ギャラクシーポリス   作:橘 花道

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#7『最後の作戦』

 アジトに戻って報告を行うと、栗唐源蔵が赤ら顔をニカッとさせてわたし達の肩をバシバシと叩いてきた。

 

「でかしたぞ。ターゲットの正体さえ割れてしまえば、もうこっちのもんだ」

 

 アジトの組員達は、勝利を確信したように歓声をあげ、いつも以上に明るく酒を呑んでいる。

 わたしは相馬と並んで壁に寄りかかり、そんな組員の様子を眺めていた。

 いつものように、生ぬるい缶チューハイを傾けている。

 

「蛇沼の正体が……キング……」

「奇しくも、当面のターゲットと、最終的なターゲットが重なった形になったね」

「そうですね。状況としては一挙両得。しかし……」

「都合が良すぎる……かな?」

 

 わたしは頷いた。

 区長である蛇沢が行ってきた異星人優遇政策は、酷い圧政だ。一見景気が良いように見えるが、それは不法に移住してきた者達や、他地域から金儲けのためにやってきた者達。ようするによそ者が群がっているだけにすぎない。

 人様の家に土足で踏み入り、住人への迷惑も主義主張も考えずに歌って踊ってのどんちゃん騒ぎ。言わば、好きなだけ暴れ散らかす糞祭り。

 その狂乱の中で、住人のためになる何かが残るなら、まだ良い。

 しかし、この祭は何も残るものはない。たまたま見つけた狩り場に群がる禿鷹と同じく、散らかしたまま何処かへと飛び立つだろう。この祭で得た利益は、集まった禿鷹が持ち去ってしまうのだ。

 尊厳と文化を踏みにじられ、命と未来を絶たれ、ぺんぺん草も生えない荒野で呆然とするしかない。

 何より許せないのは、その未来への旗振り役が日本人の政治家であるという事実だ。

 その動機は何なのか、ずっと考えていた。ただ金のためか、脅されているのか、それとも何かの哲学によるものなのか…

 

 しかし…………

 

「本物の蛇沢が既に殺されていて、キングが擬態して成りすましているのであれば、諸々の辻褄は合います」

「ああ、異星人優遇の政策が何の為なのか、日本人による異星人の為の政策では理由が必要だが、異星人による異星人の為の政策であるならば、頷ける」

「あのパーツショップを見張っていれば、いずれキングは来るでしょうか?」

「いや、さっき斑目の端末を調べさせてもらったが、動作レコーダーに例の擬態データをコピーした記録が残っていた。おそらく、持ち出されているだろう」

 

 ある程度の技術があれば、擬態データを使って元に戻すことは可能だ。データだけは手元のデバイスから参照させ、擬態や復元を別の場所で行って痕跡を残さないようにすれば、足はつきにくい。

 

「もし、次の作戦が成功したら、この不味い酒ともおさらばになるかな・・・」

「そう願います。わたしも、白身魚と吟醸香を楽しみたいところです」

「君のような若い女性で日本酒好きとは意外だね」

「そうでもないですよ。わたしも友達とよく呑みに行ってました」

「……私の好きな酒があってね。父の故郷の地酒なんだが、この戦いが終わったら紹介するよ」

「わかりました。よろしくお願いします」

 

 缶を捨て、ロビーの扉を開いた。

 蛇沢は本当にキングなのか……

 今の段階ではわからない。

 

☆    ☆    ☆

 

『区長襲撃……決行日時は?』

「明後日。一四三○に作戦開始予定です」

『白昼堂々とはね…』

「この日は、ルクスタの方も栗唐側の武器庫を襲撃する確率が非常に高いと予想が出ています。相馬誠司の高性能爆薬に手を焼いている連中は、これからのかき入れ時に邪魔されたくないので、戦略的に先にここを叩いておくというのが最善手という判断でしょう」

『戦力的にはルクスタが上。栗唐はゲリラ戦闘を続けるために、そちらの防御を固めるという予想。その裏では、区長が次の政策に関する対談を行う……か……』

「終盤は駒の損得より速度。という言葉もあります。王将を仕留める勝ち筋が見えたのならば、龍と馬を捨て、金と銀によって王手を掛ける」

『詰ませされなければ、栗唐の敗北。リスクは高い。しかし、これも一つの決断かもしれませんね……わかりました。こちらも準備をします』

「…通信、終わります……」

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