最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第九十五話焔の報復

1時間後 長嶺専用邸宅 会議室

「総隊長殿!あの、私を覚えてますか.......?」

 

「おう。俺の右腕、霞桜の副長!天才ハッカー、グリムだろ?」

 

「よかった。記憶を取り戻したんですね!」

 

「いやー、みんな昨日はマジですまん!というか昨日の記憶、倉庫で盗んできた宝を大和とオイゲンと一緒に見てた所までしか記憶がないんだわ。取り敢えず監視カメラの映像で把握したけど、俺がショタ化した上に当時の記憶までしかなかったって聞いたけど.......。

まあ、そんな事はこの際どうでもいい!大事なのは報復だ。こんなふざけた真似しやがった、クソ野郎にはお灸を据えてやらないと気が済まん!」

 

いつもの様に代表者達が集まっている訳だが、全員が一様に安心したという安堵の表情を浮かべている。この口調に、堂々とした佇まい。何処からどう見ても、明らかにいつもの皆が知る最強無欠の長嶺雷蔵その人である。

 

「それで、どんな作戦かしら?」

 

「作戦も何も、今回は俺単独でやる。何せ相手が繰り出してくるのに、呪いの類があるかもしれないだろ?そんな所にみんな仲良く突っ込んでみろ。どんな悲惨な目に会うかわからない上に、どういう対策を取るべきかも分かったもんじゃない。だったら呪いへの絶対耐性のある俺単独で攻めた方が安全だ」

 

「ちょっとボス。呪いへの絶対耐性って、昨日の惨状見た上で言ってるのかしら?」

 

「言葉が足りなかったな。正確には絶対耐性を有する装備を持っている、だ」

 

「絶対耐性を有する装備?」

 

一瞬全員が「そんな装備あったか?」と首を傾げるが、すぐに全員が気付いた。神授才が関連する長嶺の装備なんて、そんなのアレしかない。

 

「言わなくても分かるだろ?俺が神授才を解放した時に使うあのアーマー。あのアーマーには呪いとか、その手の攻撃には絶対耐性を持っている。あるかは知らないが、この世界滅ぼすような世紀の大呪いでも防ぐ。何せあのアーマーには、神の力が宿ってるからな」

 

「.......総隊長。この際なので聞きますが、この世には呪いとかの類いってあるんですか?」

 

「ある。と言いたいが、科学の発展と共にどんどん消えて殆ど存在しないっていうのが実情だ。大昔には確実に呪い、魔法、神々の奇跡という類いの現象はあったし、それを利用していた。ほら、よく原始人が占いとかやるだろ?あれもこの類だ。

だが文明が進むに連れて、そのやり方はどんどん廃れていった。何せこの類は誰でも彼でも使える訳じゃなくて、才能が無ければ一生訓練しても出来る代物じゃない。一応道具に力を宿せば凡人でも使えるが、そんな真似ができるのは才能がある連中でも一握りだ。その上、術を使うには色々必要なものが多い。自身の生命力や体力、何かしらの供物となる動物や人間、術が大きくなればなるほど必要な代価は鼠算式に増えていく。

その結果、科学に裏打ちされた文明が出来上がり、この手の術を使う事は無くなっていった。その上、この手の技術は異物と認識されて、そのまま淘汰されていった。と、そういう風に俺は習ったぞ」

 

全員ポカーンとしているが、かつてそう習った時の長嶺もまたポカーンとしていたのを覚えている。「何言ってんだコイツ」という感想を抱いたのを、今でも良く覚えている。

 

「まあでもマジな話、俺はこの超常現象系は神授才関連と犬神&八咫烏位しか経験したことがない」

 

「マジですかい?」

 

「マジマジ。今となっちゃ、この手の術云々が使えるのアマゾンの奥地とか、絶海の孤島とか、そういう所の原住民くらいだろうよ。例外としてテレビとかに出てくる超能力者の類いがあるけどな。

あー、そうだ。一応この手の能力の名残として、霊感ってあるだろ?アレがそうらしい。霊感とか第六感、虫の報せとかデジャヴとか、その手の科学的に説明つかないヤツ。あの手のヤツは、なんかその手の能力の名残なんだと」

 

「なんというかその.......」

 

「正直、提督には悪いが訳が分からんな」

 

長門の正直すぎる意見に普通ならツッコミが入りそうだが、今回に限っては全員が頷いている。真面目な話、長嶺自身も神授才とかこんなスピリチュアル系統の話、よく分からない。都市伝説とかロマンとか、そういうネタ的な部分では割と好きな部類ではあるが、神授才が何の能力なのかとか呪いどうこう、魔法云々は訳がわからない。そういうのは自称オカルト研究者とかの、そういう手合いの連中に任せるというスタンスだ。

 

「俺もわかんねーし、別に呪いどうこうどうだっていい。繰り返すが重要なのは、その攻撃が齎す影響が未知数かつ対処法が分からないという点だ。ここにさえ留意すれば問題はない。何か質問は?」

 

「親父、よろしいですか?」

 

「なんだベアキブル?」

 

「俺達は親父の過去を知りました。しかしその神授才っていう、トンデモオカルティックスーパーチート能力がどの程度の物なのか、その辺はよく解っちゃいません。ですのでどうか、その能力を見せてください」

 

考えてみれば神授才を全開でぶん回したのは、あの佐世保鎮守府での一件しかなかった。それ以外で神授才を活用したのは千葉での迎撃戦位の物で、何れも仲間達はその姿をしっかりは見ていない。この間の江ノ島鎮守府脱出の際は、艤装と融合してしまいもう別の代物と化しているのでノーカウント。となるとやはり、一度本気で暴れる姿を見てもらった方が良いかもしれない。

 

「それは構わないんだが、そのトンデモオカルティックスーパーチート能力って、なんか語感いいな」

 

「口に出して言いたくなるよな、トンデモオカルティックスーパーチート能力」

 

「トンデモオカルティックスーパーチート能力。なんか口に出してみると、ますます言いたくなるわねトンデモオカルティックスーパーチート能力」

 

どんどん伝染していく『トンデモオカルティックスーパーチート能力』という単語。だが今はそんな事どうでもいい。間も無くして、すぐに話は元に戻る。

 

「それでご主人様、その敵方の拠点は何処にあるのでしょうか?」

 

「犬神ー」

 

「地図見せて」

 

スクリーンにアフリカ大陸の地図が表示されると、犬神はスクリーンの前まで進み地図をじっと見つめる。するとトンとジャンプし、鼻先で目標の場所を突いた。

 

「ここ」

 

「ミギ・ワ・ギザ・ナ・マシュタニ?」

 

「.......なんて意味でしょう?」

 

「調べてみます。.......出ました。スワヒリ語で『闇と悪魔の都』という意味だそうです」

 

如何にもな名前である。呪いにはお誂え向きというか、呪いとかその手の物がゴロゴロありそうな名前だ。

 

「場所はナミブ砂漠か。火で焼き払おうと爆破しようと、何ら問題はないな。よし。ならここを強襲する」

 

「いつやりますか?」

 

「準備でき次第行く。黒鮫を用意させろ!!」

 

会議室を出て、長嶺は1人格納庫へと向かう。格納庫には既に長嶺専用のカラーリングである、漆黒に金の一本筋、それから青、緑、オレンジ、赤、紫、灰色が一纏めになったラインが入った専用機がアイドリング状態で待機していた。

 

「総隊長!」

 

「準備はどうだ?」

 

「バッチリです!事情は聞きましたが念の為、弾薬もフルで搭載しています。追加兵装には爆弾と巡航ミサイルを主に搭載しました」

 

「よろしい。行ってくる!」

 

長嶺は機体に乗り込み、窓の外を見る。窓の外には各大隊の機体が並べられていた。今回の日本離反に伴い、新たに各大隊にはパーソナルカラーと部隊アイコンが定められた。

本部大隊はメタリックブルー。アイコンはデジタルネットワークを象徴するサイバー網の中に、鷹の目を持つコンピューターチップ。

第一大隊はダークグリーン。アイコンはバーゲスト・オルトゥスとケルベイザーを背景に、狙いを定めるスコープのデザイン。

第二大隊はオレンジ。アイコンは歯車を背景に、スパナとハンマーが交差するデザイン。

第三大隊はレッド。炎の中に突入する十字架を加えた猛牛と、両手にミニガンを持つシルエット。

第四大隊はパープル。双眼鏡を背にした月明かりの下で忍び寄る狐。

第五大隊はグレー。応龍を背景に、ドスとナックルダスターと金属バットがクロスするデザインである。長嶺専用機の六色のラインは、各大隊のパーソナルカラーを採用したものだ。

 

「アイツら、良い趣味してるな」

 

「ねぇ主様。今回は暴れるんだよね?」

 

「そうだ。だが、前みたいに怒りに身を任せるつもりはない。あくまで、そう、今回はデモンストレーション。いつも通りのテンションで行くさ」

 

「我が主よ。どうか主の仲間を、彼女達を悲しませてくれるなよ?」

 

「わかってるよ」

 

流石に何もないとは思うが、大体神授才を使う時は何かしら色々とあった上での使用が多かった。その結果、大体みんなに心配を掛ける末路がセットと言っても良いくらいにはやらかしている。前科がある以上、今回の八咫烏と犬神は言うなればお目付け役の様な物だ。

 

「総長、上げますよ!」

 

「あぁ」

 

戦域殲滅VTOL輸送機『黒鮫弍型』が、各部のエルロンやフラップ等の動作を確認しながら離陸口へと進む。今回は1機のみの出撃なので、エレベーターで上まで上がる。

 

「管制塔、こちらパーガトーリィ。間も無く離陸する」

 

『パーガトーリィ、確認した。離陸口クリア、いつでも良いぞ』

 

「ラジャー。パーガトーリィ、テイクオフ!!」

 

総隊長専用機のコールサインは『煉獄』を意味するパーガトーリィ。パーガトーリィはビルに偽装した離陸口から離陸し、ある程度の高度に達すると水平飛行に切り替え、スクラムジェットエンジンを起動させて一気にミギ・ワ・ギザ・ナ・マシュタニを目指す。

 

「全く。マッハ7.5だって言うのに、この揺れの少なさは呆れるやら驚くやら」

 

「流石に乗り心地が良いとは言えないけどね」

 

黒鮫はマッハ6という驚異的な快速であったが、弍型ともなればその上を行くマッハ7.5を叩き出す。民間航空機の様な快適な空の旅とは程遠いが、それでもマッハ7.6という速度にしては揺れは少ない上に、耐Gスーツや酸素ボンベの様な専用装備は全く必要なく、普通の私服で乗っても問題ない。

 

「間も無く目標上空です」

 

「流石マッハ7.5。もう着いたか」

 

まだ出発して15分程度しか経っていないが、既に目標上空らしい。マッハ7.5ともなれば当然だが、それにしたって余りに早い到着だ。一周回って怖いくらいである。

 

「スクラムジェットからジェットに切り替える。切り替えまで3、2、1、チェンジ!」

 

「チェンジした。各部正常、異常なし」

 

エンジンが切り替わり通常モードになると、すぐに後部ハッチを開く。高度25,000mの高空は、最早肉眼で捉える事は不可能。双眼鏡を使って漸く豆粒サイズで見えるという高さだ。本来であれば酸素マスクや専用の装備が無くては死ぬ高度にも関わらず、長嶺は躊躇なく飛び降りた。

 

「我願うは、大和民族の火焔なり。この身は火焔と一体となり、全てを破壊し尽くす破壊者となり、全てを滅さん。八百万の神々とて、我が火焔は止められず。この火焔は天に、地に、海に、山に巡りて、全てを焼き尽くす。我、眼前敵を排するその時まで、火炎と成り、例え果てようと悔いは無し!」

 

地上に真っ逆さまに落下し、凍える様な寒さの中で祝詞を唱える。最早これが祝詞なのか呪文なのかお経なのか知る術はないが、もう面倒なので祝詞で構わないだろう。唱え終わると同時、長嶺の背後、正確には長嶺よりも100m程上に炎の鬼が現れ、そのまま吸い込まれる様に身体の中に入る。

いつもの様に身体中から炎が漏れ出し、そのまま全身をスッポリと炎の球が覆う。炎が消えればそこには、かつて災厄を振り撒いた伝説の存在。煉獄の主人アマテラス・シンが居た。

 

「聞こえるか?そして見えているか?」

 

『バッチリですよ総隊長殿。ドローン、正常に動作しています』

 

「なら良い。折角暴れるのに、ギャラリーが何も見えませんでしたじゃ面白くない。何よりこれから死ぬアイツらが不憫だ」

 

『.......総隊長殿。貴方もしかして、内心かなり楽しみにしているのでは?」

 

「あっ、バレた?」

 

マジギレして怒りに任せて暴れられるのも困るが、ルンルンで殺戮する場合も困る。何せ手加減こそするが、そのベクトルが「如何に長く苦しむか」とか「如何に最大限の苦痛を与えつつ最大限生かせるか」とか「如何にして絶望を味合わせるか」とかの方向に振り切る為、マジギレモードとはまた違った地獄が生まれる。この手の事に慣れてるばかりか、そういう世界を生きてきた霞桜の面々ですら余りの凄惨さに吐いた事がある位には酷いことが起きるのだ。

しかも今回に限っては、霞桜の大隊長以外にも長嶺の嫁達たる艦娘とKAN-SENも見ている。別にその所業を見て長嶺を嫌いになるとかは無いだろうが、少なくともトラウマコースは確定したも同然だろう。

 

「これ、大丈夫かしらね?」

 

「そこんとこどうよ兄貴?」

 

「.......マリーン親父ぃ、へループ」

 

「諦めなさい。あのモードの総隊長は止まらんよ」

 

「答えになってないのに答えになるの不思議。雷蔵イリュージョン」

 

「あー、皆さん。キツかったら見ないことをオススメしますよ。R18Gなんて次元を遥かに凌駕する、そう。これは言うなればスナッフビデオの上映会ですよ」

 

大隊長達以外の艦娘とKAN-SEN達は苦笑いを浮かべるか、軽く引くかといった反応だ。一応これまで何度も、長嶺及び霞桜の隊員達と戦場を戦い抜いてきた。その手の地獄は、まあ大体想像が付く。

セカンド・エノでこんな会話が行われている一方、長嶺の方は発見され攻撃を受けていた。ライフル、マシンガン、対空砲、更にはロケット弾も飛んでくる。

 

『指揮官!死ぬぞ!!』

 

「なーに、心配すんなエンタープライズ。このアーマーは呪いを防ぐだけじゃねぇ。ミサイルや弾丸、それから戦車のAPFSDS位なら防ぐ。これを破壊するんなら、駆逐艦1隻分のミサイルを同時に撃ち込む位しないと。とはいえ、流石にウザいな」

 

いくら防いでくれるとは言え、延々撃たれ続けるというのは中々に不快だ。それに心臓に悪い上、身体中がカンカン鳴るのは単純にうるさい。

 

「シールドビット」

 

後方に控えるビット群から3つのビットが飛び出し、目の前に三角形のシールドを形成。弾丸を全て防ぐ。

 

「今のがシールドビット。3個で1つのシールドを形成するが、ビットの数を増やせば他の形状にも出来る。1枚で歩兵火器と機関砲弾位なら防ぐ。それ以上はシールドを複数重ねれば、理論上は隕石が落ちてこようが衛星が墜落しようが問題ない。試す気はないがな」

 

『そのシールドは無限大に使えるのか?』

 

「アーマーが動き続ける限りはな。後はビットが壊されたら、当然だが展開できなくなる。ビット自体も歩兵火器とかロケラン程度なら問題ないが、砲弾とかが当たれば最後、壊れちまう」

 

とは言え壊れても、アーマーを解除し再び纏えば復活するので、基本的には問題ない。しかもそのビット自体、後ろに1000本控えている。例え2、3個破壊されようと、全く問題ない。

 

「このビットはシールドだけじゃない。攻撃も出来る。まずはソードビット!」

 

背後に控えるビットがまた飛び出し、敵目掛けて飛んで行く。テロリストは持っているライフルを乱射するが、そんな豆鉄砲では止まらず腹を突き破り地面に切先が突き刺さる。

 

「続いてビームビット」

 

今度はビットが剣からプラグの様に変化し、そのまま赤いビームを発射する。マシンガンの様にビームを連発する事も、レーザーの様に薙ぎ払う事もできる様で、瞬く間に周囲の敵を一掃して見せた。

 

『お、親父の武器恐ろしいな.......』

 

『あのレーザー、恐らく狙撃もできるでしょう。敵に回れば脅威ですね.......』

 

「ソードビットは戦車はどころか、軍艦の装甲も簡単に突き破る。ビームビットも連射モードですは戦車を貫通し、レーザーモードであれば軍艦を破壊しうる出力を持つ。

そろそろ下に降りる。まだまだ暴れるから覚悟しろよ」

 

長嶺はアーマーのブースター出力をカットし、地面に着地というか落下する。こんな事をすれば派手に砂埃が舞い、煙幕のように機能してくれる。その為、騒ぎを聞きつけて駆け付けたテロリスト達、彼ら流ではこの地を守るガーディアン達は長嶺の姿が見えずにいた。

 

「闇雲に撃つなよ!同士撃ちになりかねん!!」

 

「行け!!」

 

ガーディアン達が敵を取り囲んで包囲しようとすると最中、長嶺は砂煙の中から飛び出す。いきなりの事でガーディアン達は戸惑い、ガードすらも遅れる始末だ。それを見逃す長嶺ではない。

 

「死んでろ」

 

「ガッ!」

 

「敵!歩兵1人だ!!殺せ!!!!」

 

別のガーディアンがそう叫び、一斉に銃口が長嶺を向く。そのまま引き金が引かれるが、既に手は打ってある。あの砂煙の中、長嶺は既に技を使っていたのだ。感覚器官、素早さ、思考力等々、あらゆる能力が向上する焔道という技である。

 

「弾丸すらも俺には遅く感じる」

 

焔道発動中は、感覚で言えば自らの時は普通のまま、周りの時の流れが遅くなっているような状態だ。弾丸が飛んで来るのも、ライフルから弾丸が発射される瞬間も、まるで止まっているように見える。後はそれを避けるように動き、敵の懐に入り込むだけだ。

長嶺の主観ではただ止まっているかのように速度の遅い弾丸を避け、目の前の敵を殺しているだけ。だがガーディアンやカメラ越しで見ている他の者からすれば、まるで瞬間移動しているかの様に見える。さっきはサイトの向こう側に収まっていた筈なのに、1秒も経たないうちに目の前に接近しているのだ。普通に恐怖である。

 

「このアーマーには仕込み剣が腕と爪先に装備されている。殴る蹴るの瞬間に展開して暗器の様に使う事も、端から出して格闘戦に持ち込む事もできる。切れ味も抜群だ」

 

そう言いながら長嶺雷蔵は、ガーディアンが反射的に盾がわりで構えていたAKごと喉を突いた。瞬く間に3人を殺した男に、ガーディアン達は誤射もフレンドリーファイアも気にせず撃ち始める。だがシールドビットを展開し、その攻撃を全て防いでしまう。

 

「このアーマーには9mmサブマシンガン程度の銃も搭載されている。発射するのは炎の弾丸だがな。連射モードでは精度も射程もそこまでよくはないが近距離ではかなり強い上、単発に切り替えれば最大でグレネード弾クラスの物も発射できる。火炎放射器にもなる優れものだ」

 

まるで商品の説明かのように淡々と話しながら、普通にガーディアン達をさも当然かのように殲滅していく。いつもの事ながら、何度見ても狂っているとしか思えない。

 

「っとぉ、ヘリコプターも来やがったか」

 

付近を飛んでいて応援に駆け付けたのか、はたまた運悪く何も知らずに来たのかは知らないが、少なくとも国籍証がない武装したヘリコプターの時点で排除対象だ。

長嶺はいつもの逆手スタイルで愛刀を抜いて構える。だがいつもとは違い閻魔は閻魔は赤黒く、幻月は刃の部分が金色に輝いている。長嶺はそのまま剣をヘリコプターに向けて振った。当然距離が遠すぎて、例え投げた所で絶対に当たらない距離だ。普通に考えて意味がない行動なのだが、何と刀から斬撃のビームが放出されヘリコプターをバラバラにしてしまった。

 

『指揮官様!今のは一体なんですか!?』

 

「落ち着け赤城。これが俺の愛刀の真の姿であり、あれも技の1つだ。斬撃をビームの様に撃ち出して、対象を切断する事ができる。俺は剣波とかソードビームと呼んでいる」

 

質問した赤城含め、皆空いた口が塞がらなかった。そんなフィクションの様な事までできるのかと。向こうでそんな反応されてるとは夢にも思っていない長嶺は、堂々とミギ・ワ・ギザ・ナ・マシュタニの中へと入っていく。

都というだけあって、中は街のような作りなっていた。至る所に重機関銃やらガーディアン達が隠れており、こちらを奇襲するつもりなのだろう。

 

「さぁ、楽しい楽しい宴の時間だ。始めよう。焔地」

 

まず使うのは焔地。地面に干渉し、範囲内の地面を全て溶岩並の灼熱地獄に変えてしまう技だ。建物なら基礎部分から破壊されて自壊し、車両なら車体が溶け、人なら足から火だるまになる。

 

「あ、熱い!熱い!!!」

 

「な、何で動けぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「あ!!あぁ!!あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」

 

周囲100mのガーディアンは火だるまとなるか、熱で銃が暴発して死ぬかの2択で殆どが死んだ。中には運良く逃れた物もいるが、熱で足が靴なんかに引っ付いてマトモに動けなくなる。

 

「はーい続いて焔柱!」

 

今度の技は敵の真下から巨大な炎の柱が飛び出し、そのまま敵を串刺しにしてしまう。先端に燃え盛る人の死体が刺さっている、何とも悪趣味な炎の柱が至る所に聳え立つ。

 

「クソッ!!」

 

「仲間の仇!!!!」

 

長嶺が突き進むメインストリートに隠れていたガーディアン達が攻撃を始めるが、そんなの長嶺も分かっている。そこでコイツらには、ちょっと一生涯視界を奪ってやる事にした。

 

「焔波」

 

長嶺を起点に超高温な熱波がドーム状にに広がっていく。あくまで熱波である為、炎の様に可視化される事はまずない。だが高温すぎて、空気を揺らす陽炎がハッキリと見えてしまっている。この熱波に触れた者はまず目が完全に焼けてしまい視力を奪われ、皮膚は完全に焼け焦げてしまう地獄の苦痛を味わう事になる。木造建築物であれば、自然発火しそのまま巨大なキャンプファイヤーになる事間違いなしだろう。

 

「あーあー苦しそうだこと」

 

長嶺は赤く焼け爛れた手で目を覆い、声にならない悲鳴を上げながら転げ回るガーディアンを、まるでアリが虫の死骸を運ぶのを見たかのような無関心そうな顔をしながら、中心部にある神殿のような建物を目指して歩く。

 

『止まれー!!侵入者よ!!!!これまでの蛮行、万死に値する!!!!!!!!』

 

「あっそう。焔槌」

 

興味なさそうにそう唱えると、空中にハンマーの先端の様な太めで短い炎の円柱が現れ、ハンマーが振り下ろされたかのように目の前に立ちはだかる装甲車を襲う。装甲車は最早、攻撃どころか気付く暇もなく炎のハンマー1振りで破壊されてしまった。

 

「装甲車も戦車も、俺の炎の前じゃ張子も同然。弱すぎる」

 

単なる鉄屑と化し炎を上げて動かない装甲車を、まるでゴミを見るかのような目で見つめてながら横を堂々と通り抜けていく。その姿を見たガーディアン達は恐怖し、ライフルを握りながら震えていた。

 

「奴は、奴は何なんだ!!あんな男、見た事がないぞ!!!!」

 

「化け物か!?それとも破壊の神とでも言うのか!?」

 

「俺達、もう生きては帰れないよ.......。だって奴は、奴は!正真正銘の化け物なんだよッ!!!!」

 

1人のガーディアンの慟哭に、全員の動きが止まった。このガーディアンは元々傭兵として、世界各地を転戦してきた歴戦の古兵。経験則だけで言えば、ガーディアンの中でも最高峰の男だ。そんな男の慟哭は、他のガーディアンの関心を集めるには十分だ。

 

「アイツは昔、朝鮮戦争に従軍した時に見た。あの核が起爆した後に起こった、地獄の泥沼みたいな戦場で。奴は炎を自由に操り、こちらの攻撃を全て遮断し、まるで人をボロ雑巾みたいに殺す!

そこから付いたあだ名は『煉獄の主人』とか『炎鬼』とか色々だが、名前なんざどうでもいい。重要なのはアイツに目をつけられれば、ほぼ確実に死ぬってだけだ。俺は最初の攻撃で吹き飛ばされて気絶していたから助かったが、部隊は壊滅し俺だけが生き残った.......」

 

元傭兵のガーディアンがそう語り終わった瞬間、まるで見計らっていたかのように炎の鎖がそのガーディアンの首に巻き付いた。その鎖はガーディアンの首を締め上げ、そのまま首を切り落とす。周りのガーディアン達が振り向いたその先に長嶺は立っていた。

 

「どうだ、焔鎖の味は?あぁ、心配するな。全員纏めて味合わせてやるから」

 

ジャラジャラと鎖を引き摺る姿はまるで、ホラーに出てくる悪魔そのもの。ガーディアン達は抵抗するのではなく、尻尾を巻いて逃げ出した。とにかく神殿のある方へ、鎖の悪魔がいる方向の真反対は逃げる。

だが当然、その背中は無防備だ。それを見逃す程、この男は優しくない。鎖を投げ飛ばし、首を切り落としていく。1人の生存者すら残さず、全て殲滅してみせた。

 

「さーて、とっとと神殿に行きますか」

 

長嶺は空を飛び、神殿を目指して突き進む。神殿にはガーディアン達が武器を構え、徹底抗戦の準備がされていた。周りを取り囲む城壁には重機関銃、メインストリート周辺には地雷原にトーチカ、塹壕の中にはガーディアン達が大量にいる。

普通に考えて、これを1人で突破するのは愚の骨頂に他ならない。だが長嶺の神授才を持ってすれば、この程度造作もない。

 

「こんな歓待を受けるとは、予想していなかった。全部破壊してやる。オールビットソード!!行け!!!!!!」

 

長嶺の背後に控えている1000本の剣が一斉に暴れ出す。ガーディアン目掛けて、まるで雨のように剣が降り注いだ。刃がガーディアンの身体を貫くのだが、正直『貫く』という表現が生易しいと思える程に酷かった。1人頭に4、5本は割り当てられるので、1本が突き刺さった直後に他の剣がグサグサと突き刺さり、結果的にガーディアンは細切れになりながらさらに持ち上げられ、地面に落ちてくるという中々に酷い最期を迎えているのだ。

 

「撃ちまくれ!!」

 

「剣を追い払え!!!!」

 

「同士を助けろ!!撃て!!!!」

 

機関銃が暴れ狂うソードビット目掛けて撃ちまくる。別に問題はないが、正直邪魔である事には変わりない。

 

「焔輪。焔槍」

 

炎の戦輪を生み出す焔輪で機関銃の銃身を全て切り飛ばし、ガンナーには炎の槍で全員心臓を貫く。神殿前の抵抗をものの数分で殲滅し、長嶺は正面から堂々と神殿の中へと入る。

 

「クリアリングも面倒だし、焼き払いながら行くか。焔舞」

 

長嶺が手をオーケストラの指揮者の様に構えると、2つの炎が長嶺の後ろに現れる。手を動かすとそれに連動するように、炎が伸び建物内部へと入って行った。

この焔舞という技は炎を好きに操る事ができ、引火した炎すら取り込み増殖しながら増やす事ができる代物だ。これを使えば炎を操って建物の中を全て焼く事も、逆に火災の炎を水場に誘導して消化することも出来る。こういう場合なら炎を先行させて、クリアリングがてら人や障害物を焼き払わせてしまえば簡単かつ安全に中に侵入できる。とは言え、ひとつ問題がある。それは…

 

「これやると楽なんだけど、死体含め大体の物が炭化して何が何だか分からなくなるんだよなぁ」

 

これである。その為、救出対象だとか確保すべき物品が中にある場合、あまり積極的に使えないという難点がある。だが逆に今回の様な場合なら、何の気兼ねなく焼き払う事ができるのだ。

 

「おっ、隠し階段発見〜。さーて、誰がいるのかな?」

 

たまたま見つけた隠し階段から下へ降り、そのまま中に突入。長い廊下を進むと、かなり広い空間に出た。見た限り、儀式を行いそうな部屋である。

 

「痴れ者めが、何の用だ?」

 

「ここは貴様の様な穢らわしい者が来て良い場ではない」

 

「殺すぞ」

 

「否。心臓を抉り、太陽神の供物としてくれる」

 

「抵抗するな。万感の喜びを持って、この栄誉をありがたく頂戴すると良い」

 

5人の顔まで布で覆われた変な白い格好している変態オヤジ共が、なんか色々言ってくる。だが当の長嶺は一切気に留めておらず、お返し代わりに術を行使する。

 

「どうした?喜びで声も」

「焔檻」

 

次の瞬間、4人の変態オヤジが炎の檻に囚われた。しかも檻の鉄柵、というか炎がだんだんと近づいていき、そのまま燃やしてしまう。先頭にいた恐らくリーダー格の男は、何が起きたか分からずに立ち尽くす。

 

「き、貴様!一体どのような術を使った!!!!」

 

「ほー。やっぱこれが、術の類って分かるのか。まあ、冥土の土産に教えてやる。この術は神の力さ。生憎と慈愛に満ちた優しい死は与えられないが、代わりに苦痛を持って冥土に送ってやる」

 

「な、何を言って!」

 

長嶺は一気に相手の懐に飛び込み、そのまま仕込み剣で変態オヤジの足先をちょっと切る。致命傷どころか、包丁でちょっと切りました程度の切り傷だ。痛いのは痛いだろうが、別に悶え苦しんだりする程でもない、日常的にしても何ら可笑しくない切り傷である。悪いが、これでは死にようがない。

 

「ま、まさか毒か!?」

 

「いいや?もっと酷い物さ」

 

すぐに変態オヤジの身体に異変が起こる。切られた所が、まるで中で大火災で起きたのではないかと思う程に熱く、そして何かに中を食われている様な錯覚に陥ったのだ。変態オヤジは転げ回り痛みから逃れようとするが、それで逃れる訳がない。

 

「アマゾン川にはカンディルって魚がいる。よくピラニアが危険な魚として名前が上がっているが、アレは臆病で世間で言われてるよりかは危険度が低い。

だがこのカンディルは現地民が恐怖する、小型の肉食魚だ。お前に使った焔菫は、言うなれば炎で出来たカンディル。今その魚が、貴様の身体の中を脳目指して食い進んでいるのさ。しかも身体は炎だから、周りを焼きながらな」

 

長嶺の説明は全く頭に入っていない。変態オヤジは悶え苦しみ、声にならない悲鳴を上げながら、床を転げ回る。その内首から顔に言ったのだろう、ナマズのような炎のカンディルの顔が左目を食い破って出てくる始末だ。正直、かなりグロい。

 

「ボンボヤージュ。良い旅を」

 

長嶺はそう言い残すと、神殿の外へ出る。これで復讐も終わったのだが、もしかしたら生き残りがいるかもしれない。この街を焼き払った方が世の為人の為、なにより不安が消える。

 

「焔星」

 

長嶺がそう唱えるとミギ・ワ・ギザ・ナ・マシュタニの上空に、巨大な炎の玉が形成される。その玉はやがて街に落ち、そのまま街を跡形もなく消し飛ばした。これでは生きていた者がいようと、死体すら残らず焼滅した事だろう。

 

「はい終わり。帰ろう帰ろう」

 

長嶺は涼しい顔をしながら、セカンド・エノへと帰還するべく黒鮫弍型へと戻る。この日、ミギ・ワ・ギザ・ナ・マシュタニは地上から消えた

 

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