仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー)   作:ヨマザル

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スタンド図鑑

スタンド名:スタープラチナ(星の白金)
本体:空条承太郎
外観:神話の英雄然としたレスラー
タイプ:近距離パワー型
性能:破壊力 - A / スピード - A / 射程距離 - C / 持続力 - A / 精密動作性 - A / 成長性 - D
能力:遠くには行けないが強大なパワーとスピード、精密な動きを合わせ持つ、圧倒的な基本性能を誇る。 さらに本人の体感時間で3秒(1999年10月時点)だけ時を止める、スタープラチナ・ザ・ワールドと言う超強力な能力を持ち、本体である承太郎のスキの無さも考慮されて、「完成された」「強くて無敵の」「史上最高(最強)の」スタンドと称されている。


スタンド名:ハーミット・パープル(隠者の紫)
本体:ジョセフ・ジョースター
外観:紫色の棘の生えた茨
タイプ:特殊型
性能:()内は特殊能力の性能
破壊力 - D(C*) / スピード - C / 射程距離 - D(B**) / 持続力 - A / 精密動作性 - C(D***) / 成長性 - E
能力:念写、読心術、及び 機械操作。また、茨をロープのように伸ばして遠くのものを掴んだり、波紋を流して攻撃したり、と大変応用能力の高いスタンドである。
()内の性能:
*:波紋との併用時
**:茨を伸ばせる距離
***:念写能力の操作性


スタンド名:ヘブンズ・ドアー(天国への扉)
本体:岸辺露伴
外観:自作の漫画:『ピンクダークの少年』を模した人型
タイプ:特殊型
性能:破壊力 -D / スピード -B/ 射程距離 -C* / 持続力 -B/ 精密動作性 - C/ 成長性 -E*
   *: 1999年末の状態 (ステータスは下がっているが、原稿を見せなくても本
     にできるため、 使い勝手が上がっている。と言う設定)
能力:スタンドが触れた ある程度知能のある生物、幽霊および自分自身を本に変える能力。本には対象の経験・記憶が書き込まれている。また、『本』に直接命令を書き込むことで、対象を操ることが出来る。本来相手には実行不可能なことでも命令できる。


東方朋子 その1

1999年11月10日  朝 [M県S市杜王町]:

 

「しのぶさん……大丈夫よ……そうよウチの仗助も一緒にいるんだから……ええ、悪い事なんて起こりっこないわ。明日には元気いっぱい帰ってくるはずよ」

東方朋子は、しのぶからかかってきた携帯電話を切り、長々とした電話越しの会話を終えた。電話の声から判断すると、しのぶはすっかり動揺し、情報に飢えているようであった。

無理もない。

先ほど、SW財団と名乗る財団のものから、早人君と……仗助がバイトで向った山で、何か深刻な事件があったらしいと、二人の親族:しのぶと朋子へ連絡があったばかりなのだ。

 

確かに恐ろしい。朋子はブルッと体を震わせた。

 

しのぶにとっての早人と同じく、朋子にとっても仗助が唯一の家族なのだ。

本人を前にして口にしたことこそないが、仗助は目に入れても痛くないほどかわいい、自慢の息子だ。その息子が、生死さえはっきりしないほどの危険な目に合っている……だが、確かに恐ろしくはあったが、朋子はしのぶほどには心配していなかった。

自分の息子を信じているのだ。

最近、日に日に最愛のあの男に似てきた息子を。

 

一方で、しのぶの気持ちもよくわかっていた。

しのぶは、自分の夫を仕事中に失っている。また同じことを繰り返したくないと思っているに違いなかった。そもそも早人君はまだ小学生だ。当然だ。自分だって彼女の立場なら、激しく心配しているだろう。

 

とにかく、しのぶを連れて対策本部に行こう。たしか、杜王町グランドホテルの会議室に対策本部が設置されていたはずだ。

朋子は再び受話器を取った。SW財団のコーディネーターだと名乗った男がよこした連絡先をダイヤルし始める。

そのとき……

 

ピンポーン

 

玄関のベルが鳴った。

朋子は誰が来たのか?と玄関ののぞき窓から来訪者の姿を確認し ―― 大きく深呼吸した後で――ドアを開けた。

 

そこには、車いすに乗った年老いた女性と、その車いすを押す中年女性が立っていた。

二人とも日本人ではない。

英国系か?

朋子より一回り歳上と思われるその中年女性は、まだ十分に美しさを保っていた。

そして、彼女が押す車いすに乗った年老いた女性……

 

(私はこの人を知っている。一度もあったことはないけれど、確かに知っている。)

朋子は、その年老いた女性の目をまっすぐに見た。

 

二人の視線が、真正面からぶつかりあう……

どちらも、目をそらさなかった。

 

「貴女が、東方……朋子さんね」

老婦人が言った。

 

コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”

 

┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨

 

「あなたは……」

朋子はいつかはこんな日が来ると、心のどこかでわかっていた。

いつかこんな日が来たら、何て言おうか、ずっと前から色々と考えていた。

 

だが、どうしてこんなタイミングで……

今は駄目だ。仗助の安否を知ることが最優先なのに……

 

車いすに乗った老婦人はニッコリと笑った。

てらう事無い、混じりけなしの笑顔だ。

「初めまして、朋子さん……私はスージー・Q・ジョースターよ。……お会いしたかったわ」

 

「こっ……こちらこそ、初めまして」

朋子は丁寧にあいさつを返しつつ、心の中では色々な思考が渦巻いていた。

 

私は確かにこの人の夫の子を産んだ。

結果的に、この人の夫を、ジョセフをこの人に対して裏切らせたのだ。

もちろん目の前の老婦人を憎むことは出来ない。私にそんな権利はない。

私は、この老婦人を手ひどく傷つけたに違いないし、誰だってそんなひどい裏切りにあっていい訳がない。

 

彼女は私を憎む権利がある。私はその憎しみを受け止める覚悟があるッ。

 

しかし……しかし……私は、私はッ!

あの時、ジョセフを愛さないわけには、いかなかった。

……私は自分の生き方を、息子の生を否定しない!

彼が、仗助がこの世に存在しているのは、絶対に、完全に、正しいことなのだ。

私はすべてを納得して、父親以外の誰に頼る事もなく、誇れる仕事につき、自分で生計を立て、仗助をちゃんと育ててきた。

仗助は、ちょっと暴力的なところはあるけれど、でも真っ直ぐに育ってくれた。自慢の息子だ。

 

彼女が私を憎むのは無理がない。

でも……絶対に謝れないわ

 

東方朋子と、スージー・Q・ジョースターは、真正面から向き合った。

互いの視線はぶつかり合ったままだ。

 

┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨

 

だが、チリ・チリリ…… と押し殺したはずの罪悪感が、朋子の胸を刺しつづけていた。

スージーQのこれまで生きた長い年月を反映した、まるで年輪のように刻まれた皺。 温かい、だが少し悲しみのこもった目。

 

ゴメンナサイ。

あなたを苦しめるつもりはなかったのよ。

 

だが、目の前の老婦人は怒るわけではなく、ただニコニコと笑っていた。

そして、その笑みには力があった。強靭な意思の力が……

「朋子さん、貴方の平穏な毎日を乱して済みませんネ。でも、どうしても貴方と話がしたかったの……どうか老い先短い老人のわがままを聞いて、私と少しお話をしてくれないかしら?」

 

┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨

 

朋子が、視線を逸らした。

「わかりました……でも、できれば明日にしてくれないでしょうか。実は……」

 

朋子が事情の説明を始めようとすると、車いすをささえていた中年女性が口を開いた。

「ええ……知っています。実は、そのことについても話があるんです」

とても流暢な、日本語であった。

 

――――――――――――――――――

 

1999年11月11日  未明 [屍人崎]:

 

ポルナレフ達と仗助・育朗組が出会ったのは、仗助が肉の芽から解放されてから、小一時間後であった。

 

ポルナレフとホル・ホースは自分たちを拘束していたチャダを倒した後、二人のSW財団の職員と共にドレスのアジトであった廃墟を脱出した。そして、山道に残るバイクのワダチを追ってここまでやって来た……という訳だ。

 

ポルナレフ達――大人組――は子供たちが無事か、心底心配していたのだ。だから、傷つき、疲れ切った体を鞭打って、大急ぎで山道を抜けてきたのだった。

だがやってきてみれば、その心配していた『子供たち』は、廃村の空き家の庭で和やかに眠っていた。

心配をしていた大人達は、 すっかり拍子抜けしていた。

 

「私たちなんかいなくても、彼らだけで解決して見せたってわけね……なんとまぁ、たくましいこと」

アリッサは安心のあまり、地面にしゃがみ込んだ。

 

「ほォォ〰〰〰 ッ、コーコーセーども、やりおるぜぇ」

ホル・ホースは、へっとシニカルな笑みを浮かべた。正直、不意をつかれたとは言え自分が不覚を取った相手『東方仗助』が仲間と楽しそうにしている光景が、面白くなかったのだ。

 

「!?ホル・ホースさん……皆さん、誠に申し訳無いっス!!」

近づいてきた一行に気が付き、仗助が目を覚ました。仗助は、ピョンと跳ね起き、直立不動の姿勢で謝罪の言葉を述べた。

 

何か言いたそうなアリッサを制し、ピーターが疲れきった口調で言った。

「仗助君、君は悪くないよ……元はと言えば僕を庇ってくれたから、肉の芽を植えつけられてしまったのだろう……悪いのは僕だよ。僕なんて……」

そう言うとピーターは、自分が皆を騙し、DIO の命じるがままにホル・ホース達を攻撃した事を謝罪した。

「しかも、僕のせいでシンディが……」

ピーターは、膝をついて泣き出した。

 

その肩を、アリッサがそっと包んだ。

 

「……よし、この話はここまでにしよう。…………実はな……昔、俺もDIOに騙され、肉の芽を植えつけられた事がある……だからわかるぜ。DIO は……奴の手口は人間が対抗できるような生易しい代物じゃね――って事がなぁ」

ポルナレフはパンと手を打ち合わせて、反省会を終わらせた。

「それよりも、俺達にはまだやる事が残っている。いいか、聞いてくれ……」

ポルナレフは、皆に 承太郎からの伝言を伝えた。

 

     ◆◆

 

「つまり、俺たちが遭遇した怪物たちが、人里へ近づいているってことか」

安全だと思っていた、杜王町のアケミ達が……噴上は身震いした。

 

「そうだ、大部分はすでにジョースターさんと承太郎達が処理中だ。だが、奴の手に余る部分は、俺たちがやらなきゃならねー」

ポルナレフが言った。

 

「まさか……六助爺さんとケイお婆さんの家が……」

ポルナレフの話を聞いて、スミレは真っ青な顔になった。

 

「大丈夫だよ。僕が助ける。おじいさんとおばあさんは、僕と仗助君に任せるんだ」

育朗は、スミレを抱きしめて言った。

 

「ダメよ、私も行くわ……」

スミレは首を振った。

「……私が危ないことをアンタに任せて、自分だけのほほんと安全なところで待っててるなんて、期待しないでよ」

 

「君に、あのバイクは乗れないよ」

 

「ロープか何かで、アンタの体に、縛りついて行けばいいわ」 

 

アンタには、私の『能力』が必要よ。

言い張るスミレに、育朗はニッコリ微笑んで抱きしめる手に力をこめ……『ブル・ドーズ・ブルーズ 』を打ち込んだ。

 

「!?」

首筋に『ブル・ドーズ・ブルーズ』の麻酔を打たれたスミレは、まるでラジオのスイッチを切ったように、プチンと意識を失った。

 

ガックリと崩れたスミレを、育朗は慌てて支えた。

育朗は、少々狼狽して気を失ったスミレの様子を観察した。

幸いなことに少し脈も、呼吸も弱くなっているが、どちらも安定しているようだ。

 

「ほぉ――超強力な麻酔だな……大丈夫なのか?」

傍らにいたホル・ホースが尋ねた。

 

「大丈夫です。呼吸も、脈も安定していますから」

そうは言いながらも、育朗は心配そうに眉をしかめていた。

(なんてことだ……量を四分の一に絞っていたのにこの効き目……今日二本目だからか?……)

オーバードーズ(過敏投与)……と言う言葉がチラリと頭をかすめる。

(バオーの体液は強力だ。この能力……ブル・ドーズ・ブルーズは何度も打てないみたいだね……)

 

だが、幸いなことに、スミレの体調は安定しているようだ。

育朗は、ホル・ホースにスミレをゆっくりと引き渡した。

『ホル・ホースさん……彼女を頼みます』

 

ホル・ホースは、スミレの頬を微笑んでつつく育朗の様子を見て首をすくめた。

「アンサンよぉ――意地張らずに一緒に行けばいいのによぉ」

俺に女を預けていいのかよ。

 

おどけてみせるホル・ホースに、育朗は、『アナタはいい人です』。と生真面目に答えた。

「彼女は僕の希望」

育朗は、そっとスミレの髪をなぜた。

「おそらく残り三か月も生きられない僕にとっての、希望なんです」

せめてスミレとお爺さん、お婆さんを助けることが、僕の生きた証なんです。

育朗の言葉に、一行は言葉を失った。

「それよりホル・ホースさん……約束は守ってくださいよ」

育朗は真剣に言った。

「その時がきたら、僕を殺して下さい」

 

「……任せときな」

ホル・ホースはグイッとテンガロン・ハット を目深にかぶり直した。だが返事をするとき、ホル・ホースは育朗の顔をまともに見なかった。

 

アンジェラのスケーター・ボーイを除けば、一行に残された高速の移動手段はDRESSが使っていたビッグ・オフロードバイクが三台のみだった。

このバイクで荒野と森を越え、撃ち洩らしたクリーチャーが六助爺さんとケイ婆さんの住む 集落に到達する前に捕まえなくてはならない。

 

「……育朗クン、行くぜぇ――、そろそろよぉ〰〰 っ」

ビッグ・オフロードバイクに跨った仗助が言った。

 

仗助の隣では、噴上が少し心配そうな顔でバイクに乗っていた。

噴上が心配になるのも無理はない、二人が乗っているのはBMW R1150GS、排気量1000CCを超える、今年発売されたばかりのモンスター・マシンだ。

 

しかも、そのうち一台は、元々は一台は巨体のメネシスに合わせた改造が施されている。到底人が乗れるようなサイズではなかった。なんと、身長180cmを越える仗助が シートにまたがっても、ハンドルにも、ペダルにも、手足が届かないのだ。

その巨大過ぎるクレイジー・マシーンを、仗助はクレイジー・ダイヤモンドに自分の体を支えさせて、『無理やり』乗っていた。

 

噴上と育朗が乗るバイクは、ノーマルのR1150GSではある。が、それでも、それが乗り手を選ぶ強烈なじゃじゃ馬なことに変わり無かった。

 

「気合入れろよ育朗クンッッ。このバイクに乗れんのは俺と育朗クンくらいしかいねーんだからよぉー」

 

「……おい、俺を忘れんなよ……」

俺のハイウェイ・スターで捜索しなかったら、そもそも敵を見つけられねーぜ。噴上が少々不貞腐れながら言った。

「しかし、こんなバケモン DRESSの野郎は何だって持ち込んだんだ?」

 

「……ヤツラの『ボス』の趣味らしいぜ」

仗助が答えた。

「奴ら、俺の近くではDRESSについては何も話そうとしなかったぜ。だが、このバイクを扉の向こうから持ち込むときに、バイクに関してはボスの趣味に付き合わされてたまらんと、ヒーヒーボヤいてやがった」

 

「迷惑な趣味してやがる」

噴上が険悪な表情になった。

「こんな乗りづれーバイクを選びやがって」

 

「こんなふーにスタンドをうまく使って運転するしかねぇ〰〰ゼ。やれるか、噴上裕也?」

 

仗助のアドバイスに、噴上は、『俺にバイクの乗り方を教えようとするんじゃねー』と、さらに不満を募らせた。

「JET(珍走団)の特隊なめんなよ?仗助ェ」

 

「おっ……おう――」

返答に困り、仗助は頭を掻いた。

 

「ハハハッ 頼もしいね。じゃあ……行こうか」

育朗が、少し楽しそうに言った。

 

「ちょっと待て……仗助、『扉』の事なんだが、一つ確認したいことがある」

三人の会話に、ポルナレフが割り込んだ。

 

「なんすか?」

 

「知りたいのは、あの、ヤツラが使っていた遠く離れた場所を繋ぐ『扉』のことさ……俺はチャダって言うスタンド使いが開いた『扉』の向こう側を見た。君は……奴らの組織に入り込んでいた時、チャダが開いたあの『扉』がどこに繋がっているか、聞いていないかい?」

あれは、どこかで見た記憶がある景色だった気がするんだ。

ポルナレフは首をひねった。

 

仗助は、申し訳なさそうな顔をした。

「あのキショク悪い『肉の芽』に取りつかれていたときの事は、まるで夢の中みたいに、ボーッとして、よく覚えてないんス――いや――確かに『扉』の向こうから声が聞こえてきたときがありましたね。 なんだか、英語じゃなかったッス。なんていうんすかねーフランス語?スペイン語?そんな感じに聞こえたッス」

 

「フランス?」

ふむ……ポルナレフは、少し納得した表情でうなずいた。

「わかった。仗助、俺は心配してねーぞ。早く奴をぶっ倒して来いよ」

杜王町でまた会おう。

ポルナレフは、噴上と仗助、そして育朗の肩を叩いた。

 

北上している敵を追いかけるのは、バイクの運転が比較的得意な仗助、噴上、そして育朗の三人に決まっていた。

他のメンバーは、新たに表れた敵……無数の芋虫を全て退治しなければならない。ユンカーズが生み出したその芋虫は、目の前の荒野の至る所にウネウネとのたうちまわっていた。

さらに、その小さな芋虫の中心にいる、まるでクジラほどもある巨大な芋虫を倒さなければならないのだ。

主をなくして暴走しているスタンドと戦う。正直それもまた、ぞっとしない戦いであった。

 

「仗助ぇ~~こっちは任せときな」

億泰が言った。

「俺がいれば、大丈夫だからよォォ」

億泰は、背中越しに仗助に向かって親指を立た。そして、雨の向こうにぼんやり見える巨大なクリーチャーの方へ歩いて行った。

 

そこには、ハンターとゾンビの肉体を喰らって巨大化したスタンド、ユンカーズがのた打ち回っていた。既にポルナレフとホル・ホースは、その巨大な蛆虫と相対すべく、準備している。

 

億泰は、自分のスタンド:ザ・ハンドの瞬間移動能力で ポルナレフとホル・ホースの横に瞬時に移動した。そして、遠慮なくユンカーズの巨体をその能力で『えぐり』始めた。

 

sw財団の生き残りであるアリッサとピーターも、三人のバックアップをするため、拳銃を準備しはじめた。

 

     ◆◆

 

仗助達の隣には、もう1人、アンジェラが残っていた。

「仗助、手を出して」

今はおしゃべりしている時間はねーんだぜ……そう肩をすくめる仗助を、アンジェラは無理やりバイクから降ろした。そして、仗助の右手にそっと触れる。

 

「……ッ!」

 

痛みに仗助が顔を歪めるのを見て、アンジェラは怒ったように言った。

「やっぱり……アンタは自分の負傷は直せないのだものね……」

無理ばっかりして……こんなんでバイクの運転なんてできないでしょうが。

 

「いや〰〰育朗に薬を……ブルドーズを打ってもらったから、大丈夫っすよ」

 

「嘘おっしゃい、育朗のブル・ドーズ・ブルーズは傷を完治させるような物じゃあないでしょ」

せめて、あんたの怪我はワタシが……

コォオオオオオ―――ッ

アンジェラは波紋の呼吸をしながら、仗助の手をさすり……

 

フンッ!

 

仗助のドテッパラに、思いっきり膝蹴りを叩きこんだ!

 

ガフッ!

 

「!?何すんだ……アンジェラ、おめぇ――」

思わず前のめりに崩れ落ちかかった仗助は、かろうじて右手を前に突き出して地面との衝突を避けた。

そして……

「おぉ―― っ骨折の跡があんまり痛くねー」

右手をついた仗助は、びっくりしたように目を丸くした。骨折した右手をあれこれ振ったり、握ったり、右手の状態を確認する。

「スゲーぜ。まだちょっと痛ェ――が、バイクの運転には何の問題もねー」

 

波紋か?尋ねた仗助に、アンジェラがうなづいた。

「ディーパス・オーバードライブ……私の生命エネルギーをちょっぴり使って、あんたの傷を治したわ」

 

ありがとうよ 礼を言おうとする仗助を、アンジェラは笑って遮った。

「アンタも私たちの怪我を直してくれたじゃあないの、お返しよ……それに、アンタ達一族をフォローしたり、怪我を治したりするのは、これはもう波紋使いの ――それと私の一族の――『伝統』みたいなものよ」

 

「?」

 

きょとんとする仗助に、アンジェラは余計なことを口にしてしまった……と、少し慌てて口をパクパクして……しかし結局は話し始めた。

「……私の祖先は、この技でアナタのヒイヒイおじいちゃんの首の骨折を直した事があるって聞いたわ」

それから……アンジェラは一瞬躊躇した。

「17年前、ジョセフ師匠もこの技でアナタのお母さんの命を――」

 

「ジジイとお袋が?それから、お前……」

仗助は混乱して首を振った。

「アンジェラ……お前の言っていることが良くわからねー。どういう事か良く説明してくれ」

 

だが、お喋りなアンジェラとしては意外な事に、アンジェラは首を振った。

「私からはこれ以上の説明は出来ないわ、詳しくはあなたのお父様に直接聞きなさいよ」

アンジェラは最後に仗助の肩をポンと叩くと、身をひるがえして仗助に背を向けた。そして、ポルナレフ達を追って戦いの場に飛び込んで行った。

     ◆◆

 

雨が振っていた。

雨は、ポルナレフ達が承太郎からの伝言を伝えに来たころから、ポツポツと振り始めていた。そして今は、自分の手もまともに見えない程の土砂降りとなっていた。

 

仗助、育朗、噴上の三人は、杜の中を、丸木車の轍を逆走して進んだ。そして遂に、育朗と仗助が初めて戦った大岩の麓に立っていた。

だが、目に入る風景は様変わりしていた。

大岩は、まるで叩き割ったかのように砕かれていた。せき止められていた渓流が、砕けた岩の周りを 音を立てて流れている。

 

「ここだぜ……腐肉 ――敵の匂い―― が、この辺りでプンプン匂いやがるのを、ハイウェイ・スターが感知したぜ……理由はわからねーが、敵はどうやらこの大岩を砕いたようだなぁ」

噴上が言った。

「ハイウェイ・スターは、腐肉の匂いがこの辺りをうろうろした後で、この先の獣道みてーなのを通って、西に続いているのを感知しているぜぇ〰〰」 

この獣道を5Km、それから県道を10Km、それから林道に入って10Kmだ。

 

「グレートだぜ。俺たちが追っかけてる『奴』が、この大岩を砕いたってワケかよ。(俺のクレイジー・ダイヤモンド並のパワーが必要だぜ、そんな事をするにはよォ)……だが、何でそんなことをしたんスかねェ〰〰」

仗助が首をひねった。

 

「ここに穴があるよ……たぶん、バオーが這い出たものだよ」

育朗は、ヒト1人が地面から這い出たような穴を見下ろしていた。

「バオー ……僕の体 は、僕達が追跡しているクリーチャーがこの岩を破壊したのに乗じて、ここから脱出したと言うことかな……」

 

「!?この場所は……いや、何でもねーぜ」

仗助が首を振った。

「噴上よぉ〰〰ッ お前の能力のスゴサは分かってるぜ〰〰だから、ここで何が起ったのかもう少し詳しく教えてくれ」

 

「オイオイ勘弁してくれ……俺は猟犬程鼻が利くってワケじゃねーんだぜ、これ以上詳しい事を読み取れるような匂いは感じられねー」

雨も振りだしちまったしな。噴上は首を竦めた。

 

「そうか……」

仗助は残念そうな顔をした。

 

「では、もうこれ以上ここにいても仕方ないよ……仗助クン、行こうか」

育朗は噴上と仗助にバイクに戻るよう、促した。

 

「おお」

 

仗助達三人は再び、ビッグオフロードバイクを駆って獣道を上り始めた。

降り出した雨が、また一段と激しくなった。

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