ギャラクシーポリス   作:橘 花道

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#3

*20xx/6/1-8:20

「ええ、本日は朝早くからお集まりいただき、ありがとうございます」

 

 ロケバスの車内でマイク越しにプロデューサーの近藤俊也が深々と頭を下げる。

 今日はやる気に満ちているのか、ヘリアンテスが浮遊警視庁で初めて会った時に比べて、特徴的な口ひげも心なしか元気に見える。

 ほか、車内にはカメラマンや音声係、メイク係など多くのスタッフに混じって、ヘリアンテスとハッテマスは中央部辺りの席に座っていた。

 

「当ロケバスは、これより男性陣が待つ、老舗の温泉宿に向かいまして、男性陣のあふれんばかりの手料理と給仕にておもてなしの昼食の予定です」

 

 そう言って、女性陣の期待をあおりつつ、今回のロケのスケジュールと注意事項の説明を始める。

 近藤プロデューサーの説明を聞き流しながらハッテマスが辺りを見渡すと、スタッフバッチをつけていない美しい異星人女性が他に四人バラバラに座っていた。

 

「そういえば、天野さんは?」

 

 ハッテマスが姿の見当たらない天野佳和を探しつつ呟く。

 再度見渡してみても彼女の姿はなく、代わりにスタッフバッチを付け偉そうに座っている佐倉浩美が前方の座席でメイクさんと談笑している。

 

「天野さんはね永遠の17歳とかラジオでおっしゃってますわよね」

「ギャラクシー放送局の冒頭で言っているやつ」

「自称とはいえ17歳って言っている娘を合コン企画に参加させるのはどうかって話しになりまして」

「大人の力が働いたのね」

「私達には地球人の成人年齢は当てはまりませんのに」

 

 そう言ってヘリアンテスが肩をすくめて見せる。

 

「まぁ、ここは地球だしね。リアは成人の儀式早そうよね。いくつの時」

「あれは、最初の魔族を倒した時でしたから十二の時ですわ」

「十二。自力で」

「ええ、普通に…」

「はははは…」

 

 インフェリシタス星では太古の昔より、魔族と戦争をしている。

 そんな彼女達の日常では、魔族を倒せて一人前、初めて成人として認められる。

 お情けで成人として認められた自分とは大違いだと、ハッテマスは心の中で驚嘆する。

 

「そもそも時間的概念も本人の資質も個人毎に違いますのに、皆さん一斉に成人だなんて、ほんとに変な事に地球人はこだわりますわよね」

 

 幼くして大人の仲間入りをした、同郷の勇者は本当に不思議そうにそう呟く。

 

「それで、どうですの?」

「どうって、なにが」

「勝てそうな感じですの?」

「ん、何に」

「もう、合コンに決まっていますわ。今しがたライバルの戦力を分析していらしたのでしょう」

「あんたねぇ…」

 

 この勇者脳がと続く言葉を飲み込みつつ、そう言われると他の参加女性が気になって再び車内を見渡す。

 可愛く、美しく、気高く、優しく、どの娘も異星人ならではの個性を持ちつつ、地球人に好かれそうな雰囲気を醸し出している。

 

「強敵だらけで、勝てる気しないわよ。一体これのどこが勝てる合コンよ」

 

 近藤プロデューサーが、視聴率確保のために死に物狂いで美人異星人を集めてきたとは知らないハッテマスが愚痴る。

 

「大丈夫、ハッちゃん方が美人ですわ」

 

 同族、同性のこの言葉ほど信用ないものはない。

 しかもこの中で一番美人の女友達から言われるとなおさらだ。

 唯一の救いはヘリアンテス自身に悪気も自覚もない事だろう。

 

「と、いうことで、現場に付くまでまだ二時間ほどありますので、暫くおくつろぎください。もっとも、番組編成用にカメラは回させてもらいますので、よろしくお願いします」

 

 いつの間にか説明を終えた近藤プロデューサーが最後にそう注意して言葉を締めくくる。

 

「ほわぁぁ…、それでは、昨晩は遅くまで仕事してましたから、このまま一休みさせてもらいますわ」

 

 小さく欠伸をして、ヘリアンテスはそういうと、シートに体を沈めて瞳を閉じる。

 

「ある意味あんたが、一番最強よ」

 

 慣れないテレビの仕事に、周りの視線、回り続けるカメラ。

 ハッテマスからしたら気の休まらない今の状況なのに、堂々と寝息を立て始める友人を見て最後にそう戦力分析する。

 ハッテマスは諦めて景色だけでも楽しもうと車窓の向こうに思いを馳せるのであった。

 

 

     四

 

*20xx/6/1-12:03

 到着した一行を出迎えてくれたのは、ロケ会場となる老舗温泉旅館の女将と従業員。

 そして、今回女性陣のハートを射止めるべく集まった男性陣、九名だ。

 若手ながら最近売り出し中の、若手俳優、お笑い芸人、シンガーソングライター、インフルエンサー、ビジュアル系バンドのボーカル、等のイケメンどころや。

 引退したばかりのサッカー選手、中堅どころの俳優、人気コメンテーターと、実力実績のある顔ぶれに、ハッテマスも他の女性陣のテンションが上がる。

 ハッテマスは地球に来て、日が浅いので知らない人もいたが、何名かはテレビで見た事のある顔に本当に、テレビ局主催の合コンなんだと実感する。

 そんな中、前回の合コンの時にいた、投資家の多田樹の姿もあった。

 なんでも、最近ネットで予想が面白いと有名な投資家なのだそうだ。

 ハッテマス自身、初見の合コンで【宇宙人】認定しているので、取り立て今回の企画で仲良くなる気はないが、見知った顔があると安心する。

 何せ両脇が…

 

「ねぇ、ねぇ、ハッちゃん。どう第一印象で気になる人いた?」

 

 カメラの視線が切れた所で興味本位でちょっかいをかけて来る佐倉浩美と、

 

「どうしましょハッちゃん、個人的に連絡先の交換したいんだけどって言われましたけど、どうしたらいいと思いますか」

 

 早速男性陣の視線を無駄に集めている今回の合コンに興味を示さないヘリアンテスだ。

 友軍としては全く期待できない。

 自己紹介を兼ねて、日本食のコース料理を給仕しに来る男性陣を一人一人眺めていると、皆凛々しく、優しそうに見える。

 本当にこの中から、お付き合いに発展することができるのならと、少しだけ期待してしまう。

 最初の男性陣のお披露目と昼食が終わると、本格的に合コンが始まった。

 まずはお互いを知るために、男性と女性が一対一で対話するお見合い形式だ。

 人数の少ない女性人が忙しい形にはなるが、持ち時間は十五分、五分の休憩を挟んで約三時間ほど、他愛のない会話を楽しんだ。

 男性陣は曲りなりもほとんどがテレビ、ネット出演しているだけあって短い時間の盛り上げ方をよく知っていた。

 ここで、各自個室にて第一印象と、気になる異性を告白するのだが…

 

「どういうことよ二人共、気になる人は特になしって」

 

 別室でインタビューを見ていた浩美が戻ってきた二人に憤ってみせる。

 

「そもそも私はハッちゃんに勝てる合コンをプレゼンした手前参加しているだですわ」

 

 全く興味なしのヘリアンテスに。

 

「なんていうか、人数多すぎて逆に疲れて、もう、誰が誰だか、解らないわよ。ああ、何時もの合コンのほうがいい気がしてきた」

 

 完全に疲労でやる気を落としているハッテマスが居た。

 

「ちょっと、ちょっと、今をときめく有名人ばかりじゃない。こんな豪華な合コン、もう、二度と出来ないわよ。出来るなら私が参加したいぐらいよ」

「そうは言っても…」

「「ねえ…」」

「ねえ、じゃあないわよ。ハッテマス」

 

 浩美は語気を強めてハッテマスの名を叫ぶ。

 

「あ、はいッ」

「二週間前の意気込みはどうしたの、結婚したいんでしょ」

「したいです」

「なら、惚けてないで、気合い入れ直すわよ。こないだ面白いっていたドラマの俳優さんいたじゃない」

「ええと確か…、流星事変の茶畑笑也の人」

「そう、売り出し中の若手俳優の山崎大和君。誰か決めかねてるなら、彼にアタックかけること。いいわね」

「ええと、そう言われても…」

「結婚するの?したいなら、言うとおりにする。いい」

「は、はいッ」

 

 ハッテマスは浩美の意気込みに負けて勢い良く返事をして背筋を伸ばす。

 

「いい返事、期待しているわ」

 

 満足そうに浩美が言うと、今度はヘリアンテスに向き直り。

 

「ヘリアンテス。子供達は何事にも全力でぶつかっていく大人に引かれるものなのよ、例えハッちゃんのための企画だとしても全力でやらないと、子供達の目に、貴女は映らないわよ。それれもいいの」

 

 無茶苦茶な理論を通す浩美だが、子供たちに好かれたいヘリアンテスは。

 

「まって、それは困りますわ」

 

 慌ててヘリアンテスも姿勢を正す。

 

「うむ、二人ともわかればよろしい、私は再び裏方に戻るけど、しっかりやるのよ」

 

 そう言って、浩美は部屋を出て二人の前から立ち去ると、廊下で待っていた近藤プロデューサーの元に駆け寄る。

 

「近藤さん、ばっちり二人の気合を入れなおしておきました」

「おお、さすがは佐倉さん。この企画、二人のやる気に掛かってるからねぇ」

 

 近藤プロデューサーはふさふさな口ひげを揺らしながら、笑みを浮かべる。

 

「で、実際の所どうなんですか。男性陣の反応」

「さすがと言うべきか、ヘリアンテスさんを第一に押しているのはなんと五人、もう圧倒的ですよ」

「確かに、ここを押さえないと番組的には盛り上がりませんからね」

「あとは、お互いを一番指名したのが、一組ありましたので、ここは押していきたい」

「それは凄い。誰と誰です」

「多田樹さんとアニス・ゴールデンロッドさんですね、お互い顔はいいので押して行きたい」

 

 宝石のようにキラキラと光る長い金髪が特徴の異星人、アニス・ゴールデンロッドさんを浩美は思い浮かべる。

 背も高く、気品に満ちていて美人度で行けばヘリアンテスを凌駕する存在だが、足が長細く鳥のような足先をしていて、上半身と下半身のギャップが地球人には受け入れられにくい。

 

「たしか、セレーネス人でしたっけ」

「そう、セレーネス人。昔は空も飛べたって話だけど、背中の羽はすっかり退化して、服の中に隠れているけどね。広げると、すごくきれいだよ」

「うわぁ、いいですね。見てみたいです」

「番組的にはどこかで広げてもらおうとは思っているよ、事前の打ち合わせで、本人も承諾しているしね」

「おお、それは期待が膨らみますね。そう言う美しさって、地球人にはないですからね」

「ほんとう、セレーネス人って、天使みたいだから、売り方次第では人気になると思うんだよね。ただ、雰囲気が気高すぎて、逆に庶民には近寄りがたい」

「ははは…確かかに、でも、なんでその二人だったんですか?」

「どうやら二人共経済が専門らしく、その辺りで意気投合した感じなんだよね。たださ…」

「ただ…」

「二人共、動きが小さいし、言葉数も少なく、話している内容も地味だから」

「ああ、確かに、番組的にはバラエティーに仕上げにくいですね」

「そう、そこなんだよ。だからこそ、ヘリアンテスさんと、ハッテマスさんには頑張ってもらいたい」

 

 力強く近藤プロデューサーが目を血走らせながら言うと、手にした台本がぐしゃりと握りつぶされる。

 

「でしたら、ヘリアンテスを頑張らせる取って置きの方法が…」

 

 浩美の言葉に近藤プロデューサーの耳が大きくなったようにぐいっと動く。

 

「ただ、これは一種の禁じて、リスクも大きいですけどどうしますか?」

 

 本日一番の悪い顔をして浩美が囁く。

 

「リスクが怖くてテレビ業界やってられるか。いいだろう、聞こうじゃないか」

「フフフ…」

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