仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー) 作:ヨマザル
「馬鹿な……あれは爆弾のスタンドじゃねーか」
吉良以外にもいたのか 、 噴上に戦慄が走った。つい三か月前に見た吉良吉影のキラークイーンの能力を思い出すと、いまだに恐怖で足が震える。
だが、ここに『第二の爆弾のスタンド』が現れたという訳だ。
あの能力は絶対にヤバイ。
噴上は、身を震わせた。
ここは平和な日本なのだ。爆弾で全身をふっとばされて死ぬなんて、御免だ。
ガァン!
ドドガアァン!
噴上が震えている間も、ホル・ホースは、休むことなくエンペラーの弾丸を撃ち続けていた。
だが、そのすべての弾丸が、着弾する前にスライムにからみとられてしまう。……どんなにエンペラーの弾を撃ちかけても、三人の『敵』は無傷であった。
と、三人の追手の最後のひとり、初老のマッチョな老人がスタンドを出した。
それは、『マッチョな人間から皮膚をはぎ取った』ような、不気味な外観のスタンドだ。
ボッゴォオオオン!
思わず、噴上が老人の出したスタンド に鼻白んでいると、不意に家の屋根に『丸く』穴が開いた。さらにもう一つ、二つと続けざまに屋根に穴が開いていく。
何だかわからないが、ヤバい。
噴上は、ハイウェイ・スターを呼び戻した。そして小屋から出ようとドアノブを掴む。しかし、ドアノブはピクリとも動かなかった。
「はっ……は、は、反対側から固定されているのかッ……ドアがあかねえ!」
噴上は、悲鳴を上げた。
「チャリオッツ!」
噴上の悲鳴にいち早く反応したポルナレフは、銀色に輝くスタンドを出現させてた。
チャリオッツは剣をふるい、ドアを丸く切り裂いた。
「小屋が崩れる前に脱出するぜ。ついて来い」
「甘いぜ」
ホル・ホースが、かぶりを振った。
「奴らが、逃げるチャンスを俺たちに与えてくれると思っているのかョ。追って来るにきまってるぜぇ――、チトきついが、ここで奴らを倒すしかねぇぞッ」
「うるせぇぞ。そんな事は、そうしたほうが有利なのはわかってるぜ。……そもそも、俺が行けば、あんな奴ら、敵じゃねェ」
ポルナレフはチラリと振り返った。そして、恐怖で『血がにじむほど』に、自分の顎に爪を立てている噴上を見て、付け足した。
「だが今は、奴らを倒す事よりも優先すべき事があるってぇ訳だ」
――――――――――――――――――
ギャーッ と、猿だか何かの鳴き声がした。鈴虫の鳴き声、足音、草をかき分ける音、皆が空気を求めて喘ぐ呼吸音などが、夜の森に響いていた。
ポルナレフは、皆を先導して森の中へと誘導していった。
ポルナレフのすぐ後ろを噴上、そして育朗、最後尾をホル・ホースが務めていた。
一行は、一列縦隊を取って三人のスタンド使いの追撃を避けながら、森の奥へと走っていく。
森は、ほとんど人の手が加わっていない原生林なのだろう。木々の間をツタが絡みあい、足元は落ち葉がぎっしりと積もっていた。
振り返り、落ち葉の上に残った自分たちの足跡を見て、チッとホル・ホースが舌打ちした。だがどうしようもない。一行は原生林を苦労して進み続け、やがて、擦り鉢状の谷についた。
その谷底には、鍾乳洞があった。
「ここだよな、育朗クン。この奥に君の体が眠っているはずだ」
ポルナレフの言葉に、育朗は青ざめた顔で首をかしげた。
『わかりません……僕は、気が付いたら幽霊になって山中を漂っていました。だから、自分の体が何処にあるのか知らないんです……』
「じゃあ、ここじゃね〰〰かもしれねぇのか」
噴上が、ガッカリした風に言った。
確かに、ハイウェイ・スターは育朗のニオイをこの洞窟で探知したのだが……
『でも、この奥には何か引き寄せられるものを感じるよ……それが、僕の体なのかも』
育朗が、首をかしげた。
「そのはずだ。あの三人のスタンド使いの目的も、君の本体だと思う。こっちは、奴らよりも先に君の本体を取り戻すってわけだ」
ポルナレフが言った。
◆◆
洞窟の中は暗く、冷たく、『大人一人がかろうじてもぐり込める』ほどの幅しかなかった。
一行は、一列縦隊で洞窟の中を進んでいった。
………ピシャッ
入り口は狭かった。だが、先を進むにつれ洞窟は少しずつ大きくなっていき、同時に洞窟の床から水が染み出てくるようになった。 その冷たい水を踏み越え、さらに進む。
一行が洞窟に入ってから、30分ほど経っただろうか。ゴン!と言う爆発音が頭上から聞こえた。
「おい、やばいぜ」
ホル・ホースが言った。
「いまの爆発音……ありゃあ、さっきの爆弾テロリスト野郎の能力だろう。……おそらく、奴らは上の岩に発破をかけて、穴をあけようとしてやがるぜ…………おい、ポルナレフ、とっとと先を行けよ。ここにいたら生き埋めになっちまうぜ」
「わかってるよ。お前こそ、背後をちゃんと気を付けてろよ」
ポルナレフが、ぶっきらぼうに答えた。
一行は、鍾乳洞の岩を乗り越え、すり抜けながら苦労して先を進んでいった。
「ところでホル・ホースのオッサンよぉ……お前、さっきからまるで奴らの事を良く知っている様な口ぶりだな〰〰」
少しだけ、心の余裕を取り戻した噴上が、ホル・ホースに詰め寄った。
「オッサン、まだ俺たちに隠していることがねぇか」
「このガキ!年長者に対する口のきき方がなってねぇぞ」
ホル・ホースが噴上の襟を引き上げかけ……ポルナレフの目つきに気づいた。ホル・ホースは、苦笑して噴上を掴んでいた手を放した。
「……わかってるよ、お前や承太郎の野郎ともめるのは、ごめんだからな」
「ホル・ホース、話してやれよ」
ポルナレフがうなずいた。
「……わかった。少しだけ知ってる事を話してやる。いいか……俺は確かにあの三人の事を知ってる。奴らは元々、DIOさ……DIO と言う男の私兵だった奴らだからだ。オイオイ、ありゃあ、もう12年も前かよ………俺も年食ったわけだぜ」
ホル・ホースが言った。
「……DIOは、『”善人”でなくとも天国に行ける方法』を研究しているとホザイテいたな……奴には、”悪”のカリスマがあった。かかわった人間は、どんな奴でも奴に従っていれば救われると、奴が天国に連れてってくれると、いつの間にか信じさせられていたな。……あの三人も……俺も、DIOの部下だったのさ。もっとも奴らは『狂信者』で、俺は、金をもらって仕事をする『雇われ人』だったがな」
「天国?なんだかヤバイ、カルト教団の話を聞いているみたいだな」
「まさに、カルト集団だったぜ。しかも、DIOの奴はただの教祖ってわけじゃねぇ。奴は、恐ろしいスタンド使いだった」
ホル・ホースは、身震いした。
「奴の率いた組織は……狂ってたぜ。俺は何人か、自ら望んでDIOに血を吸われて、最後には悦びながら死んじまった女を何人か知ってるぜ。女だ、奴は女を殺す奴だ」
ホル・ホースは、『女を殺す』という言葉を心底イヤそうに言った。
「それで、DIOって奴は、今もその教団を率いて『天国に行く方法』を探してるってか。それが俺たちが襲われた事と、どう関係があるって言うんだ」
「DIOは死んだ……これまでにさんざんやった“悪事”の落とし前をつけられたって事だ。やったのは6人のスタンド使いどもで、その中でまだ生きているが3人いるぜ。お前たちも知っている、空条承太郎と、ジョセフ・ジョースター……それから、そこにいるポルナレフだ」
ホル・ホースは、額の汗をぬぐった。
「DIOの死後、奴が作った組織はいったん分裂し、今はまた再統合されたと聞いている。誰が組織をまとめているのかは知らねぇ。それはやばすぎる情報だからな」
「承太郎さんが……」
噴上は、ポルナレフを振り返った。
ポルナレフは、黙ってうなずいた。
『彼らが、そのDIOって男の狂信者達だって事はわかりました。でもそれが、どうして『彼らがおそってくる』ことに、つながるんですか』
育朗が尋ねた。
「おそらく……奴らが求めているのは、DIOの体を再生させ、そこへ魂をもう一度呼び出すことだ」
ポルナレフが言った。
「おいおい、ますますオカルトっぽい話だな。嘘くさいぜ」
「噴上クンよぉ〰〰馬鹿かお前は」
ホル・ホースが首を振った。
「嘘かどうかなんて関係ねーんだよ。肝心なのは奴らがどう考えるかって話だ……育朗クン、あんさんの体は、驚異的な力を持っていると聞いたぜ。噂だと切れた足をもう一度くっつけたり、怪我をあっという間に回復させたりできるようじゃないか」
『ええ、出来ます』
育朗が答えた。
「さっきは言わなかったがよぉ――DIOって奴は特殊体質でな。……あんさんと同じように 切れた体をもう一度くっつけたり、怪我を回復させたり……不死身の体をもってやがった。おおかた、奴らはおんなじような力をもつ、アンサンの体を使えば、『DIOの肉体を再生できる』って信じてるんだろうな」
「……ますますオカルトっぽいな」
噴上は眉をしかめた。
自分たちは、狂人みたいな奴らを相手にしてるってワケだ。
ドガァアアアアンッ!!
もう一度、破壊音が鍾乳洞に鳴り響き、土砂が崩れる音がした。
「チッ!奴ら、追いついてきやがったぜ」
ホル・ホースは、スタンドのプロテクターを出現させた。
「噴上クン。キミは、橋沢クンと一緒に行ってくれ。ここは、俺とホル・ホースが食い止めるッ」
ポルナレフも、自分のスタンド ――銀色に輝く騎士の様なスタンド、シルバー・チャリオッツ―― を出現させた。
「……いいの……か?」
噴上は躊躇した。正直、命がけの戦いに巻き込まれたくはない。
だが、ここで、『そんなこと』を言ってもいいのか。
噴上が躊躇している様子を見て、ポルナレフが優しく語りかけた。
「ここは俺達が食い止めるから、育朗と二人で先に行ってくれ
「だっ、だけどよぉ〰〰」
躊躇する噴上の額に、ポルナレフがコツンと指を突き付けた。
「噴上クン、悪いが、君は命のやり取りをする覚悟ができていない。そんな状態で戦いに出てもやられるだけだ」
「……」
子ども扱いされ、噴上はぶぜんとした。だが正直、脚が震えている……
「相棒よお」
ホル・ホースはスタンドの拳銃を構え、後方へ向けた。
「あんさんのスタンドは探索用だ。育朗の体を探して、掘り出すのはお前の仕事だよ。サッサと掘り出して戻ってきてくれや。それまで俺たちが時間稼ぎをしてるからよぅ」
(いや、ダメだ。ここで怖くない方を選ぶ訳にはいかね――)
噴上は首を振った。俺だって、俺なりに『覚悟』は出来てるはずだ。
「いいや、ポルナレフさん……『覚悟』なんてとっくにできてるぜ」
噴上は、震えながらも首を振った。
「育朗の本体なら、既にハイウェイ・スターは探索を終えて、地下水脈のなかすぐ近くまで引っ張って来ている。後は最後の岩盤を取り除けば、育朗の本体はもどってくるはずだぜ……だ…だから……育朗と行くのは、おれじゃあねぇ……ポルナレフさんだ。この先にゃあ『岩盤を切り裂けるスタンド』が必要だぜ」
ポルナレフは、噴上を値踏みするような厳しい目で眺めた。
すぐにその肩をポンと叩き、にこっと笑った。
「……判った……噴上クン、君を信じる……それからホル・ホース、てめーはわかっているな?」
ポルナレフは、ホル・ホースを睨み付けた。
そして、育朗を連れて鍾乳洞の奥へ消えていった。
◆◆
「さて相棒、俺達の無敵のコンビが活躍する時が来たなぁ」
命を懸けた戦いの直前だというのに、ホル・ホースはヘラッと笑った。なれなれしく、噴上の背中を叩く。
「だが、わざわざ奴らが接近してくるのを、ただ待つ事はないわな」
ホル・ホースは、皇帝の弾丸を、つづけざまに発射した。
ズキュウンッ!ジュキュウウンンッ!
「おい、無駄にスタンドパワーをつかって、どうするつもりだよ」
「無駄だと……おいおい、相棒……素人っぽい事を言うなよ」
ホル・ホースの銃弾は、洞窟の岩壁に当たり、立て続けに閃光を上げた。
「跳弾が先を照らせば、奴らの居場所を見つけられるってわけだ」
ホル・ホースは、どんどん弾を打ち出した。
跳弾の発する光は、微かで、それぞれほんの一瞬の光ではあった。だが、多量の弾を打ち出すことで、じきに、ぼんやりと目指す敵の姿を浮かび上がらせることができた。
「よし」
ホル・ホースは、浮かび上がった敵目がけて皇帝の弾丸を打ち出した。だが、すぐに首を振ってエンペラーを収納した。
「駄目だな。奴ら、イエローテンパランスを、洞窟の前面に貼り付けて、完全に防御してやがる」
バシュ!バシュ!
すかさず敵から反撃され、二人は銃撃を避けて岩陰に隠れた。
「どうするんだ。勝ち目がねぇじゃねえか!」
毒づく噴上をしり目に、ホル・ホースは悠々と煙草に火をつけた。
「いいや、まだ手はあるぜ」
「あーん?言ってみろォ!!」
「次の手はお前さ、相棒。お前が行くんだ」
ホル・ホースは噴上の肩を叩いた。
◆◆
噴上はハイウェイ・スターを分裂させ、物音がした洞窟の奥へとスタンドを送り込んだ。
ハイウェイ・スターは、3人の敵目がけて走っていく。 自動操縦モードとなったハイウェイ・スターの人型の体はばらけ、体を無数の足型はに分裂させて、『洞窟の岩棚や鍾乳洞の陰』などを、縫うようにして進んでいく。
「相棒のスタンドは、パワーがないが、代わりに遠くまで素早くいけるスゲースタンドだ」
ホル・ホースは、へらへらと言っていた。
「奴らは俺たちを追っている。待ち構えている俺たちの方が有利ってわけさ。不意打ちをしてやれよ」
やがて、ハイウェイ・スターは、洞窟の天井部分にある亀裂の一つに、その身を忍び込ませた。自動操縦モードを止め、無数の足型から、人型に戻る。
待つことしばらく、ようやく追手達が現れた。
匂いから判断すると追手は二人。一人は地上に残っているらしく、現れたのは奇妙な格好をした長身の男と、小柄な女性のようであった。
二人は懐中電灯もつけずに、真っ暗闇の洞窟をずんずんと鍾乳洞の奥へと目指していた。
『喰らえッッ』
噴上は覚悟を決めた。
腹をくくって、長身の男を狙って、ハイウェイ・スターを突っ込ませる。
ハイウェイ・スターに一撃必殺の殺傷力はない。だが、うまく顎を狙えば、脳震盪を起こさせることができる可能性がある。一人倒せば、あとの二人の養分を一気に奪い取ってしまえるハズだ。
そうすれば、勝ちだ。
スパンッッ
ハイウエィ・スターの一撃は、狙い通りに長身の男の顎にヒットした。 アゴを撃ち抜かれ、長身の男が崩れ落ちる。
「やっ……やったぜ ?」
噴上は歓声を上げかけ、だがすぐに恐怖で顔をこわばらせた。
長身の男は、崩れ落ちながらも、すばやく自分のスタンドを出していた。
鴉のような外観のスタンドがカァと鳴き、長身の男の手元にある石に触れた。その石を、ハイウェイ・スターに向かって、蹴り飛ばした。ッ!
バシュ
とっさにハイウェイ・スターは、その石を受け止めた。
コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ"
だが、まずいことに、石に『何らかのスタンド・パワーが込められている』ことが、ハイウェイ・スターの感覚で伝わってきた。
「なんだこれは?」
噴上は、ハイウェイ・スターの視覚を通して、その『石』 を確認して、呻き声を上げた。
石には、何らかの『ピンのようなもの』が突き刺さっていた。もっとも近いイメージは、手りゅう弾だ。
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
「これのスタンドは、オエコモバ」
イエローテンパランスの女が、歌うように言った。
「エルネストのスタンドは爆弾よ。あんた、その手を離さない方がいいわよ」
「いや、マキシムの言ったことは忘れろ。さっさと手を放して、くたばっちまいな」
エルネストがせせら笑うと、プッと唾を吐いた。
ハイウェイ・スターの視覚には、エルネストがまき散らした唾の粒にも、小さな手りゅう弾が付いているのが見えたッ!
『まずい!』
噴上は、手に持った手りゅう弾を投げつけると同時に、ハイウェイ・スターを解除した。
トゴオォォォ――――ン!!
しかし、解除する直前に爆弾が爆発し、ハイウェイ・スターの右腕をズタボロに砕いた。
「痛ってぇ!!」
噴上に、スタンドが破壊されたフィードバックがおそった。噴上の右半身の皮膚が爆ぜ、血が噴き出した。
一方、エルネストの引き起こした爆発は、イエロー・テンパランスの防御によって完璧に防がれていた。
「ははははは。無意味な努力だったな」
エルネストが、そう笑った時だ。
バシュッ!
何かがイエローテンパランスの防御壁を貫いて、エルネストの右肩を砕いた。
どういう事だ。
エルネストが、吹き出ている自分の血を抑えていると、第二の弾丸が、マキシムの肩を貫いた。
「グッ……どうして……どうしてエンペラーの『弾丸』如きが我が、スタンド、イエロー・テンパランスの防御をやぶったの」
痛い……マキシムは肩を抑えて、膝を落とした。
コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ"
「ヒャッヒャッヒャッ……エンペラーAct2。……名付けてサタニック・マジェスティーよ……。スタンドも成長するってワケだ。爆弾の光で、お前たちの位置もよぉく解ったしよォ、お前の防御を破るなんて、『簡単』だったぜェー」
ホル・ホースは、にやりと笑った。
ホル・ホースの体の要所をおおっていたエンペラーの『防御パッド』は、今は、拳銃の上にかぶせられていた。そのため、ホル・ホースの手にある拳銃は、ホル・ホースの二の腕とほぼ同じくらいの大きさに膨れ上がっている。
「サタニック・マジェスティーの力で、弾丸を限界まで回転させて撃った。こいつの貫通力ならイエロー・テンパランスなぞ敵じゃねえんだよ!」
ホル・ホースが、巨大化したスタンドを一振りした。すると、スタンドの拳銃もバラけた。
スタンドの拳銃は、見る見る元の大きさに戻っていった。
外れた部品は、拳銃を掴んだ人型のスタンド――金属のパイプで出来た骨組みにプロテクターが付いている―― に組み直される。プロテクターが外れると、人型の部分が一瞬だけ姿を現した。だが、すぐにプロテクターだけを残し、再びホル・ホースの体にもぐりこんだ。
「チェックメイトだ……お前たちは、俺と相棒の最強コンビには勝てねーよ」
「ははは。痛ぇよ。痛ぇよ!」
エルネストは、自分の傷を掻きむしる様にしながら、高笑いした。
「流石、歴戦のスタンド使いだな。お前達手ごわいなぁ〰 面白いッ!! 」
エルネストは、握りこぶし大の石をスタンドに拾わせた。
そして、それを爆弾に変えて、洞窟の天井に投げつけた。
それは、爆発した。
ドッガァンン!
ガラガラガラ
爆弾によって砕かれた、岩盤が天井から落ちてくる。
「うぉおおおおッ」
噴上とホル・ホースは、とっさに洞窟の壁近くに体をピッチリと寄せた。
ガラガラガラガラ
こんなに重い岩盤が落ちてきては、非力なハイウェイ・スターがどうにかする事は、無理だ。
噴上はガタガタ震えながら、洞窟の壁に身を寄せた。
何もできない、ただこうやって身を縮め、崩落して落ちてくる岩に押しつぶされないことを祈るだけだ。
噴上は目を閉じ、耳をふさいでただ震えていた。
やがて、岩の崩れる音がしなくなった。
そして噴上は、自分が『崩落した岩盤と、洞窟の壁とのわずかな隙間』に閉じ込められている事を、知った。
「ナっ!」
そうと気が付いた瞬間、制御不能のパニックが噴上をおそった。噴上は絶叫を上げ、岩盤を叩き、この隙間から出れないか、必死に暴れ始めた。
スケたちにも知られぬまま、ここで孤独に死んでいくなんて、嫌だッ。
――だが、脱出の術は、まったく思いつかなかった。
やがて、疲れ切った噴上は、涙目になりながら岩盤の隙間で丸くなった。
その時だ。
「……?」
何か、声が聞こえた。耳をすませる。それは、ホル・ホースの声だ。
不覚にも、噴上はその声をきいて涙が出るほどの安心感を感じた。
これで、助かった。
「…………おい?相棒……聞こえるか?」
「ああ、聞こえてるぜ。ホル・ホースのオッサンよォ」
だが動けねー。ここから出してくれないか。
噴上の希望は、だが簡単に打ち砕かれた。
「イヤ、アンサンには悪りィーが、そりゃ無理だぜ」
のほほんとしたホル・ホースの返答が、帰ってきた。
「オィッ!」
「しかたねーだろ。俺も『閉じ込められている』んだからよォ」
「!?何だって!どーすんだよッ」
噴上はわめいた。
こんな所で、こんなしみったれた地下で、人知れず死ぬなんてゴメンだ。
『アケミ』に、『ヨシエ』に、『レイコ』に会いたい……
気が遠くなる………
目の前が暗くなる……
ガラッ!
不意に目の前がまぶしくなり、噴上は目を開いた。
するとそこには、『まるでケーキのように複数に切り分けられた岩盤を、軽々と持ち上げている』橋沢育朗の、生身の姿が見えた。
「怪我はないようだね、よかった」
無事な噴上を見つけて、橋沢育朗がにっこりと笑った。
「噴上裕也クン、初めまして」
嫌になる程の、サワヤカな笑顔だ……