ギャラクシーポリス   作:橘 花道

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◎簡単なあらすじ
 高岡高校も新年度を迎え、弱小部の存続を賭け、新たな部員獲得の為、作戦会議が始まった。


捜査報告書 No.12【秘密会議】- 羽咋優杜メイン
『秘密会議』


 *20xx/4/5-16:00

 

「諸君。集まって貰ったのは他でもない。今年もとうとうこの時期が来てしまった」

 

 締め切った薄暗い室内で、黒縁メガネをかけた男が重々しく口を開く。

 

「部長、今年こそは」隣の凛とした女生徒が悔しさをにじませるように言う。

「ああ。去年の雪辱を晴らす時だ」

 

 擬似蝋燭の明かりが、部長と呼ばれた男…新田豊の顔をぼんやりと映し出す。

 両手を組み、口元に宛がう。事の深刻さを強調したしぐさに、室内のほぼ全員が息を飲む。

 

「では、議題というのは…」

「もちろん新入生部活紹介イベントについてだ」

「おおっ」複数の声が相槌を打つ。

 

 彼等がいるのは高岡高校の校舎の四階に位置する教室の一つ。

 その室内には円卓状にに並べられた学習机に五人の男女。外からの光を嫌うかのごとく、厚めのカーテンが外側の窓だけではなく、廊下側の窓にも全て取り付けられている。

 

「去年は保守派の前部長達に邪魔されたが、今年は違う!我々がついに最上級生となり、【宇宙人研究部】が新入生を大量獲得して…」

「部長!」

 

 男子生徒が突然声を上げ、新田部長の演説を止める。

 

「羽咋研究員。発言を許可した覚えはないが、今日は気分が良い。特別に許可しよう」

 

 羽咋優杜は椅子を押しのけて立ち上がると、

 

「ここは天文部です。宇宙人研究部では有りません。週明けの…」

「まったッ!」

 

 新田部長が手を突き出し、優杜の言葉をさえぎる。

 

「確かに、ここはかつて天文部だった。いや、今はまだ書類上は天文部だ。だが、部員が五人に満たない場合どうなる」

「同好会に格下げ、もしくは廃部となります」

 

 事務的に三年女子の窪内が応える。

 

「有難う窪内さん。確かに去年までは、我々は天文部に依存していた。か弱い存在だ」

「部長、仕方がありません。我々の先進的な考えを理解しない教師しかいないからです」

「パイオニアの悩みというやつだな。なら、確認を取ろう。ここが天文部だと思うものは」

 

 優杜がそっと手を上げる。

 

「では、宇宙人研究部だと思うものは」

 

 優杜以外の四人が元気に挙手をする。

 

「羽咋研究員。多数決の暴力ですまないが、五人のメンバーが必要な状態で、どっちが主か従か、分からない歳でもあるまい」

 

 勝ち誇ったようにメガネのブリッジを押し上げて正す。

 

「でも…」食い下がろうとする優杜。

「羽咋君。今ここにない副部長を合せても、天文部員は二人だ。天文ブームも去って生徒数も少なくなった昨今、新一年生を三名以上集める自信があるなら、今すぐ退席してもらって構わない」

 

 強めの視線が優杜へ集中する。

 眼力に脅えるように、優杜は身を小さくして開きかけた口を閉じた。

 勝ち誇ったように新田部長が頷く。

 

「異論は無いようだな、賢明な判断感謝する。先の通り部員の確保が最重要課題だ。この際、幽霊部員でも何でも構わない、大量獲得しなければ我々に明日はないのだ」

「部長。自分は誰でもかまわないというのは反対です」

 

 二年の男子、菊本が大声を上げて反論する。

 

「私もです。出来れば志の高い新入生に来てもらいたいです」

 

 窪内も当然とばかりに言う。

 

「そうです。一番いただけないのは、中途半端な自称オカルトやろうです。今や、宇宙人はオカルトではないというのに」

「言いたい事は分かる。だが、我が高校にオカ研がないも事実だ。オカルト好きも受けいれようではないか、誤解を解く時間はこれからたくさん有るのだし」

「部長、言い方を間違えました。普通のオカルト好きは理性的で僕も大歓迎です。問題はゾンビやヴァンパイアなど、アニメや映画などで本来の意味を創作によって捻じ曲げられた存在に興じ、さもそれがオカルトだという、勘違い自称オカルトやろうです」

「確かに彼等は性質が悪いですね。映研やアニ研があるのになぜオカルトの門をたたくのでしょうね」

 

 ため息混じりに窪内さんが言うと、優杜以外が全くだと言わんばかりに大きく頷く。

 

「わかった。菊本研究員の懸念はもっともだ。そういう新入生が来たら、映研あたりを勧めることにしよう」

「よろしくお願いします。部長」

 

 言いたい事を吐き出したのか、すっきりした表情で菊本は前のめり気味だった体を元に戻す。

 

「話を戻そう、新入部員大量獲得に一番良いのは宇宙人をゲストとして呼んだり、顧問として招聘出来れば問題ないのだが、誰か何かよいアイデアはないかね」

「谷中銀座の異星人街アーケードに行って誰か演説してくれる人を探してきましょうか?」

 

 優杜の隣、二年の男子の中山が恐る恐る提案する。

 

「ふむ、あそこの住人は気前が良い。だが、無償で高校の新入生部活紹介に参加してくれるだろうか」

 

 書類上は天文部だ、それ以外の活動に部費は認められない。

 それでもなくても、有料でゲストを呼ぶだけの財力はない。

 

「私、守銭堂の主人と仲が良いので、一度頼んでみましょうか」

「守銭堂の主人か…、確かに引き受けてくれるだろうが、インパクトと一般人受けがなぁ」

 

 全員がジャバザハットのような腹の出た爬虫類の姿を思い浮かべる。

 情報番組などで親日派の異星人として、お店と共に良くテレビに取り上げられる為、知名度は問題ないが、あまり見てて親しみを感じる容姿ではない。

 

「どこかに、カリスマ性の高い宇宙人はいないものかね」

「部長、ならウズノメ人はどうでしょう。容姿端麗で我々地球人も惚れ惚れする歌声の

持ち主。ウズノメ人ほどこの事態に適任なのは居りません」

 

 異星人の好みが美的重視派の菊本が再び前のめり気味に発言する。

 彼は異星人をアイドルのように神格化し愛情を注ぐアイドル系異星人オタクだ。

 

「悪くはないが、ウズノメ人は我々日本人と容姿が似ていて、インパクトにはかけないか」

「そうですよ、異星人といえばどんな過酷にも孤独にも耐えれそうな、屈強さが必要です。私はサイード人のほうが適任だと思います」

 

 異星人の好みが肉体重視派の窪内が今度は声を上げる。

 彼女は普段から屈強な異星人と結婚して銀河玉の輿に乗って見せると嘯いている。

 

「特にギャラクシーポリスのアスワード警部なんか最高です。ふっ、ふふふ…」

 

 彼女が一瞬でなにを想像したのか不明だが、今までの凛とした表情が大きく崩れる。

 

「ギャラクシーポリスで呼ぶなら、インフェリシタス人のヘリアンテスさんでしょう。広報ポスターなどにも出ていて認知度が高い。何より美人です」

「なにをいっているのッ…」

「あのう、どちらも有名人ですが、どうやって呼ぶんですか」

 

 控えめに手を上げつつ中山が二人の間に割ってはいる。

 

「よし、嘘の通報をすると言うのはどうかね。学校に宇宙人が襲ってきたと。問題は…」

「どの宇宙人がやってくるか分からない事ですね」

「全くです。アスワード様なら兎も角、ゴンジーマ人の怪物が来た日には目も当てられません」

「えっ、問題点そこですか」

 

 異星人オタク達の言葉に、思わず突っ込みを入れる優杜。

 三人の視線が優杜を見ると、なにを言っているんだという表情を造る。

 

「ここはどうでしょう、天河組が襲ってきたというのは、高確率でアスワード様に来て貰えます」

 

 天河組は異星人と日本のヤクザが混ざり合って出来た暴力団で、ギャラクシーポリスも手を焼いている組織の一つだ。

 

「良いアイデアだが、必然性に掛けて嘘だとばれないかね」

「大丈夫です、いたいけな生徒が人質になっているといえば、子供好きと噂のあるヘリアンテスさんが駆けつけてくれるはずです」

「人質作戦か、確かに悪くない。よし、その線で行こう。後は天河組のどの宇宙人が襲って来た設定にするかだな」

「待ってください、本気でやる前提で話してませんよね。これ、冗談ですよね」

 

 優杜は慌てて立ち上がって会話の流れを止めようとするが、もうそこに彼がいないかのように彼等は話を続ける。

 

「この際ですから、敵役は部長の好きな宇宙人をどうぞ」

「自分の好きなか…、好きなだけで言えば、ゼライス人が好みなのだが、逆に好きな宇宙人を代役といえ犯罪者にするのもな」

「ゼライス人ですか、また渋いところを…」

 

 ゼライス人はゼリー状生命体で、体内に発光器を持ち、光の強弱等で会話をする珍しい異星人だ。

 

「だったらこんなのはどうでしょうか…」

 こうして、彼等の異星人議論暴走は続き。

 

 

 

「おい、お前等、下校時間はとうに過ぎているぞ」

 

 激しい音を立てながら部室のドアが開かれると、顧問の天野先生が大股で入ってくる。

 

「ほら、片付けて帰った、帰った」

 

 そう言いながら、暗幕用のカーテンを次々に開けて行く。

 外は既に薄暗く、街灯の明かりがうっすらと見え始めていた。

 

「チッ、良いところであったのに」

 

 文句を言いながらも全員が立ち上がり、かばんの置いてあるロッカーへと向かう。

 

「そうだ、羽咋」

「はい」

「週明けの部活説明会、お前が出ろ。担任の先生には話しておくから」

「「待ってください」」優杜と新田部長の声がハモるが意味は異なる。

 

 何か言いかける二人を手で制して天野先生が、

 

「極度の上がり症の井上に部活紹介なんて出来るわけないだろう。天文部です、天体観測とかしてますだけで良いから」

「先生、それなら部長として自分が」

「井上があんな性格だから新田を部長にしただけだ。人権、この場合は異星人権とでも言うのかな、を無視したなぞの活動を公式に認める分けなかろう。何人集めようがここは天文部だ。分かったらさっさと帰れ」

 

 そう言って生徒を追い出すと、ぴしゃりと扉を閉めて鍵をかける。

 こうして全員が肩を落とし、虚しく帰宅するなか、見送る天野先生の瞳が一瞬だけ地球人にはない不思議な光彩を放った。

 

 

 

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