ギャラクシーポリス   作:橘 花道

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◎簡単なあらすじ
 銀河連邦を称する異星人達が地球にやってきて、日本と国交を開いて約十年。
 異星人が地球に往来、定住する事に寄る、あたらな文化価値観が生まれていく中、
 その異星人達に寄る奇特な犯罪も増えていった。
 そして、一人の高校生が異星人の犯した犯罪に巻き込まれてしまう。


捜査報告書 No.3【電柱】-羽咋優杜メイン
#1


 *20xx/4/2-22:22

 羽咋優杜(はくい ゆうと)は天文部の部活動を終え高岡高校を後にする。

 まだ四月の夜は少し肌寒く、上着が風に揺れた。

 電車に揺られ最寄の駅を降り、取り出したスマホを操作して一時停止を解除した。

 

『ついに6件目だよ、全部で10本。電柱ばかり盗んでどうする気なんだろうね』

 

 耳元にパーソナリティの声が響き始める。

 

『ダネ。ダネ』

 

 独特の低音で相方が相槌を打つ。

 

『さすが異星人。面白いこと考えるよね。ちょーUnbelievableだよ』

 

 ここ数日、突然電柱だけが消える事件があり、異星人の仕業だと世間を騒がせていた。

 

『マテ、マテ、異星人でひとくくりにするなよ』

『だって、なに星人の犯罪かわかんないんだもん』

『イヤイヤ、地球人の犯罪かもしれないだろう』

 

 はるか遠くマーマ星から来たマーマ人のヤッさんと日本人の真奈美によるネットラジオだ。

 聞き始めたのは天文部の部長から強引に勧められたからだが、部長のお勧めの中で唯一気に入っている番組だ。

 既にネットラジオや動画配信、地上波テレビのコンテンツなどを異星人が普通に手がけており、何年も前から色々な異星人が地球に来て生活をしている。

 特にここ東京は優杜が物心着く頃には、観光や異文化への興味からか多くの異星人が往来するだけではなく、東京に住み、さまざまな仕事をしていた。

 優杜の祖父母の話ではバブル成長期に海外から多くの外国人労働者や観光客がきて、異国文化、多様性を日本に根付かせていったらしく、今度は銀河の星々からさまざまな異星人が地球に、日本に来て新しい常識や価値観を展開していた。

 

『誰が盗んだかは置いとくとして、あんな大きなもの、どうやって運ぶんだろうね』

『え、日本には何処でもドアとか、スモールライトがアルジャン』

『それ漫画の中だけだから。警視庁は空に飛ばすし、普通に星間ワープとか、物質転送装置のを持ち込んだ異星人のほうがすごいからね』

『デモデモ、スモールライトがあれば、電柱盗みたいホーダイなのに、何で地球人は造らないのさ』

『スモールライト作っても電柱は盗みません』

『マジカ、一家に一本イヤ二本電柱あると便利だよ』

『なに使うの?』

『箸でもいいし、物干し竿にもなるし、デーンチュにだって』

『なにそのデーンチュって、何処の星の言葉よ』

『えっ、知らんの?コノサク星のヌリノミ語だよ』

『いやいや、知らないわよ。せめて地球の日本語の駄洒落にしてよ』

『ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセーン』

 

 優杜はなんでもない異星人独特のボケに、クスリと笑うと夜空を見上げる。

 街灯の明かりに霞む夜空。

 星好きの優杜はその寂しい夜空を見て落胆し、ため息をつく。

 街の明かりに負けじと、今日は綺麗な月が出ていて、それが唯一の救いだ。

 だが、その二つより、星々を遮る巨大な浮遊物が悠々と濃紺の夜空を月すらもかき消しながら泳いでいるように進んでいた。

 浮遊警視庁。

 通称 -ギャラクシーポリス-。

 優杜が小学生の頃から、それは常に東京の空を悠然と周っている。

 東京都の治安を守り、特殊な能力を持つ異星人の犯罪を抑止する為に。

 

 

 

 道沿いにほぼ等間隔に並ぶ電柱。

 地下設備や、異星人の持つ新技術により、宅地整備が進む中、都心部では見なくなったが、優杜の住む郊外では今だ悠然と並んでいる。

 ネットラジオに意識が持っていかれていた優杜の視界に突然、軽々と電柱を持ち上げる四本腕の巨人が姿を現す。

 目の錯覚かもしれないが、身の丈四メートルはあるように見える。

 巨人は優杜に気づき不敵に口元を緩めると中から鋭い牙が覗き込む。

 

「えっ」

 

優杜は学校帰りに何時もの道を歩いていたはずだったのに。いつの間にか異界に紛れ込んだように立ち尽くす。

 きっと、一昔前なら、化け物とか、妖怪だと呼ばれるような姿をした生物も、異星人が身近で暮す現在となっては、それらが妖怪などの類ではなく異星人に取って代わっていた。

 それも、今まさにネットラジオで話題にしていた、電柱を盗もうとする異星人犯罪者だ。

 

『ハハハ…、なにそれ、マジウケル』

 

 耳元から流れるラジオの笑い声に、金縛りがとけ足がぎこちなく動き出す。

 スマホを耳元に当て小声で「警察に電話」とつぶやく。

 

「おや、これはいけませんね」

 

 背後から男性のような声が聞こえて振り返ると、いつの間にかスマホが奪われていた。

 男は素早い動きでスマホを操作すると、発信をキャンセルした。

 トレンチコートにカウボーイハットの男がわざとらしく、肩を竦めておどけてみせる。

 トレンチコートと帽子で顔が隠れて見えない。顔は見えないが間違いなく地球人ではない。

 恐怖で身動きの取れない、優杜の耳からイヤホンと取り外すと、本当に警察に掛かっていない事を確認する。

 

「おや、コズミック・コミュニケーションじゃないですか。良いですよねこの番組、特にマーマ人のボケが…、おっと地球人にはわかりませんか」

 

 のんきな声とは対照的に、すばやい動きでスマホの電源を落とす。

 

「コロスカ」

 

 その言葉に、優杜の心と体は縮み上がり、四本腕の巨人の腕がひとつ、優杜に伸びる。

 

「待ちなさい」

 

 トレンチコートの男は腕時計を見るように手首の装置を見る。

 

「うむ、地球人払いの装置は正常動作と、困りましたね」

「じゃ、み、見なかった事にしますんで…」

 

 トレンチコート男と四本腕の巨人に挟まれたままの優杜は、二人の脇を抜け横にそれようとゆっくりと動く。助かるならスマホは諦める。

 

「おや、帰すとお思いですか」

「うぅ……」

 

 逃げようと動き出した優杜の肩をトレンチコートの男が掴む。

 

「安心してしてくだい。殺しはしませんよ。何せ貴方は重要な研究材料」

 

 安心できない言葉を、演技でもしているように大げさにトレンチコート男が言うと、優杜の脳裏に体を切り刻まれ、薬を飲まされ、注射針を何回も射される想像が脳内を大行進する。

 

「お願いです、本当に見なかったことにしますので」

 

 脅えながら言う、優杜の言葉を無視しつつ、トレンチコート男は演技を続ける。

 

「ここは雰囲気作って、円盤から銀の光を出して回収してとかしてみたいものですが、生憎とそんな高価なおもちゃは持ってませんので、アギン。丁重にお連れしろ」

 

 巨人の腕が優杜を掴み、動きを封じる。

 

「だれか、たす…ゲッホ、ゲ…」

 

 ダメ元で大声で助けを呼ぶが、あまりの握力に肺が押し潰されるような痛みに悲鳴すら上げられない。

 トレンチコート男が優杜の口元に手を当てるとそのまま意識を失いだらりと体が崩れ落ちた。

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