仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー)   作:ヨマザル

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スタンド図鑑:

スタンド名:ラブ・デラックス
本体:山岸由花子
外観:髪の毛 または 髪の毛が集まってできた黒い『人形』や『ぬいぐるみ』
タイプ:一体化型
性能:破壊力-B / スピード-B /射程距離-C / 持続力-A / 精密動作性-E / 成長性-B
髪の毛を自在に伸ばしたり、動かしたりする能力。髪の毛は家一つ分を覆うほどの長さまで伸ばすことが出来る。今作では、髪の毛を固めて『人形』や『昆虫?の形』等を作り出し、それを操ることも出来るようになっている。(直、髪の毛を固めた『人形』の姿は MUMU様の作品:ジョジョの奇妙な冒険 第4.5部 ‐DOMINATED GIRLS‐(@arcadia)の ラブデラックス・ノワールをご本人の許可をいただいた上でお借りしています)



スタンド名:エコーズ
本体:広瀬 康一
このスタンドは非常に特殊で、以下のようなそれぞれ能力の違う3形態を使い分けることが出来る。

Act-1
外観: 尻尾の生えたエイリアンの幼生体
タイプ:遠距離操作型
性能:破壊力-E / スピード-E /射程距離-B / 持続力-B / 精密動作性-C / 成長性-A
射程は50Mほど、物体に音を張り付け、その音を繰り返し響かせる能力を持つ。

Act-2
外観:小型の四足の獣が立ち上がった姿
タイプ:遠距離操作型
性能:破壊力-C / スピード-C /射程距離-B / 持続力-B / 精密動作性-C / 成長性-A
物体に音(擬音)を張り付け、その効果を体感させる能力を持つ。射程はAct-1と変わらないという説もあるが、今作ではAct-2はAct-1の半分弱(20M)の射程と言う設定とする。

Act-3
外観:小柄な人型
タイプ:近距離パワー型
性能:破壊力-B / スピード-B /射程距離-C / 持続力-B / 精密動作性-C / 成長性-A
射程は5Mほど、殴ったモノを『重くする』能力。


寄生虫バオー その1

『それ』はまだ幼体だった。ただ本能に導かれ、安全な『家』を、『繭』を欲していた。

『それ』は本能に支配され、高度な知性を持っていなかった。

『それ』は無力であった。単体では、ただ、ただ種の保存本能に導かれ、周囲をうねり這いずり回るだけの存在でしかなかった。

 

繭として選んだ宿主に身を委ね、その身と子を守るのが、『それ』の生存戦略であった。

だからこそ、『それ』は自ら動き、生存競争を戦うかわり、 宿主にその種の限界を遥かに超える程の戦闘能力を与えるのだ。イヤ、より正確にはその『キッカケ』となる『モノ』を宿主に与えるのだ。

 

その『モノ』を宿主に与えるため、『それ』はゆっくり、ゆっくりと繭の体内に糸のような神経節や分泌管を伸ばしていた。

糸は繭の体に繋がり、『それ』と繭をつないでいく。

糸を介して『それ』は繭から生存に必要な養分を吸収した。そして、ほんのちょっぴりではあるが繭と『それ』は感覚を、知性を、そして感情さえも糸を介し共有していった。

 

それは、元々は宿主の危機に際して、「宿主」に力を貸せるようにするためのモノであった。

 

『それ』は繭:宿主の体内を居心地良く感じ、そこに潜んでいられることに十分満足していた。

宿主は『それ』にとってまさに理想の繭だったのだ。

 

『それ』の本能にプログラミングされた価値観によれば、宿主とはあくまで、子を育て、我と子を守るための使い捨ての繭でしかないはずだった。

やがて時が来て、子を産むときが来れば、『それ』は『宿主』に無数の卵をゆだねる。

卵はやがて『宿主』の中で孵り、生まれた無数の子達は『それ』と『宿主』をともに喰らい、成長し、そして外の世界に出ていく。

 

世界を覆い、喰らい尽くす為に。

 

……それが、本能にプログラミングされた、本来の『宿主』の使い道だった。

 

そして本来『糸』は、『それ』の身を守るために、宿主に力を与えるための道具でしかなかった。

だが、その宿主は強固な意志を持っていた。いつの間にか、『糸』を通じて宿主の感情が、意思が、『それ』に伝わり、いつしか『それ』は本能からの指令に加えて、宿主の意思を尊重して、動くようになっていた。

 

かつて『それ』と宿主は力を合わせ、自らと 宿主が守りたいと思うモノを取り戻すため、共に戦いもしたのだ。

 

だがその後、理由もわからぬまま突然宿主が呼吸を止めた。だから『それ』は、我と子を守るために、宿主の命を救うために、宿主を仮死状態にし、子をゆだねるのを止め、自身も眠りに入った。長い、永い眠りに。

 

そしてその眠りの間も、糸はゆっくり、ゆっくりとその数を増やし、宿主と『それ』とを繋ぎ続けた。

その繋がりは、徐々に強固になっていった。いつしか、『それ』:寄生虫バオーにとって、宿主はただの繭ではなくなっていた。

 

そしていま暗闇の中で、再び宿主が呼吸を止め、眠りに落ちようとしていた……

もはや寄生虫バオーは、宿主と一心同体であった。寄生虫バオーは、自分の体が溶けていくような心地よい まどろみの中に堕ちていった。

 

ハズであった。

 

-----------------------------------------------

 

1999年11月10日 夜:[M山近郊]

 

「Garuuuuu」

 

ネリビルは、何者かに担ぎ上げられた状態で目を覚ました。

何事か?と周囲を確認して、ネリビルはほっと息をついた。

意外なことに、ハンターがネリビルを運んでいるのだ。

本体であるネルビルが気絶している間に、ネルビルのスタンド:カントリー・グラマーが周囲にまだ少し残っていたハンターたちを呼び寄せたのだろう。

 

「そう、いい子ねぇ」

ネリビルは、自分のスタンド:カントリー・グラマーの喉をくすぐった。

 

「なんだよ……お前のスタンドも、俺のスタンド同様に勝手に動けたのかぁ?」

いつの間にか、テイラーも目を覚ましていた。ハンターの背中に揺られていることに気が付いたテイラーは、バニックになりかけ……ネリビルの馬鹿にしたような視線に気が付いた。

「お前、ホントの能力を秘密にしてやがったな……だがおかげで助かったぜ。ヒヒヒヒ」

 

「あら、この子が勝手に動けるなんて、今まで知らなかったわ――私のスタンド能力もまだ成長しているのよ」

ネリビルは目をわざとらしく見開き、眉毛をぱちぱちとさせた。

 

そうかよ……テイラーは、肩をすくめた。

「まぁいいぜ……それで、俺たちはどこに行こうとしているんだ?まあ、地獄へ……って訳じゃあないだろうがよ……」

イヤ……テイラーは、はき捨てるように付け足した。

「まあ、何処であれ俺たちのいる処が、地獄か……」

 

(そうよ……この地獄から逃れるために、私たちはDIO様におすがりするしかないの)

ネリビルは心の中で呟いた。

飛び交う弾丸、爆発音、血、自分をつかむごわごわした毛むくじゃらの手……子守唄代わりの泣声……

地獄と言う言葉から、うっかり幼少時の記憶を思い出しかけ、ネリビルはブルブルッと首を振った。

 

忘れるのよ。

あの、かわいかった、光を信じていた幼子はもうどこにもいない。

今の私は、DIO様のしもべ……

それが、私の幸福……

 

物思いにふけるネリビルの横で、テイラーは話し続けていた。気もそぞろなネリビルの様子には、気づいていないようだ。

「――ところで俺は、ユンカーズを解き放っておいたぜ。だからあの二人――億泰と噴上――の方は問題ないってわけだ。もうすぐ、確実に始末できる」

テイラーはにやっと笑った。

「今頃、ユンカーズは奴らが倒したハンターやゾンビ共を『喰って』とんでもねー力を蓄えてるはずだからな――つまり今のところ、俺たちは自分たちの身の安全だけ考えて動けばいいってことよ。できれば、なんとかしてDIO様と合流したいもんだが」

 

ハンターたちは、森の奥へ、DRESSの基地とは反対方向に移動しているようだった。

 

一度、ネリビルは、ハンター達を基地の方へ向かわせようとした。だが命令を下す直前に気が変わり、そのままハンターたちが進みたい方向に、ただ進ませていた。その方が、距離が稼げると考えたからだ。

 

もう少し経つと、日が登り始めるハズだ。ネリビルは、焦り始めていた。早く日中も日陰になる場所を探さなければ、おしまいだ。できればこのまま、森の中の鍾乳洞にでも隠れた方がいい。

もし、DIO様のお近くに早く戻りたいとかなんだとか、テイラーがうるさい事を言ってきたら、テイラーの奴は喰ってしまおう。何も身を隠す場所がないところで、みすみす朝日を迎えたくはない。

 

フレッシュなテイラーの血……ゴクリ とネリビルのどが鳴った。

 

日が登る前に安全な処に隠れるためには、もう少し早く移動する必要があるだろう。

ネルビルはカントリー・グラマーに命じて、追加で何体かのクリーチャーを呼び寄せさせた。

 

     ◆◆

 

「Gxyzuaaaa!」

「Dbyazagazyatede!」

クリーチャー達は、カントリー・グラマーの呼び声にこたえて続々と現れた。一体、また一体と森の中から姿を現し、一行に合流していく。

クリーチャーの数が増えるたびに、ネルビルは新たにやってきたクリーチャーに命じて、自分とテイラーを担がせた。そうして、そのクリーチャーに体力の限界まで道を急がせる。クリーチャーがつぶれそうになったら、また新しいクリーチャーに二人を運ばせる。

これで少しは早く進める。後少しで、あらかじめ森の中に用意していた避難所に、たどり着けるはずであった。

 

だが

 

「Garyyuuuuuuu!」

突然、聞き覚えのないクリーチャーらしき咆哮が、聞こえた。近くからだ。

戦いを前にしたときの様な殺気が込められた咆哮。しかも、あきらかにハンターの鳴き声ではなかった。

 

ネリビルは周囲をよく見ようと、自分を担いでいたハンターに命令した。ネリビルの命令に答え、ハンターは、上半身だけとなったネリビルの体を、上に掲げる。

一見、周囲は静かだった。ジョースターの血族達がおそってくる気配もない。

 

だが『何か』おかしい。

 

ガチャッ!

「Barururur……」

 

と、背後から何か聞こえた。

枯葉が擦れる音、岩が落ちる音、そして、うなり声だ。

ネリビルがあわてて振り返ると、そこにいたのはハンターではなかった。

 

「馬鹿な……アンタ、生きてたって言うの……」

ネリビルは、かすれ声でつぶやいた。

 

そこにいたのは、まるで黒い狼のような獣だった。その獣は、まるでホラー映画の怪物のように、下半身がうねうねと動く触手に覆われている。

バオー・ドッグだ。

コイツは忘れもしない、ネリビルに反旗を翻し、両腕を奪ったあのバオー・ドッグであった。

いや、『あの時』は、普通の犬の大きさだった。だが今は、ホッキョクグマ程の大きさになっている。変わりすぎだ。

モデュレイテッド・バオーの回復能力が、暴走した結果なのだろうか。

 

「Garuuu……」

バオー・ドッグは黄色い目でネルビルを睨み付け、牙を剥いた。

モデュレイテッド・バオーの回復能力が異常発現したその姿は、 まさに怪物だった。

 

「おい、ネリビルッ。テメェ何を呼び寄せやがった?」

テイラーが、泣き声を上げた。

黙ってな。

ネリビルは、テイラーを無視して、バオー・ドッグ……であった怪物を、睨み付けた。

 

「何?アンタやるってぇの?ご主人様に向かって……生意気ね」

ネルビルは、精神を集中させた。

以前この怪物が歯向かって来たのは、理由がある。あの時は、暴れまわるバオー・ドッグに心の何処かで『恐怖』を抱いてしまったのだ。

だからあの時は、カントリー・グラマーの能力が、十分に発揮出来なかった。

 

しかし今は違う。DIO 様の眷属、屍生人(ゾンビ)として生まれ変わった私に、恐怖など無いのだ。

 

『キュァアアアア!』

カントリー・グラマーは、これまでで最も甲高く、大声量の金切り声を上げた。

その金切り声には、周囲の動物を支配する力がある。

声を聴いて、近くのハンターたちが、ビクッと身を震わせ、地に伏せた。

バオー・ドッグも、体をこわばらせる……

これで大丈夫……この怪物も支配出来るはず。

ネリビルは、にやりとした。

再びバオー・ドッグをしもべにできたら、戦力が大幅に上がる。もう、逃げなくてもいいだろう。

――だが、その怪物は、ブルブルと身を震わせると、声など聞こえていないように、動き出した。カントリーグラマーの金切り声に、一切反応しないッ!

 

「馬鹿な……」

 

「Giphyaaaruuuu 」

バオー・ドッグは奇妙な唸り声を上げながら、テイラーを運んでいるハンターに、おそいかかった。そして、あっさりとハンターを蹴散らす。

テイラーが、地面に放り出されるッ。

 

「チッ」

地面に落ちざま、テイラーが口をプッと膨らませた。ユンカーズを、バオー・ドッグに向かって吐きかける。

 

「Gyaruruuuuuuu!!」

 

バオー・ドッグの頭に、ユンカーズが喰らいつくッ!

ユンカーズは、それぞれ身をくねらせ、捩じった。バオー・ドッグの頭に歯を立て、穴をあけて体内に入り込もうとする。

 

「の……の、脳みそを吸い尽くしてやるぜぇ~」

俺のユンカーズは、オリジナル・バオーさえも倒したんだゼ。

テイラーが震え声で強がった。

 

しかし……バオー・ドッグはブルッと苛立たしげに頭を振ると、全身から毛針:シューティングビースス・スティンガーを、発射した。

 

ブシュッ!!

ブシュッ!!

ブシュッ!!!!

 

バオー・ドッグの頭に喰らいつこうとしていたユンカーズは、皆、至近距離からシューティングビースス・スティンガーの直撃を受け、弾き飛ばされ、地面に縫いとめられた。

 

ボッ

 

そして、地面に縫いとめられたユンカーズは、シューティング・ビースス・スティンガーの発火現象に巻き込まれ、あっという間にすべて燃え尽きていった。

 

「げぶっ……ばっ……ば……か…なぁ」

テイラーが、喉をかきむしった。

一本のビースス・シュティンガーが、テイラーの喉を貫いていたのだ。

 

「Vuoooooo……!」

同時に、ネルビルをかついでいたハンターも、毛針の攻撃を受けていた。

毛針は空気と反応して燃え上がる。その炎に焼かれ、火だるまとなったハンターは、ネルビルを地面の上に放り出した。

 

「クッ……」

ネリビルは、必死に地面をかきむしり、なんとかバオー・ドッグから離れようとした。

 

バオードッグは、ネリビルではなく、テイラーに目を付けていた。テイラーに向かって、バオー・ドッグが近寄っていく。

そして、無造作にテイラーの右足を踏みつけ……

その足を、体表から発生させた酸で、グチャグチャに溶かした。

「なっ……ぎぃやあああ!!」

喉を貫かれたにもかかわらず、テイラーが悲鳴を上げた。

「やめっ…止めッ……あぁぁ ぁぁ ぁぁ ぁ」

 

「Baruxu、Barurunn……」

バオー・ドッグは大口を開けた。そして、すすり泣き、悲鳴を上げるテイラーを、あっさりと頭から一飲みにし始めた。

まずテイラーの頭が、肩が、腕と胴体が……そして最後に時折ビクビクと震える足が、バオー・ドッグの口の中に消えて行った。

 

「やめなさいッ!」

ネルビルはカントリー・グラマーを飛ばし、バオー・ドッグに命令した。

「テイラーを、吐き出しなさいっ!」

 

だが……バオー・ドッグはカントリー・グラマーの命令には一切注意を払わず、逆にカントリー・グラマーを、前足で踏みつけた。

 

「グハッ」

スタンドが踏みつけられたフィードバックが、ネリビルを襲った。ネリビルは、地面に押し付けられ、這いつくばった。

何故、バオー・ドッグがスタンドを触れるの?

……ネルビルの疑問は、バオー・ドッグが口からテイラーのスタンド、ユンカースを吐き出した事で解決した。

あああ……なんてこと、この怪物はテイラーの頭をDISCごと喰ったのだ……

 

絶望に染まるネリビルが最後に見た光景は、大きく口を開けた、バオー・ドッグの巨大な牙だった。

 

――――――――――――――――――

 

1999年11月10日  夜 [R峠]:

 

緑深い山々の針葉樹の森に、紅葉した広葉樹の葉がまるで雨のように降っていた。

スミレとアンジェラが意識不明の二人 ――虹村億泰と噴上裕也―― を見つけたのは、その森を通る山道の上であった。

無事にアジトを抜け出すことに成功したスミレとアンジェラは、スミレの予知に従って億泰と噴上を探し山道を走った。そして、山道をだいぶ進んだ先、下り坂が終わり、丁度廃村が見下ろせる所で、ついに二人を見つけたのであった。

 

「億泰クンッ! 噴上クン! 目を覚ましてッ!」

スミレは、意識不明の二人に向かって必死に話しかけた。だが、二人ともまったく反応がない。

 

コォオオオオオッ……コォォオオオオオオオオオオッッ

 

スミレの隣では、アンジェラが二人の手を握って、生命のエネルギー『波紋』を流し続けていた。

 

だが、いくら『波紋』を流しても、呼びかけても、二人はまったく目を覚まさす気配がなかった。二人とも呼吸はしっかりしているし、心臓も規則的に動いている……だが何をしても無反応なのだ。

 

「まさか、二人がやられているなんて……」

スミレは激しい後悔の中にいた。やはり、自分1人で育朗を探しに行くべきだったのだ。関係ない人をムリヤリ連れてきたスミレが、すべていけなかったのだ。

 

だが、だからこそ、何としてでも二人を助けなければ。

 

まず、スミレは二人を乗せきれる大きさの板切れを探すことにした。板切れがあれば、何か二人を乗せる担架のようなものを作ることが出来る。二人を担架に乗せることが出来たら、アンジェラのスケーター・ボーイで二人を安全な場所に動かせるはずだ。

この森の中ならば、丈夫な木などいくらでもあるはずだ。スミレはWitDを上空に飛ばし、何か担架の材料に使えるものが無いか探させた。

 

だが……WitDは、担架となる素材を見つけるより先に、3台のバイクがこちらにやってくるのを感知した。

そのバイクがやって来る方向は、まさにスミレたちが逃げてきた所、Dress の基地のある方角からであった……

「ねぇ、アンジェラ……」

 

スミレの警告に、アンジェラもうなずいた。

「ワタシにもバイクの音が聞こえてくるわ……追っ手?それとも、ポルナレフさんかしら」

 

「……違うわ、来るのはどうやら『敵』ね……どうやら上の方から来るみたいよ」

スミレはジーンズにはさんでいた拳銃を引き抜き、安全装置を外した。昔、六助じいさんに教わったように拳銃を両手で構え、静かに近寄ってくる敵を待つ。

確かに拳銃は猟銃とはまるで扱い方が違う。だが、WitDで『構えた方向に発射した場合』の『結果』を予測すれば……

 

「噴上クンと億泰をここに置いてはいけないわ……誰であろうと、ここで戦わなければ」

たぶん、ポルナレフさんは倒されたのだろう。あの凄腕のポルナレフさんを倒す程の敵と戦わなければならないなんて……アンジェラが唇をかんだ。

 

スミレは、WitDがさがしだしてきた倒木の位置を、アンジェラに教えた。

「アンジェラ、億泰と噴上クンを安全な場所まで連れてって……あなたのスケーター・ボーイなら時間かからないはずよ……私は、私はここで奴らを足止めする」スミレが言った。

「担架にするのにちょうどいい木の枝が、そこに転がっているわ。億泰達をそこのせて、安全な所に連れて行ってほしいの」

 

「……わかったわ、すぐ、戻ってくる」

アンジェラは、スミレの見つけた倒木に『車輪』を出現させ、億泰と噴上の体をその上に乗せた。そして、二人をつれて山道を下って行った。

 

     ◆◆

 

ブルルルルッ

 

アンジェラに億泰と噴上を託したスミレは、1人で拳銃を構え、敵を待ち受けた。

やがて、バイクのエンジン音が聞こえ、そしてスミレの視界に、三台のオフロードバイクが見えてきた。

ノーヘルのライダー達は、遠目からでもどんな様子かよくわかる。

 

どう見てもライダーたちは、絶対に堅気のバイク乗りではなかった。

1人はエルネスト、他の二人は……1人は男性、もう1人は女性だろうか?

その二人とも3メートル近い巨体に、黒革のロングコートをまとっていた。

明らかにただの人とは思えない。

 

その1人、大柄な男の方がバイクを止めた。

「Guiiiiiixtu !」

男はバイクから降りると意味不明な叫び声をあげた。そして、なんと300Kg近くある ビッグオフロードバイクを片手で持ち上げ……スミレに向って、投げつけてきたッ!!

 

「!?」

しかもそのバイクには、何か『巨大な手榴弾の信管の様なもの』がついている事をWitDが知らせてきた。

WitDが警告したという事は、その『信管の様なもの』は危険なのだ。おそらくエルネストのスタンド、オエコモバがそのバイクを爆弾にかえたのだ。

 

もう逃げる時間はない。

 

バシュ!バシュ!

 

他に手はない。

スミレはバイクに向って二発弾丸を撃ち込んだ。

WitDによる予知の補正を借りて、弾丸は狙い過たずバイクに着弾するッッ

 

ドッゴォオオオン!!

 

バイクは弾丸が着弾した瞬間 ――ちょうどエルネストとスミレの中間点で―― 爆発した。

 

「なッ……」

爆風に吹き飛ばされたスミレは、すぐ目の前に黒づくめの大男がいるのに気が付いた。先程バイクを投げつけて来た男だ。

大男は、爆風から身を守ることもせず、足元にいるスミレめがけて飛び降りて来たのだ。

 

ズギュ――ンッ

スミレは飛び降りてきた大男に向って、再び拳銃の引き金を引いた。

 

弾丸は確かに命中した。

が、だが、大男は少しのけぞっただけだ。

まったくダメージを受けた様子がないッ!

 

「Dudadadadadaxtu!!」

 

「まさか……ゾンビ?」

 

「違うよ」

スミレの頭上の道から、エルネストの声がした。

「紹介しよう、モニカとグレッグの二人を……二人は、我々がメネシスと呼んでいる生体兵器でね。ゾンビとバオーの技術を下に改造したのだが、ゾンビのような知能はない……だが太陽の下を歩けるし、バオー程とはいかなくても、それなりの回復能力をもっているのさ」

 

ほら、挨拶しろ。

エルネストが、モニカ、グレッグと呼ばれた怪物に命令した。

すると、二体の不気味なクリーチャーが、まるで良く躾けられた子犬のように、ピョコンと頭を下げた。

 

「可愛いダロ?中途半端な性能でお蔵入りになっていたんだが……こちらもコマ不足でね、保管用カプセルに入れていたコイツ等まで引っ張り出してきたーーと言うわけさ。だが、戦闘能力は折り紙つきだ」

 

君はここで終わりだよ。

 

ザザシュ!

 

エルネストも、スミレの頭上から山道を滑り降りてきた。

 

「馬鹿ね、格好の的よッ」

スミレは息を整え、寒気と心臓のドキドキを少しでも鎮めようとした。

人に銃を向ける事。

それは、けっしてやるべきではない、殺人行為………

だがっ!

スミレは歯を食いしばり、エルネストに拳銃の標準を合わせた。

 

「フン、無駄っ」

斜面を滑り落ちながら、エルネストがスタンドを出現させた。

そして、斜面の途中で立ち木の枝を折り取り、スミレに向かって投げた。

 

その枝にも、先ほどと同じ爆弾の信管のようなものが見える。

あれも、スタンドの爆弾だ……

 

「こんのぉぉおおッッ!!」

スミレは銃の標準をエルネストから爆弾にかえた。爆弾を、撃ち落としたっ!

 

スミレの放った銃弾を受け、爆弾が爆発した。

 

ボッガンッ!!!

 

「チッ!」

エルネストは、爆風を避けて地面に伏せた。

「行け!メネシス:モニカ!」

 

「Stdarrzuuuu!」

モニカと呼ばれた方のクリーチャーが 意味不明の叫び声をあげ、右手を大きく振り上げた。

右手には、本来の手の代わりに、『棘だらけの鉄の骨組み』で作られた、棍棒のような器具がついている。

モニカは、その器具の先に丸い鉄球 ――棘棘が付いた―― を取りつけると、大きく振り回して 投げつけたッ!

 

ゴウッ!

 

とっさに鉄球が飛んでくる方向を予知して、スミレは地面に伏せた。

その頭上を、うなりを上げて鉄球が通り過ぎる。

 

「!?」

スミレは地面を転がりながら、照準をモニカに向けた。

一瞬の躊躇、だがその瞬間 さっきまでスミレが寝ていたところに鉄球が叩きつけられるッ!

 

「うわぁぁぁあああああああ!!」

スミレは地面を転がって鉄球を避けながら、モニカに向かって拳銃の引き金を引いた。 

パシ、バンッ!

一発、二発、拳銃を引くたびに強い衝撃がスミレの手に響く。

反動で、拳銃が手から飛び出そうになる。

アドレナリンの過剰放出でも誤魔化しきれない痛みが、スミレの骨折している右腕に響く。

だが、そんなくだらない痛みを気にしている余裕など、無いッ!!

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