攻撃の方向性が示されたことで、構成員の士気は確実に上がっていた。
アジト内にいるメンバーは一様にアルコールの缶を片手に騒いでいた。
ルクスタとの争いはもう二年ほど続いている。抗争といえる状態になってから考えても、精神を疲弊させるには十分な月日が経っている。
どこかから流れてくる常温の缶チューハイを飲んでいる間だけが、家族や友人との関係を絶って活動に励んでいる辛い日常を忘れられる瞬間なのかもしれない。
私も缶を傾けた。
冷蔵庫に入れていない、段ボールから出したばかりのカクテルは生ぬるく、レモンの酸味と共に口に広がり、喉を刺激しながら胃の中に落ちた。
美味くはないが、豪雨に打たれながらの任務で疲れた躰には、一時的に癒やす効果は確かにあった。
相馬が私の隣にある段ボールから新しい缶を取り出した。
私は口を開いた。
「どう思いますか?」
「何のことかな?」相馬は缶を空けながら答えた。
「ルクスタのキングを討つという方針です」
「君は反対なのかい?」
「この大田区の日本人が苦しい思いをしてきたそもそもの原因はルクスタではありません。極論を言えば、ルクスタを排除できたとしても、同種の新しい異星人によって同じことが繰り返されるだけではないかと考えています」
「蛇沢か……」
私は頷いた。
「区長は明らかにルクスタをはじめとした異星人を優遇しています。事業に補助金を出すだけならともかく、税が極めて軽く、身分が明らかではない者も特に調査することなく生活を許している。それだけでなく、日本人には重い税負担を課し、事業の邪魔をする異星人は積極的に責めず、生活が苦しくなった土地保有者を追い込んで異星人に奪わせている」
「ふむ……」
「今更異星人を排除しようとは考えていません。しかし、明らかにバランス感覚を無視している蛇沢は許して良い相手じゃありません。他の首にすげ替えなければならない」
相馬は目を伏せた。
「君の言うとおりなんだろう。ただ、周りを見てみてくれ」
相馬の指さす先を追う。
ロビーで踊り、歌う構成員達が赤ら顔で騒いでいた。
ここ最近見ていなかった笑顔だった。
「ここにいる者は、皆ルクスタに生活を奪われたんだ。私も、仕事と一緒に妻と子供を殺されたよ」
「……」
「私怨の活動を笑うかい? でもね、テレビではギャラクシーポリスなんていう連中が活躍している様子を流しているけど、ここの惨状は完全に放置しているじゃないか。結局、行政ってやつは操り人形なんだよ。悪が存在していても、上の都合で見逃したり、逆に弱い存在を追い詰めたりする」
相馬は缶の中身を一気にあおった。
「個人的な感情であっても、それが本気なら立ち上げれるものだ。そして、そんな人間が束になっているから戦うことだってできる。僕たちは、ルクスタを潰す目的で纏まっている。それを達成しない限り、前には進むことができないんだよ。たとえそれが、正義の道であっても」