ギャラクシーポリス   作:橘 花道

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#2

*20xx/5/15-13:45

 浮遊警視庁は異星人犯罪や諸所のトラブルにも対応すべく警察官だけではなく、行政職員にも多くの異星人が働いている。

 地球人、異星人が昼夜交代で常時約二万人の職員が働いている中、その胃袋を支えているのがここまんぷく食堂だ。

 その中で異星人職員として働いているのがインフェリシタス人のハッテマス・パリエース・イグニース。

 長身で北欧系の美人を連想させるスタイルの良さから、食堂の職員だというのに、良く目立つ存在だ。

 そんなハッテマスがお昼時の激戦が終了し、遅めの休憩を取っていると、広報課の佐倉巡査とヘリアンテスがやってきて、彼女の両隣に座る。

 いきなり、両隣を押さえられ、警戒しながら、二人の無駄に明るい表情に違和感を覚える。

 

「さぁ、ハッちゃん。約束どおり。合コン企画してきましたわ」

 

 意気揚々と乗り込んできたヘリアンテスが自信満々に紙の束を突きつける。

 

「ぜひ見てあげて、これは凄い合コンよ。さすがはヘリアンテスって感じの」

 

 そう言ってヘリアンテスが【企画書 「異星人のハートを射止めろ」 近藤俊也】と表紙に書かれたものを差し出す。

 

「えっと、これは…なに?」

「合コンですわ。ハッちゃんが私に合コン企画しろって言いましたわよね。ですから勝てる合コンを用意しましたわ」

「さすがインフェリシスタスの勇者は違うわ。テレビ局使って有名人集めて合コンなんて、私達庶民にはなかった発想よ」

「そんな、褒めないでください。今回のことは偶然なんですから」

「運も実力のうちですよ。ヘリアンテスさん」

「お世辞でも、運が良いって言われますと悪い気がしませんわ」

「今までごめんね。ハッちゃん。私の力不足なばかりに、何時もハズレの合コンばかりさせて、でも、今回は違うわ、これは…」

「「勝てる合コンよ」」

 

 二人が気持ち良くハモルとガッツポーズを決める。

 

「ちょ、ちょっと待って。どういうこと。理解が追いつかない…」

「ハッちゃん、ヘリアンテスに合コン企画するように言ったわよね」

「ええ、まあ。言いました…」

 

 外交特使で来ていたティンク・カールベル皇女の【東京の休日】の件で、捜査と警護に協力した見返りにヘリアンテスに合コンを企画しろと言った覚えはある。

 しかし、まさかこんな重たい感じで返ってくるとは思ってもいなかった…。

 

「それでですね、最初はイチローとかちぃちゃんとかに相談したのだけど、中々良いアイデアが出ませんでしたの」

 

 ヘリアンテスが最も信頼している二人の名前が出るが、二人とも合コンから最も遠い存在だ。

 ヘリアンテスから合コンの相談をされて困った顔をする二人を想像し、ハッテマスは心の中で苦笑する。

 

「そこに広報に来ていたテレビ局の近藤プロデューサーの耳に偶々その事が伝わり」

「勝てる合コンをしたいならぜひお任せくださいと言ってくれましたの」

「するとあっという間に、こうして企画書が、あっ、あがって来たのです」

 

 最後は芝居がかった口調で、二人がハッテマスの耳元で熱演する。

 

「ああ、ええ、当然断ったわよね」

 

 困惑気味にハッテマスが一応尋ねる。

 

「はい、と・う・ぜ・ん。受けました。前向きに、検討しますと」

「………」

「………」

「むり、むり、ムリーッ。そんなテレビというか、カメラの前で合コンとか、そんな死ぬほど恥ずかしいこと死んでもムリ」

「大丈夫よ、メインはヘリアンテスだから、あなたは映ってもおまけ程度」

「いや、そういう問題じゃなくて」

「えーっ、そんなヒドイですわ。私、ハッちゃんの為に、テレビに出るの恥ずかしいけど頑張ろうって、やる気になっていますのに」

「あんたはしょっちゅうテレビに出ているから問題ないじゃない。今更なにを」

「普段のお仕事とは別ですわ、だってこれは合コンなのですから。いくら私でも恥ずかしいですわ」

「そうよ、ヘリアンテスのここまでの頑張りを無駄にするつもり。元々ハッちゃんが依頼したことだし、もう、このビックウェーブに乗るしかないじゃない」

「それ、もう、溺れる未来しか見えないから」

「これは警察広報、いえ、ギャラクシーポリス広報としてもすごく有意義な企画だと想うの。私達と異星人の交流が始まって約十数年、でも、価値観や環境の違いからどうしても目に見えない誤解なんかうまれるじゃない」

 

 佐倉巡査はそこで一旦言葉を区切り、ハッテマスに同意を求める視線を送る。

 それに同意したら後がないハッテマスは慌てて視線をそらす。

 

「いけずねぇ、ハッちゃんたら。でね、異星人達も同じ銀河で生きている仲間だというのを全国の皆さんに知ってもらう為にも今回の企画をプッシュして行こうと想うの」

「分かりました。私は聞かなかった、いえ、今回の合コン話はなかったことにしますので、ヘリアンテスとぜひ進めてください」

 

 そう言ってハッテマスは食器をまとめて立ち上がろうとする。

 

「何言ってますの。ハッちゃんが言い出したことですわ」

「そうよ、二人は広報課からの辞令で強請だから。あと、天野佳和さんにも要請中よ」

 

 二人は素早くハッテマスの肩を抑えて逃がさないとばかりに圧をかける。

 

「それに、これは最大のチャンスよ。全国、いや、全地球から、異星人と結婚したいっていう男性が集まってくるのよ」

「でも、テレビとかは死んでもムリ」

「ハッちゃん、貴女何の為にはるか銀河を横断して地球まで来たと思っているの。幸せを、自由恋愛を求めて来たんじゃないのッ」

「あああ、ううう、そうなんだけど…」

「あの伝統と格式ばかりのインフェリシタスにただ負けて戻るの」

「いや、そもそも帰る気ないから」

「たかがテレビカメラぐらいで、このビックチャンスを逃していいの。本当に恋愛結婚したいのッ」

「うぅ…」

 

 痛いところを突かれて、ハッテマスは言葉を詰まらせる。

 地球に来た当初は、故郷に帰らない理由の一つに、地球人との結婚を視野に入れていたが、最近では堕落した生活に、ほぼ口先だけになってきているのは確かだ。

 

「私、本当にハッちゃんには合コンに勝って新しい未来を見て欲しいですの」

「いや、それは…」

「恋愛ごっこするために地球の言葉や文化を覚えたわけじゃないでしょ。恋愛結婚するためでしょ」

「…多分、そう、です…」

「なら、もう答えは一つしかないじゃない」

 

 肩を抑えられたまま、真っ直ぐな瞳で、両側から台風並の圧をかけられれば、相手の言うことが正しく思えてくる。

 

「「さぁ、どうするの」」

 

 故郷のインフェリシタス星では一生叶うことのない、恋愛と、結婚。

 最近おっくうになって、逃げていたのは確かだ。

 

「…恋愛、したいです。結婚、したいです」

「ならこれはチャンスでしょう」

「チャンス…」

「そして、勝つためにはチャンスは掴まないと」

「なら、もうやるしかないじゃない。女は度胸よ」

 

 二人は、そう言ってさらにハッテマスに詰め寄る。

 端から見れば警察内部でまさかのマルチ商法の勧誘にしか見えない。

 だが、その手口は実に効果的で、完全に視線が泳いでいるハッテマスがそそのかされたように決意を固めた強い口調で。

 

「やります、やって見せます」

「よし、それでこそ私達のハッちゃんだ」

「私も全力でサポートいたしますわ」

「はい、頑張ります」

「幸せ掴むぞ」

「「おーっ」」

 

 手を高々と上げ、満面の笑顔で歓声を上げる。

 

「と言うことで、企画進めるから、期待しておいて。今度こそ、いい男をゲットよ」

 

 親指を立ててガッツポーズを決めた佐倉巡査とヘリアンテスが浮き足立って食堂を後にした。

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