ギャラクシーポリス   作:橘 花道

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#2

     三

 

 *20xx/4/20-15:05

 

「それでは、調理スタートです」

 

 合図と共に手を振り下ろす佐倉巡査。

 二人とも同時にまず、手を洗い。次に食材に手を伸ばす。

 鮮度や大きさを確認しつつ、最初に豚肉の加工から手をつけ始める。

 

「さぁ、ついに始まりました。料理対決。果たして、栄光を手にするのはどちらか」

「今から料理が出来上がりが楽しみですね」

 

 山田さんが心の底から楽しそうに応えた。

 

「料理の出来上がりも楽しみですが、そのままだと間が持たないですし、一般の高校生もいるので、基本的なところからよろしいでしょうか副総監」

「もちろんだとも」

 

 やや芝居がかった佐倉巡査の問い掛けに、襷副総監もわざとらしい声質で応える。

 

「今回の対決ですが、二人の出身。インフェリシタス人について教えてください」

 

 副総監の襷星児がその問いに、困ったような顔をして。

 

「んん…、まず。彼女達の星には魔物が住んでいるそうなんですよ」

「え、魔物ですか」

「まぁ、私達の言葉に訳すと魔物と言うことで」

「なるほど、それは大変ですね」

 

 対して関心がなさそうに佐倉巡査が応える。

 

「それが影響しているのか、彼女達は魔法が使えます」

「魔法ですか、って、一気にファンタジーに飛びましたね」

「普段は魔法の使用を制限しているんですが、今回の調理対決に限っては制限を解除しましたので、もしかしたら見れるかもしれません」

「料理対決とは言え、勝負ですから。持てる力と技量は存分に使ってほしいですよね」

「もちろん、彼女達の実力を見るいい機会になると期待してます」

「それで、料理に魔法って使うんですか?」

「さぁ、見てればわかるのでは」

「さぁって、見たことないんですか」

「犯人追っているときぐらい」

「ハッちゃんも魔法使うところ見たことないわね」

 

 山田さんも首をかしげながら答える。

 

「そもそも魔法について詳しくはないし、インフェリシタス人でもないので、あくまで抽象的な話ですが…」

 

 襷斗副総監はそう前置きをして、

 

「一括りに、魔法と言っていますが、彼女達のは私達の知識では精霊力に近い」

「精霊力って、火の精とか、水の精みたいな」

「そうです。それぞれ家系によって、使える魔法の属性があるらしく。彼女達イグニース一族は炎の力を引き出すことができるそうです」

「炎の力、それなら確かに料理対決にはもってこいですね」

「料理に魔法を使っているところ見たことがないので、果たして有効なのかが問題です」

「と、いいますと」

「お肉を焼くのにバーナーならちょうどいいですよね」

「ええ、そのぐらいの火力なら悪くないですけど」

「でも、溶鉱炉の火力は行き過ぎだし、マッチではお話にならない。二人の魔法力だと、片方は大きすぎ、片方は小さ過ぎて料理に向くかどうか」

「ははは…、なるほど。でも、普段から魔法を使っているわけですよね。コントロールとかは可能なのでは」

「だと思うんですけど。マッチは頑張ってもバーナーにはなりませんよね」

「ああ、うん。ハッちゃんじゃぁ、料理に魔法は無理そうね」

 

 そう言って佐倉巡査は、調理中の二人を見比べる。

 犯罪者のトラブルを解決したり、特殊な能力を持つほかの異星人を無力化する事のできるヘリアンテス巡査は高い戦闘力と巨大な魔力を持つ。

 方や、食堂で一従業員として働いているハッテマスはその辺の地球人と何ら変わらない。

 

「次に特出すべきは、出生率が低いそうです。魔物と戦っているのに」

「はい?」

「詳しくは知らないのですが、インフェリシタス人は男性が少ないのか、遺伝的なものなのか、子供が少ないそうです」

「はぁ、出生率低下は日本も深刻な問題ですが」

「地球上の生物は、同種の個体が減少したりすると子孫を残そうと本能が働きます」

「え、セクハラ発言になります?」

「学術的発言です。まして魔族と戦争状態にあるのに、出生率が低いんです。不思議じゃないですか」

「そんなモンですか?」

「そいうモノです」

 

 僅かな沈黙の後、佐倉巡査が口を開きかけ、次の話題に入ろうとしたところで。

 

「あのう、一つ良いですか」

 

 優杜が控えめに手をあげて。

 

「そもそも、何で料理対決なんかになったんですか?」

 

 その言葉に関係者の顔が全員凍りついた。

 

 

     四

 *20xx/4/20-15:10

 

「困ったね」

「困りましたね」

 

 襷副総監と佐倉巡査が本当に困ったという顔をして呟いた。

 

「外部の人間を入れた以上、いつかは起こる不幸だが」

「でも、反対しませんでしたよね副総監」

「まぁ、あの顔が怖いアスワードとザーマックが彼を連れて、自分達の代わりだと詰め寄ってくれば…」

「そうですね。NOといえるのは根米課長ぐらいですね」

 

 根米課長は既に興味がないとばかり、タブレットを手に仕事をしている。

 

「それは、わたくしが、この地球の子供達の未来を守るためですわ」

 

 ヘリアンテスが厨房からビシリと審査員席を指しながら言う。

 

「ちょっとリア、それじゃ説明になってないわよ。それに、その件なら譲ってあげるって言ったじゃない」

 

 ハッテマスが作業の手を止めることなく、投げやり気味に言う。

 

「ハッちゃん。子供達の未来がかかっているのです。簡単に譲るなどと軽々しく言うものではありませんわ」

「たかが、交通安全教室のアシスタントでしょ。誰がやっても同じよ」

「何をおっしゃってますの。子供達は宝ですわ。その子供達の未来を守る交通安全教室のアシスタントですよ。こんな重要は職務はほかにありませんわ」

「だったら、なんで、料理対決なんて提案したのよ」

「これほどまでに需要な職務。イグニース家の戦士として、相手の得意分野で勝ってこそですわ」

「ああ、本当にもうめんどくさい。なら、あんたはそろそろ口ではなくて手を動かしなさいよ」

 

 そう言うハッテマスに、ヘリアンテスは静かに突き出してた指先を下すと、再び料理に向き合う。

 

「ええと…、交通安全教室のアシスタントなんですよね。何も問題ないじゃないですか。二人とも採用でいいんじゃないんですか?」

 

 不思議そうに優杜が問いかける。

 襷副総監がしばらく考え込んだ後に。

 

「少年、これからのことは他言無用だ。彼女達のプライベートに関わるからな」

「ええ、まぁ」

「とうい事で、佐倉巡査、詳しい説明ヨロシク」

「えッ、私がですか。副総監してくださいよ」

「めんどくさいな、これは業務命令」

「ああ、もう、パワハラだ。後で訴えてやる」

「下手なコントはいいので、説明してくださいよ」

 

 優杜が再度催促すると、佐倉巡査はあきらめたように真顔になり。

 

「ゴールデンウィークにね、小学校低学年向けに警察のお仕事紹介しつつ、異星人や銀河連邦についても身近に感じてもらう、防犯と交通安全の教室を事をやる事になったのよ」

「良いことじゃないですか。それシレームさんとザーマックさんにも首に縄つけて参加させてください」

「いいけど、縄掛けるの手伝ってくれる」

「すいません。それは無理です。でも、交通安全教室ですよね」

「うーん。交通安全教室自体は問題じゃないのよね」

「少年。先程出生率が低いと説明したと思うが…」

 

 襷副総監が神妙な口調で切り出すと、その問いに、優杜は小さく息をのむように頷く。

 

「因果関係は不明だが、二人共母性が強い。特にへリアンテスは異常と言っていい。地球人なら間違えなく児童愛好癖で逮捕されるレベル……でだ」

「副総監、異星人でも彼女はほぼアウトです」

 

 そう言われて優杜は調理に集中しているヘリアンテスを見るが、そんな雰囲気は何処に見当たらない。

 

「そうは見えないでしょう、彼女の普段を見せれないのが残念ね」

「子供達を危険にさらすかもしれないから、ハッテマスさんが最初に選ばれたんですか?」

「ごめんね。ちょっと言い過ぎたかも、ヘリアンテスは過度な子供好きなんだけど、業務を全うできない訳じゃないのよね」

「じゃぁ、なんで最初にハッテマスさんを選んだんですか?」

「ハッちゃんね。魔法で小さな人形を動かせるのよ。子供達の前でやってもらうにはちょうどいいじゃない」

「えッ、でも、ヘリアンテスさんも魔法を使えるんですよね」

「ハッちゃんが言うには、人形に小さな命の炎を灯してあげると、その炎が尽きるまで命があるかのように生き続けれるらしいのよ。でも、ヘリアンテスは同じ魔法でも、魔力が大きすぎて人形が…」

「ああ、最初のマッチと溶鉱炉の火力の話ですか」

 

 納得したように、優杜が頷く。

 

「そう、ハッちゃんの魔法はマッチ売りの少女。灯したマッチに小さな希望が乗るの。対して、ヘリアンテスの魔法は邪心を断ち切る炎の魔剣。悪を挫き平和をもたらすモノなの」

 

 ドラマのヒロイン紹介のように、感情をこめて佐倉巡査がナレーションする。

 

「どちらが子供達の交通安全のアシスタントに必要か分るだろう」と、襷副総監。

「確かに、でも、アシスタントであれば別に二人いても大丈夫ですよね。わざわざ、料理対決せずに二人とも参加でいいんじゃないですか」

「そう、そこなんだよ少年。問題は…」

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