最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第八十九話イカサマギャンブル

翌日 ホテル近くのビーチ

「昨日の夜は散々プール遊びした訳だが、今日は海水浴だぁ!!!!」

 

「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」

 

昨日かなり遊んだ結果、プールから帰り風呂から上がるとそのまま全員泥の様にベッドに倒れ込んで眠った。本来なら今日も観光する所なのだろうが、ブレマートンと鈴谷の「どうせ海があるなら泳ごうよ」という意見に全員ノリッノリで賛同し、結果としてこうなったのだ。ちなみに現在時刻は10:14である。

 

「それにしても、変えたんだな。水着」

 

「あら、昨日のセクシーな方が良かったかしら?」

 

「.......インプラカブルさん?一旦鏡で自分の姿見てから、もう一度考えてみようか?」

 

確かに水着は普通の水着ではある。ちょくちょく攻めたデザインの物もあるが、まあ常識範囲内には収まるだろう。だがしかし、考えて貰いたい。今回のメンツは艦娘より愛宕、鈴谷。KAN-SENからはオイゲン、セントルイス、ブレマートン、インプラカブル、ザラ、ポーラの8名。散々言っている通り、全員がスタイル抜群とか超えたプロポーションを誇る美女軍団である。

その為、普通の服を着ていても。そう、そこら辺の街中やスーパーを歩いている一般人の極めて普通の服を着ていてもエロく見える。それが体のラインやら肌やらが見える水着ともなれば、普通のデザインの水着であっても一々エロいのだ。お陰で周りにいる男性陣はチラチラ見ている。そして例によって、もっこりさせてる者もチラホラいる始末。

因みに水着の方は愛宕がアニメ版のビキニ、鈴谷は一番くじフィギュアにある紫ビキニ、オイゲン、ザラ、ポーラは水着スキン、セントルイスは青のビキニ、ブレマートンがピンクと黒のヒョウ柄ビキニ、インプラカブルが白のモノキニである。

 

「あれ、らいぞー。その後ろのリュックは何なの?」

 

「ん?あぁ、いや。どうせ海で遊ぶなら、色々小道具あった方が良いだろと思ってな。浮き輪とか、水鉄砲とか、ビーチバレー用のボールとか色々持ってきた。取り敢えず、お前達は先に行ってていいぞ。俺、浮き輪膨らませっから」

 

そう言いながら長嶺はリュックを漁り、電動ポンプを5台取り出して膨らませに掛かる。今回は普通の浮き輪5個に、ボートタイプ、サメ、貝型、戦車型を持ってきている。流石に1個では時間がかかりすぎるので、電動5個に手動1個で膨らませるのだ。

 

「えーと、こことここを膨らませて.......。あっ、ここもか」

 

結構色んな場所を膨らませる必要があり、かなり面倒臭い。だがいつもの戦場の海とはではなく、平和な海を見ながら作業するのは中々気持ちがいい。波の音、鳥の鳴き声、楽しそうにはしゃぐ他の客達。子供はもちろん、その親であろう男や、他の場所にいるカップルも楽しそうにしている。こういう姿を見れるのは、これまで帝国海軍の軍人として戦ってきたからでもある。そう考えるとやはり、何処か感慨深い。

 

「平和なのはいいねぇ」

 

「あら。私達を差し置いて、他の女の品定めかしら?」

 

「あーれ、オイゲン。お前、あっちで遊んでたんじゃないの?」

 

「考えてみたら、最近あんまり話す時間も無かったじゃない?だからちょっと来たのよ。喉も乾いたし」

 

オイゲンはクーラーボックスを漁り、偶々手に触れたコーラを取り出してキャップを外して飲む。ただキャップを外して、普通に飲んでるだけなのに、なんか色っぽい。

 

「.......雷蔵も飲む?」

 

「貰おうかな」

 

長嶺もグビッと飲む。コーラ独特の甘さと、炭酸のシュワシュワ感が喉を通り抜けていく。やはり暑い時の冷たい飲み物は、言い表せない快感がある。

 

「間接キス」

 

「今更間接キスどうこうで騒ぐか?間接キスどころか、ガチのキスから下のキスまでやってんだろ。それも何十回と」

 

「それもそうね。それにしても雷蔵、最近変わったわね」

 

「そうか?」

 

「そうよ。最近の雷蔵は、前よりも人間らしくなったわ」

 

実際のところ当たってはいる。これまで馬鹿をやるのはどちらかというと場を盛り上げる為の場合が多かったが、最近は自分の為にやる事が増えてきた。他の事でもそうである。日常生活でも結構、自分の欲に忠実になりつつある。

のだが、何故だろうか。まるでこれまで人の心がなかったような言いようである。ぶっちゃけ戦闘モードの時は人の心がない、文字通りのモンスターと化しているのは気にしてはいけない。

 

「そうか?俺はこれまでも、これからも一応は人間のつもりだぞ?」

 

「まるで人間じゃないみたいな物言いね」

 

「炎を操って、戦艦身に宿して、敵陣に突っ込んで、敵を遊びながら殺して笑ってる野郎は、果たして人間といえるのかねぇ?」

 

「.......そういえばそうだったわね。そう思うとあまり変わってない、のかしら?」

 

「変わってねーだろうなー」

 

長嶺は足でポンプを踏みながら答える。踏む時になるキュポキュポという音が何か、雰囲気をぶち壊していきムードは台無しである。本来ならイチャつく感じに持っていきたかったが、もうそんな空気ではない。

 

「これ、持っていていいのかしら?」

 

「その3つはいいぞ」

 

オイゲンは膨らんだ浮き輪を回収し、また女性陣の元に戻っていく。程なくして全部の浮き輪が膨らみ、長嶺も合流。楽しい海遊びが始まった。

 

「遅かったじゃない雷蔵くん?」

 

「いやー、流石に9個同時膨らませはキツいわ。でも、かなり面白いのも持ってきたぞ」

 

「面白いの?」

 

「戦車浮き輪です!」

 

そう言って長嶺が指差したのは、緑色の戦車の柄が入った浮き輪だった。だが正直、見た目も相まって子供っぽい物ではある。

 

「こらそこー。子供っぽいとか思ってんだろ?」

 

「いやだって、ねぇ?」

 

「なんかいかにも、子供っぽいし.......」

 

「まあ見た目はそうだろうよ。だがしかーし、海に出れば分かる」

 

と長嶺が言うので、半信半疑ながら海へと入る。ある程度の深さがいるので、大体岸から数十mの位置まで動いた。

 

「そんじゃ行くぞー。ファイアー」

 

そう言いながら、長嶺が浮き輪についてるボタンを押す。次の瞬間モーターの音が鳴り、内蔵されていた水鉄砲から結構な勢いで水が飛び出す。しかもその銃口は2つも付いているらしく、マシンガンのように水を次々と打ち出す。

 

「さらにぃ、はいドカーン!」

 

更には真ん中の主砲部分から水風船が撃ち出され、海面にぶつかるとパシャっと破裂する。文字通りの戦車であった。

 

「手が込んでるわね」

 

「へぇー。最近はこういうのも売ってるんですねぇ」

 

「まさか。コイツはレリックが作った、正真正銘のワンオフ浮き輪だ。隊員連中がリクエストしたらしくてな。以来、これで水上サバゲーとかやってるんだと」

 

因みに霞桜タイプのは威力が上がっている上に、航行用のモーターまで搭載されている為、この浮き輪とはかなり違う。今回持ってきた浮き輪は、駆逐艦辺りが「欲しい」とか「やりたい」とのリクエストが来た際の為に製作したダウングレードモデルのプロトタイプらしい。

 

「それちょっと貸してよ雷蔵!」

 

「おういいぞ。ほれっ」

 

一度浮き輪を外し、そのままブレマートンに渡す。大の大人というか、霞桜の大男連中が動かせる様なサイズなので、直径もかなり広めな為、難なくスッポリと被せられた。

 

「で、えーと.......」

 

「両サイドの持ち手に付いてるボタンが水鉄砲、左の持ち手に付いてるレバーが主砲のトリガーだ」

 

「ん?えっと、あっ」

 

間違えて主砲のトリガーを引いてしまったブレマートン。発射された水風船は、そのまま長嶺の顔面に命中し「ぶっ!」とか言いながら顔中水浸しになった。普段の姿からは想像できない姿に、全員が笑いだす。

 

「ぶって!ぶって言った!!らいぞーぶって言った!!!」

 

「ふふふ、雷蔵くんもそんな一面があるのね。ふふっ」

 

「雷蔵さん、ちょっと間抜けですよ。ぷふっ」

 

「いやー、流石に予想外だったわ!ハハハ!ブレマートン、覚悟しとけよ?」

 

「ごめん!ごめんって!許して雷蔵〜」

 

「かわいいから許す!」

 

その後もシュノーケルを楽しんだり、長嶺が8人に日焼け止めクリームを塗ったり、ビーチバレーをしたり、水鉄砲合戦したりして、かなり楽しめた。昼過ぎには一度ホテルへと戻り仮眠を取って夜に備える。

 

 

 

18:00 自室 

「それじゃ着替えますかね」

 

基本的にカジノには意外かもしれないが、ドレスコードというのは存在しない。ラスベガスとかでもそうで、一部の超一流店なんかでは存在したりはする。精々、防犯上の理由から入場時にサングラスを掛けるのがダメとか、帽子を目深に被ってはダメとか、その程度の物である。

だがこれから行くのは、裏世界のカジノ。裏カジノ含めこういう裏世界の違法な場所は、下品か上品かの二択となる。表の一般人やグレーゾーンの人間にも門戸を開いてる場合は中流があったりはするのだが、これから行くのは表裏社会の特権階級が集まる場所。つまり上品な空間な訳で、ドレスコードがしっかり存在する。とは言え余りにガチガチなフォーマルスーツは、あまりに固すぎる。そこで今回はビジネスカジュアル系の物を選んできた。青のジャケットに、薄手の黒シャツ、青のズボン、それに黒の革靴である。

 

「後は腕時計を付ければ、OKだ」

 

「雷蔵。こっちは準備できたわよ。あら、似合ってるわね」

 

「ザラのお墨付きが出たなら、ドレスコードも突破できるな」

 

「あら。私のセンスをそんなに信用してくれるのね」

 

「そりゃウチの艦隊でも、指折りのオシャレさんだろ?」

 

江ノ島、いや。自由なる艦隊の面々は知っての通り全員女性であり、基本的に全員身嗜みには気を使う。しかしその中でも、特にオシャレに気を使いトレンドにも敏感な者達がいる。艦娘では大和、陸奥、鈴谷、熊野。KAN-SENでは尾張、鈴谷、熊野、ブレマートン、ザラ、リットリオ、フォッシュ辺りである。これに加えて、霞桜よりカルファンも仕事柄入っており、基本トレンドやコーディネートはここに聞けば良いという暗黙の了解すら存在していたりするのだ。

 

「そんな風に言ってくれるのね。嬉しいわ」

 

「俺としても、お前達のお陰でトレンドを知っている部分がある。色々と大助かりだよ」

 

「ならこれからも、オシャレを追求しなくちゃね」

 

そう言いながらザラは笑う。着ている赤のミニワンピース型ドレスもあって、かなり妖艶な雰囲気がある。これだけで、男は言い寄ってくる事だろう。

 

「さぁーて。それじゃぁ、行こうか」

 

内戦でファーフーリーを呼び出し、カジノへの案内を頼む。どうやらそう来ると思っていたらしく、前もってパスを用意してくれていた。

 

「何これ指輪?」

 

「ポーラ様、それがパスなのですよ」

 

「入り口に駅の改札みたいなセキュリティゲートがあるから、それにその指輪をスキャンすればいい。後、その中にクレジットカードを紐付けしてあるから、それで金のやり取りもできる。チップの交換、施設内にあるスパの利用、食事、その他各種有料サービスの利用は、全てこれで完結する訳だ」

 

「飲み物も買えるの?」

 

「まあ買えはするが、別に買う必要はない。ほら、よく映画とかでトレーを持ったバニーガールとかいるだろ?実際にカジノの中にもバニーガールかは別として、トレー持った女性が歩いてるから、その人に頼めば無料で貰えるぞ」

 

「但しそれは、ソフトドリンクに限った話です。お酒は有料となりますよ」

 

ファーフーリーが補足する。どうやら長嶺が前に来た時とは、若干サービスが変わっているらしい。昔は酒類も貰えたはずなのだが、まあそんなことはどうでも良いだろう。

 

「それから皆様。会場ではこちらを着け、決して外す事がない様に」

 

そう言いながらファーフーリーは、タキシード仮面が付けてそうな目の周りを覆うタイプの豪華な装飾が施された仮面を渡してきた。

 

「か、仮面?」

 

「左様でございます。当ホテルのカジノは完全な非合法な場所ですが、世界各地より会員のVIPの皆様が訪れております。その為、お互いの素性を隠す為に仮面を着けてもらっているのです」

 

「マジな話。ここの会員はテレビで見た事がある様有名なハリウッド俳優とか、みんな知ってる大企業の社長とか、国家元首とか、王族とか、そういう連中もゴロゴロいるんだ。そんなのがバレてみろ。翌日の世界経済は崩壊するだろうさ」

 

「長嶺様がおっしゃている事が下手な冗談で済むのでしたら当方としても安心なのですが、生憎と本当にそうなりかねません。断言できますよ」

 

遠い目をするファーフーリーから察するに、多分過去にバレ掛けた事があったのだろう。とは言え全員がこの非合法な裏カジノにいる時点で、お互いが同じ弱みを等しく掴み、等しく見せている。あんまりバレる事はない。

 

「まあ、余計なトラブル起こさない為にも仮面はトイレの個室みたいな、完全なプライベート空間でない限りは外さない事だ。さぁーて、ゲームの時間だ。案内しろ、ファーフーリー!」

 

「承知しました。ではこちらへ」

 

長嶺達はファーフーリーの後をついていく。部屋を出て、普通にエレベーターに乗り込んだ。だが階数ボタンを押さずに、ファーフーリーが手を鏡に押し当てると、エレベーターがボタンを押してないにも関わらず下に下がり始めた。

 

「ま、まるでスパイ映画ね」

 

「確かキングスマンだっけ?なんかこういうシーンあったよね」

 

「スパイ、というのは間違ってないかもしれませんね。セキュリティもありますが、これも演出なのですよ。やはりSFや秘密施設というのは、金持ちから貧民に至るまで、特に男性には刺さりますからね」

 

程なくしてエレベーターは地下のカジノ区画に到着する。ドアが開けばそこはもう、これまでのホテルの内観とは全く違った。壁や柱は金色に塗装され、床は赤い絨毯が敷き詰められ、仮面を付けた人間がたくさんいた。

 

「ようこそ、地下の楽園へ。心行くまでお楽しみください」

 

ファーフーリーはそう言って、また上へと戻って行った。早速指輪を使ってゲートを通り、お待ちかねのカジノエリアに入る。

 

「す、すごいわね」

 

「なんか眩しくてクラクラするわ.......」

 

「おいおいインプラカブル。こんなのでふらついてたら、この先やべーぞ。ここはかなりハードな場所だからな」

 

長嶺はまずカウンターに向かい、有りったけのチップを交換する。その額、いきなり1.5億円である。普通ならチップの量がおかしな事になるだろうが、ここはチップが100ドルが最低額である為、量的にはそこまで多くはない。

 

「お前達も交換しとけ」

 

「雷蔵くん。あの、私の感覚がおかしいのかもしれないのだけど、これ額が高すぎないかしら?」

 

「心配すんな。セントルイス、君の金銭感覚は間違っていない。ぶっちゃけここの単価は、かなり頭がおかしい」

 

通常のカジノではピンキリとは言え、最低賭け金が1ドルなんてのもザラにある。つまりゲーセンのゲーム一回分の値段だ。対してここのカジノは、最低賭け金が100ドルからとなっている。ゲームによっては100ドル以上なんて物もあるので、ここの金銭感覚はバグっていると言えるだろう。

しかも客として居る人間も総じて、一般人の生涯年収を1日で稼げるような連中がゴロゴロいる。お陰でここは、1日で国家予算クラスの金が動くカジノでもある。

 

「じゃあ、ここからは好きに遊んでこい。俺は俺でガチ勝負してくるわ」

 

「ガチ勝負?」

 

「そっ。文字通り、勝ちにいくのさ」

 

既に神に二物どころか、五、六個はチートを授かって産まれた長嶺であるが、こういうカジノとかギャンブルで無双する運は持ち合わせていない。普通にギャンブルをすれば、普通に終わるだろう。結果は一般人と変わらない。大負けするかもしれないし、反応に困る程度の勝ちを得るかもしれない。

だがその一方で、長嶺はギャンブル最強でもある。戦場で鍛えた各種スキルを筆頭に知識、金、技術、人脈、経験を総動員したイカサマを用いれば、勝つも負けるも思うがままだ。

 

「まずはスロットで増やすかな」

 

例えばスロット。パチンコ店やゲームセンターにあるスロットと、基本的には変わらない。ここで言えば指輪で入金し、レバーなりボタンを押せばスロットが回転し始め、あとはリール下のボタンを押して回転を止め、止まった絵柄で役が決まる何ともシンプルな物だ。

だがここのカジノに置いているマシンは、他のマシンよりも回転が速い。そして賭け金もかなり持っていかれる。普通なら殆ど運なのだが、コイツの場合は戦場で鍛えた目と反射神経で正確に絵を捉える。

 

「それじゃ30分位で稼がさせて貰うぜ」

 

そこからは単純作業だ。狙いの絵で揃えていくだけで、敢えて外したり、少額の当たりを出したりしてイカサマがバレない演技をするが、それでも的確に金を増やしていく。その後30分で初期の賭け金の1.5倍の額を手に入れて、マシンから離れた。

 

「あっ雷蔵!」

 

「ブレマートン。それに鈴谷と愛宕もか。どうだ、勝てたか?」

 

「いや全然」

 

「ブレマートンも鈴谷も負け続きだよ。でも、愛宕は勝ったよねー?」

 

「そうなんですよ雷蔵さん!私、早速儲けちゃいました!!っていても、賭け金回収して+3万位なんですけどね」

 

普通のカジノなら喜べる額だろうが、このカジノでは3万円では誤差である。普通に切り捨てられる位の雀の涙とも言える額ではあるが、それでも勝ちは勝ちだ。

 

「負けたよりかは良いだろ?勝ったし儲けではあるんだから」

 

「でも雷蔵さんはかなり儲けたんでしょ?」

 

「まさか。元値の1.5倍、合計75万って所だ」

 

無論やろうと思えば、一度も外す事なく一撃で最高額を当てる位はできる。だが今は、普通にカジノを楽しみたい。別に1.5倍程度では単なるラッキーの範囲であり、特段目をつけられる事もない。

 

「それでも凄いですよ!何のゲームで稼いだんですか?」

 

「スロットだよ。あんなの、俺にかかれば作業ゲーだろ」

 

「にしては安いよね」

 

「流石にイカサマ疑われたら面倒だからな.......」

 

「「「あー.......」」」

 

3人とも微妙な顔をして、しみじみと頷く。長嶺の場合、最早存在自体がイカサマなので仕方がないだろう。この後、軽く4人でバカラをして遊び、またホールをぶらついていると、ザラとポーラのコンビと出会った。

 

「ザラ!ポーラ!」

 

「あっ雷蔵。どう、勝ててる?」

 

「良い感じにな。さっきバカラで300万稼いできた所だ」

 

「へぇ。なら、今度は私達とルーレットでもしない?」

 

ザラの誘いで早速、3人でルーレットの台に向かう。既にルーレットでは、かなり白熱した賭け争いが勃発しており、良い感じに場の金も動いている。

 

「ここ、狙い目だわ」

 

「そうなの?」

 

「あぁ。所謂ローリスク・ハイリターンってヤツ」

 

早速台に座ってみたわけだが、やはり目立つ。何せ一目で姉妹か双子だと分かる爆乳美女2人を連れた男が来た時点で、台に居た男達は良いところを見せてやろうと掛け金をどんどん上げていく。

 

「(2人とも。取り敢えず、まずは堅実に行っとけ。コイツら勝手に自爆するから)」

 

長嶺の言葉に2人はよく分からないという様子だったが、ゲームが始まれば長嶺の言ってる事がよく分かった。3人は偶数と奇数、後は縦横で賭けている。ザ・堅実の戦法だ。対して…

 

「0!!」

 

「赤の16」

 

「黒の24!!」

 

こんな感じで他の男どもは一点賭けを繰り返している。数字指定はハイリスクではあるが、その分リターンは大きい。しかもコイツら、バンバン金を入れてくるので稼ぎやすい。お陰で1時間もすれば、3人とも早くも利益が3000万を突破した。

 

「すごい稼げるわね」

 

「えぇ。これでまた、色々楽しめるわ」

 

ザラとポーラはホクホク顔ではあるが、そろそろ鴨と化した男達も財布の限界が近いらしい。だが長嶺は、この時を待っていた。コイツらから金を完全に搾り取る時が来たのだ。

 

「諸君、ひとつ勝負といかないか?」

 

「お客様?」

 

「ここに今日の軍資金と利益、その全てがある」

 

長嶺は持っている全てのチップを場に出し、そのまま黒の35に置いた。一点賭けである。

 

「総額、大体100万ドルってところか。俺は全額ベットした。どうする?コールするかね!?」

 

長嶺の問いに、男達は火が付いた様で狂った様に金を場に出した。お陰でテーブルはチップのタワーで、数字がよく見えない。ザラとポーラも、この際なので長嶺と同じ黒の35に1万ドルずつ賭けてみた。

本来ならこういう勝負、みんな負けるか言い出しっぺが負けるものだろう。だが今回、長嶺は試運転がてらイカサマを発動させた。このカジノの全てのルーレット台で使われる弾は、全てレリックの作った特殊な玉にすり替えられている。この玉は内部機構によって自由に速度を調節でき、狙った位置に玉を落とせる様になっているのだ。

ディーラーは何の疑いもなく、ルーレットを回して玉を入れる。遠心力で縁を高速で周回していくが、その最中に玉の内部の機構が起動して速度をコントロール。黒の35に入る様に調節していき、1分後、玉は黒の35に転がり込んだ。

 

「俺、いや。俺達の勝ちだ」

 

この一点賭けは賭け金の36倍が返ってくる。つまりザラとポーラには36万ドルずつ、つまり約5,500万円。長嶺の場合は3600万ドル、約55億円手に入れた事になる。

 

「やったやった!」

 

「すごい額ねポーラ!!」

 

「失礼致します、お客様。払い戻しの件なのですが.......」

 

横で喜びあってるザラとポーラを見ていると、ホールスタッフの男がやってきた。どうやら流石に額が額なので、このままチップに替えるか、それとも口座に振り込んだり現金で回収していくか、それを聞いてきたのだ。

 

「取り敢えず100万ドル分チップに替えて、残りは口座に入れておこう。ここが俺の口座番号だ。後で入れておいてくれ」

 

「かしこまりました」

 

初日でかなりの額を巻き上げた長嶺であるが、翌日は可もなく不可もなくの平々凡々の結果で終わらせ、さらに翌日は敢えて2000万ドル近くスってきた。

この結果に女性陣は驚いているが、これも長嶺の作戦の内だ。最終日となる3日目。この日は長嶺が本気で暴れるのだ。

 

「ねぇ雷蔵さん。流石に負けすぎじゃなですか?やめましょうよ」

 

「なんだ愛宕。俺がただ負けたと思ってるのか?」

 

「へ?」

 

「これは仕込みだ。今日は文字通り、ここをひっくり返してやるさ。お前達にも言っておく。今日は、俺の周りに居ない方がいいぞ。金巻き上げるから」

 

今日まで長嶺はイカサマを殆どしていない。試運転がてらで動かした事はあれど、基本は普通に勝負していた。唯一スロットだけは、デフォルトの反射神経と観察眼で無双していたが、これは単純なスキルなので例外にしてもらいたい。

 

「さぁ、ワンサイドゲームを始めよう」

 

カジノに入場した瞬間、まずはスロットマシンに向かう。ここで1時間、とにかく当てまくって1万ドルを一気に4000万ドルにまで増やす。これを他ゲームの軍資金に当て、他のゲームでも無双を始める。

 

「ここ、いいか?」

 

「えぇ、どうぞ」

 

まずはブラックジャック。簡単に言えばカードの合計を21に近付け、オーバーしたら負けというゲームだ。だがこれ、長嶺からしてみれば単なる退屈な運ゲーである。

このテーブルにある全てのトランプカードは、どれがどの柄のどの数字かまで解析してある。監視カメラ映像を解析し、全てのカードは数が分かり次第、タグ付けされコンピューターで追跡する仕掛けだ。後は長嶺の目に入れてあるARコンタクトレンズに表示すれば、次に出てくるのが何かまで分かる。後はそれに合わせて賭け金を調節したり、勝負から降りたりすれば良いだけだ。

 

(この順番だと。おっ、ブラックジャックが来るな)

 

「1万ドル」

 

「1.5万」

 

「1万!」

 

「9000」

 

「オールインだ」

 

こんな感じで狙い目が来たらオールインして、そのままがっぽり稼ぐ。こういったことを繰り返し、更にちょくちょく敢えて負けて豪運で片付けられる様なフェイクを混ぜつつ、2時間で席をたった。

同じ要領でバカラでも無双し、次はポーカー台に座る。偶々この席にはインプラカブル、オイゲン、セントルイスもおり、期せずして両手に華状態でのプレイとなった。

 

「どう、勝ってる?」

 

「あぁ。かなりな」

 

長嶺はオイゲンにそう返すと、早速ゲームを始めた。と言っても、ただ見るだけである。この感じであれば、恐らく負ける。ならばここは、賭け金を低く設定しダメージを抑えればいい。

 

「あら。雷蔵くん、負けたのね」

 

「そっちはラッキー・ルーの面目躍如だな。いくら儲けた?」

 

「大体600万ドル位かしら?」

 

「.......末恐ろしいな」

 

見たところ、オイゲンとインプラカブルは大体250万ドルくらいだろう。その倍以上稼いでいる辺り、軽く恐ろしい。

 

「そのラッキーを分けて貰いたいね」

 

「いいわよ?」

 

「はい?」

 

次の瞬間、セントルイスは長嶺にキスをした。長嶺含め、まさかの行動にフリーズする。だがセントルイスは妖艶な笑みを浮かべたまま、長嶺にウィンクしてくる。

 

「ラッキー・ルーのお裾分けよ」

 

「.......こりゃ、負けられねぇな」

 

まあこんな事をして貰えたのだ。恐らく運も回ってくるだろうと思っていたが、このキスは幸か不幸かトンデモない事になってしまう。

 

「おいお前。俺と勝負しろ」

 

「いきなり何だ」

 

何の脈絡もなく、同じテーブルに座っていた客の1人が立ち上がって長嶺の胸倉を掴んできた。しかもその客は、仮面を外し素顔を見せてくる。

 

「ナイトプールの野郎か。なんだ、何の用だ?」

 

「覚えていたか。なら話は早い。俺と彼女達を賭けて、ルーレットで勝負しろ」

 

「はぁ?」

 

名前は知らない、というか覚えてないが、この因縁ふっかけている男は初日のナイトプールで8人をナンパしようとしていた粗チン野郎の1人である。だがしかし、そんな事はどうでもいい。この勝負に長嶺側のメリットが一切ない。

 

「勝負だ!」

 

「いやいやちょっと待て。俺のメリットは?」

 

「女を守れる」

 

「アホか。んなもん、そもそも勝負受けなけりゃいい。実力行使でゴリ押すなら、俺がそれを殲滅するだけだ」

 

粗チン野郎は少し悩むと、しっかりメリットを出してきた。自分が持っている資産500億ドルをチップに替え、それを負ければ全部渡すと言ってきた。それならまあ、悪くない。

 

「良いだろう。であればルールはこうだ。こちらは彼女達、そっちは500億ドルを賭ける。ルーレット台では、そうだな。このカジノで稼いだ全額をベットするとしようか」

 

「吠え面掻かせてやる!!!!」

 

なんて粗チン野郎は言っているが、内心では長嶺は大笑いしていた。何せ何もしないで500億ドル、つまり約8兆円近く手に入るのだ。嬉しい限りである。

 

「ねぇ、大丈夫なの!?」

 

「なーに、心配すんな。巻き上げてくるさ」

 

「インプラカブル、大丈夫よ。だって雷蔵がそう言ってるんだもの。こういう時の雷蔵は、絶対勝つわ」

 

「そうだとも。それに、さっきラッキー・ルーから幸運のお裾分けもあったしな」

 

長嶺は指定のルーレット台へと向かう。どうやら粗チン野郎には例の仲間もいるらしく、コイツらも賭けに参加してきた。こちらにも同じ条件で参加して貰う。

 

(リーダーから500億、それから490億に485億、503億と。こりゃボロ儲けだ)

 

「ディーラー!俺達は黒の28賭けるぜ!!」

 

「承知しました」

 

「では、こっちは赤の1番だ」

 

「では、参ります!」

 

粗チン野郎共は、勝利を確信した。何せディーラーはこちら側の人間である。実はルーレットは投げ方で、自由自在に狙う場所を調整できるのだ。

だが長嶺は既にイカサマ発動済みだ。玉は回転数を調節し、赤の1番へと入った。

 

「と、いう訳だ。残念だったな粗チン野郎共」

 

長嶺は嫌な笑みを浮かべながら、4人の前に立ちはだかる。その姿に資産を失った4人は恐怖する事も出来ず、ただ放心状態で床にヘナヘナと座り込んだ。

 

「あっ、ディーラー!ちょっとこれ、換金してくれないか?」

 

「はっ、はい!」

 

ディーラー20人がかりで換金作業が始まる。そもそもチップを運ぶだけでも、かなりの重労働だ。ドル、ユーロ、フラン、マルク、シリング、ポンド、円と主要な単位に替えて行き、それをそのまま部屋に持っていって貰う。

 

「え、何これ」

 

「なんか凄い事になってるんですけど」

 

「なんですかこの騒ぎ?」

 

「3人も戻ったのね。雷蔵が例のナンパしてきた男達から、ギャンブルで金を巻き上げたのよ」

 

ブレマートン達がやって来たのだが、あまりの惨状に理解が追いついていない様だ。まだポカーンとしている。まあ黒服達が長嶺の指示でチップを運ばされ、ルーレット台の前には真っ白に燃え尽きた4人がへたり込んでいる。カオスである。

 

「目的完了。帰ろうぜ〜」

 

長嶺のいつもの声で現実に戻って来た3人。目的通りカジノで荒稼ぎもできて、当初の目的である外貨獲得も大成功と言えるだろう。ただこの額となると、輸送用のジェット機も呼ばなくてはならないが。

では最後に、このカジノで儲けた額を発表したいと思う。

 

長嶺 1億6,800万ドル(巻き上げ1,978億ドル)

鈴谷 4100万ドル

愛宕 4250万ドル

オイゲン 6120万ドル

セントルイス 9450万ドル

ブレマートン 4890万ドル

インプラカブル 5300万ドル

ザラ 5430万ドル

ポーラ 5370万ドル

 

 

 

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