仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー) 作:ヨマザル
1999年 11月 9日 午後[M県K市 M山近郊]:
丸木車はスピードを上げ、後を追ってくるハンターを瞬く間に振り切った。
それから 2時間程走っただろうか、海を目指して進んでいた丸木車が、不意に止まった。
「どうしたの?」
「大分海に近づいたわ……だから、私はここまでよ」
アリッサの問いに、アンジェラが答えた。
「ここまでくれば海岸までもう少し。後ちょっとで、SW財団の方々から送られてくる救援を待つだけになるってわけ。たぶんもう危険はないわ」
「あなた、何言ってるの?」
「本当に悪いと思っていますが、でも、丸木車での移動は終わりにさせてください……私はまた出発地に戻るわ……戻って仗助を助ける!」
アンジェラが宣言した。
「本気なの?」
「……ハイ」
「へぇえ~~お前、怖くて逃げたんじゃあ無かったのかよォ~~じゃあ俺も行くぜぇ、残った二人を助けによォ~~」
億泰も、日本語で宣言した。
億泰には、英語でかわされる会話は一切わからない。だが話の雰囲気と、『仗助』と言う名前が出たので、アンジェラとアリッサが『仗助を助ける』為の話を始めたと理解したのだ。
「俺はスミレ先輩も、仗助のアホも助けなきゃならね~~だから俺も一緒に引き返すぜェ」
「なんだ?彼はなんて言ってるんだ」
ポルナレフが首を傾げた。
「ポルナレフさん、億泰さんは自分も引き返すといっています」
未起隆が、億泰の日本語を翻訳した。
「僕も行きますよ……スミレ先輩を助けないと。それに、億泰さんが行くのなら通訳もいるでしょうし」
「……俺もだ……俺も、行くぜ」
噴上がガタガタ震えながら言った。
「そもそも俺がいなければ、スミレを探せないだろ……育朗のスケを探すのに協力するぜ〰〰アイツらを探せるのは、俺のハイウェイ・スターだけだからなぁ」
「まて、まだ早いぞ」
ポルナレフが異を唱えた。
「まだ、安全な場所とは言えない。もう少し動いて、全員が隠れられる場所まで動いた方がいい」
「ヘッ……おあつらえ向きに、ここから3Km離れたところに丁度いい隠れ場所があるぜぇ――」
ホル・ホースが地図上の一点を示した。
「海から突き出た小さな岬がある。ここなら守るによさそうだ」
「アホか、袋小路じゃねーかッ」
「いいや違うぜ。確かに袋小路に見えるが、よく見ろ、岬の周りはすべて高い岸壁に囲まれている。防護にはもってこいの場所だゼ」
そこまで早人達を連れて行ければ、守るのもグッと簡単になる。 ホル・ホースは、ポルナレフに反論した。
ポルナレフと、ホル・ホースの二人は軽く口論を行った後で、アンジェラを取り囲んだ。
「なあベイビー……もう少しだけ、我慢してくれ」
ポルナレフが、アンジェラのほうへ顔を突き出した。
ホル・ホースが、アンジェラの腕に手をやった。
「ガキどもも、落ち着けよ。ヒヒッ。安全なところまで移動したら次に仗助を助けに行くぜ……まずはやるべき事を一つ一つやるってぇわけよ」
アンジェラは釈然としない様子で、なにか口を開こうとした。
「レディ……気持ちはわかる。だが、もう少しだけ移動しよう。そうすれば、我々の半数を仗助の保護に振り分けられる」
ポルナレフはホル・ホースを押しのけ、アンジェラの肩をそっと抱えた。
「でも、スミマセン、いくらポルナレフ先輩の意見でも私には受け入れられません……こうしている内にも仗助が助けを必要としているかも……」
二人を振り払うために身をゆすりつつ、アンジェラが言った。
「我がままなのはわかっています。でも、やっぱり、私は仗助を探しに行きますッ!」
アリッサは腕組みをして、アンジェラにつめよった。
「ねぇ、ちょっと待ってよ……私たちもピーターと仗助君の事は心配よ……でも解って欲しいの……戦闘班が去った後で、もし一匹でもハンターが残っていたら、私たちは……」
虐殺されるわ、とアリッサは早人の方を見ていった。ここにいるのは大人だけじゃあないのよ。
「解ってますよ」
アンジェラが頷いた。
「だから、私1人で行きます」
「そりゃあ駄目だぜ、ベイビー。みんなで行くか、行かないかだ」
ホル・ホースが首を振った。
「みすみす、お前を死なす訳にはいかんぜ」
「構いませんッ!私は命を賭ける覚悟です!!」
「『私は命を賭ける』などと簡単に言うな!」
ポルナレフが一喝した。
「簡単になんて考えてませんッ!」
アンジェラが怒鳴り返した。
「だから、私1人で行くって言ってるんですッ!」
アンジェラも一歩も引かない。
ガクセー達と、大人たちが束の間、にらみ合った。
と、その時 川尻早人が手をあげた。
「僕も……仗助さんを助けに行くのなら、僕も一緒に行きますッ」
「何を言ってんの……ダメ危険なのよ」
アリッサが、言語道断とばかりに首を振った。
「私たちは、あなたのお母さんと約束したのよ。あなたを危険な目に合わせないってね」
「でも、僕も……僕だって仗助さんを助けたいんですッ!」
ポルナレフは、顔をほころばせた。
しゃがんで早人の肩に手を置いたポルナレフは、一言、一言、早人に言い聞かせた。
「早人クン……君は勇敢だな。尊敬するぜ。だけど、こういう役目は大人の仕事だ。俺たちに任せてくれないか」
勇敢なガキだな。なあ?と、ホル・ホースが意味ありげにアリッサに笑いかけた。
アリッサは頑なに顔を強ばらせ、ホル・ホースの視線を避けた。
「じゃあ、スタンド使いの皆さんが、皆で仗助さん達を助けに行ってください」
早人は、真っ赤に紅潮した顔で言った。
「僕の……僕たちの事は心配入りませんからッ」
「……早人クン……」
しゃがみ込んだままのポルナレフが、早人の顔を覗き込んだ。
「だがいいのか?君は……今言ったことがどんなに危険か、本当にわかっていて、それでもそう言ってくれるのか?」
「……本当は怖いです」早人が言った。
「でも、もし今仗助さんを見捨てたら、僕は自分が絶対に許せないんです」
「早人クン……気持ちはわかるけど、いい考えだと思わないわ……危険なだけよ」
アリッサが早人を翻意させようとアレコレ話しかけた。
だが早人の決意は固い。ついにはこれまで黙っていたシンディまでもが早人の意見に同調したことで、アリッサは不承不承うなずいた。
「わかったわ、アナタ達はドレスと決着をつけにいく。後は我々3人の民間人で何とかしろってことね」
何とかしてやろうじゃあないの。
「いや、いや、誤解だぜ」
ポルナレフがあわてて言った。
「君たちの護衛に、二名のスタンド使いを残す」
そういうと、ポルナレフは未起隆とホル・ホースに、ここに残って彼らの護衛につくように頼んだ。
「でも……」
ためらう未起隆に、アンジェラが話しかけた。
「未起隆クン……あなたたちが早人達を守ってくれれば安心だわ。そして、杜王町のほかのスタンド使いたちに連絡を取って、万が一私たちが撃ち漏らしたゾンビどもが出たときには、アナタたちが町を守ってね。えぇ――とそれから、億泰の通訳は、私がやってあげる」
「……わかりました。早人サン達は、私とホル・ホースさんのコンビで守ります」
未起隆は、しばらく考えてからうなずき、『責任重大ですね』と、顔をこわらばせた。
もちろんホル・ホースは、二つ返事で残ることを了承した。
「決まったな」ホル・ホースが言った。
「行くのは、ポルナレフ、億泰 それからアンジェラと噴上……ここに残るのがアリッサ、シンディ、早人、未起達、それに俺様だ。 ヒヒヒヒッ……心配するな、俺がゾンビどもに負けるわけがねぇ。ちゃんと全員無事に脱出させてやるさ」
「……お願いします」
アリッサが頭を下げた。
「さて、行くか」
ポルナレフが残った一行を振り返った。
「いいか、勝手な行動をするなよ。1人の勝手な行動が全員の足を引っ張るからなッ!このまま、キャンプのあった場所まで引き返すぜ」
ポルナレフは丸木車に飛び乗った。 そのあとに続き、他のスタンド使いも丸木車に乗り込む。
「気を付けて……それから、絶対仗助さんを助けてねッ」
再び逆方向に動き出した丸木車に向って、 早人が大声で言った。
「任せなサィ~~」
億泰が早人の方へ振り返り、胸をたたいてみせた。
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1999年 11月 9日 夕刻[M県K市 名もなき高原]:
「ウグッッ!」
何とか怪物を倒した後、スミレはその辺の適当な枝を切りとった。歯を食いしばり、切り取った枝を折れた腕にしばりつける。添え木とするためだ。
右腕はひどく折れているようで、振り回すと脂汗が流れるほど傷む。だが、まだ何とか我慢できる。
自分の治療を終えた後、スミレはWitDを飛ばし、近くに他の怪物が残って居ない事を、そしてエルネストと東方仗助の一行がこの場を完全に立ち去った事を、慎重に、何度も何度も確認した。
そして、何かおかしな兆候があったらいつでも逃げだせるよう注意しながら、慎重に爆発の跡地へと忍んでいった。
爆心地と思われる場所を、自分の目で調べてみる事にしたのだ。
今、自分がやるべきなのは この場に残って他の被害者が残されていないか調べ、救出する事だ。
スミレは自分にそう言い聞かせると、WitDを出現させた。そして、自分の目とスタンドの感覚の両方を使って、爆発の跡地を注意深く調べていった。
得体の知れないものに寄生させられた仗助も、心配だった。だが、少なくとも仗助には当面命の心配はない。ならば今は、まず目の前の惨状の中に生存者がいるかどうか、捜索するのが先だろう。
(……育朗は無事なの……まさか?)
探し続けるスミレは不安、いや、抑えがたい恐怖を必死で押さえつけて、WitDの操作に集中していた。WitDの予知では、確かに育朗がここにいた筈なのだ。
(もし育朗がこの瓦礫の下に埋もれていたら……)
いくろう
何処にいるの?
今助けるから、待ってなさい。
不安に身を震わせながらも、疲労困憊の体に鞭を打ってスミレは必死に捜索を続けた。
スミレは、体中を泥だらけにし、爪を割り、瓦礫をめくり、地面を掘り返し続けた。出てくるのは、土くれや倒木、石ばかり、ごく稀に先ほど倒したのと同じような怪物の遺体を掘り当てるばかりだった。
もう半日は探し続けているが、探している生存者は見つからなかった。
(もう…だめなのかしら……)
あきらめ、悲嘆にくれかけていたころ、WitDが瓦礫の山の切れ目、渓流のふもとに生きている人の気配を感知した。
WitDからの知らせは、スミレの胸の奥にポッと暖かい火を灯した。
(育朗なの?)
スミレは心弾ませてWitDが感知したあたりに移動した。
そこは、巨大な岩が崩れた個所だ。すぐ近くで割れた岩が渓流をせき止め、小さなダムを作っている。
ガリっ、ザッ…シュッ! ザッ!
スミレは、WitDが指し示す場所を、一心不乱に掘り進めた。
素手で土を掘る。
瞬く間に瓦礫に埋もれている硬い石や、砂利がスミレの手を痛めつけ、爪を割り、指先を血で真っ赤に染めた。左手だけでは、掘り進めるのに時間がかかる。スミレは、折れた腕も使った。折れた腕は動かすたびに、悲鳴を上げる。
だが、スミレはそんな痛みには全く注意を払わず、ただひたすらに瓦礫を掘り続けた。
怪我なんて、かまうものか。
あれから ――育朗と鍾乳洞で別れてから―― 長い時が経っていた。 もうスミレも、あのころのようなちっぽけな少女ではない。
だが今でもスミレは、いまも変わらず、彼の顔を、声を、立ち振る舞いを、そして香りを、まるで目の前にいるかのように、くっきりと脳裏に蘇らせる事が出来た。
これまでの8年間の間に、育朗に話したい事を沢山ためていた。
小さなころ囲炉裏を囲んで聞いた、六助じいさんの話がどんなに面白かったか。森の奥深いところにある小さな渓流が、森がどんなに美しいのか。今、どれだけ素敵な仲間たちに囲まれているのか。そして、どれだけまた会いたいと思い続けていたのか。
高校で自分がモテていることを知ったら、育朗はどんな顔をするのだろう。ちょっとは焼きもちを焼いてくれるだろうか。そんな想像までして、スミレはちょっと顔を赤くした。
「ううっ」
!近くで人のうめき声が聞こえる ――怪物の声ではない―― すぐ足元からだ。
スミレは高鳴る胸をおさえつつ、しゃがみ込み、両手で瓦礫を掘り返した。
固い土を掘り、岩を取り除いていく。WitDからの情報によると、あとほんの少しで上にかかっている土を取り除くことができる。
もう少し
もう少しだ
ひときわ大きい瓦礫をのけると、瓦礫の奥に空間が見えた。その空間の奥には……横たわる人の胴体があるッ! 胴体は規則正しく動いている ――男物の服を着ている――
彼は生きている!
間に合った!
「育朗!!」
スミレは最後の力を振り絞って、男の体を覆う瓦礫を取り除いていった。