仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー)   作:ヨマザル

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東方朋子 その2

仗助たち三人が、大岩の前にいたころとほぼ同時刻:

 

海岸近くの道路では、町から現れたゾンビたちを食い止めるべく 康一と由花子が大車輪の活躍をしていた。

 

「由花子さんッ」

 

「ええ……」

康一の合図に、由花子が飛び出す。

「ラブ・デラックス!」

由花子の髪が伸びて、おそい掛かってきたゾンビを捉えるッ。

 

そして、由花子が足止めした所を……

 

【 ピ カ ッ 】

【 ギラギラ 】

【 サンサン 】

康一のスタンド:エコーズ・ACT2が、『尻尾から生成した文字』を 次々とゾンビに貼り付けた。

 

「Guroooo――n!」

エコーズの能力で日光を『体感』させられたゾンビが、絶叫を上げながら溶けていく……

 

「ふ――っ……これで全ての敵を倒したかな」

康一は、今度はエコーズACT 1を出現させ、周囲に撃ち洩らした敵がいないか探索を始めた。

 

由花子は、スタンドを自分の近くから遠ざけた康一の身を守るべく、自分のラブ・デラックスを周囲に伸ばし、不意の襲撃に備えていた。

 

その頃、早人は、安全な車内でアミを寝かしつけていた。

アミは疲れ切っていたのか、周囲を徘徊するゾンビたちを一顧だにせず、車の中でぐっすりと眠っていた。

 

『早人クン……』

と、何か見つけたのか、未起隆が車外からコンコンとドアをたたいた。

未起隆は、天体望遠鏡に変身して車の周囲の見張りをしていたのだ。

 

「なんですか、 未起隆さん」

早人は怪訝そうな表情でドアを開けた。

 

すると……

 

バシュッンッッ

 

未起隆は再び変身し、早人の体に『装着』した。

 

「!?ちょっっ……何ですか、未起隆さん」

 

『早人クン、あれはなんでしょう?ちょっと、よく見てもらえませんか? ……康一サンの耳に入れる前に 念の為私が見たものが何か、確認したいので』

 

未起隆に促されるがままにテラスの外を見た早人は、思わず恐怖で喘ぎ声を出した。

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣

 

「まさか、あれは……」

未起隆の力により、突然早人にも何やら亡霊のように白い人型の影が動いているのが見えた。

 

白い幽霊は、ここから僅かに離れた海岸線に近いところにいるようだ。

そこは、少し前までホル・ホース達と過ごした所だ。

 

「未起隆さん……あれは、スタンドです」

ぼくには、あれは未起隆さんのゴーグル越しにしか見えませんッ!

だからきっと、あれはスタンドなんです。

 

『そうですか……』

未起隆の声が、ヘルメットの中で響いた。

『早人君、申し訳ないけれど、一緒に康一君と由花子サンのところに話に行きましょう』

 

早人は、少し迷ったが、ぐっすりと眠っているアミをそっと抱えて車内から出た。

 

「……早人、危ないわよ、車に隠れてて」

なんでアミと早人を外に出したの未起隆? 由花子は、早人が近づいてくるのを見つけ、険しい顔で注意しようとした。

だが、つづく早人と未起隆の二人の説明を聞いて、由花子はお説教の言葉を飲み込んだ。

「康一君……今の未起隆君の話を聞いた?」

 

「うん――――敵かもしれない。みんな気を付けて」

僕が様子を見に行くよ。

 

そう言う康一に、由花子は満足げな ――そして酷薄な―― 笑みを浮かべた。

「いいえ、康一君。康一君が危ない思いをする必要は無いわ……だって、その敵なら、たった今、由花子が捕まえたんだもの」

 

いつの間にそこまで伸ばしていたのか、由花子のラブ・デラックスがその白いスタンドをとらえていた。

由花子の頭から、三つ編みが地面を伝い、 その先に、漆黒の、10才児程の背丈の『人形』が立っていた。

その『人形』が、白いスタンドと対峙している。

その黒い『人形』の両腕は、まるで巨大なボクシンググローブの様に丸まり、まるで女拳闘士 といった格好だ。

『人形』の腕も、足も、そして胴体も、三つ編み様に硬く編み込まれた髪の毛がより合わさって出来ている。

 

『何…ダ?……チビスケェ』

その白いスタンドが、漆黒の『人形』を掴みにかかる。

 

『人形』は身をよじって白いスタンドの攻撃をかわし……そして拳を固める。

腕から、拳から、固く圧縮された髪の毛がギチギチとこすれあい、音を立てた。

『ギュララララララアァ―ッッ!!』

ラブ・デラックスが作り上げた『人形』がラッシュを放ち、白いスタンドにおそい掛かった。

 

『そんなチビすけのラッシュだと? 』

『XuXUXUXUu!』

白いスタンドもラッシュを放つ、『人形』と白いスタンドのラッシュの速さ比べだ。

 

そして…………

 

『ゴブッ』

白いスタンドのラッシュが、『人形』をとらえた。

 

そのダメージのフィードバックを受けた由花子が、膝をつく。

 

『とどメ……』

拳をふり上げた白いスタンドの動きが、止まった。

 

白いスタンドの全身を、由花子の髪の毛が縛り上げているッ!

 

『なんだとッ』

 

『人形』が放った拳は砕け、その砕けた髪の毛がスタンドを拘束していた。

 

『Uuuuuu』

そのスタンドは、なんとか由花子のラブ・デラックスを引きちぎろうと身悶えた。

だが……

『Gyiiiiiiii!』

体を動かせば動かすほど、ラブ・デラックスが食い込み、そのスタンドボディが切り裂かれ始めたッ。

 

「アンタ、誰?何をしてるの……本体は何処?」

由花子がひどく冷淡に言い、ゆっくり、ゆっくりとそのスタンドの方向に歩き始めた。

「答えなさい……答えないと……あんたの体をバラバラにするわよ」

 

その時だ、突然、周囲を霧が覆い…… 由花子は戸惑ったようにあたりを見回した。

 

「何だって?」

康一も驚いたような声で自分のスタンドを出し、周囲を調べ始めた。

 

「!?何処、どこに隠れやがったのォ!」

由花子は、まるで悲鳴のような大声を上げた。せっかくラブ・デラックスで拘束していた白いスタンドを開放し、あたりの石を手当たり次第に穿り返したり、あらぬ岩を攻撃したりし始めている。

「何処に隠れやがったッ、このビチグソ野郎ッ!!」

ピクピクピク

……由花子の左目の端、眼輪筋が、まるで電気ショックを受けたカエルの足のように、ピクピクと動く。

 

『早人クン……キケンです』

未起隆があわてた口調で言った。

『まさか……スタンドの姿がいきなり消えるなんて……あれは、単にスタンドを引っ込めたのとは違います……多分、これはヤバい、ヤバすぎるスタンドです。危険すぎます!』

 

コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”

 

(?皆、何を言ってるの?)

早人は皆の反応が全く理解できず、首を傾げた。

さっきからあのミイラ男のようなスタンドは何処にも行っていない。ずっと同じ場所に立っているではないか。

何故、みんながあわてているのか。

早人が戸惑っている内に、謎のスタンドは由花子へ向かって、ゆっくりと歩いてきた。

 

そのスタンドが近づいてくると、謎のスタンドの全身から白い煙が噴き出し続けているのが早人にはわかった。白い煙はそのスタンドの周囲を覆って一緒に移動してくる。煙はどんどん濃くなり、スタンドの姿が煙の中に消えかかっていた。

 

「未起隆さん、扇風機か何かに変身できない? あの、白い煙を吹き飛ばさないと」

そうしないと危険だよ。

 

『煙?何を言ってるんですか?』

そんなもの何処にも見えませんよ。早人の意見を聞いた未起隆が戸惑っている。

 

(煙が見えない……まさか……?)

 

┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨

 

(きっとそうだ。僕は未起隆さんのスーツがフィルターで濾した空気を吸っているから、あの煙を吸い込んでない。でも、ほかのみんなはあの煙を吸った……そして、幻覚を見させられているんだ!)

 

と………くるりと包帯をまいた白いスタンドは足を止めた。そのスタンドの目の前には、あたりを手当たり次第に攻撃している由花子がいた。

白いスタンドは、由花子のすぐ隣で悠々と拳を振り上げ……

 

「あぶなぃ!」

とっさに早人はスタンドと由花子との間に飛び込み、スタンドの拳を受け止めるッ!

 

「!?キャァあああああッ 早人ォッ!どうしたの?」

 

『うわあああぁぁッ!突然ッ どうなったんですか?』

 

ゴフッッ!!

 

早人の肩が外れ、そしてスタンドに殴られた勢いで 早人は由花子に激突し、地面に投げ出された。

早人にぶつかった由花子は、後ろに吹っ飛び、大の字で地面に突っ伏した。

 

早人は地面をゴロゴロと転がり、やっとのことで再び立ち上がった。

 

『早人クンッ!これは?』

未起隆が尋ねた。

『どこかひどい怪我はしてないですか?致命傷はなかったと思いますが……それにしても、突然何が……』

 

「未起隆サン、これは、あの白いスタンドの能力だよ」

 

『!?なんですって』

 

「未起隆サンッ 僕に力を貸してッッ!」

痛みをこらえて立ち上がった早人の目の前に、その白い包帯のスタンドが立っていた。

 

『貴様……俺が見えているのかッ……』

白いスタンドが忌々しげに早人を見下ろし、そして もう一度拳を振り上げた。

『子供とはイエ、俺が見えているのであれば許してはおけン。この場で始末してやろウ』

 

「負けないよッ」

早人は拳を固め、包帯のスタンドに突進しようとした。

その時……

 

ゴブゥッ

 

白いスタンドが、突然両膝をついた。白いスタンドが手を地面に着けると、その部分の地面が、まるで粘土の上に立っているかのように、凹み、沈んでいく。

 

┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨

 

『エコーズ・ACT-3……どう早人君、上手くいったかな? 見えないけど手応えはあったよ』

康一が尋ねた。

 

そう、このスタンドの膝をひまづかせたのは、康一のスタンド:エコーズの『重くする』能力だった。

そして、康一に幻覚を破らせたのは、未起隆の能力:アース・ウィンド・アンド・ファイヤの能力であった。

 

未起隆は早人が殴られる前に、『自分の体の一部』をバッチに変換させていた。そのバッチを、早人を殴った相手にとりつけていたのだ。

たとえ白いスタンドが認識できなくとも、自分の体の一部がどこにあるのか感じることはできる。未起隆は、康一にいま自分の体がどこにあるかを逐次伝えていたのだッ。

 

「分かったよ、未起隆サン。ぼくには見えないけどそこに敵がいるんだね?間違いないみたいだ、僕のエコーズの攻撃にも、確かに手ごたえがあったよ」

敵の場所さえわかれば、ACT-3で倒せる。

康一は包帯のスタンドがいると思わしき方向に指を突きつけた。

「おいッ!そこのお前ッ!降参して姿を見せろッッ」

 

「こっ……このビチグソがぁ!!」

早人を乱暴にわきに追いやり、由花子が立ち上がった。

由花子は、すっかり血走った眼で周囲をにらみつけていた。由花子もまた、未起隆から、白いスタンドの位置を知らされたのだ。

「やってくれるじゃあない……許さないわよぉおおおお!」

由花子が吠えた。

「ゲロの代わりに、口から内臓を引きずり出してやるわッ!ギャハハッ」

 

グッググググッ!

 

由花子のラブ・デラックスが幾筋かにまとまり、先端がまとまり、そして奇怪な昆虫のような形をとった。

それは、ロケットに円形の牙の生えた口をつけ、百足のような足に、トンボのような羽が何枚も付いた、奇怪な昆虫のようなモノだった。

その「モノ」は、由花子の頭上に扇のように広がったラブ・デラックスの先端で揺れていた。

その「モノ」は、おぞましくもカチカチと歯を鳴らしながらうごめいている。

 

「くらぇッ 喰らわしてやるッッ 口からぐりこんで舌を引き抜くッッ! そのまま内臓までかじってあげるわッ」

由花子が叫んだ。

 

「!??ちょっと、由花子サンッそこまでしちゃ、ダメだッッ」

 

「わかってるわ、康一君。ちょっと言ってみただけよ……ユカコを信じて、ちゃんと手加減してるわ……」

 

ふっと由花子が、冷静な口調で康一に答えた。

 

だがその口調と裏腹に、由花子の頭上にうごめく『髪の毛』でできた蟲たちが、一斉に包帯のスタンドに向かっておそい掛かったッ!!

『ギュチッ ギュチッッ ギュチィッ!!!!』

 

「ちょっと、痛めつけるだけよッ 殺しはしないわ……」

ホントよッ

 

次の瞬間、カランと、未起隆が体の一部を変化させたボタンが地面に叩き落とされた。

そして、急に辺りを包む霧が強くなり、全員がまたしても包帯のスタンドを見失った。

目標を見失った蟲たちが、怒ったようにあたりを飛び交う……

 

そして霧が去った後、その場にいた謎のスタンドは姿を消していた。

 

――――――――――――――――――

 

 

(くそッ……やっぱりコイツら、とんでもねーヤツラだぜ)

先を走っていく仗助と育朗の背中を必死に追いながら、噴上がぼやいた。

 

三人は、猛烈な雨の中、ボコボコの道ともつかぬ獣道を、大排気量のビッグオフロードバイクを走らせていた。

 

(大体、この R1150GSはオフロードバイクじゃねーのかよ……なんてェ重さだ……それにこの道……バイクで走れる道じゃねーぞ……無茶させやがって……)

 

ちょっとアクセルを開けすぎたり、体重移動を間違えたら簡単に吹っ飛んでしまう。いや、たとえ操作を間違えずとも、こんな荒れ地をただ走るだけでバイクが勝手に暴れ出す。

バルンッ

胃のすくむような思いでハンドルを握って、バイクを飛ばす。木々の間をすり抜けながら急こう配の斜面を登り、下りる。

泥だらけのぬかるみに空転する大重量バイクを、スタンドや生身の力で持ち上げる。

ガレ場の岩で滑る前輪を、必死にバランスを取る。

その全ての動きでバイクが暴れ、噴上を吹っ飛ばそうとする。

普通の人間では、1Mたりとも進め無い超悪路だ。

 

その超悪路を、仗助も、育朗も、モンスターバイクを駆って吹っ飛ばしていくのだ。

猛烈な雨の中、どれだけ高い身体能力と精神力、そして度胸が有ればあんなスピードで飛ばせるのか。

噴上には悔しい事だが、命を削るようなその作業を、二人とも淡々とこなしているように見えた。

 

仗助など、噴上が乗っているものより一回りデカいバイク ――メネシス用にチューリング・大型化された超モンスターバイク―― に乗っているのに、然程苦労している様子もない。

当然人間には大きすぎるサイズだから、ハンドルこそ仗助が握っているものの、ステップはクレイジー・ダイヤモンドに抑えさせているのに、だ。

クレイジー・ダイヤモンドは、跳ね上がるバイクを押さえつけ、制御し、そして仗助の体を支えていた。一方、仗助本体は大排気量のモンスターオフロードのハンドル操作に集中している。本体とスタンドの完璧なまでに調和の取れた連携――それは、信じがたい程高度な、スタンド操作能力だった。

 

育朗も、まるで自分が乗っているのが自転車であるかのように、軽々とバイクを操っている。

イヤ、育朗のそれは、ジョウスケとは違った。育郎の運転は、まるで自分の命などまったく気にしていないような、限界を攻めるキレキレの運転だ。命知らず と言う言葉がぴったりと合う運転は、普段の育朗の言動とは不釣り合いだった。

イヤ……それは育朗がもう 『あきらめている』 と言うことなのか。

 

噴上に同じことは出来ない。 苦い思いを噛みしめていると、はるか前方から聞こえてきていた仗助と育朗のバイク音が消えたのに気が付いた。

(何だ、何が起こってやがる?) 

ハイウェイ・スターが、何か……とても『嫌な』ニオイを感知した。これは……ついさっき嗅いでいた匂いと同じだッ!

そして、前方から『一瞬』注意がそれた。

その『一瞬』、バイクがコントロールを失い、吹き飛ぶ。

 

足元

フロントタイヤが引っかかり、リアが勢いよく吹っ飛ぶ

頭上に地面

岩  ―――猛スピードで迫ってくる―――

 

「うおおぉ……ハイウェイ・スター、俺を守れッ!」

岩にぶつかる寸前、ハイウェイ・スターはかろうじて噴上を抱きかかえた。

火事場のクソ力と言う奴か、ハイウェイ・スターが噴上を抱えたまま獣道をスライディングするように滑って行く。

「おぉおおおおおおお!!」

噴上は必死にハイウェイ・スターを操作した。

なんとかバランスを取り、横倒しになって背後からぶっ飛んでくるバイクの上に乗る。

(おお……俺もなかなか……)

こんな場面なのに、チラリと もし4か月前のあの時スタンドがあったなら……と 場違いな妄想が走る。

もし、4か月前、橋沢育朗のスタンドに驚いて 交通事故を起こした時、すでにハイウェイ・スターが発言していたら、そうすればあんなひどいけがをすることはなかっただろうに。

 

だが、噴上が乗っている、地面を滑べっていくバイクの行く先に、巨大な杉の木が迫ってくるのが視界に飛び込んできた。

今度は止められそうもなく、無情にも大木が猛スピードで目の前に迫ってくる。

 

ぶつかるッッ!

 

(死?おい、ちょっと待てよ。俺まだやりたかった事を何にもしてない……)

噴上がそう思った瞬間――

 

『ドラァッ!』

大木がまるで爪楊枝のようにへし折れ、仗助とクレイジー・ダイヤモンドが 登場した。

クレイジー・ダイヤモンドが、なんなく噴上をスタンドごとキャッチする。

同時に、バイクも、噴上自身の損傷も、一瞬にして『直った』。

 

「おいおい、大丈夫かよ」

仗助は育朗を抱え上げ、眉をしかめた。

「オマエ、無理スンナって言ってただろぉぉ――がよォ」

だが、何か俺のスタンドのスピードが上がった気がするぜ。仗助は首をひねった。

(アンジェラのアレを喰らってから、クレイジー・ダイヤモンドのキレが増した感じだ……『波紋』か、今度アンジェラにならってみっかな)

 

「うっ……グウゥゥゥ……助かったぜ、仗助」

 

「あぶねーなァ。ホントに無理スンナよ〰〰自分のペースで行け」

 

「あっ……ああ」

仗助の忠告をよそに、噴上は、立ち上がると自分のスタンド:ハイウェイ・スターを再び出現させた。

「仗助よォ〰〰『育朗』を頼んだぜ。アイツ、自分のスケが手元に戻ってきたって言うのに、まだ『絶望』してやがるからヨォォォ」

 

「なんだよ 噴上裕也……お前なにをしようとしていやがる? それに、育朗がどうした?」

仗助が戸惑ったように言った。

 

「いいからお前達は先に行きなァ……俺は、ここでヤツラを始末してから、追いかけるゼェ……」

 

┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨

 

噴上の視線の先には、ワサワサと地面の上をのたうち回る無数のユンカーズの姿があった。

(俺だって、カッコつけねーとよぉッ)噴上は、1人ごちた。

「こいつは俺のハイウェイ・スターが『養分』を吸い尽くさねーと倒しづれー敵だぜ。 ――だから俺1人でやるぜ―― 仗助、つったってたら邪魔だから、とっとと先に行けよッッ!!」

 

     ◆◆

 

1人でユンカーズと対峙する噴上を残し、仗助と育朗の二人はバイクで先を進んだ

噴上が探知したように、獣道を飛び出して県道を行き、また林道に入る。

 

約20キロの危険な道のりを30分ほどで走破して、ついに二人はたどり着いた。

仗助と育朗は、『敵』に追いついたのだ。

二人の冒険は、ついに最終章に到達していた。

 

「グレートっすよ、こりゃァ――」

目の前の『敵』を見て、仗助の顔が引き締まった。

 

そこにいたのは、文字通りの『怪獣』だった。

たとえて言えば、太古の雷竜程の大きさの巨大な狼。

毛皮の代わりにヒルが全身を覆い、そして巨大なタコの触手が不規則に体から飛び出している狼……と言った格好だ。

 

一歩一歩、『怪獣』が進むたびに地面が揺れる!

Baruuuun!

Buuuraaarun!

 

「……もうこんなところまで……おじいさん、おばあさんのところまでは絶対に生かせないッ!」

 

バルンッ!!

 

育朗はビッグオフロードバイクのスロットルを前開にして、目の前の『怪獣』に向かって突進して行った。

 

「オイオイ、育朗クン、気合入ってるじゃねーかよォ―――ッ」

一拍遅れ、仗助もバイクで特攻をかけるッ!

 

地鳴りのようなエンジン音を響かせ、二台のビッグ・オフロードが怪物に向って突進した。

 

「来いッ!バオ―――――ッ!!」

育朗が叫んだ。

バイクを走らせながら、育朗の体がまるで風船を膨らませたように一回り大きくなっていくッ

 

肌がどんどん青白くなり、固化し、そしてポロポロと今の『人間としての』皮膚を垢のように落としていく。

そして……

 

「バルバルバルバル!」

バオーがそこにいたッ!

 

バオーはオフロードバイクを『怪獣』に向って蹴りつけたッ。

そして自分もまた両手をクロスさせ、身を守るための防御姿勢を取ったまま飛び上がった。

空中から、『怪物』に向っていくッッ!

 

「おりゃあああああああああ!」

一方、仗助はバイクをドリフトするように地面を滑らせた。

そのまま、まるでスノーボードに乗っかっているように、滑るバイクの上に立ちあがり、その滑る方向をコントロールし……車体を『怪物』の前足にぶつけたッ!

反動で吹っ飛ぶ仗助の体を、自身のスタンド:クレイジー・ダイヤモンドに支えさせる。

そして……

『ドララァッ!』

宙を舞いながらも、仗助はすれ違いざまに『怪物』のボディにクレイジー・ダイヤモンドのラッシュを叩きこんでいった。

 

「Vuoooooowm!!!!」

二人の攻撃を同時に受けた『怪獣』が絶叫を上げた。

タコのような触手の内の一本が、唸りを上げて仗助と育朗をおそうッ!

 

『ドラッ!』

仗助のクレイジー・ダイヤモンドが、触手の攻撃を吹き飛ばすッ!

 

「バルバルバルバルバルッ!」

バオーが宙を舞い、リスキニハーデン・セイバーが触手を切り落とした。

 

『Vogooom!!!』

『怪獣』は怒りの叫び声を上げた。

怒りにまかせた体当たり…… と思わせ、『怪獣』は残った触手の先端から リスキニハーデン・セイバーを――オリジナルの5倍近いサイズの巨大な刃を―― 出現させた。

 

「うぉぉぉ―――――ッ!」

 

『バオ―――ッ』「バルバルバルッン!」

 

仗助は、鞭の様にしなって周囲を薙ぎ払らう触手の根元にしがみつき、リスキニハーデンセイバーを避けたッ!

 

一方バオーは……バオーは自らも リスキニハーデンセイバーを出現させたッ!

迫り来る巨大な刃を、真正面から切り捨て…………

だが背後から回りこんだ新たな触手がバオーをおそうッ!

 

ズヴァ――ンッ!

 

『アッ……う、う、あ……』

鮮血が舞い、巨大な刃に四肢を切られたバオーが吹き飛ばされた。

 

絶体絶命ッ。

いや、そうではなかった。

 

『ドラララァッ』

吹き飛んだバオーは、あわや地面に激突する寸前に、仗助のクレイジー・ダイヤモンドに支えられていた。

「育朗よぉ、無茶するなよォォ」

仗助がその『直す』能力を発動させると、バオーの斬られた手足が一瞬にして元に戻った。

 

『すまない、仗助ッ』 「バルッ!」

 

「いいってことッスよォ―――、育朗クンッ」

仗助が獰猛な笑みを浮かべた。

 

『Dobabababaaaaaxtu!!』

今度は『怪獣』が口から黄色い何かの液を噴出した。

それはおそらく強酸液、まともに食らえば、二人とも一瞬に溶けてしまいかねないほどの量だ。

 

『ドラララッ!!』

クレイジー・ダイヤモンドは地面を砕き、そして地面を壁状に作り「直す」事で、とっさにシェルターを作った。

 

強酸液は、むなしくしぶきを上げ、クレイジー・ダイヤモンドが作ったシェルターの壁面を叩いた。

 

「グレート……こりゃあ何だ?……とんでもねー奴だぜ。俺はこんなやつがいたなんて知らねー」

 

『あれは、僕だよ……彼もバオーだ……』

バオーからスタンドの顔だけを覗かせて、育朗が顔をしかめた。

『本当に微弱だけど、バオー同士は微弱な電磁波のような物で連絡を取り合っているんだ。――だから、お互いの存在は分かる……正確な数はわからない。……でも、あの『怪物』の中には複数の寄生虫バオーがいるよ。 それが僕にまでも確かに感じられるんだ』

 

「なんだって?」

仗助が頭を抱えた。

「じゃあ、奴はアンタの何倍も つぇーってワケだ」

 

『イヤ……バオーの力は、そんな簡単な算数じゃあないハズなんだ。』

育朗は心配そうに言った。

『バオーの力は、寄生虫バオーが分泌する体液なんだ。その体液が僕たちの体を変化させる』

 

「その、分泌液をヤツが何倍も多く持ってるってことだろ?」

 

『そう……それがどういう意味を持つのか……』

 

ピシッ……

『怪獣』の発する強酸液が、シェルターを侵食しはじめた。

 

育朗と仗助は、シェルターの壁面に伸びていくヒビを見て、顔を見合わせた。

「育朗クンよォー、どーやら今はまだゆっくり話すときじゃあないっスよ」

 

俺が隙を作るッス 仗助の言葉に、育朗がうなずいた。

『分かった。その隙に僕が飛び出したら、今度は僕がアイツの注意をひきつけるよ』

 

「了解、行くッすよォォォ! 気合い入れろヨォッ!」

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