※20xx/6/2-09:00 奥多摩湖
上空から轟音がうなり、隕石が飛んでいくのが見える。
隕石は雲取山山頂付近にある【ヘリオン】に向かっていたが、その手前で強力な電磁防壁に弾き返され、奥多摩湖の一番広いあたりへと落下した。
その衝撃で湖からは津波が発生。周辺の道路は水浸しになった。落下した隕石はジュージューと水蒸気を上げ、全面にひび割れが入っていく。
※20xx/6/2-09:30 管理事務所の前
辺りは避難誘導の声と移動していく人々で騒然としている。凛子はショルダーバッグ、ザーマックは爆薬の入った立方体を持ち、シレームは液体の入った身長と同じくらいの大きさの容器を紐で背中に負い、ザーマックの肩に乗っている。
凛子は気合いを入れるように頰を軽く叩いた。
ピューリッタは凛子を舐めようと首を近づける。それを秋山が手綱を引いてとめる。
「あなた達に頼む事はピューリッタが決めたようなもんです」
「え?」
「初めて会った時から、こいつがあなたに信頼の行動を取りましたから」
「あの舐めまわした事?」
「そうです」
秋山が手に持ったカプセルを食べさせる。
「なんですか? そのカプセル」
「怪しい薬じゃありませんよ。このあたりにもあるワサビの成分と同じだと言ってました。これまでため込んだエネルギーを、一気に爆発させる強化剤のようなものらしいです」
「ワサビの成分ですか…」
「詳しい事は分かりませんが、ほら、効いてきたようです」
秋山はそわそわし始めたピューリッタにまたがり、馬上から凛子に一礼する。
「では、そちらはお任せします」
「ハイ!」
秋山が手綱を操り岩山を駆けあがていくと、みるみるうちにピューリッタが巨大化していく。そして、秋山はピューリッタの首の部分に取り込まれていった。
※20xx/6/2-10:00 奥多摩湖畔
凛子たちは奥多摩湖が見渡せる高台から、落下した隕石を見つめていた。湖水は沸騰してほとんど蒸発し、底が見えている。
× × ×
−−−回想
「ギャラモンは吸収したエネルギーで分身を作り出す。その分身もまた同様に分身を作る。一体だけのうちに破壊しなければならないのだ」
立方体のケースの爆弾と、500mlほどの容器に入った液体を示す。
「その爆薬でギャラモンて奴を吹っ飛ばすんだな」
「ただ爆発させても奴の強靭な表皮で防がれるだけなのだ」
「それ一つ、ダイナマイト10本分、威力…ある」
「奴が分身を作る前に吹き飛ばすには、この10倍以上の威力が必要になる」
「それじゃぁ…」
「この液体は体内から腐食させるものだ。だが、飲ませて吸収させていたのでは間に合わない。体内で爆発させ液体の吸収を早めるのだ」
「体内で爆破すれば周囲への被害も出ないわね」
「一石二鳥」
× × ×
高台の凛子達が奥多摩湖に落下した隕石の様子を見ていると、ひび割れがどんどん大きくなり、とうとう中から【ギャラモン】が現れた。立ち上がると周辺の建物を悠に超える巨体で、動くたびに地響きがする。
「ゲェーッ」と甲高いような低いような君の悪い声を発し、立ち上がると大きく体を揺すって、体の周囲の岩のかけらを振り落とす。かけらは周囲に飛び散り、バラバラと落ちる。
その正面にギャラモンに負けないほどに巨大化したピューリッタが降りてきて身がまえる。ピューリッタに気付き二体は対峙する。いよいよ二体の戦いが始まった。
ピューリッタが突進する。それをギャラモンがかわす。すかさずピューリッタが後ろ足で蹴り上げる。ギャラモンはかがんで体を丸くする。ピューリッタの一撃を強固な鱗で跳ね返す。ギャラモンはそのまま転がって移動する。距離を取ったギャラモンが体を起こし立ち上がる。
大きく口を開きピューリッタの方に向く。ピューリッタは飛び上がる。それを見てギャラモンも上を向き、口から熱線を放射する。ピューリッタはそれを躱し、ギャラモンを飛び越え反対側に着地する。ギャラモンはそちらに向きを変え狙おうとすると、ピューリッタはふたたび飛び上がり頭上を超えて行く。
それが3回目の時、ピューリッタは飛越さず急降下し、ギャラモンに体当たりした。
「ゲェーッ」声を発しながらギャラモンが仰向けに倒れる。その上に馬乗りになるピューリッタ。覆い被さったピューリッタの体が青白く光ると、体がドロドロと溶け始めた。
それを見ていた凛子たち。
「なんだありゃ、キモぃぞ。あれで口を塞ぐって?」
「口の中へそれを入れて、あのドロドロで塞ぐ、ほら、行って!」
やれやれ、といった顔つきで、シレームを肩にのせザーマックが駆け出していく。仰向けで倒れているとはいえ、巨大なギャラモンの顔は見えない。ギャラモンに近づくと、ドロドロの表面には青白い光が模様のように光ながら移動している。意外とベタ付かないドロドロを乗り越えると、シレームが一人するすると腕から腹へとジャンプし顔にたどり着く。ドロドロが首のあたりにまとわりつき、大口を開けた状態になっている。
「口…開いてる」
シレームは背負っていた液体の入ったペットボトルを降ろし、ザーマックが爆薬の入った立方体を投げると器用に受け取り、ケースの蓋をあけてタイマーを起動させた。カウントは66。蓋を戻しギャラモンの口の中へ突っ込み、それを、液体の入った容器でぐいぐいと押し込み、最後は全体重をかけた。
ザーマックが集めてきたドロドロを、ギャラモンの口へと詰めていく。その間、ギャラモンは痺れたように動かない。
「よっしゃ、これでいいな」
ザーマックの背に乗ろうとしたシレームが、ドロドロの中に倒れている秋山を見つける。
「そこ…管理人」
「くそ、掘り出すか?」
「時間…無い、あと10」
「10?! 無理だろ」
ザーマックが慌ててドロドロをかきわけ秋山をひっぱる。
ギャラモンは目を覚ましたのか、低く唸りながらゆっくりと手足が動いた。
シレームがザーマックの背に飛び乗った。
「シンクロ」
「おう」
二人の体が波に打たれたように振動する。ザーマックのパワーが増し動きも早くなり、ドロドロの中の秋山を一気に引っ張り出すと小脇に抱え、高速でギャラモンから離れて行った。
その時、立ち上がりかけたギャラモンの体内から、ボンッという音がして、口に詰めたドロドロが吹き出した。
× × ×
−−− 回想
「ギャラモンの動きを封じ、体を腐食させれば電子脳が外へ出てくるはずだ」
秋山が組み立てた銃のようなものを凛子に渡す。困惑している凛子。
「あなたの役目は分離して外へ出てきた電子脳を、この銃で撃ち抜くことです」
渡された拳銃ほどの大きさの銃を握りしめる凛子。その手を秋山が上から握る。
「大丈夫。照準を定めて撃てば、必ず当たる」
× × ×
起き上がろうと頭をもたげたギャラモン。ボンッという音が聞こえ口に詰めたドロドロをはき出した後、ビクビクと痙攣を起こし、ふたたび頭を落として動かなくなった。
ギャラモンを見下ろせる場所に立っている凛子は、両手で銃を握りしめ狙いを定める。
ギャラモンの体を覆っていたドロドロとした物が乾いてハラハラと落ちて行く。更にその下のギャラモンの体が赤くふくらみ、そして、急に砂のように崩れ始めた。
その中から青く輝く物体が見えてくる。中心からはちりちりと静電気のような光を発した丸い物体が、ギャラモンの体から浮き上がった。
凛子が銃を構え照準を合わせる。ピピピと電子音がすると、構えていた銃のようなものが変形した。狙いを定め引き金を引く。
銃声一発。
次の瞬間、青く輝く物体が木っ端微塵になる。
凛子が撃ち抜いた。その体勢でひと言。
「カ・イ・カ・ン」
思わずポーズをとる凛子。だが銃はまたもとの大きさに戻っていく。
「なんか、すごい…」
そこへ秋山を抱えたシレーム&ザーマックがやって来る。
ザーマックに抱えられている秋山はグッタリとしている。
「秋山さん、秋山さん!」
しがみつく凛子。
「死んじゃあいない。意識はないがな」
「凛子、救急車…呼べ」
慌てて凛子がギャラフォンで連絡する。ザーマックは地面に秋山を下ろす。
「人工呼吸でもするか?」
「やめなさいよ、あんたの馬鹿力でやったら死んじゃうわ」
凛子はギャラフォンを切り、秋山の傍に座り血の気を失って青白い手を握る。
※20xx/6/2-18:00 青梅市内の病院
病室のベッドには秋山が横たわり、体には脈拍や血圧を表示する医療機器い繋がるコードや点滴の管が付けられている。そ顔色も点滴に繋がれた手も普段の色に戻っていた
イチローと凛子がベッド脇に立っている。
「本当に異星人が乗り移ってたのか?」
「シレームとザーマックも見てますし、部長も話しを聞いていたはずです」
「姿は見ていないし、医者はただの人間だと言ってるが…」
「本当にいたんです」
うーんと首をひねりながら考えるイチロー。
「まぁ、怪獣は実在したからなぁ〜。じゃあ、体から逃げ出したか、死んだのか…。とにかく、今ここに居る彼は秋山悌二郎でしかない」
ベッドに横たわる秋山を見つめる二人。医療機器が発する音が静かに響く。
「秋山さんは、どうなるんですか?」
「まあ、怪獣の残骸の回収と、お前の持っていた銃、それと管理事務所の調査待ちだ。意識が戻ったら本人からも話を聞く。なぜ襲来が分かったかが聞けるといいんだが…。今回のこと、本部では絞られるだろうな」
「…やっぱり、懲戒処分ですかねぇ…」
「まぁ、課長はキビシイからな。覚悟した方がいい。ともかく、正直に話すんだ、俺に話していないことも」
看護士が入って来て、イチローと凛子は後を頼み病室を出る。