤモンドは、左拳でバオーの蹴りを迎撃するッ
バシンッ!
『やむを得ない……!』
今度はバオーの両腕から刃が飛び出して、仗助に斬りかかる!
「気をつけろ、仗助ッ!あれは、バオー・アームドフェノメノンの一つ。バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノンだ!」
ピーターが叫んだ。
バオーの繰り出す刃が、次から次へと仗助をおそうッ!
間一髪、仗助はダッキングを繰り返して、リスキニハーデン・セイバーを回避しつづけた。
「グレート……回りの木がストローをハサミで切ったミテーにスパッと切れちまった……スゲー切れ味してやがる。しかし、問題なく避けたぜ」
『ドラララッ!』
ついに、クレイジー・ダイヤモンドのラッシュが、バオーのガードを弾く。
『うわぁあっ』
バオーが、膝をついた。
とどめをさそうとする仗助に、バオーが毛針を飛ばすッ。
仗助の顔面に向かって、何十もの鋭い針が飛ぶッ
「うぉおおっ!」
クレイジー・ダイヤモンドは、スタンドの指でその毛針をすべてキャッチした。 摩擦熱に反応してその毛針に火が付き、燃え落ちた。
「あっぶねー、何だこりゃあ。燃えてていくぜ……」
「バオー・シューティングビースス・スティンガー・フェノメノン!」
ピーターが言った。
「仗助、バオーの髪の毛は体から離れると空気に反応して燃え上がるんだ。その髪を、針のように硬質化させて弾丸のように打ち出せる……気をつけろよ」
「へえぇ……コエーコエー。しかし、俺には意味の無い攻撃ッスねー」
仗助がにやりとした。
「むしろチャンス」
バシュッ……
なんと、先ほどクレイジー・ダイヤモンドがキャッチした毛針が、バオーの頭に戻って行く。
そして……
ガギィィ!
『馬鹿な……弾丸が僕の頭に食い込む』
育朗:バオーが、頭を押さえてうめいた。戻ってきた毛針が、バオーの頭部にズブズブと穴をあけ、もぐり込んでいくのだ。
「……ただ直した訳じゃねーッス」
仗助が言った。
「直す前に、ピーターさんからもらった弾丸の中に、毛針を封じこめておいたぜ……これの、自動追尾弾の威力はどうよ。このままだと、弾丸があんたの頭蓋骨に食い込むぜえ。降参しろ……そうすれば、自動追尾弾を解除してやるよ……」
『仗助ぇ!最強の生物兵器、バオーの回復力を舐めるなッ!!』
育朗が吼えた。
バオーは頭を掻きむしった。頭部に食い込む弾丸をつまみだし、溶かし始める。
「あれはバオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン かッ。しかし……指先だけから溶解液を出せる程の繊細なコントロールが出来るとは」
木の上から、ピーターがうなった。
「グレート……コイツは一体、何種類の能力を持っているんすか」
「……いや……仗助、君の攻撃は効いてるぞ。見ろ……やつは立てないんだ。脳にダメージを受けたか?」
ピーターの指摘のとおり、バオーはぎここちなく立ち上がろうとして失敗し、派手な音を立てて無様に転んだ。
『何だって…』
育朗が顔色を変えた。
ピーターが、木上から言った。
「仗助君、チャンスだ。今の内に奴にとどめを」
「了解ッス」
駆け寄ろうとする仗助に、育朗のスタンド:ブラック・ナイトが話しかけた。
『仗助君、本当に驚いたよ。君は強いなぁ』
コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ"
『一対一の勝負なんて僕が甘かった……そうさ……DIO様の復活は何よりも優先する。どんな手を使おうとも、君たちを止めなければならないんだ』
育朗が言った。うつろな声だ。
「ウォォォォォ――ム!」
バオーが叫ぶ。
すると、その咆哮に答えるように、不気味な吠え声が、仗助の背後から湧き起こった。
現れたのは、3頭の犬だ。
犬達は、バオーの前に整列すると頭を下げた。
『君たち……俺が回復するまで時間を稼いでくれ……』
育朗のスタンドがバオーから離れ、その中で一番体の大きい一体の黒犬に取り憑いた。
『僕のスタンド……ブラックナイトの能力は、『幽霊となって生物に取り憑く』こと』
育朗は、犬から上半身だけを出した格好であらわれ、腕組みをした。
「犬を操ったからって、この仗助君を止められると思っているんすか〰〰?」
『……思っているさ……彼らも『バオー』だからね』
育朗は、少し悲しげに、言った。
「な、何だってぇぇ」
┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨
先ほどの育朗と同じように、犬たちが身を震わせた。その体が膨れ、毛が逆立つ。バオーに変化していくッ!
「チッ……クレイジー・ダイヤモンド ッ!」
『遅い。モデュレイテッド……飛び掛かれ……そして、仗助のその変な《髪型》をグチャグチャにしてやれッ』
育朗が、冷静に言った。
プチンッ
「何だとゴラアァッ!!!!!!!!!!!!」
仗助が吼える。
仗助の目つきが変わり、凄みを増した。
『ドウォラララァツ!』
これまでよりも素早く、パワフルに、クレイジー・ダイヤモンドの連打が、バオーに『変わった』犬たちにおそいかかるッ。
「なんだぁとぅッ、このクソがァッッ!!」
「ヒッ……」
まるでジキルとハイド。そんな仗助の変化に恐怖の悲鳴を上げたのは、ピーターだ。
『ふっ……冷静さを失ったなッ!』
育朗は、してやったりと笑みを浮かべた。
育朗に操られたバオー・ドッグが、恐ろしいほどの速度と連携でクレイジー・ダイヤモンドの攻撃を避け、同時に仗助におそい掛かった。
黒犬と白犬が足元を、残ったもう一匹の白犬が口から触手のような物を振り回して、仗助に打ち付けるッ!
「ヴァル!」
「ガァル!」
『ドゥラァッ!』
だが、クレイジー・ダイヤモンドは、逆にバオー・ドッグの触手を掴みとり、宙に放り投げたッ。
「ギュワン!」
放り投げられたバオー・ドッグは、少し離れた立木に体をひどく打ち付け、倒れた。
残り、おそってくるバオー・ドッグは二匹ッ!
一匹は足首に食いつくと見せかけて、その直前、喉笛めがけてて飛びかかってきた。
仗助は喉笛めがけて飛びかかってきた一匹の攻撃を、生身で避けた。
『ドラッ』
攻撃を避けられ、腹を見せたそのバオー・ドッグの首を、クレイジー・ダイヤモンドが締め上げるッ。
そして……同時に攻撃してきたもう一匹のバオー・ドッグに対して………なんと仗助は、生身の『自分の拳』で迎え撃ったッ!
「ぐあぁぁぁ!」
当然生身の人間にバオー・ドッグをたたき伏せる力はないッ。
仗助は弾き飛ばされ、ピーターの登っている木に激しく体をぶつけた。
肺から息をすべてたたきだされ、必死にあえいだ。
眉間の感覚器に一撃を食らったバオー・ドッグは、ほんの一時ふらついた。だが、すぐに再び唸りだした。
クレイジー・ダイヤモンドが、手に持ったもう一匹のバオー・ドッグを投げつけるッ!
「ギャン!」
二匹のバオー・ドッグがぶつかり、悲鳴をあげた。
何とか立ち上がった仗助の右こぶしはグシャグシャにつぶれ、体中傷だらけだった。
「おおぉおおおおお!」
だが、仗助はそんな怪我など意に介さない。休むことなく、クレイジー・ダイヤモンドのラッシュを、バオー・ドッグにぶつけるッ。
『ドラララララララララララララララッッッッッ!!!!!!』
イヤ、スタンドの攻撃だけではないッ!仗助はスタンドの攻撃に織り交ぜ、自分の生身の拳、蹴り、そしいて頭突きをバオー・ドッグにぶつけていくッ!
「怒らぁぁッッッッ!」
『生身でバオーに殴りかかるなんて、無謀な……』
育朗が、あきれたようにつぶやいた。
「育朗ぉ――、テメーもぶちのめすッ!!!」
切れた仗助が、バオーに向かって駆け出したその時!
「ヴァルッ!」
物陰に隠れていたもう一匹が、仗助をおそった。
その一頭は、他のバオー・ドッグよりはるかに小柄であった。
だが、不意を突いたその突進はクレイジー・ダイヤモンドの防御をかわし、仗助の足首をはらった。
「うぉっ」
「ヴァルヴァアアアル!」
その、小柄なバオー・ドックは、一瞬バランスを崩しかけた仗助を、地面に引き倒した。
「クッ!おぉおおおおッ」
かろうじて、クレイジーダイヤモンドは、バオー・ドッグの致命的な攻撃から仗助の身を守っていた。
だが、不利になった体勢が災いして、小柄なバオー・ドッグの連撃はじわじわ仗助を追い詰めた。
いつしか仗助は、ほとんど動くことができない状況に追い詰められていた。
『フフフ……切り札は最後に見せるものなのさ、仗助君』
育朗が、その小さな愛玩犬のような犬の額から姿を現し、仗助の目の前に自分の顔を突きつけた。
『仗助君……もう一度尋ねる。この件からは手を引いて、僕たちの事は忘れてくれないかな』
「……それで、早人や億泰はどうなる……あのゾンビどもはどうなるんスか」
仗助が、尋ねた。
『……君1人だけなら助けられる』
「へぇ……そりぁあスゲ――な」
誰かのことを思い出したのか、仗助は不敵な笑みを浮かべた。
「だが悪いけど、断らせてもらうッスよ〰〰」
『……そうか……残念だよ、本当に』
育朗は下を向き、傍らに控えているバオー・ドッグに合図を送った。
バオー・ドッグは、大口を上げて仗助をかみちぎろうとした。
ボフウンッッ
と、仗助の体が浮き上がり、後方に下がっていく。
『なんだこれは?』
「クレイジー・ダイヤモンド、あんたがさっき斬った木を『直す』。その木の枝をもってりゃ、俺の体も、『元の木がある所』まで引っ張られていくって寸法っす」
仗助は、手ぐしで髪をかきあげた。
「残念だぜ。俺も、正気のアンタと話してみたかったっス」
プシュッ!
クレイジー・ダイヤモンドは、ピーターから譲り受けた銃弾を子犬のバオー・ドッグに向かって放った。
「ギャンッ!」
子犬のバオー・ドッグが、悲鳴を上げて倒れた。
『やるじゃあないか、でも、これで終わりさ。時間稼ぎも終わった。バオーは『回復した』よ……』
育朗はバオー・ドッグの支配を解除して、ふわっと離れた。
「なんだってぇ、てめぇぇー」
仗助はなんとか立ち上がり、育朗を睨みつけた。
だが仗助は、すでにボロボロに見えた。
バオー・ドックにやられた足首を引きずり、グチャグチャになった右手をだらりと下げている。
一方バオーは、まるで何のダメージも受けていないように、すくッと立ち上がっていた。
『仗助君……ずいぶん苦しそうだね。完全回復したバオーと、まだ戦えるのかい?』
「ぬかせ、さっさとかかってこい……」
仗助は言った。だが、本当のことだ。仗助は、すでに満身創痍の状態であった。
だがその時、育朗の幽霊-スタンドビジョン-がまるでTVに磁石を近づけたときのように、不意にぼやけた。
『……なんだ……バオー お前は何をしているんだ?』
そう言った育朗の声までも、擦れて良く聞こえなかった。
見ると、なんと回復したバオーが、自らの額に指を突っ込んでいた。
バオーの指先からは強酸液が滴り、自らの額に根を張った肉の芽とその周辺を溶かしている。
肉の芽の触手が苦しげにのたうち、バオーの右手にもぐり込もうとする。だが触手の動きはバオーのプロテクターに阻まれ、むなしく触手はペタン、ペタンとバオーの手を叩いていた。
その動きも、次第に弱くなっていく……
コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”
「ヤロー、自で『肉の芽』をえぐりだしていやがる。なんでだ?」
「そうか……バオーはにおいで周囲を判断する。今バオーに埋め込まれている『肉の芽』を不快なにおいと認識したんだ」
ピーターが言った。
『よせ、やめるんだバオー……それは、いいモノなんだぞ……』
育朗は薄れゆくスタンドを操り、再びバオーに取りつこうとした。
だが、バオーは肉の芽を引き抜く手を止めない。
そして……
バシュッ!
バオーは、肉の芽を完全に引き抜いた。肉の芽はメッティルデン・パルム・フェノメンによりあっという間に溶かされていき……その直後、バオーは突然前のめりにバタンと倒れた。
倒れたバオーの体が、一回り小さくなる。そしてその姿はミルミルと元の育朗の姿に戻っていく。
『ドラッ』
クレイジー・ダイヤモンドが、地面に落ちた肉の芽をすりつぶした。
その瞬間、育朗の幽体から『憑きものに取りつかれたような』表情が消えた。
スタンドの像がいよいよ薄くなっていき、やがて姿を消した。 と、同時にバオー本体の変身も解け、生身の育朗が姿を現した。
しかし、育朗はピクリともしなかった。
ピーターが木から降りてきて育朗の様子を診断した。だがピーターは、すぐにうなだれて首を振った。
「残念だよ。肉の芽は引き抜かれるときに寄生者の脳を傷つける。脳を傷つけずに肉の芽を引き抜けるのは、知られている限りでは 承太郎博士のスタンドだけだ……残…念だよ……だが、育朗クンは、もうおしまいだ」
ピーターは、悔悟の表情を浮かべた。
よくても一生障害が残る。最悪、植物人間か……
ところがピーターのその話を聞いて、むしろ仗助はニヤッと笑った。
「いいやグレートだぜ、これで、育朗クンも無事に元に戻る事が出来るんだからなぁ〰〰」
仗助は倒れている育朗に近づき、頭部にクレイジー・ダイヤモンドの一撃を加えた。
メキュ―――-ンッ
すると次の瞬間、育朗の頭部の傷が消え去った。
「これは……噂による君の力か?」
ピーターが目を丸くした。
「先程までピクリとも動かなかった育朗君が、今はゆっくりと呼吸を続けている。素晴らしい、これなら彼は助かるだろう」
「ふぅー……さて、早人達を追いかけるっすかね。ピーターさんは怪我ないっすか」
仗助は額の汗をぬぐい、櫛を取り出して乱れた髪型を整え始めた。
カラ……カラ、カラカラッ……
と、育朗の足元や育朗の周辺に、複数の小石が転がって来た。
「なんだぁ〰〰」
仗助はなんとなしに小石をつかもうと、一歩踏み出した。
その小石に手りゅう弾のような持ち手がついている……
「ジョ……仗助君……」
突然、ピーターが恐怖に満ちて、ガタガタと震えだした。
「あそこに……」
ピーターは川沿いにある大岩の頂上を指差し、そして後さずりして逃げ出した。
そこには、1人の男が立っていた。全身にまるで、蜘蛛の巣のような網目のタトゥーを入れた、奇妙な格好をした男だ。
コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”
「何だぁ〰〰?」
仗助は、その男から発せられる異常な『恐怖』に少し戸惑いながら、言った。
「……東方仗助、バオーを倒すとはな……思ったよりもヤル……だが、これで終わりだッ」
男が宣言した。
同時に、仗助の手にある小石についていた『ピン』が、するりと抜け落ちた。
「何かヤバい!!」
仗助が叫び……小石が『爆発』した。