真・女神転生Ⅴ 神と悪魔と世界と   作:ナタタク

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第7話 アマノザコ

「でね、でね!!その失われた半身、運命の悪魔を探してるんだ!わかる、わかる!?このロマン!」

「うんうん、わかるわかる。会えるといーねー」

「だよねー!それでそれでぇ」

もう何回目になるのかわからない和装の悪魔の話に機械的な返事を返すキョウタロウ。

彼女はアマノザコを名乗り、幻魔のカテゴリーらしい。

彼女が旅をする目的であるその運命の悪魔の話で耳にタコができる感じがし、それよりもキョウタロウの脳が意識を向けているのは彼女が話していた東京タワーにいる悪魔のことだ。

塔の悪魔と称されるその悪魔は強大で、東京タワーへ行って戻ってきた悪魔はいないとのことだ。

「アタシの勘だと、東京タワーに行けば、運命の悪魔にぐっと近づくの!だから、あんたにはどうしてもそいつに勝ってほしいの!」

「勝つって…まあ、確かにそいつを倒さないと進めないのはわかるけど…」

東京タワーに向かうことはアオガミの求めでもあるので断る気はないが、その塔の悪魔の話を聞くとどうしても足がすくむ感覚を覚える。

ここに来るまでにガキやオンラキモなどの悪魔を倒してきたが、それでも自分と同じ程度かそれ以下の体格の悪魔に過ぎない。

アマノザコから軽く聞いたその悪魔はおそらくそれらの数倍の大きさを誇り、それに見合う強さを誇るだろう。

そんな悪魔に勝てるのか、そんな不安が頭をよぎる。

「大丈夫大丈夫、そんなヤツに負けないように、アタシがサポートしてあげる。それなら絶対勝てるよね、よね!!」

自信たっぷりに言うアマノザコだが、彼女のことは初対面な上にどんな力を持っているのかも知らないキョウタロウにはあまり効果がない。

かといって、立ち止まっていても、つかまったイチロウを助けることができず、元の世界へ戻ることもできないため、進むしかない。

そうして東京タワーへの坂を上がっていく。

「やはり、か…この場所、覚えがある」

「覚え…これは!?」

上がり終えたところでキョウタロウが見つけたのは腕で、それはアオガミのものとよく似ていた。

砂の中から上に伸ばしている状態を見ると、埋まっているのかもしれない。

「少年、掘り起こしてくれないか?おそらく、この中に私の求めているものがある」

「わ、わかった…」

「うわあ、見た感じもうこいつ死んでるよ、るよー」

もう活動することがないように見える腕だが、アマノザコが気になったのはそれがいつまでもマガツヒにならないことだ。

死んだ悪魔、もしくは元の姿を保つことのできなくなった悪魔はマガツヒとなる。

それが何らかの理由で終結することで新たな悪魔が生まれることがあれば、別の悪魔が取り込むことで自らの糧にする。

だが、この悪魔は死んでいるにもかかわらず、ただ埋もれているだけでマガツヒに戻ろうとしない。

違和感の多いそれをアマノザコが見つめる中で、キョウタロウは掘り起こす。

「え、ええ!?これ…」

掘り起こしたキョウタロウは驚きのあまりその場に座り込む。

機械のような鎧姿に青い髪、金色の開いたままの瞳。

それはアオガミそっくりの機械で、瞳はまるで掘り起こした自分をじっと見つめているようだった。

「アオガミ…この、アオガミって…」

動揺を隠せないキョウタロウから分離したアオガミが自分そっくりのその悪魔の手を握る。

同時にアオガミとその悪魔の体が光り輝き、悪魔の体がアオガミに取り込まれていくのが見えた。

あまりのまぶしさに目を閉じ、光が収まるのを感じて目を開くと、そこに映っているのは天使と悪魔の大群が対峙する東京タワーだった。

「何…これ…」

この世界に来て初めて見た悪魔であるダイモーン、そしてイチロウをさらった天使たちが対峙し、その天使たちの先頭に立っているのは褐色の肌と金色のハイレグアーマー姿の天使だ。

「聞け、同胞たち!天使長の命により、我、アブディエルがベテルの総指揮を執る!敵はこの混沌の悪魔どもだ。邪悪な蛇に従い、秩序を破るものたちだ。しかし、恐れることはない!我々には神の加護がある!各地より集いし精鋭たちよ、ベテルの定めし秩序を守るために、戦え!」

「我らが神のため、秩序のために!」

「混沌の悪魔に死を、世界の祝福を!」

「我、神の刃として悪魔を葬らん!」

アブディエルの演説に応えるように天使たちは武器を掲げ、神への賛美の言葉を口にする。

その間にも、赤い鎧をまとった天使や王冠をかぶり、緑のローブ姿の天使など、様々な姿の天使たちがかけつける。

彼らの姿を見たアブディエルが号令をかけようとする中、急に空が暗くなり、激しい揺れが起こる。

空を見上げると、暗くなった空にひびが入り、まるでガラスのように砕け散る。

そこから現れるのはダイモーンをはじめとした悪魔たち、そして、東京タワーにも匹敵する巨大な黒い体の悪魔だった。

6枚の羽根を持ち、赤い瞳で天使たちをにらむ。

そして、その肩の上には誰かが乗っているように見えたが、地上からはその姿をはっきりと見ることができない。

「聞け、天使たちよ。汝らのあがめる神は死んだ。混沌王の手によって」

「何!?何を言って…」

「そんな話、信じられるか!この、蛇が!!」

「いや、しかし…」

黒く染まった天使の言葉に天使たちの中で動揺が広がり、その様子を見ている混沌の悪魔たちがせせら笑う。

たった一言、神の死を口にしただけでたやすくお題目である秩序に傷がつく天使たちへの嘲りだ。

「人を…すべての支配から解放するために、行ったのだ…」

「蛇め…妄言を!!」

「妄言ではない。私は至高天、神の玉座にたどり着いた。天使であれば、その言葉の意味が理解できよう」

目を細めるアブディエルだが、肯定も否定もするそぶりを見せない。

その中で、蛇と呼ばれた悪魔を討つべく、5体の天使が突撃を仕掛ける。

仮面で隠れている顔だが、それぞれが宿しているのは神を貶める悪魔への強い憎しみだった。

「見苦しいぞ、かつての同胞よ」

目を開かれた蛇の肩に乗る誰かが蛇と天使たちの間に入る。

わずかに高度が下がったことで、キョウタロウの目にその誰かの体に緑と黒のタトゥーのようなものが刻まれているのが見えた。

彼が武士の居合切りのような構えを見せると同時に右手に白い光でできた刀のようなものが出現し、それを振るうとともに発生した剣閃が襲い掛かる天使たちを細切れにする。

倒された天使たちはマガツヒとなり、彼の体に吸収されていく。

「紹介しよう、彼こそが混沌王。神を滅ぼした…最強にして最高の悪魔だ。これより、秩序は崩れ、混沌が世界を覆う…。そして、その混沌の中から、真の再生が…未知なる未来が生まれる」

混沌王と呼ばれた彼が蛇から離れていく。

蛇の体が徐々に赤く染まっていき、そこからマガツヒが放出されていく。

その量は指先だけでも、並の悪魔や天使以上の膨大なものだ。

「我の最後の役目だ…その未来に芽吹く種をまこう」

マガツヒへと変換された蛇の体が魔界中に拡散していき、そのマガツヒを止めようと天使たちが動こうとするが、混沌王の目を見ただけで恐怖を感じたのか、動きを止めてしまう。

それはアブディエルも同様で、彼女もまた、本能で混沌王から大きな何かを感じ取ってしまっていた。

「至高天…ベテル…神の、死…うう!!」

激しい頭痛を覚えたキョウタロウの視界が元の光景に戻り、同時にその頭痛はまるで最初からなかったかのように消えてしまった。

「ねえねえ、どうしたの??急に動かなくなっちゃってたよ、たよ!!」

アマノザコが飛び回りながらキョウタロウの容態を確認しようとするが、彼にはそれに答えを返す余裕がない。

それよりも、アオガミに聞かなければならないことがある。

「アオガミ…今の、光景は…」

「君も見たんだな、あの光景…18年前に東京で確かに起こったものだ。ここには、世界各地のベテル支部から天使たちが混沌の悪魔を討つべく集結した。そして、奴は言った。神の死…至高天のことを…この私の記憶は、ここまでのようだ」

ここから先の光景を見ることなく現実に戻ったということは、ルシファーがマガツヒと化して魔界に拡散した影響だろう。

自ら行ったとはいえ、マガツヒとなり、このアオガミはその余波を受けただけで機能停止した。

それほどまでにルシファーは膨大なマガツヒとそれに伴う力を有しており、おそらく余波を受けた多くの天使が同じ運命をたどったのだろう。

「18年前…僕が生まれる前に…え、でも…」

キョウタロウが生まれたのは東京で、アオガミの言うことが正しければ、生まれたときにはすでに東京は滅んでいたということになる。

ならば、自分が生まれ、高校生活を送るこの東京は何か。

別の世界の東京の話ではないかと考えれば考えるほどキリがなくなる。

「あ、ああ、ああああー----!!!」

急に耳元に響くアマノザコの叫びが思考の海に沈みかけたキョウタロウを浮上させる。

東京タワーの影から伸びてくる蛇の頭がキョウタロウを丸のみにしようとしているのが見え、思わずあおむけに転倒したことで運よく捕食されずに済んだ。

キョウタロウを食い損ねたその首は徐々に後ろへと下がり、やがて犯人がその姿を見せる。

大蛇の胴体に9つの頭を持つ邪龍。

東京タワーの展望台に届くばかりの巨大なその悪魔にキョウタロウは戦慄する。

「悪魔、確認…種類特定、邪竜ヒュドラ」

「この悪魔が塔の…でも、なんで今まで気づけなかったんだ!?」

これほどの巨体で、しかもこうしてみているとナホビノになった影響なのか、その悪魔から大きな力を感じる。

少し距離があっても、これだけ感じることができるのであれば、おそらくは気づくことができただろう。

それができないくらい混乱していたのか、それともアオガミが記憶を取り戻したことで得た力なのか。

蛇の首から次々と炎が放たれる。

「キョウタロウ、悪魔召喚だ」

「わ、わかってる!!オンラキモ!!」

右手から放出されるマガツヒから形成される凶鳥オンラキモ。

タマネギのような頭に羽根をむしり取られたニワトリの胴体がついたようなそのいびつな悪魔は口から炎を吐く。

それはキョウタロウに命中するコースだった炎とぶつかり、若干その勢いを弱める。

だが、ヒュドラとオンラキモでは力の差が大きすぎる。

やがて炎の勢いはヒュドラが競り勝っていく。

なんとかオンラキモが持ってくれている間に立ち上がったキョウタロウは右手を刃に変える。

(ベテルとか、至高天とか…僕にはよくわからないし、大きすぎるよ。ただ、東京へ帰って、元の生活に戻りたいだけなのに…)

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