最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第九十三話ペリコール強盗

世界標準時00:00を合図に、一斉強盗が行われたUR傘下の各カジノ。各地で霞桜の隊員が大暴れしている中、アラビア海に浮かぶペリコール島にも9つの影が迫っていた。長嶺と大隊長のみで構成された、特別チームである。

この特別チームの目的は、URの富が集まる輸送拠点兼大金庫であるペリコール島から根こそぎ奪う事である。金及び金目の物は勿論、武器、情報、家具に至るまで。「取り敢えず目に付いた物で、気に入った物は片っ端から奪え」が合言葉とすら言える。

 

(みなさん、上上)

 

マーリンがハンドサインで上を見るように伝えて来る。上を見上げると、イルカの群れが真上を悠々と泳いでいた。とても綺麗で、心がホッコリする。

 

(イルカね!)

 

(優雅ですねぇ。海をあんな風に泳ぐのは、さぞ気持ちいいでしょう)

 

真上を通り過ぎていくイルカを尻目に、7人はペリコール島を目指す。今は優雅なナイトスキューバを楽しんでいる訳だが、当然、背中や腰にはスキューバダイビングには絶対不必要なアレコレが収まっている。バーナー、ナイフ、C4、ライフルetc。かなり物騒な代物ばかりだ。

 

(どうやら到着の様だな。レリックの叔父貴、頼むぜ)

 

(任せて。焼き切る)

 

レリックは素早く水道にハマっている、鉄格子へと泳ぎバックから水陸両用バーナーを取り出す。設定を水中モードに切り替え、そのまま鉄格子を溶断。流石に陸よりは遅いが、それでも水中にしては驚異的なスピードで鉄格子を溶断していった。

 

(いいよ)

 

(犬神!先行しろ)

 

(任せて主様。じゃあ、行くよ!)

 

犬神を先頭に水道を遡り、目標の発電施設を目指す。途中幾つかに水道が分岐しているが、マップは今泳いでいる水道はもちろんの事、上にある構造物に至るまで全部頭に入っている。問題はない。

7人と1匹は水道を突き進み、やがて巨大なプールのような場所へと出る。とは言えプールの中には、巨大な金属の塊も沈んでいる。この金属の塊は全て発電機だ。つまりここは、巨大な冷却水プールという事になる。

 

(周囲クリア。上がっていいよ)

 

犬神の報告を、そのままハンドサインで6人に伝える。周囲に人が居ないとしても、監視カメラは存在する。まずはカメラの死角へと浮上し、カメラをどうにかしなくてはならない。

 

「ここなら大丈夫だな」

 

「にしても、こんな発電機同士の隙間なんて、さも「潜入してください」って言ってる様な物だぜ?なのにカメラ置かねぇとは。元ヤクザのベア的には、その辺どうよ?」

 

「兄貴の言う通り、テロリストの考える事はわからねーよ」

 

「ここから先、カメラの射角。何処から登ろうとバレる」

 

「そういう事よ。別にここに潜入されても、その先に潜入されなければいいの」

 

恐らくはカルファンの言う通りなのだろう。ここから先に入られなければ良いのだから、わざわざカメラを置く必要もない。だがそれは、普通の泥棒ならの話だ。

 

「そこで私とマーリンの出番ですよ。マーリン、お願いします」

 

「仰せの通りに、副長殿」

 

今回、マーリン含め全員が新たな装備を持ってきている。まずは各々の戦闘スタイルに合わせた強化外骨格Mk2だ。まず腕部のグラップリングフック。コイツが多機能化している。例えば…

 

パシュッ!

 

「命中」

 

「接続、確認。ハッキングを開始します」

 

これまでのグラップリングフックは、単純に立体機動装置の様にか使えなかった。一応、レリックはJUST CAUSE4に出て来たリフト、リトラクター、ブースターの機能が使えるにしてくれてはいたが、どうやら欠陥があったようで今は機能がオミットされている。

だが今回からはこれが復活し、更にワイヤー自体を通信ケーブルとして使える様にもしたのだ。ワイヤーをコンソールに突き刺せば、自動的にそのシステムへ介入ができる。そのまま自動的にウイルスを流すもよし、別の隊員がハッキングするもよしだ。今回の場合なら、マーリンのグラップリングフックを介して、グリムがハッキングを行っている。

 

「システム侵入開始。侵入デーモン、オートアクティブ。システムへのバックドアを解析しつつ、並行してバックドアの作成を開始」

 

グリムは左腕のケーブルをマーリンの強化外骨格に接続させつつ、同じく左腕に装備されたキーボードを叩く。グリムは知っての通りハッカーだ。そこでハッキングを視野に入れており、通常の強化外骨格にはない左腕にキーボードと接続用のケーブル、ハッキング用のツールやウイルス、それから単純にデータを突っ込んでおくためのメモリが身体中に装備されており、身に付けられるハッキングマシーンと化している。

 

「監視カメラのシステムをジャックしました。角度を変え時間稼ぎつつ、ダミー映像への切り替えを行います」

 

「ナイスだグリム。そんじゃ、泥棒開始と行こうぜ」

 

長嶺を戦闘に、素早くプールから上がり装備を整える。バルクのハウンドの様な大型の専用兵装は上空監視中の八咫烏に積み込んである為、今この場には持っていないが上に出れば下ろしてもらう手筈になっている。

今は全員、新開発のPDWナイトメアにサイレンサーなんかを装備した物とナイフ位しか持っていない。唯一、装備が嵩張らないベアキブルとカルファンは其々の専用兵装を持ってきているが。

 

「作戦通りだ。エレベーターを目指すぞ」

 

「総隊長殿、お待ちを。発電機のコントロールシステムに、ちょっとだけ細工してもよろしいですか?」

 

「あぁ。どうせすぐ終わるだろ?頼むわ」

 

「お任せを」

 

グリムは発電設備のコントロールルームに入り、適当なパソコンを立ち上げる。案の定パスワードを要求されるが、USBソケットに左腕のコードを差し込めば、勝手に全て解除してくれる。

 

「遠隔コントロールシステム、インストール開始」

 

遠隔で任意に発電装置をダウンロードしつつ、新たにとあるシステムを組み込んでいく。この手の発電装置に組み込む事が多い、オーバードライブシステムと呼ばれる物だ。簡単に言えばこのシステムを作動させると、リミッターを全て解除し装置の限界域を超えた運用ができる。これを使えば最後、オーバーヒートなり負荷限界なりを迎えて、その内に壊れる。最悪は爆発する。

 

「ありがとうございます。これで電力をコントロールできます。一時的にブレーカーを落とす事も、停電させる事もできますよ」

 

「にしても、今からサブコントロールルームを抑えるってのに、そんな周りくどいのが必要なのか?」

 

「確かに、周りくどいのは周りくどいでしょう。そこはベアキブルの言う通りですよ。しかしサブコントロールルームやその大元のシステムに、ここの制御が含まれていない可能性もあります。発電機は生命線でもありますから、物理的にスタンドアローン化している可能性が高い。となればここにも遠隔操作できるシステムを組み込んでおいた方が、何かと役立つでしょう」

 

古今東西、コンピューターやシステムという概念が生まれて以来、これらの最強の防犯対策はアナログにするか、ネット回線や他システムと接続しない物理的なスタンドアローンを作る事だ。短略的ではあるが、こんな風に実際に潜入しなければ攻撃ができないというのは、かなり効果的ではある。何もかもそうは行かないが、こういう生命線や切り札には使いやすい防犯手段でもある。

 

「行くぞ。サブコントロールルームを抑える」

 

エレベーターで上に上がり、ここのサブコントロールルームへと向かう。このペリコール島、単なる南の島という訳ではない。URという国際的に見ても歴史的に見ても最大級のテロリスト集団が、金庫として使っている島である以上、その防衛システムはかなりの物だ。

対空砲、CIWS、RAM、速射砲まで配備している。これに加えて常時、警備員としてURの構成員かPMCの兵士が完全武装で24時間365日警戒している。文字通りの要塞だ。

 

「構えろ」

 

エレベーターが開いたのと同時に、7人と1匹は隊列を組んで廊下を進む。犬神がその嗅覚で敵の位置を探り、長嶺も気配で敵の位置を感じとる。その上で6人の大隊長達が気を配れば、まず間違いなく敵にすぐ気付ける。万が一、発見が遅れてもこちらが素早く反撃できるだろう。

 

(この先の角、いるよ。2人だ。間隔は離れてないよ。距離、5m)

 

(バルク、ベアキブル。血が出ない殺り方で頼む)

 

((ラジャー))

 

ハンドサインで指示を飛ばす、2人は廊下の角に隠れる。歩哨2人が角を曲がった瞬間、素早く口を覆ってコチラに引き摺り込み殺す。バルクはその怪力で首を270°無理矢理回転させて、頸椎とかを纏めて断裂させ、ベアキブルは喉を潰した上で絞殺する。血も出ていない上、排除の時間が10秒にも満たない、洗練された素早い仕事だった。

 

「(相変わらず、バルちゃんの怪力は怖いわね.......)」

 

「(えぇ。首がこんな風にひん曲がるとは.......)」

 

「(バルクいつもの事。今更)」

 

「(それもそうですね)」

 

馬鹿話を他所に、一団はサブコントロールルームに突入した。無論、中にはオペレーターとなるテロリスト達がいる訳だが、装備しているナイトメアで背後から排除していく。

 

「コイツら、もうちょい危機感持ってろよ。幾ら何でも、気付くだろ普通!」

 

「まあまあ、ベアキブル君。簡単に死んでくれるなら、こちらとしても良いじゃないか。弾の節約になるよ」

 

「まあ、そうだろうがよ。でも、なんかこう、物足りねぇじゃん」

 

「心配するな。これから嫌ってほど、暴れまくるつもりなんだから。そのヤル気も、そこで存分に発揮しろ」

 

サブコントロールルームを抑えた今、コソコソするのはお終いだ。ここからはこちらが得意とする戦法を用いて、堂々と真正面から殲滅する手筈になっている。

 

「グリム、どうだ?」

 

「もう少しです。これにコントロール権限を移して、メインコントロールルームからのコントロール及び全てのセキュリティクリアランスを無効化してあります。今や、ここのセキュリティを動かせるのは、私のみという事になりますね」

 

「そいつはいい。ならまずは対空システムをオフラインに」

 

「もうやってあります。ついでに全ての防衛システムに、IFFに反応する者を敵、反応しない者を味方にする様にセットしました。これでシステムを作動させれば、勝手に殲滅してくれますよ。

まあ尤も、そんな事をする前に我々が殲滅しているでしょうがね。それでも保険くらいにはなるでしょう」

 

グリムの言う通り、多分この後の展開的に防衛システムを使うことはない。こちらが全て殲滅するだろう。というか、今回の楽しみはそこでもある。その楽しみを奪われては面白くはない。

 

「グリムのハッキング作業が終わり次第、上へと上がる。精々、戦闘するビジョンを思い浮かべておけ」

 

長嶺の一言に全員が、狂気的な笑みを浮かべる。今回の作戦は強盗であるのと同時に、彼らの新たな相棒達を試すテストの場でもある。早くそれを試したくて、ウズウズしているのだ。

 

「お待たせしました。終わりまたしたよ」

 

「だそうだ野郎共。上に上がろう。そして、戦争を始めよう」

 

エレベーターで上へと上がり、最北に位置する飛行場へと出る。それと同時に、八咫烏からベアキブルとカルファン以外の専用装備が投下され、素早く装備していく。因みにベアキブルとカルファンは、装備がそこまで大きくない為、既に装備しているのだ。

 

「配置任せる。戦争を始めるぞ」

 

長嶺も幻月と閻魔、阿修羅HGと朧影SNGを二挺ずつ投下して貰い装備する。これさえあれば、ある程度の敵なら対応できる。

 

「そんじゃ、いっちょドカンと行こう!!!!」

 

バルクがこれまでの三連バルカン砲に変わる新兵装、ハウンド牙を近くの管制塔に向ける。ハウンドの特徴であった三連装7.62mmバルカン砲は引き継ぎつつも、銃の上部に40mm二連装自動擲弾銃(デュアルマシングレネードランチャー)を装備している。

 

「はいせーの、ドカーン!!!!!!」

 

管制塔の管制室目掛けて、マシングレネードランチャーを叩き込む。グレネードランチャー故に弾道に癖はあるが、慣れてしまえばそう難しい事でもない。放たれた擲弾は正確に管制室を直撃し、爆発を起こす。

 

「な、なんだぁ!?」

 

「管制塔が爆発したぞ!!」

 

「消火装備もってこい!!!!」

 

テロリスト達が一斉に動き出す。それをスコープ越しに、ニヤリと笑いながら見る影1人。

 

「悪くない反応ですね。ですが、侵入者の可能性を考えない辺りはやはりテロリストはテロリストか。だが感謝しますよ。態々私の的になってくれるなんて。お礼に死をプレゼントしよう」

 

マーリンはこれまでバーゲストという、レバーアクション式スナイパーライフルを使っていた。だがそれはマークスマンとしても戦えるようにという理由だったのだが、今ではグリムのプライマスがその役目を務める様になった。

そこでマーリンは本来の、超長距離からの狙撃を行うスナイパーとしての装備に切り替えた。マーリンの狙撃センス、生体情報にレリックの技術力、グリムの新型狙撃システムを融合させて生まれたのがケルベイザーである。今回は.338ラプア・マグナムを使用した。

 

『偉そうな者を優先的に排除します。そちらは、痛そうな者を』

 

「了解しました」

 

狙撃の鉄則は、指揮官及び高脅威目標から排除していく事だ。指揮官を叩けば混乱するし、歩兵部隊ならマシンガンナーやロケットランチャー持ちは倒れるだけで戦術の幅が狭まる。それがマーリンの言う『偉そうな者』と『痛そうな者』だ。

因みに痛そうな者と言うのは「当たったら」痛そうな者なので、決して厨二病罹患者とかではない。

 

「プライマス、行きますよ」

 

グリムはプライマスにレールを取り付け、マークスマンライフルにしてから攻撃を開始する。マーリンの指示通り、当たったら痛そうな者を最優先で排除していく。

残った敵は素早く遮蔽物に滑り込むが、生憎とマーリンからは丸見えだ。そこを叩き、マーリンが見えない者はバルクが火力で押し切る。何せ本来なら、ヘリコプターとかに装備するM134ミニガンと同等の性能を誇るガトリング砲を、3本に纏めているのだ。大抵の遮蔽物は弾幕でズタズタに引き裂かれてしまう。

 

「こちらゴールドフォックス。どうやら増援のトラックも来たらしい。そっちで排除するか?」

 

『私としては、そちらにお任せしたいですね。私達は飛行場の敵とのお遊戯が終わってませんし、双子は射程的に難しいでしょう?』

 

「そうだな。なら、コレは俺が貰う」

 

長嶺は飛行場に続く唯一の道のど真ん中に立ちはだかり、八咫烏と犬神と念話で軽く作戦会議を行う。作戦会議とは言え、その実は誰がどう狩るかだ。

 

(んで、どうする?)

 

(であれば我が最後尾のトラックを担当しよう。犬神は先頭、我が主は2両目でどうだろう?)

 

(その心は?)

 

(我が主の銃で1両目を倒されると、残骸でダブルキルしかねない。それはズルイからな)

 

(あぁ。1両目を破壊して、残骸に2両目と3両目突っ込ませようと思ってた)

 

長い事チームやってるだけあって、その辺はしっかり分かっているらしい。とは言えこれで配分は決まった。すぐに茂みに隠れていた犬神が、先頭を走るトラック目掛けて飛び出し襲い掛かる。

 

「ガウッ!!!!」

 

トラックの荷台に掛かってるホロを突き破り、中にいるテロリストを自慢の牙と爪で切り裂いていく。というか何なら、普通に食べ始めている始末だ。お陰で荷台は血塗れの地獄絵図である。

 

「氷柱の術」

 

運転手と助手席の2人は、背後から氷柱で貫いて殺す。心臓を正確に貫き、絶命した2人。運転手も死んだ以上、トラックは制御を失う。トラックはそのまま茂みにある木へ盛大にぶつかり、フロント部分がしっかり潰れた。

 

「装甲がありゃ楽しめるんだが、このトラックじゃなぁ」

 

長嶺はそうボヤキながら、阿修羅を構える。装甲がついているなら少しは楽しめるが、見るからに軍用ではあるが普通のソフトスキンターゲット。23mm弾を放つ超大口径拳銃たる阿修羅に掛かれば、エンジンブロックに1発叩き込むだけで終わる。

 

ズドォン

 

案の定、エンジンブロックに1発叩き込めば大爆発を起こしてしまった。楽しくない。長嶺は深いため息を付くと、近くの岩に腰掛けて八咫烏の仕事を見学させて貰う。

 

「流石は我が主。200m先のトラックに、大口径とは言え拳銃弾1発で仕留めるとは。我も負けてはおれぬな」

 

八咫烏は巨大化し、本来の数十mはある巨体に戻る。こんなのすぐバレそうだが、烏故に身体が真っ黒なので保護色になっている。八咫烏は足でトラックを掴むと、そのまま持ち上げながら高度をあげていく。そしてトラックを、海のど真ん中に落とした。

 

「確か、ダスト・トゥ・ダスト、とでも言うのだったな。ゴミのような貴様らは、生命の母たる海へと還るが良い」

 

「テメェは何処のアンデルセン神父だよ。というか、一応お前の敵やぞアンデルセンは」

 

『総隊長殿、飛行場は制圧しました。トラックも確保済みです。本丸へ攻め込みますか?』

 

「あぁ。さっさと本丸落として、使える物は全部掻っ払おう。あっ、ここのコンテナとかも運んでおけよ?」

 

『了解』

 

ここは空港。倉庫には色々と、様々な物資が眠っている。強化外骨格のヘルメットに搭載されているX線で見てみると、多種多様な物が眠っている。ざっと見た限りでも武器・弾薬、食料、麻薬、現金、貴金属類、臓器、希少動物、色々だ。

 

「す、すごい量ね」

 

「姉貴、こっち来いよ。ライオンがいるぜ」

 

「はぁ?」

 

カルファンは宝石を適当に漁っていたが、ベアキブルに連れられその猛獣がいる檻へと向かう。檻の中には、立派な雄ライオンが生きている状態で普通に居た。めっちゃ威嚇してきているが。

 

「これ、どうするの?」

 

「どうしよう。飼う?」

 

「食われるわよ」

 

「あー、親父?ライオン、見つけたんですけど.......」

 

『獅子!?えっ、そっち行くわ』

 

長嶺も流石にライオンは予想外すぎて、そのまま倉庫へと戻ってきた。長嶺も檻の中でめっちゃ威嚇してきているライオンを見て、軽く呆然としたがすぐに犬神を呼んで対処して貰う。

 

「バウッ!わんわんわん!!」

 

「ガゥッ?ガウガウ!」

 

「えっ、これは何やってんすか?」

 

「犬神って、妖怪だけど犬じゃん?動物とこんな具合にコミュニケーション取れるんだよ」

 

「マジかよ.......」

 

「ジャングル大帝にでもなるつもり?」

 

因みに八咫烏は鳥類となら意思疎通できる。この動物の意思疎通から情報を得た事も、何度かある位だ。とは言え基本的には気が立っている所を落ち着いてもらうとか、後は少し「こういう動いて」という簡単な命令しかできない。

 

「どうだ?」

 

「故郷に帰りたいって」

 

「まあ、そりゃそうだわな。多分サバンナだとは思うが、一体どこから連れて来られたんだか。取り敢えず、俺達に付いてきて貰うとしよう。他の動物も檻から解放して、こっちに付かせられるか?」

 

「任せて!」

 

犬神が交渉して回っている間、他の物資は根こそぎグラップリングフックのバルーン機能で空へと飛ばす。後から安定の戦域殲滅VTOL輸送機黒鮫弍型が全部纏めて回収する。フルトン回収の様な物だと思って貰いたい。

 

「交渉の方はどうだ?」

 

「猛獣達、みんな承諾してくれたよ。雄ライオン4頭、雌ライオン28頭、虎8頭、グリズリー7頭。一緒に来てくれるって」

 

「なら残りはフルトンだ。しっかりロックした上で、丁重に空へ上げてやれ」

 

猛獣のみ仲間にし、残りはそのままフルトンで一旦セカンド・エノに連れて行く。可愛い愛玩動物になりそうなのは保護してもいいし、残りは後から自然に返せばいい。幸い、霞桜の隊員の中には元はアフリカのサバンナで生活していた連中もいる。世話の方も問題ないだろう。

 

「仲間も増えた事だ。おう、犬神!ソイツらにペイバックタイム、やり返しの時間だと教えてやれ」

 

「ワウッ!わうー、ワウワウ!ワウゥ!!」

 

流石に犬語は分からないが、復讐の時が来たとしっかり伝わったのだろう。猛獣達は雄叫びを上げ、まるでサバンナのど真ん中にでもいる様な気分になる。

 

「主様!グリズリー達が、背中に乗れって!」

 

「いいのか?」

 

「ガウ!!」

 

言葉は分からずとも、普通に「いいよ!」と言ってるのが分かる。バルク以外はグリズリーにまたがり、バルクはレリックが急拵えで改造したカスタムトラックに乗り込んで、本丸である邸宅兼地下金庫へと走る。

 

「良いわよ熊ちゃん!!突っ走りなさい!!!!」

 

「おほほほほっほぉ!!!こりゃ楽しい!!!!!さあ、走りなさい!!!!!!」

 

「おらぁカチコミじゃぁ!!!!野郎共続けぇ!!!!!!」

 

「マーリン、テンション壊れてますよ!!でもこれは壊れても仕方がないです!!!!!」

 

「これ、楽しい!」

 

「いいぞアラスカの王よ、その威厳をもっと見せてくれ」

 

「楽しそうだなチクショー!!!!俺もそっち乗り移りてぇよー!!!!!!!」

 

柄にもなく大隊長達は、まるで子供のようにはしゃいでいる。特にマーリンは「おほほほほっほぉ」という、聞いた事がない様な笑い声を上げている。いつものクールで知的で紳士な姿はない。だが、そうなるのも仕方がないだろう。馬とは違う、どっしりとした走りは魅了されて当然だ。

 

「犬神!止めさせろ!!」

 

「ワウゥゥゥゥゥ!!!!!!」

 

犬神の一声で一段は急停止し、門の前で止まった。かなり重厚そうな、鉄製の巨大な門である。突入するには、これを破壊する必要があるのだ。

 

「バルク、行け」

 

「おっしゃぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

この門は二重構造になっており、外門と中門で区切られている。これを突き破るべく、トラックに鉄骨を溶接し、荷台には爆薬を大量に積載してきたのだ。

門にぶつかる寸前で飛び降り、トラックはそのまま門扉目掛けて爆走。外門を突き破った瞬間に爆薬を起爆させ、門ごと粉々に吹き飛ばす。

 

「突っ込め!!!!」

 

猛獣達が我先にと飛び込み、中にいるテロリスト達をズタズタに引き裂いていく。その様相は、文字通り地獄絵図だ。

 

「グリム。オーバードライブ発動だ」

 

「了解!」

 

ここでグリムはオーバードライブを発動させる。先述の通りリミッターを外して過負荷状態で動作させるシステムだが、これが発電機だった場合その先に繋がる全ても同様に過負荷状態になる。どんな装置にも最低限必要な電圧と電力があり、逆に上限も存在する。オーバードライブを使えば最後、大抵の物は回路がショートして使い物にならなくなるのだ。

 

「電気、消えました。地下金庫の区画は別の自家発電が動かしてますから、問題ありませんよ」

 

「そんじゃ、俺達も突っ込みますかねぇ。という訳だ野郎共、攻撃を開始しやがれ!」

 

真っ先に飛び込んだのはカルファンとベアキブル。猛獣達が暴れ回って恐慌状態のテロリスト達の懐に入り込み、ゼロレンジから攻撃を仕掛けていく。

 

「腑何色だ!?」

 

「グハッ!」

 

「死んじゃえ♡」

 

接近戦を仕掛けられれば距離を取る、というのはありふれた戦法だ。だが、それに対応しない双子ではない。彼らの腕には、シャドウデスと呼ばれる新兵器が装備されている。腕にくっついた銃なのだが、任務に応じてサブマシンガン、ショットガン、グレネードランチャーに換装できる代物だ。今回はサブマシンガンを採用しているが、その発射レートはかなりの物で火力拘束が可能となっている。

 

「みんな暴れてる。俺もそろそろ暴れる。フリーダムメカハンド、行こう」

 

残るレリックもしっかり新兵器を持ってきている。12対24本マニュピレータを装備し、全腕使えば榴弾砲を1人で動かせる化け物兵器、フリーダムメカハンドである。今回はチェーンソーや軽機関銃を持ってきているが、それでもかなりの脅威だ。単純な火力で言えば、バルクと同等かそれ以上である。

 

「ギャァっ!!!!!!」

 

「コイツら何なんだ。何なんだよ!!!!」

 

「お、俺は逃げるぞ!!こんなの自殺だ!!!!」

 

テロリスト達は逃げようとするが、生憎とここは南の島。右に行こうが左に行こうが、前に進もうが後ろに後退ろうが、所詮行き着く先はアラビア海だ。そもそもそれを逃がしてくれる訳がない。猛獣達はその嗅覚と本能で、大隊長達は経験と論理に裏打ちされた勘で獲物であるテロリスト達を執拗に追いかけ回す。程なくして、ペリコール島からテロリストは完全に消え去った。

 

「掃除完了だ。犬神!取り敢えず猛獣を1箇所に集めて、黒鮫に乗せろ。終わったらそのまま帰還していい。

マーリン!回収機を近くに降ろさせてくれ。ここからは強盗の時間だ」

 

「了解です、総隊長。犬神、共に参りましょう」

 

「うん!ガウゥゥゥ!!!!」

 

犬神の指示で猛獣達は屋敷を去り、残った人間全員で略奪行為を始める。まずは地下金庫にある物、その全てを適当な部屋にあったダンボールの中に詰め込んでいく。勿論、地下金庫への入り口は固く閉ざされているが…

 

「指紋認証、網膜認証、パスワードですか。全部書き換えます」

 

グリムに掛かればものの数分で、現在のパスに上書きして新たなパスを登録できる。指紋、網膜、パスワードは全てグリムの物へと書き換えて行き、堂々と正面から突破して見せた。

 

「相変わらず恐ろしいな。お前の前じゃ、セキュリティも何もあったもんじゃない」

 

「総隊長殿も、パソコンにアレな写真とか映像は保存しないほうが良いですよ。例えば、そう、嫁との情事を映したハメ撮りとか」

 

「えっ、何。見たの?」

 

「「「「「.......」」」」」

 

瞬間、大隊長達の間に何とも言えない重い空気が流れ始める。グリムは冗談で言ったのだが、今の長嶺の反応、ガチなヤツである。まさかの地雷に全員どう反応した物かと、頭を高速回転させていた。

 

「冗談に決まってんだろ。何、本気にしたのか?」

 

「そ、そうよね!驚かさないでよボスー!!」

 

「そ、そうですぜ親父!全く、ギャグのセンスは無しっすか?」

 

「総長も人が悪いんだから。ガハハハハ」

 

「総隊長、ギャグ下手。寒い。笑えない」

 

「揶揄わんでくださいよ。心臓止まるかと思いましたよ」

 

「いやー、すまんすまん」

 

なんて言って笑っているが、実際の所はその手のデータ、あったりする。と言ってもそういうプレイを望まれて、渋々やっているだかなのだが。

とは言え下手なAVよりも、かなりバリエーション豊かなシチュと衣装と美女達が収まっている。取り敢えず帰ったら、データを何処か安全なスタンドアローン空間に移して隠さないとならないだろう。

 

「ここが地下金庫ですね。開けますよ」

 

地下金庫には大量の宝石と現金が納められていた。更には絵画や彫刻などの美術品、歴史的価値がありそうな骨董品、最高級の酒類まで色々あった。これらを素早く梱包し、そのまま黒鮫弍型に積み込んでいく。

そんな中、他に金目の物がないか探していたレリックが、別の場所で物凄い物を見つけて来た。

 

「なんじゃこりゃ!!!!!!」

 

「総隊長!これ早く持って帰るべき!!艦娘とKAN-SENに渡してもお釣り来る!!!!!」

 

地下金庫と同等の深さの場所にある、だだっ広い空間。そこには大量の、それこそ1000台近い様々なメーカーの車が所狭しと並んでいたのだ。見た限り三菱、スバル、ホンダ、ニッサン、マツダ、フォード、シボレー、ランボルギーニ、フェラーリ、ベンツ、BMW、ワーゲンと多分世界にある主要なメーカーの物は大体揃ってるのではなかろうかと思える程だった。

車種も多種多様で大半がスポーツカーとかスーパーカー系とは言え、セダンやSUVなんかもしっかりある。これを改造すれば、霞桜の戦力として有効活用できるだろう。

 

「おう本部!すぐに手空きの人員と黒鮫を動員しろ!!輸送を手伝ってくれ!!!!」

 

「お宝一杯!!改造改造!!!!!!」

 

手早く本部への通信を終わらせると、そのまま2人はどんな改造を施すか談義を始める。やれECUをどうする、ブレーキパッドはどうだ、ギャレットだのプレシジョンだのと、かなりマニアックな会議を行っていた。

その一方で、2人は更にお宝を見つけてしまう。なんとその下に、船舶と航空機までもが眠っていたのだ。ついでに未だ未納入のコンテナなんかもあり、かれこれ2日間はセカンド・エノとペリコール島を往復した。そして全ての搬出作業が終わった時、長嶺はこのペリコール島に最後の役目を与える。

 

「真臓弾頭。その威力を見せてもらうぞ」

 

新たに長嶺が開発した真臓弾頭。長嶺自身の心臓を摘出し、採血した血液を循環させて擬似的な第二の長嶺にした代物だ。実験段階では各種技を使用できたが、今回は神授才最大最強の大技、堕天旭陽失墜焔を試す。成功すれば戦域核兵器クラス以上の爆弾を保有できる訳だが、どうなるかは正直な所分からない。

 

「我が主、準備はできたか?」

 

「あぁ。まあこの分野自体、恐らく俺が初の研究者って事になる。ダメで元々。使えりゃラッキーでいい」

 

八咫烏の背中に飛び乗り、ペリコール島から離れる。そして真臓弾頭に意識を集中させ、堕天旭陽失墜焔の発動をイメージする。弾頭内部の心臓を軸に、血液が循環していくのが分かる。数秒後、ペリコール島は爆炎に包まれた。

 

「どうだ、我が主?」

 

「まあ成功か?とはいえ流石に元ネタクラスには届かないし、当初の戦域核にも満たない。だがそれでも、一先ずは成功だ。今はこれでいい。というか兵器としては、この位の方が使いやすい」

 

「それもそうだな。核兵器を持っていると疑われれば、幾ら我が主とはいえタダでは済まぬだろう」

 

「そういうこと。さっ、帰ろう帰ろう。とっとと帰って、車イジらないと」

 

八咫烏と長嶺はセカンド・エノ目指して空を駆ける。今回の強盗で得た資金の総額は、アメリカの国家予算を遥かに超える金額だった。無論、その中には換金する必要のある美術品等が多分に含まれている以上、実際に使える額は実際よりも下回る。だがそれでも、ワールドディザスター全員が一生遊んで暮らせる額位はあるだろう。

 

 

 

同時刻 アフリカ大陸中央部 Ville Pimordiale(始原の都)

「ファーストキング。ご報告が」

 

「何だ」

 

ファーストキングと呼ばれた、筋骨隆々で身体中傷だらけの中年の男が気怠げに報告者の男の方へ向く。その格好はほとんど素っ裸に近く、大事なところだけを隠す原住民族の様な格好だが、使われている生地はかなり上質な物だ。煌びやかで、見るからに高そうだと分かる。

 

「ハッ。2日前、世界各地の裏カジノ、及び東南アジア等に点在している麻薬の製造、栽培拠点が何者かに同時に襲われました」

 

「何だと?」

 

「それも同時多発的にです。被害は未だ集計中とは言え、カジノは根こそぎ資金を奪われ、製造拠点の方は悉く破壊されています。またペリコール島は、最早地図からも姿を消しました」

 

「誰だ。俺の王国に挑んできた愚か者は?」

 

「詳細は不明ですが、襲撃された施設には『世界災厄が貴様らを殲滅する』とフランス語で書かれています。紙だったり、データだったり、壁や天井に書かれていたりと様々ですが、これは明らかなる宣戦布告でしょう」

 

その言葉を聞いた瞬間、ファーストキングは立ち上がり槍を掴んで地面に打ち付けた。カーンという甲高くとも物凄い轟音が部屋中に轟き、ファーストキングの雄叫びのような声が響く。

 

「我が王国に挑む愚か者には死あるのみ!!!!!!!その愚者達を、徹底的に調べ上げよ!!!!!!!お望み通りの戦争をしてやろうぞ!!!!!!!!!!」

 

「ファーストキングの御意のままに!!」

 

無事に宣戦布告が出来たかは知る由もないのだが、これで宣戦布告にならなければ裏社会に生きる者としてやっていけない。案の定宣戦布告となった訳だが、まだ彼らは同業者だと思っている。敵が文字通りの世界災厄(ワールドディザスター)だった時、どんな反応をするのやら。

何はともあれ、楽しい楽しい戦争開幕である。

 

 

 

 

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