ギャラクシーポリス   作:橘 花道

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◎簡単なあらすじ
 婚活中のハッテマスは浩美の企画した合コンに参加。
 色々な男性と顔合わせしてみたけど・・・


捜査報告書 No.18【☆1「合コン?」】- ハッテマスメイン
☆1「合コン?」


「では、改めまして」

「「「「かんぱーい」」」」

 

 チッン~~~

 合図と共にワイングラスが独特の即興曲を奏でた。

 

「うーん、今回もぅ、はずれでしたねぇ」

 

 雰囲気の良いレンガ造りの店の奥に女性四人。

 乾杯の合図もそこそこに、天城瑞穂がため息と共に愚痴る。

 

「だなッ。でもハッちゃんとAlly交換してきただけましってか」

 

 そう言って桜色のワインを一気に流し込む倉林美希。

 

「美希ちゃん、気持ちはわかるけど、ワインをそんな一気に飲んじゃ」

 

 空になった美希のグラスに、佐倉浩美が早速ワインを継ぎ足す。

 

「ダイジョブ、ダイジョブ。こんなんじゃ酔わねぇって」

「美希ちゃんは底なしよねぇ。さっきも、あんなにシャンパン飲んでたのにぃ」

「でもこれ美味しいね。色もホーエェに似てて綺麗だし」

 

 少し遠いまなざしでハッテマス・パリエース・イグニースがワイングラスを掲げ、その神秘の先を覗き込む。

 

「ホーエェ?なんだそりゃ。でも、普段は赤しか呑まない私だけど、春先に気分の上がるお勧めの一品だぜ」

「確かに艶やかな桜色、ものすごく春らしいわね」

「まっ、こんな機会でもないと、ロゼは中々な」

「でもぅ、気分を変えるには良いワインですわねぇ」

 

 その言葉に全員が深々と頷く。

 端から見てれば美人が集まって楽しく女子会と見えるが、そのメンバーは浮遊警視庁勤務の一筋縄ではいかない面々だ。

 顔が広く、何処にでも首を突っ込みたがる広報課の切り込み隊長、佐倉浩美。

 通信指令本部よりその柔らかな声に隠れファンも多いと噂の、甘城瑞穂。

 泣く子も黙る外事特科・強行班の紅一点、野性味を帯びた精密スナイパーの、倉林美希。

 三人は自称【ハッテマス婚活応援隊】。

 本日の合コンでハッテマスの婚活を応援するのが目的だったのだが、奮戦虚しく撃沈………。

 反省会と、気分転換を兼ねて倉林のお気に入りのワインバーに来ていた。

 

「でもハッちゃんはだいぶ積極的に気配りしてたけど、誰か良い人いた?」

 

 浩美がこれが本題とばかりに尋ねると三人の視線が本日の主役、ハッテマスに集中する。

 

「あのう、良い人いたら、今頃ここで反省会してませんよね」

「ハッ、確かにな」

「じゃぁさ。今日の四人の中で顔で選ぶなら誰?」

「うーん、顔だけなら故郷でも人気の有りそうな自衛官の二階堂さんだけど…」

 

 四角顔スポーツ刈りのガチ体育会系、生真面目そうな男性が皆の脳裏をよぎる。

 

「マジか、インフィエリシタスではあんな顔がもてんのか?」

「もてるわよ。魔族と戦って勝てそうなイメージじゃない」

「アスワード警部もぅ、地球人風にイメチェンすると、あんな感じかしらぁ」

「え、なに。戦いに強そうな顔って、全宇宙共通」

「なッ、それはやだ。そんなの宇宙共通にしないでくれ」

「じゃぁ美希はさ、アスワード警部がどんな地球人の顔なら良いのよ」

「ハッちゃん、顔の話とアスワード警部は関係ないだろう」

 

 少しほほを赤らめながら、美希が強引に話題を否定する。

 

「ふふふ…、美希の話はとりあえずとして、二階堂さんの顔は合格として、何が問題」

「何って言われると…」

 

 ポッキーを口にくわえて弄びながらハッテマスの目線は宙を漂う。

 

「地球人的な表現すると、いちゃラブと無縁そうな感じ」

「うーん、いいわ。ハッちゃんて、ほんと乙女よねぇ」

 

 そう言いながら浩美がハッテマスを思いっきり抱きしめる。

 

「いまどき。いちゃラブもだいぶ死語だぜ。ドラマでも使わない」

「ほんと久しぶりに聞きましたわぁ、でも、ハッちゃんが言うとなんだか可愛く聞こえますぅ」

「えっ、私何か変な事言った」

「いいの、いいの、ハッちゃんはそのままの擦れてない感じで」

「でも二階堂さん、良い人だと思いますよぉ。純真できっと大切にしてくれると思うんですけどぉ」

「大切にはしてくれるけど、絶対仕事優先だぜ、あれ」

「ああ、分かる、分かる。そのうちオイとかしか言わなくなる感じよね」

「そうなの?逆に聞くけど、みんなは顔で選ぶと誰なのよ」

「顔だけですかぁ、顔だけなら吉田さん。…かなぁ」

「そうだね、顔は合格だね」

 

 …ねぇ~と、三人でハモル。

 ふわりと染めた茶髪に、少し小顔で整った容姿、職業がモデルか俳優と言われても信じさせる雰囲気を持つ男性が脳裏を掠める。

 

「でも、良く見るとイケメン、下手するとチャラ男だからね」

「大体、あの自分かっこ良いだろファッション。赤のジャケットは無いわ」

「それに絶対マザコンですわよねぇ」

「そうそれ、それは私も思った」

「えっ、そうなの。その辺の地球の感覚がまだつかめないのよ」

「そんなのまじめに取らないでよ、なんとなく、思っただけだから」

「でもぉ、ハッちゃんにはお勧めよぉ。総合病院の三代目で、小児外科医よぉ」

「マジ、お勧め、お勧め、何もしなくてもいいハイソな生活が保障されているだぜ」

「メディカルマシーン三台も有るって、異星人のハッちゃんも何かあっても一安心よ」

「しかも、最新機種を年内に入れるって鼻ひくつかせて自慢してただろう。一台、十数億だぜ。いったいどこにそんなお金があるのか。世の中不公平だ」

「そうよぅ、今なら世の中の1%には入れるのぉ、こんなチャンスはめったに無いわぁ」

「こんな綺麗で美味しいワインと、色彩あふれる旬の食べ物が毎日楽しめるのよ」

 

 どうッとばかりに三人がハッテマスを見る。

 自分が当事者にはなりたくないが、友達にそういう関係が欲しいと言う欲望に満ちた視線を向ける。

 

「…って、押してきますけど、ないんですよね」

「ないわぁ」

「ないな…」

「ないわね」

 

 そう言って三人がため息ともにワインで咽を一旦潤す。

 

「ハッちゃんてさ、見た目は赤ワインなのに、中身はロゼっぽいんだよね」

 

 ワイングラスを掲げて美希が突然呟く。

 

「ん、どういう意味」

「ロゼって、柔軟な感じのが多くて、結構幅広い料理に合うのさ」

「分かりますぅ、ハッちゃんは知り合いの異星人の中では一番物腰や和からいですものねぇ」

「絶対見た目で損しているタイプよね」

「この生ハムはギィ・パルマっていって、すごく繊細なの。チーズはノッジャーノ、すごくしっかりとした味わい。でも、どちらとも合うだろう」

 

 改めて全員が、ロゼワインと薄くスライスされた生ハムとサイコロカットされたチーズとの相性を楽しむ。

 

「確かに、この感じはハッちゃんだ」

「ポッキーやぁ、イチゴともばっちりですわぁ」

「そんなこと無いって、私だって、好き嫌いとか、好みってのはあるし…」

「じゃぁさ、性格で選ぶとしたら、神経質そうなのと、オレ様的なの、どっちが良い」

 

 生ハムとチーズを掲げて美希がハッテマスの口元に浮かべる。

 

「大体誰の事を言っているかわかりますけど、そう言われるとヒドイ二択ですよね」

「じゃぁあぁ、クールな優男さんとぉ、熱血なマッチョさんでわぁ」

「その表現もビミョー、でも、体型で言うならやせているよりは筋肉質のほうが…」

「なら、西宮さんですわねぁ。良いと思いますわぁ、信用性、将来性、資産全部二重丸の良物件ですぅ」

「あの少しオレ様的な性格を除けばな」

 

 美希は好みじゃないとばかりに、チーズをハッテマスの口元に無理やり突っ込む。

 チーズの力強い風味を楽しみながらがっしりとした体格の男性を思い出す。

 顔にニキビ痕もあり決して二枚目とはいえない、少し不愛想な男性の顔を思い浮かべる。

 

「でも、あの人、私が異星人だとわかると、途端に興味をなくした感じがハンパなかったんですけど」

「あー、うん。プロ野球というか、プロスポーツ業界は未だに異星人問題山積みな業界だからね」

「唯一認められているのが怪我した時の医療の分野だけだしな」

「しかもぉ、メーカーと型式指定の数少ないメディカルマシーンのみですからねぇ」

「食事は特に厳しいわよね。食べ物によっては地球人的にドーピング効果のあるのもあるし、全ての食料をチェックするわけにも行かないし」

「ですねぇ、奥さんが異星人でぇ、手料理でどんな食材使っているか知りませんとは言えませんものねぇ」

「まして、西宮選手、将来メジャー目指しているって聞くわよね。だったら、契約の時に奥さん異星人ですってのはね…」

「異星人の技術で怪我からの復帰は早く確実になった一方で、まだまだ受け入れられてない事が多いからな。特に海外じゃ」

「じゃぁさぁ、最後に残った多田さんは、銀河の企業の株と投資をしているしぃ、今日の中では一番ハッちゃんの立場を理解してくれそうだけどぉ」

 

 最後に今日の男性側幹事でもあり、各方面に幅広い人脈と知識を持つ長髪の優男が脳裏を過ぎる。

 オリーブグリーン系のスーツを無難に着こなし、清潔感もあり、物腰も柔らかく、彼女達の第一印象は悪くはない。

 

「ううん、あなた達の言葉を使うなら、…ないわ」

「ええ~、なんでぇ?」

「…マッチョじゃないから」

「いや、そこまでこだわってないから、なんていえば言いのかなぁ」

「厚・資産、好・容姿、高・学歴と3K揃っているのよ。性格だって悪くないし、会話も上手いし、何がいけないの」

「え、だって、宇宙人じゃない」

「なにそれぇ」

「ハッちゃんから見たら全員宇宙人じゃない」

「いや、カラーンクって意味で」

「余計分からないですぅ、母国語禁止ですぅ」

「ん、もしかして、なに考えているか分からないとか、変なこだわり持っていて、人の話を聞かないとかそういう事」

「あッ、そう、それ。それ」

「ハッ、そういう意味の宇宙人」

「私はそんな変な感じしませんでしたけどぉ」

「あ、分かったぜ。あれ、顔は笑顔だったけど一人だけ目が笑ってなかったわ。わたしも少し違和感が…」

「でも、男の人って大なり小なり、変な感性と自意識持っているから、あのぐらいなら上手く付き合っていかないと、中々彼氏なんて出来ないわよ」

「そうよねぇ、そもそもハッちゃんの好みって言うかぁ、譲れない最低条件って、なんですのぉ」

「ええと、誠実で優しい人…、…かな」

「あ、あ~あっ」

「ダメだ、一番ダメなパターンだ」

「まず、そこをどうにかしないと、永遠に幸せはやってこないわ」

「せめて明確な最低条件は必要よですぅ、でないとぉ、なにを基準に付き合うか決まらないと思いますぅ」

「まって、地球じゃビビッと来た人と付き合うんじゃないの?」

「やばい、やばいぜ」

「うーん、完全に間違った外国人ならぬ、宇宙人、いや、異星人」

「そもそも、ビビッと来るのは地球人の特権だぜ。異星人のハッちゃんは違うだろう」

「いやぁ、それもどうかと思うけどぉ」

「ああもう、もはや地球人というか、日本人が忘れて久しいピュアな感じがハッちゃんのいいところだけど、恋愛に基準は必要よ」

「そうなんだけど、いきなり基準て言われても」

「ハッちゃんに宿題ですぅ。来週までに最低条件を三つ決めてくること。いいですねぇ」

「最低条件なのに三つっておかしくないですか」

「「「おかしくないッ」」」

 

 勢いよく三人が否定する。

 

「てかさ、せっかくAllyを交換したんだぜ、三人のうち一人とデートの約束を来週までに取り付けろよ」

「えっ…」

「ああ、それはいいわね。デート経験もないのに、いい男とか、好みの男の条件なんて中々出てこないものね」

「そうですねぇ。ハッちゃんに足りないのは経験ですしねぇ」

「………」

「よし、決まり。来週までな」

「ちょ、ちょっと待って、いきなりそんなこと…」

「い・い・わ・ね」

「…ハ、ハイ」

 

 周りの強靭な視線に気圧され、思わず返事をしてしまうハッテマス。

 

「目標もできたし、今日の反省会はここまでとして、せっかくだからお酒を楽しみましょう」

「さんせ~ぇ」

「じゃぁ、改めてかんぱーい」

「「「かんぱーい」」」

「どこかにぃ、良い男いいませんかねぇ」

「ほんとだな」

「はぁ~」

「んっ?」

 

 こうして今日も吐き出した幸せと共に、無常にも夜陰に包まれ時間だけが過ぎていくのであった。

 

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