最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第九十話総指導者ムージャと影の英雄

カジノでの夜から十数時間後 アフガニスタン カーブル国際空港

「はーい、到着と」

 

あのカジノでの大勝利の後、部屋に戻った長嶺達。そのまま盛り上がりすぎて、色々致して泥の様に眠り、起きて着替えてチェックアウトして、空港からまたプライベートジェットに乗り込んで、ここカーブル国際空港にやって来たのだ。

因みに儲けて現金化した資金は、全て別の機体に載せて一足先に帰還させている。あんな大金、持って来ても邪魔なだけだ。

 

「これ、意外と涼しいわね」

 

「てっきり暑いかと思ったけどねー」

 

現在彼女達8人は、イスラム圏の取り分けこの辺りでは最もポピュラーなニカーブというのを着ている。よくニュースとかであの辺の国に住んでいる女性が来ている、目以外全部スッポリと覆っているあの服である。名前は知らずとも、一度は見たことがある筈だ。

今回は無用なゴタゴタを避ける為、イスラム教の教え通り肌を隠して貰っている。それにこういう所だと、一周回ってこっちの方が涼しかったりするのだ。

 

「っとぉ、時間が押してる。急ぐぞ」

 

手早く入国審査を済ませると、そのままロビーから外に出る。流石に空港の周りだけあって、この辺りは普通に整備されているらしい。コンクリートも普通にある。

 

「お前、長嶺?」

 

「アンタは?」

 

「ムージャ使い。迎え来タ。乗レ」

 

片言の日本語で話しかけて来た男の後について、車に乗り込む。無論悪路を想定した、ピックアップトラックとSUVだ。しかも土でかなり汚れている。だが状態は悪くない。

 

「トヨタか」

 

「トヨタ最高。頑丈ネ」

 

「そりゃテロリストがマシンガン載せたりするだけあって、かなり頑丈にできてるからな」

 

よく紛争地帯で武装したゲリラと共に写り込むの事の多い、大口径重機関銃や対空機銃。所謂テクニカルトラックと呼ばれる即席兵器であるが、実は結構トヨタの車が多かったりする。何せ悪路を踏破できる上に、信頼性が凄く高い。お誂え向きなのだ。

 

「それじゃ、行くヨ」

 

車列は走り出す。数十分も走ればあっという間に未舗装の道へ突入して車内もガタガタと揺れだし、正直快適には程遠い。だがそこは流石、艦娘とKAN-SEN。時には荒波でも戦うだけあって、この手の揺れには強いらしく酔う気配はない。

 

「みんな強いネー。アンタはともかく、女の子すぐ普通酔うヨ」

 

「私達、ちょっと特殊なのよ」

 

「それはすごいネー」

 

更に1時間も走れば、もうそこは見渡す限りの荒野。人家はなく、まるで火星のように赤茶色の砂が一面を支配する場所だ。所々、大きな木があったりはするが、基本的に変わり映えはしない。稀に野生動物が見えるが、それ以外は何もない。

オマケに車から流れてくるラジオも、当然だがこっちの言葉である。長嶺は兎も角、他は全く分からないので正直暇だ。

 

「何もないから暇ネ。でも、もう少しの辛抱ヨ」

 

「ありがとよ」

 

次の瞬間、先頭を走ってるピックアップトラックが突如爆発した。下から爆炎が襲いかかり、そのまま車体を吹き飛ばした辺り、恐らくIEDか地雷でも仕掛けられていたのだろう。オマケに最後尾の爆発し、退路も塞がれてしまった。これはかなり不味い状況だ。

 

「みんな伏せルー!!!!」

 

ドライバーの男が叫んだのと同時、無数の弾丸が飛んできた。所詮は普通の街中を走る一般車と変わらない以上、流石に弾丸には耐えられない。さっきから嫌な音が聞こえてくる。

 

「お前ら、車から降りろ!!」

 

「茂みに逃げ込む!?」

 

「ダメだ!!地雷仕掛けられてるかもしれん!!!!」

 

この感じを見るに、典型的な狩猟パターンだ。前と後ろの車を爆破し、真ん中の車両を拘束する。仮にこちらを完全に殺すなら、態々退路を塞ぐ様なやり方をせずとも地雷を大量に仕掛けるなり、ロケット弾を叩き込むなりしてしまう方が早い。

だがそれをしてこない辺り、完全なる狩り。となれば茂みにブービートラップの一つや二つ、仕掛けるのが当然だろう。

 

「みんな茂みに隠れロー!!!!」

 

AK片手に車から飛び出したドライバーは、そのまま茂みへと入って行く。他の戦闘員達も同様に茂みへとズンズン入って行く。

 

「おい馬鹿!!ブービ」

 

もう遅かった。ブービートラップが次々に爆発し、戦闘員達は吹き飛ばされていく。しかも普通の地雷ではなく、完全に命を奪うタイプの殺傷力が強い地雷だ。

 

「ートラップあるから気を付けろ、って遅いか…」

 

さらば名も知らないドライバー。君は、まあ、うん。悪い奴ではなかったよ。

同乗しているオイゲンとブレマートンはショックを受けているらしいが、この程度で顔色を悪くされていてはまだまだだ。

 

「そのまま車から這い出るぞ。そのまま後ろのみんなを引き摺り出す!」

 

「何か手は無い訳!?」

 

「手以前に武器がない!!まずはそこからだ!!!!」

 

長嶺達は芋虫の様に車から這い出ると、そのまま後ろの車に乗っている他の面々の所まで匍匐前進で進む。江ノ島にいた頃から、日頃から基礎的な動きは教え込んでいたのは正解だった。

 

「なんでこうなるのよ!!」

 

「もー最悪!!」

 

「おーおー。そんだけ言えるなら安心だ」

 

女性陣からは文句タラタラではあるが、本当に苦しかったら悪態吐く余裕すら無いはずだ。文句言っている限り、まだ安心できるだろう。他のみんなを引き摺り出した所で、銃撃が止んだ。どうやら接近してくるつもりらしい。

 

「車の影に隠れるぞ」

 

マトモに隠れられるのが車の影だけなので、取り敢えずそこに全員で隠れる。だが流石に、ちょっとキツい。

 

「あっ、雷蔵くん。これ、使えるかしら?」

 

「M1911か。流石に拳銃は心許ないが、まあ、無いよりマシか」

 

セントルイスが持っていたM1911A1を受け取り、長嶺は匍匐前進で車の下に回り込む。こちらが一切反撃しないのを見て、向こうはもう勝利ムードになっている可能性が高い。それ故に慢心しているだろう。

正面切って戦えば即刻あの世行きでも、奇襲であれば逆に効果的な攻撃になる。幸い、こっちにも8人もの爆乳美女がいる。もし見つかっても、取り敢えずいきなり撃つことはないだろう。というか殺さず拠点に持ち帰って、そのままお楽しみコースに突入する。そこに付け入る隙が生まれる。

 

(敵は20人。約1個分隊規模か。よーし、もうちょっとこっちへおいでー)

 

車の下で息を潜め、襲撃者が通り過ぎるのを待つ。こっちに来ているのは5人なら、2人目で奇襲を仕掛ける。向こうの獲物は恐らくライフル。となれば、超至近距離での取り回しはピストルであるM1911A1の方が有利だ。

2人目が通り過ぎた瞬間、長嶺は素早く車の下から這い出して仕掛ける。まずは1人を射殺。そのまま先頭の襲撃者を射殺し、ライフルを奪って攻撃を開始。素早く5人を片付ける。

 

「やろっ!まだ生き残りがいやがった!!」

 

「殺せ!!!」

 

再び襲撃者達は攻撃してくる。だが今度はこっちにもぶんどって来たAK74がある。見るからに正規品では無い、現地生産モデルである以上、精度はまず期待できない。いつも使っている愛銃達や霞桜の銃とは、明らかに雲泥の差だろう。

だがそれでも、何度か撃てば癖は分かってくる。後はその癖に合わせた撃ち方に変えていけば、自ずと弾は当たるものだ。

 

「はいはい。掃除しちゃいましょうね」

 

アイアンサイトでありながら、普通にマークスマンの様な戦い方をしている辺り、流石の化け物っぷりである。襲撃者達はみるみると数を減らしていき、ムキになって動きが単調になりだす。

 

「クソッ!クソッ!!なんであんな男1人に手も足も出ないんだ!!!!」

 

「ふざけんなよチクショー!!!!!」

 

「撃ちまくれ!!!!」

 

苛烈な攻撃にはなるが、それは見た目だけ。照準もバラバラである。長嶺クラスともなれば、何とも思わないどころか「無駄弾を使ってくれてありがとう」なんて感謝が生まれるくらいなのだが、彼女達へのストレスは相当な物だ。耳を塞いで、縮こまっている。

まあ長嶺自身も、こういう空間が心地よい訳でも無い。早いとこ終わらせようと思ったのだが、急に弾丸が来なくなった。代わりにコチラとは反対方向に乱射し始め、暫くすると銃声が止んだ。

 

「.......なんだ?」

 

「ら、雷蔵?終わった?」

 

「いや、分からん。なんか急に止まりやがった。取り敢えず、警戒だけはしておけ」

 

長嶺も車の影からライフルを構えたまま様子を伺うが、次の瞬間、イスラム圏に於ける伝説の剣、ズルフィカールをモチーフにした黒地の旗が翻った。

 

「おーーーい!!!!!助けに来たぞー!!!!!!!」

 

「ふぅ。お前達、安心しろ。どうやら騎兵隊が来たらしい」

 

「き、騎兵隊って誰なんですか?」

 

「中東民族独立解放戦線の総指導者、ムージャ・トゥルキスターニー・ジブリールだよ。俺の友人にして、この旅本来の目的だ」

 

指揮車両型のBTR60から身体を乗り出す、筋肉ムキムキマッチョマンな髭面の男。この男こそ、この中東で最も強い影響力を持つ英雄。ムージャ・トゥルキスターニー・ジブリールである。

 

「同志よ、久しぶりだな」

 

「おう。ムージャも元気そうで何よりだ」

 

お互いに固い握手を交わす。彼女達は見事にポカーンとしているし、何ならムージャの部下達もポカーンである。だが側近の何人かは長嶺を知っており「我らが影の英雄」と跪かれている。

 

「所でこのお嬢さん達は?」

 

「俺の戦友であり、部下であり、家族であり、嫁達だ」

 

「!ってことは、例の艦娘とKAN-SENってヤツか」

 

「あぁ。お前達、改めて紹介しよう。俺の友人、ムージャだ」

 

「ムージャ・トゥルキスターニー・ジブリールだ。長いから、ムージャと呼んでくれ。君達の来訪、心から歓迎しよう。さっ、すぐにここを離れる。乗ってくれ」

 

全員で装甲車に乗り込み、そのまま彼らの拠点へと向かう。さっきのピックアップトラックよりも頑丈とは言え、さすがは軍用車。乗り心地は最悪の一言である。

 

「所で、えっと、ムージャさん?」

 

「何だね、赤髪のお嬢さん」

 

「その、雷蔵とはどんな関係なんですか?」

 

「私も気になるわ」

 

ザラとポーラに続き、皆口々に「気になる」と言ってきた。ムージャはニヤリと笑うと、暇つぶしがてらに話してくれた。

 

「今から、大体7、8年前だったか。同志が私に連絡を取ってきたのは。当時はまだ、私の勢力もイスラム過激派の一派閥にすぎなかった。私の組織は元が自警団だったのもあって、イスラム過激派のテロリスト扱いではあったが、自爆テロを起こしたりとかはしていない。お陰でワールドニュースにも出てこなければ、多国籍軍と事を構える事もない、イスラム教信者数十人の武装コミュニティだった。

そんな時、同志は私と接触してきたのだ。当時、私の組織は別組織からちょっかいを掛けられていた。その組織に同志の、怨みを買った者が居たのだ。そこを落とすために、我々に協力を要請してきたのだ」

 

「そのらいぞーの恨みを買った人っていうのは、一体誰なの?」

 

「.......鴉天狗を裏切った連中の1人だよ。何のツテかは知らんが、こんな場所にまで逃げてやがった」

 

「今でも覚えているぞ。挨拶代わりに向こうの戦闘員63人と、幹部2人の首を文字通り引っ提げてキャンプにやって来たのは」

 

「あれ位しないと、信じてくれないだろうからな。だから殺った」

 

無論そんな怪しさ満点の少年を信じる訳なく、最初ムージャ含め、その場にいた戦闘員達は長嶺を始末しようとライフルを向けた。当然の流れではある。だが、長嶺はその位で折れてくれる男ではない。

 

「我々は銃を向けた。だが同志は、凄まじかったぞ。10人は居た戦闘員を前に、素早く懐からマチェートを引き抜き、そのままライフルだけを切断して無理矢理無力化したのだ」

 

「あの頃は今より機動力があったからな」

 

「いやいや雷蔵?普通にサラッと言ってるけど、それ以上だかんね?」

 

「ブレマートンよ。俺だから仕方がない」

 

ブレマートンは苦虫を噛み潰した様な顔で項垂れる。コイツの場合、大体のことは「まあ、長嶺だから」で片付く。中々に異常ではあるが、最早今更である。

 

「どこに行っても同志は同志である様だな。まあそれでだ、我々にはもこんな悪魔の様な少年ならやらかしかねんという事で、基本は軟禁及び監視付きという形で信じたのだ。

だが我々がそれを伝えるや否や、同志はいつの間にか仕入れていた相手勢力の拠点の場所や戦力を教えてきた。しかもその中には、我々が知らない情報もあった。その上、その拠点を1人で落とすと言ったのだ。半信半疑だが、試しにやらせてみたら、小規模とは言え一晩で3つも1人で落としてきたのだ」

 

「テロリストなんざ楽な物よ。統制もクソもないから、1人適当な奴を残虐に殺せば勝手に逃げる」

 

「(愛宕ー。なんかもう、今更だけどさ)」

 

「(雷蔵さんは変わらないんですね。今も昔も)」

 

一応まだランドセル背負って小学校に通う年頃の筈なのだが、その年でテロリストの小規模拠点とは言え、単独で滅ぼしてくる辺り化け物である。とは言え、やはり例によって仕方がないで片付く。特に鈴谷と愛宕は初期からいるだけあって、もう慣れてしまっているらしい。

 

「我々はこの成果を受けて、彼を同志と認めた。そこからの2ヶ月はあっという間だったよ。たった2ヶ月でその勢力を倒し、我々の勢力も一気に成長した。私は英雄として祭り上げられたが、当時を知る者達は同志を「影の英雄」と呼ぶのだよ」

 

「まあ、まさかまたこうやって力を借りるとはな」

 

「なに、我が中東民族独立開放戦線、いや!その大元であるイスラム義勇兵の集いは、同志に大きな借りがある。それを返すためだ」

 

ムージャはそう言って笑う。どうやら長嶺は、どこに行ってもぶっ飛んでいるが、その一方で英雄でもあるらしい。

暫くして車列はベースキャンプに到着し、長嶺とムージャはムージャの部屋へと案内され、彼女達はベースキャプ内の子供達と遊ぶ事になった。

 

「それじゃ、聞こうか。そっちで調べ上げた、URの情報をな」

 

「あぁ。URことUnstoppable Revolution。アフリカに本拠地を持つ、世界最大にして史上最大規模のテロリスト集団だ。彼らの資金源は多岐に渡るが麻薬を筆頭に誘拐、人身売買、賭博、海賊・山賊行為、ダイヤモンドを筆頭とした宝石採掘、石油を筆頭とした各種資源採掘、我々の様な他テロリストへの傭兵業、密輸の他にも、採掘した資源をテロ国家やテロ組織へ提供したりもしている。

だがそれ以上に厄介なのは、彼らはテロ国家以外の国家とも繋がっている事だ。URは世界最悪のテロリストであると同時に、救世主でもあるんだ」

 

「どういう事だ?」

 

「深海棲艦だよ。その辺は、同志の方が詳しいんじゃないか?深海棲艦の出現で、世界はどうなった?」

 

「そりゃまあ.......。最初はバラバラの抵抗をするもボロ負けして、各国共に制海権を喪失。望みを託した国連軍もボロ負けだ。一応、太平洋反抗作戦とか日本海反抗作戦で勝利したし、艦娘も出現した事で日本は持ち直したが、大国は軒並み崩壊だ何だと忙しく.......ッ!?」

 

長嶺は気付いた。それを察したのか、ムージャはニヤリと笑う。深海棲艦の出現で、世界は大きく変わってしまった。かつての超大国は力を失い、パワーバランスは崩壊した。だが超大国以外の小国は、さらに酷い。元々発展が遅れている国が多い南半球であるが、深海棲艦出現の海路遮断は更に打撃を与えた。EU内乱やパワーバランスの崩壊で起きた政治不信、経済危機で隠れがちだが、その影では崩壊した国、滅亡した国は何十ヶ国もある。

だが本当の問題はここからだ。大国の経済危機は、まず無駄のカットから始まる。となれば最初期に切り捨てられるのは、他国への援助だ。その援助先は小国や発展途上国であり、この援助が財源を占めるなんてザラだ。これが打ち切られた上、海路での貿易はできない上に空路と陸路では物理的限界もあって、費用は海運の比ではない位に嵩む。この結果、更に多くの国が滅亡、崩壊し、今もその憂き目にあう国もある。

所がそこに、割安で物資を送る組織があればどうだろうか?それが合法非合法関係なく、国がヤバければ藁にもすがる思いで縋るだろう。例えそれが、世界最大規模かつ史上最大のテロリスト集団であったとしても。

 

「確かに、国がヤバい所で格安で資源を渡す組織は、テロリストでも救世主だろうな」

 

「そうだ。この貿易で資金を得て、人と武器を増やした。国のバックアップで更に様々な場所を占拠し、資源を得る。その資源を売って、金を得てのループだ。これでURは大きくなった。

だがまあ、これは案外すぐに分かるもんだ。問題というか、本当の意味で同志が気にするべきは他にある」

 

「核爆弾でも隠し持ってたか?」

 

「核爆弾級、という意味では間違いないかもしれん。URを作った人間、というか現在のトップ。人呼んで『ファーストキング』と呼ばれる男だ。この男、どうやらCIAの工作員らしい」

 

「おいおいマジか.......」

 

ここまでの話で、薄々とCIAの目的も見えなくはない。だが、だとしたらかなり派手に立ち回った物である。バレれば大炎上どころの騒ぎではない。というか何より、あのハーリングがやる手段とは思えない。

 

「URとはつまり、CIAの作り出した偶像だ。アメリカは地位を失った。これを良しとしない権力者が、URという明確な敵を偶像として作り上げた。事実、アフリカへの派遣部隊は戦時の中東を除き、通常の駐屯兵力とは雲泥の差だ。恐らく、軍産複合体のマッチポンプだろう。

だがどうやら、これはCIA長官のウォットシャー・ブラスデンとその一派が勝手にやっているらしい。ハーリング大統領は知らないんだろう」

 

「なぁ。なんでそのCIAの裏話まで知っている?幾ら何でも、海の果てまで分かることか?」

 

「簡単だ。私もあちらへのチャンネルは持ち合わせているというだけだ。それに今のURは、アフリカの敵対勢力は殆ど取り込んでしまった。その中に、俺の知り合いが紛れ込んでいるんだよ」

 

こちらとしてもCIAの名前が出ている以上、対策を立てる必要がある。それに何より、これまでは確証が持てていない為に誰にも伝えていなかったが、ブラスデンはシリウス戦闘団との関わりもハーリングにより示唆されている。

どうやらURとの抗争は、こちらとしても予想外の出来事が起こるかもしれない。だがブラスデンの影がある以上、何かシリウス戦闘団について分かる可能性もある。その為にも、URは滅ぼす必要がありそうだ。

 

「ムージャ、ありがとう。助かる」

 

「助かりついでに、コイツも渡しておこう」

 

ムージャは長嶺にUSBメモリを渡してくる。曰く、URの兵力や装備、そして世界中にある拠点の一部が記載されているそうだ。裏取りはするが、それでもかなり有用な情報である。

 

「同志よ。君は、また戦争を起こすのか?」

 

「あぁ。これまでは猫被って首輪を付けられていたが、今やその首輪もなければ猫被る必要もない。俺達がやるべき事、近道だろうが獣道だろうが通っていける。

俺達は戦争が手っ取り早いと、少なくとも現状では判断している。まあ、何か見返りは用意するさ」

 

「期待していよう。それにしても、猫をかぶっていた割には暴れていたようだが?」

 

それを言われると、こっちとしてはちょっと言い返せない。そんなお互い何処か懐かしさを感じるやり取りをしていると、外から爆発音が聞こえてきた。

 

「敵襲か!!」

 

「同志よ待っていろ!状況を確認してくる!!」

 

「偉大なるムージャ!!敵襲です!!!!」

 

ムージャが出る前に、若い部下の1人が血相を変えてやって来た。その顔から見るに、どうやらかなり本格的な襲撃らしい。

 

「数は!?」

 

「不明!しかし奥深くまで侵入されています!既に監視所、倉庫、サブサーバールームを抑えられました!!UAVも確認されましたが、ECMもロックされており妨害できません!!」

 

この拠点は城のような作りになっている。1番外側には監視塔を有する監視所、その次に倉庫区画、その地下にサブサーバールーム、少し離れて中心部に今いる応接室や戦士達の宿舎、そしてその家族なんかが住まう家が集まっている。

だが既に倉庫区画までやられてるとなると、ここに敵が押し寄せてくるのも時間の問題だろう。

 

「すぐに現場に行く!戦士達を集めよ!!!!」

 

「ハッ!!」

 

「同志よ。また共に、戦ってくれるか?」

 

「愚問!俺の友達に手を出した時点で、俺が関わる理由は出来上がっている!!」

 

「では武器を貸そう!準備させる故、好きなのを持っていくがいい!!」

 

2人は玄関口の方へと走る。途中、避難誘導に当たっているオイゲン達とも合流し、そのまま戦闘員達が非常時に集結する場所まで走った。

 

「偉大なる総指導者、ムージャ様にご報告致します!!我ら解放の戦士、揃いまして御座います!!!!」

 

「ご苦労!我が解放の戦士達よ。敵の数、装備、全て不明だが、我らの拠点に攻め入った蛮行、到底許してはおけぬ!!故に、我らは打ち倒さねばならない!!君達の奮闘に、私は期待する所である。

そして此度の闘争、極東からやって来た古き同志も共に戦う。私の友であり、この戦線の基盤を共に作った者だ。紹介しよう。影の英雄、雷蔵だ!!」

 

「おう。よろしく頼むぞ」

 

戦闘員達は余りにも若すぎる見た目に、大半の者が狐につままれた様な顔をしている。だがムージャの側近や最古参組の戦闘員達は、跪き長嶺を崇めた。本来この行為は、ムージャに対してしか行われない。それをしたというだけで、他の戦闘員達も長嶺がムージャと同等の存在であると理解できた。

 

「お前達も、もうそれ外せ。今回はお前達も戦闘に参加してもらう」

 

「え、いいの?」

 

「あぁ。コイツらはムスリム以前に戦士だ。何もコイツらの目の前で豚肉を食べようって訳じゃない。肌を見せる程度で、ギャーギャー言う連中じゃねぇよ」

 

長嶺の言葉に訝しみながらも、彼女達はニカーブを脱いだ。一応ここは治安が良いとは言えない為、念には念を入れて艤装を装備できる様に、下にはいつもの服を着てもらっていたのだ。

個性豊かすぎる服装に、戦士達も何ならムージャも混乱しているが、この際そんなことはどうでもいい。今は敵を殲滅する事が最優先だ。

 

「これより作戦を伝える。インプラカブルと鈴谷は艦載機を発艦させ、敵を殲滅。取り敢えず目に付く敵は片っ端から倒していい。愛宕、ザラ、ポーラはここから支援砲撃。オイゲンとセントルイスは俺と一緒に来い!」

 

長嶺は武器ケースからデザートイーグル二挺とPKM二挺、それからRPG7を担ぐ。これにロープをくくり付けたマチェット4本と普通のマチェット2本を持ち出す。

 

「ムージャ!車借りるぞ!!」

 

「好きなのを持っていくが良い!!」

 

「行くぞ!!!!」

 

長嶺はピックアップトラックの運転席に乗り込み、オイゲンとセントルイスは後ろの荷台に飛び乗る。乗ったのを確認するや否や、長嶺はアクセルベタ踏みで一気に駆け抜けていく。

 

「戦士達よ!同志に続け!!!!」

 

ムージャの号令で、戦闘員達も生き残った車やバイクに分乗し、長嶺の後を追いかける。鈴谷とインプラカブルはそれを見送ると、艤装を展開して航空隊を上げる。

 

「攻撃隊発艦! ……ひひっ、てかいいね、いいじゃーん!」

 

「指揮官の名において、立ちはだかる者に破滅を授けん」

 

鈴谷にもインプラカブルにもワイヴァーンと試作型天雷(特別計画艦仕様)が装備されており、鈴谷の場合は震電改、インプラカブルは紫電改四がそれぞれ搭載されている。いずれもレシプロ機かつ第二次世界大戦時の機体であるとはいえ、機関砲と爆弾の雨は碌な対空兵装を持たないテロリストからしてみれば、かなり厄介な相手となる。

しかもそれを操るのは、つい最近まで深海棲艦と激闘を繰り広げながら1隻の撃沈艦を出さなかった、最強の精鋭艦隊たる江ノ島艦隊の機体。そもそもの練度もかなりの物がある。

 

「なんだアレは!?」

 

「プロペラの戦闘機!?ありゃ、確か零戦とか言う日本の大昔の戦闘機だぞ!?」

 

「なんでそんなのがいるんだよ!!!!!」

 

無論、テロリストが零戦と呼ぶのは紫電改四である。全く違う見た目ではあるが、まあ知らなければ見分けもつかないだろう。まして日本とは縁遠い、アフガンの砂漠地帯のど真ん中だ。仕方ない。

下でワタワタしている内に航空隊はテロリストの上空に差し掛かり、車両には爆弾を。歩兵には機銃掃射を加えて、そのまま殲滅してみせた。どうやら1箇所に全戦力を投入していたらしく、この攻撃で全て終わってしまい、長嶺達が到着した頃には死体と残骸の山だったという。

 

「なぁ同志よ。これ、やりすぎなんじゃないのか?」

 

「.......よくよく考えてみりゃ、たかだかテロリストの一勢力に空母2隻の全力攻撃はやりすぎか?でも、もうちょい強いだろ普通」

 

「いやいや。ベトナム戦争でも、もうちょっと品があるぞ」

 

まるでなろう系の「また何かやっちゃいました?」的な顔をしている長嶺に、ムージャは頭を抱えた。ムージャとしては犠牲を最小限にできた点は喜ばしいとはいえ、色々複雑ではある。

 

「同志よ。こうなってしまった以上、色々面倒になるかもしれん。情報も渡した事だ、早いとこ立ち去った方がいいだろう。恐らく、暫くすれば政府軍なり治安維持部隊が押し掛けてくる。なにより同志は逃げないと不味いだろう?」

 

「それもそうだなぁ。じゃあ、早いが帰るわ」

 

「車を用意しよう。達者でな」

 

長嶺とオイゲン達は尻尾を巻いて逃げる様に、さっさと拠点を後にし、そのまま夜にはカーブル国際空港に到着。迎えのプライベートジェットに飛び乗って、セカンド・エノへと帰還した。

余談だが、例の襲撃者達は解放戦線の敵対派閥であり、最初に車列を襲撃した者達と同じ組織だったらしい。

 

 

 

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