最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第九十六話九大公

同時刻 セカンド・エノ 長嶺専用邸宅 会議室

「こ、コイツは........」

 

「正直、驚きですね。世界を滅ぼすだけの力と言われても、全く名前負けしていませんよ.......」

 

「私も長い事この業界に居ますが、総隊長の様な能力はフーファイターだけかと思っていましたよ。まさか実在するとは.......」

 

「.......ねぇ、ベーくん。アレ、勝てると思う?」

 

「どう足掻いても無理だろ。俺達大隊長に、ここの全兵力。艦娘とKAN-SENの嬢ちゃんを入れた所で、まず勝てない。あんな暴力の化身を相手にするくらいなら、1人で世界に宣戦布告したほうが生き残れる」

 

「味方で良かった。敵なら地獄」

 

「アレは戦闘機でも勝てそうにないですね.......」

 

荒事に慣れた百戦錬磨の戦士達を取りまとめる大隊長達と、大空では負け無しの、ある意味で大空における長嶺的ポジションのメビウス1ですらこの反応だ。それだけあの戦闘は、強烈どころか脳裏に色濃くこびり付いていた。では艦娘とKAN-SEN達はどうだろう。

 

「アレが提督の本気ですか.......。なんとも恐ろしいですね」

 

「あぁ。だが、我々は幸運でもある。あの人が味方で居てくれる限り、どんな敵が相手でも倒せる筈だ」

 

付き合いの長い大和と長門は、恐怖を覚えはしたが一方で頼もしくもあった。何せこれだけの武力、何が敵であろうと大体は正面からどうにかできる。

 

「指揮官様のお力を持ってすれば、世界征服すら成し遂げるでしょうね」

 

「指揮官自身にその気がないかと。しかし、あの武力。姉様の言う通り、世界征服すらも容易でしょう」

 

「世界征服か。何とも言えない、ロマン溢れる言葉だな」

 

「でも、指揮官様には世界征服の悪者は似合いませんわよ?」

 

「指揮官はどちらかと言えば悪役だが、そうだな.......ダークヒーローとでも言うのか?そんな感じがする」

 

「ダークヒーロー。言い得て妙ね」

 

「確かに雷蔵は悪役だけど、根っからの世界を滅ぼす悪役って訳じゃないわね。必要があれば世界を滅ぼす、冷酷な感じよ」

 

「あっ、なんか分かる!ハニーってば、あたし達には甘いのに敵には苛烈なまでに報復するもんねぇ〜」

 

「相棒は容赦ないからな」

 

「今更感ありますよね。出会った時から「敵は全て排除する」というスタンスでしたから」

 

「やはり指揮官の力こそパワーは、全てを解決するな!」

 

「ハルピンさん、それちょっと違うかと.......」

 

「いや、強ち間違ってないだろう。同志の様なやり口は、正に力こそパワーの極地であろう」

 

「豪快かつ奇想天外ですが、だからこそ、お慕い申しているのですよ」

 

「敵ダッタ身トシテハ、御免被ル相手デアルガナ」

 

そしてKAN-SENの場合は諦めているのか、何処か「まあ指揮官だから」という投げやり感のある感想が目立つ。だがいずれにしろ、やはり恐いのは恐いらしい。特に元は敵であり、現在も勢力的には絶賛敵対中の戦艦棲姫は軽く震えている有様だ。

 

「まあ、皆さん。アレですね。総隊長殿が味方であった事に感謝しましょう。なんと言いますか、もうこの際、それで良いような気がしてきましたよ.......」

 

グリムの言葉に全員が深く頷いた。長嶺の庇護下にあるというだけでも、安心感の度合いが雲泥の差だ。こんなにも強いなら、武力面では何も気にする必要はない。

だがこの行動は世界中の表裏社会問わず広く認知され、大騒ぎとなっていくことをこの時は誰も知らなかった。まずは今回の目標にされたミギ・ワ・ギザ・ナ・マシュタニの持ち主、URの反応を見てみよう。

 

 

 

数時間後 アフリカ大陸中央部 Ville Pimordiale

「ファーストキング!ファーストキングはお出でか!!」

 

「うるさいぞブレキリ!」

 

ブレキリと呼ばれた男は、玉座の間に入ってくるなり大声で叫んだ為、当然ではあるが部屋の主人たるファーストキングに怒鳴られる。だが、こうも大声を出すのも仕方がない。

 

「申し訳ありません、偉大なるファーストキングよ!しかしながら、そうも言ってられんのです!ミギ・ワ・ギザ・ナ・マシュタニが消滅したのです!!」

 

「.......はぁ。なんだ貴様、クスリをキメているのか?」

 

「それはネェフェルトゥムのやってる事でしょう!まだ未確認ですが、あの国堕としが現れたと言われております!!」

 

その名が出た瞬間、ファーストキングの顔色が変わった。何せ今でこそファーストキングとして組織を率いているが、その正体はCIAの工作員。煉獄の主人アマテラス・シンの伝説は、嫌というほど知っている。

 

「すぐに九大公を集めろ!!」

 

「ハハッ!」

 

URの幹部、九大公。リーダーのポジションである最高幹部のブレキリことブレキリフヌアデを除き、全員がエジプトの神々のコードネームを持つ。彼らはURが行っている事業の責任者であり、其々がその道のエキスパートや高い能力を持つ者で構成されている。彼らこそが裏社会の王とも言える存在だ。

ブレキリフヌアデが直ちに召集した為、わずか1時間で王宮内の円卓に全員が集まった。とは言えその面子は、想像以上にかなり濃ゆい。何せ彼らの個性は、霞桜のソレを遥かに上回る。

 

「皆、急な参集に応じてくれた事、感謝しよう。定例会には早いが、この際だ。定例会も兼ねようと思っている。順番に報告してくれ」

 

まず立ち上がったのは顔中にピアスを付けた、如何にもガラが悪そうな黒人の男。人身売買担当のセトである。

 

「俺達の販路は特にダメージはなし。収支も変わらず、いつも通りって所だろう。現在は半年後のオークションに向けて各国から人を攫っているが、どうやら今年はかなりの豊作らしい。まあまあ期待していいだろうよ」

 

「そうか。ではもし、いい女がいれば味見したい」

 

「オーライ。用立てよう」

 

次に立ち上がったのは、ヒスパニック系のヒョロガリな男。髪はボサボサ、フケまみれで着ている服も見窄らしい。しかも口や鼻から、汁という汁が出ている様な有様の男だ。この男は薬物の製造から売買まで行っているネェフェルトゥムである。尚、こうも酷い格好なのは自分で商品を試しているからである。

 

「キャハハハハハハ‼︎俺達ダメダメぇぇ!!畑も燃ひぇてぇ!!加工も品物もブーン!!!!!」

 

「復旧の目処は?」

 

「ちゃっふぇにやぁーーーい!!!!」

 

「そ、そうか。まあ、早く立て直してくれ」

 

常時ラリってるヤベェ奴ではあるが、仕事はちゃんとやってくれているし、既にオーバードーズレベルの薬物を年単位で打ち続けているにも関わらず、どういう訳か本人は呂律こそ回っていないがピンピンしているので問題ないだろう。

 

「次は私ですね。カジノは軒並み壊滅し、現在は間借りしている小規模な物しか生き残っていません。一部カジノについては既に所在地の政府が復旧に尽力してくれてはいますが、アメリカ等の一部の国は摘発される形になってしまい、損失は計り知れません」

 

次は白人の金髪ロングの男、トトが立ち上がる。真っ白なスーツに身を包んでおり、貴公子そのもの。表の世界ならアイドルやモデルとして活躍できた事だろう。

 

「やはりか.......。金は惜しまない。なるべく再建してくれ」

 

「仰せのままに、偉大なる王よ」

 

次に立ち上がったのは、ギリシャ系の白人美女。豊かな金髪に、豊満な胸を持つスタイル抜群の美女だ。だが纏う雰囲気は悪女っぽい、淫魔の様な怪しい雰囲気を纏っている。

 

「売春は上々。最近起きた中東の小競り合いに、娼婦を派遣したのが効いているねぇ。いい感じに稼げているよ」

 

「そうか。所でハトホル。後で私の部屋に来なさい」

 

「キングも好きだねぇ。分かったよ」

 

ハトホルに次に立ち上がったのは、小柄なラテン系少女。一応20歳超えているが、背丈はかなり小さく身体付きも幼い。髪も短髪なので、シルエットだけを見れば少年の様にも見える。だが彼女は強盗や情報収集を行う部門の長、ヌトである。

 

「次はあたいだね。取り敢えず例の襲撃事件を調べてみたんだけど」

 

「何か分かったか!」

 

「全然。アイツら手掛かりを残しまくっているのに、全部が全部何処かでプツリと切れて追えなくなる。でもねぇ、なんか動きが統率取れてるんだよ。これはあたいの予想だけどさ、みんな特殊部隊経験者か特殊部隊経験者にかなり鍛えられた、言うなれば軍隊だと思うよ」

 

ヌトの予測は大当たりである。あの強盗に参加した実働部隊は総じて、全員特殊部隊上がりの戦闘のプロフェッショナル達。残した手掛かりも攪乱のために、わざと残して来たものだ。

 

「そうか。心当たりは?」

 

「それなら俺に1つ」

 

「聞こう!」

 

ヌトと入れ替わる様に、タトゥーを入れた筋骨隆々のスキンヘッド男が立ち上がる。彼はラーのコードネームを持つ、かつてSASの隊長を務めていた凄腕の傭兵だ。現在は傭兵ビジネスを担当している。

 

「日本の海軍、そこのトップ直属の非公式特殊部隊。ソイツらの任務は他国への潜入工作から、内部の粛清まで国の暗部を担っていた。この部隊には多くの特殊部隊経験者や、凄腕の傭兵、テロリスト、戦闘のプロが相当数いるらしい。その部隊は例のナガミネとかいう男が離反した時に、一緒に日本を出てったそうだ。前にウチと争った事もあるし、可能性はゼロじゃねぇ」

 

「名は?」

 

「そこまでは知らねぇな。特殊部隊Xなんて言われているが、正式名称じゃねぇだろうよ」

 

流石に霞桜の総隊長が長嶺であり、その長嶺が煉獄の主人だという所は知らなかった。情報統制がかなりしっかりと敷かれている以上、知らなかったとしても仕方がない。

 

「んじゃ、次は俺っちだな」

 

次に立ち上がったのは、資源の採掘全般を担当しているミン。160cmという男にしては低い背丈だが、それにしては筋骨隆々で横に広く、更に髭面と、まるでドワーフの様な男だ。

 

「資源採掘量は変わらず、一定のスペースを保ってる。とは言え増産もできるから、もし必要なら言ってくれ。後2段階はスピードアップできる」

 

「最早、我が言う必要もなかったか。であれば命じよう。全ての資源の採掘スピードを、もう一段階あげるのだ」

 

「おう!」

 

最後に立ち上がったのは女……ではなく、オカマだ。金融担当のネイトである。ネイトはエジプトに於ける知恵の女神なのだが、まあオカマなのでセーフだろう。

 

「オホン。金融担当としては、特に報告はないわん♡。いつも通りの収益な上、新たな顧客もなっし。でぇもぉ、さっきのミンちゃんの話を聞く限りだと、お金がいるんでしょん♡?なら販路を拡げるわねん♡?」

 

「頼む」

 

「おーけぇよん♡!」

 

「では報告も終わったところで、本題に入ろうと思う。今回集まってもらったのは、ミギ・ワ・ギザ・ナ・マシュタニが消滅したからだ」

 

全員がざわついた。100歩譲って「攻撃された」「壊滅した」なら分からなくもないが、今言った言葉は「消滅した」である。明らかに言葉が可笑しい。

 

「お前達は煉獄の主人、或いは国堕とし、BIG CATASTROPHE(大災厄)、移動灼熱地獄、破壊神、炎鬼と言った異名に聞き覚えはあるか?」

 

主に商売や採掘等の荒事に関わりがない、つまりほぼ全員が知らなかった。だが自らも傭兵としての従軍経験があるラーだけは、その名を聞いて青褪めていた。

 

「.......やはり、ラーは知っているか」

 

「ファーストキング。悪い事は言わねぇ!ソイツはヤベェ!!マジでヤベェ!!!!」

 

「ラーさん。何をそんなに慌てているのですか?」

 

「トトよ、ラーがこうなるのも無理はない。ミギ・ワ・ギザ・ナ・マシュタニを文字通り、消滅させた実行犯はかつて朝鮮半島にあらん限りの死と災厄を齎し、中国共産党を駆逐した影の英雄であり、戦場の移動災害なのだ」

 

余りに荒唐無稽な話に、全員が困惑した。だがファーストキングが説明する煉獄の主人アマテラス・シンの伝説は、九大公を怖がらせるには充分であった。

 

「恐らく煉獄の主人は、ナガミネと内通しているのだろう。タイミングがあまりに出来過ぎている。ラーとブレキリは、他の九大公の市場を武力を持って守るのだ。また他の者も自らの市場を、自らの全能力を用いて死守せよ。これは戦争も同然だ。覚悟しろ」

 

ファーストキングの言葉は、これまでで一番重かった。幹部達は一瞬遅れて返事すると、そのまま部屋を出て行く。全員が居なくなると、ファーストキングは古巣へと電話をかける。

 

『貴様から連絡とは、何事だ。スレイブよ』

 

相手は直属の上司にしてCIA長官、ウォットシャー・ブラスデンその人である。スレイブというのは、ファーストキングのコードネームだ。

 

「煉獄の主人が復活しやがった」

 

『なっ!?』

 

「ウチの拠点が1つ、奴の炎にやられた。10年の時を超え、奴はまた復活しやがった。そっちに何か情報はないのか?」

 

『.......生憎と、煉獄の主人に関する情報は日本が絡んでる事くらいしか分かっていない。だが日本の何処の誰が関わっているのか、何処の組織に絡んでいるのかすら分からない』

 

CIAとて無能ではない。霞桜の情報は調査により段々と範囲を狭めていき、日本に拠点を持っている事だけは分かっていた。だが煉獄の主人の正体が何処の誰で、何を目的とし、何の為に戦うのか。国家機関の下に飼われているのか、誰かの子飼いか、或いは傭兵の様にその場限りで雇われているのか。その辺りは分かっていない。

 

「なら俺から情報提供だ。今回の襲撃、時期的に海軍のナガミネの行動時期が一致している。もしかしたら、関係があるかもしれん」

 

『探らせよう。煉獄の主人が出た以上、通常戦力では歯が立たないだろう。シリウスをお前に付けてやる』

 

「シリウス?」

 

『私子飼いの戦闘部隊だ。彼らなら恐らく煉獄の主人に対抗できる』

 

「そんなのを持っていたのか。分かった、準備しておこう。また何かあれば連絡する」

 

この報告は反目しているとはいえ一応大統領のハーリングに伝わり、そこから他国の『長嶺援護ネットワーク』とでも言うべき協力関係にある首脳陣にも伝わった。付き合いの長い彼らは、これから遠くない内にURの本拠地が完全に消え去る事を瞬時に察し、その時に備えて水面下で動き出す。

本拠地が消えた混乱の最中に、自国に蔓延るUR関係者を確保すれば治安も良くなるだろう。ついでに内通している有力者に対しても、そのまま攻勢に転じられる。彼らにとってはいい事ずくめなのだ。

 

 

 

数日後 セカンド・エノ セントラルタワー 執務室

「失礼します、総隊長殿。って、あれ?」

 

「やぁグリム。指揮官なら席を外しているよ」

 

「そうですか。すぐ帰ってきますかね?」

 

「すぐ帰ってくるよー」

 

どうやら本日の秘書艦はリットリオと鈴谷らしい。この2人の絡み、余り見た事がないのだが案外気は合いそうだ。なんて事を考えていると、長嶺が戻ってきた。

 

「たでーまーって、グリム!どうした?」

 

「お疲れ様です、総隊長殿。URの幹部について、全員の顔と簡単なデータを持って参りました」

 

「あー、なんか色々いるんだっけ?」

 

「はい。プロジェクター、借りますね」

 

グリムが準備している間に、長嶺はデスクからブラインドとスクリーンを操作し、投影準備を行う。1分もしない内に準備が終わり、早速グリムによる説明が始まった。

 

「では始めます。URには総大将のファーストキングをトップに、九大公と呼ばれる幹部達がいます。彼らは基本的にエジプトの神々のコードネームを持っており、纏め役である最高幹部にして警備部門を担当するブレキリフヌアデのみがアフリカの神のコードネームを持っています。

まずファーストキングですが、これは総隊長殿の報告にあった通りCIAの凄腕浸透工作員(スリーパー)である事が判明しました。デルタフォースからパラミリではなくスリーパーという異色の経歴ですが、その能力は歴代最高と言わしめる程だそうです。特に指導者的カリスマが高く、元は単なる一構成員に過ぎなかったにも関わらず、あそこまで巨大な組織に成長させているのがいい証拠です」

 

「(ねぇねぇ、スリーパーってなに?寝るの?)」

 

「(浸透工作員というヤツだな。普段は一般人として生活し、命令があれば行動に移る。指揮官が言うには発見するのが面倒臭いそうだ)」

 

ファーストキングの写真から、今度は別の男の写真に切り替わる。ただその姿は先述の通り頭はボサボサかつフケまみれで、顔は痩せこけ、歯が腐ってるのか所々黒く変色し、口からヨダレを垂らす物凄い見た目であった。お陰で女性陣2人はドン引きである。

 

「美しくないな。目が腐ってしまうよ」

 

「え、何これ。キモいんですけど」

 

「さ、散々な言われようですね。まあ、私も同じ気持ちです。

オホン。薬物の製造を担当しているネェフェルトゥムは、見ての通りヤク中です」

 

「ヤク中!?」

 

「はい、ヤク中です。常時ラリってるそうでして、懐にはコカイン、ヘロイン、シャブetcと大体の薬物が収められており、気分で選んで打っているそうです。どうやら身体が特異体質だそうで、薬物を幾ら打とうと離脱症状や後遺症といったデメリットが出ないそうでして、我々が呼吸や食事をするのと同じ感覚で薬物を打っていると考えて良いでしょう」

 

非合法のドラッグとはいえ、そこは薬物。少ない比率とはいえ、効果の出る度合いに差があり、時には全く出ないなんて者も存在するのは事実だ。だがそういう体質は、長嶺も聞いたことがない。

 

「次はこの男、名をセトと言います」

 

「ガラ悪そー」

 

「鈴谷さんの言う通り、見た目通りガラはかなり悪いです。人身売買を担当しておりまして、性格は粗暴にして凶暴。人の血を見るのが大好きだそうで、気に入った商品があれば日常的に拷問しているそうです。

また男色の趣味があり、少年を攫って来ては壊れるまで拷問しながら愉しんでいるそうです」

 

「おや?指揮官は驚かないんだな」

 

「正直ホモのショタ好きなんざ、裏じゃ結構ポピュラーな趣味だからなぁ。今更驚かねぇ」

 

長嶺はこれまでいろんな国の裏社会を見てきたが、ヤベェ性癖見本市でもあった。レイプ好き、ショタコン、ロリコン、最早犯罪レベルのドSと命の危険が伴うドM、スカトロ趣味なんて言うのは可愛い物で、拷問しないと興奮しない奴、妊婦の腹を潰して胎児が潰れた状態で出てくるのに興奮を覚える奴、足と腕がないダルマ状態にしか興奮しない奴等々、こんなのを見てきたら今更ショタコンホモ如きでは、なんの驚きも抱かなくなった。

 

「次は賭博を取り仕切るトトですね」

 

「ほう、今度はかなりの美形だな。さっきの薬物男とは大違いだ」

 

「元はスイス銀行の銀行マンでしたが、顧客だったファーストキングに誘われてこの世界に入り、現在では賭博を取り仕切る幹部になりました。その収入はかなりの物だそうで、単純な収益だけで言えばトップクラスだそうです。性格は紳士然とした物ですが、一度タガが外れると癇癪を起こすそうです」

 

次に映されたのは豊かな金髪に豊満な胸を持つスタイル抜群のギリシャ系の美女だ。普通なら目を奪われそうな物だが、生憎と長嶺の目は肥えに肥えまくっているので「世間一般では美人だろうな」位しか思わない。

 

「売春担当のハトホルです。元は高級娼婦であり、広大な人脈を持っています。見た目に反し冷酷かつリアリストであり、一介の売春婦からここまで登り詰めたやり手でもあります。またファーストキングの愛人もしているそうで、弱点になるかもしれません」

 

「そうだな。まあ、使い道は色々とある」

 

女というのは、こういう時に有用なカードとなる。誘拐し脅すもよし、色々した後にビデオを送るもよし、はたまた目の前で殺すと言うのも良いだろう。ファーストキングの精神を攻撃するのに、これ以上最適な人間はいない。

 

「次は採掘担当のミンです。大酒飲みで豪快な性格であり、見た目も相まって「ドワーフ」というあだ名で呼ばれています。九大公の中では比較的マトモな部類であり、仲間思いな性格だそうです」

 

「なんかお酒を樽で飲んでそう.......」

 

「肴は骨付き肉かな?」

 

「さて次は、金融担当のヘルメースです」

 

次に映されたのは頭は坊主のヒョロッとした男だった。だが趣味の悪い化粧をしており、服装も女物を着ている。

 

「見ての通りオカマです」

 

「オカマだな」

「オカマだね」

「これは、うん。日本固有のオカマというのが良く似合うね」

 

「こんなふざけた見た目ですが、その手腕は目を見張る物があります。基本的にこの男が顧客と幹部達を繋ぎ、商談を成立させているのです。営業もこの男が行いますし、輸送経路の手配などもこの男が行います。URの繁栄には必要不可欠な人材です」

 

人は見かけに寄らないとは言うが、にしてもこれは意外である。こんなにもふざけた見た目の男が、そんな有能だとは思えない。それにしてもここまでURの人材は、かなりゲテモノが多い様に思える。よくこんな連中を取り纏められるものだ。

 

「次は強奪担当のヌトです。窃盗を担当しており、スリから銀行強盗まで何でもこなせます。その性質上、諜報の役割も担っており、恐らく我々と最初にぶつかるのは彼女の組織でしょう」

 

「ほう。可憐な少女だな」

 

「見た目こそ幼いですが、これでも20代後半ですよ。遺伝的疾患により、成長が早い段階で止まってしまったそうです。ですが逆に、この見た目ですから狭い所でも難なく通り抜けられるそうで」

 

次に映されたのは、傭兵担当のラー。アフリカらしい紋様を掘り込んだ、筋骨隆々の歴戦の傭兵っぽい男だ。

 

「この男はラーと言いまして、傭兵ビジネスを生業としています」

 

「バルクさんみたいだね」

 

「確かにな。だが、バルクの方が大きいのではないか?」

 

2人がバルクと比べていた時、長嶺は軽くフリーズしていた。何処かで見たことがある。記憶を辿っていくと、ある1人の男を思い出した。

 

「.......コイツ、イスマエルじゃね?」

 

「お知り合いですか!?」

 

「あぁ。前に一緒に仕事した事がある。イスマエルは兵器に乗せると強いんだ。それに何より、本人自身もロケットランチャーの名手だ。元はSASの隊長していたんだが、内部で色々あって嫌気がさして傭兵になって、いつか傭兵軍団を作ると言っていたが、まさか本当に作っているとは.......。

よし、決めた。コイツ、仲間にするわ。ちょっと口説いてみる」

 

「あー、やっぱりですか。了解です、身辺を洗ってみます」

 

霞桜の隊員補充は、割とこういう感じであっさりと決まる事が多い。もちろん、最初期の頃はもう少し熟考していた場合もあるが、一見考えなしとすら言えるほどにサクッと決めていく事もある。

 

「結構あっさりだな、仲間を増やすの.......」

 

「まあ俺達は肉体言語っていう戦士、兵士であれば万国共通の最強言語で語り合えるからな。取り敢えずどついて、その後で考えるのも一つの手だ」

 

「脳筋.......」

 

基本霞桜の人間は、大体が「力こそパワー」「押して駄目なら更なる力でゴリ押せ」という考えを持っている。バルクの様な火力も、その考えが根底にあると言っていい。

 

「さて、最後にこのブレキリフヌアデです。最高幹部にしてURのNo.2であり、私兵部隊の指揮官でもあります。言うなれば警備部門ですね。性格はラーと似ていますが極めて残忍であり、どの様な汚れ仕事でもやってのけます。ラーとは折り合いが悪いそうですね。

またブレキリフヌアデの下には、5人の優秀な幹部がついています。こちらはアフリカの神々のコードネームを持っています。彼らはブレキリフヌアデも含めて、ありきたりですが『六騎士』と言われているそうです。ブレキリフヌアデは高い次元の兵士であり、スナイパーから格闘戦まで幅広く対応しています」

 

「俺とどっちが強いかな?」

 

「提督でしょ」

「どう考えても指揮官だろうな」

「総隊長殿が負ける相手なら、我々はとっとと降伏するしかないですね」

 

次に映ったのは黒人の大男でありながら、眼鏡をかけた知的な雰囲気を醸し出す男である。しかも額に溶接用のゴーグルを装備している辺り、戦闘型ではなくメカニックなのだろう。

 

「彼はゼビオソと呼ばれる、天才的な爆弾魔です。彼が担当する事案は全て爆弾が絡んでおり、色々と調べましたが爆弾に関しては高い技量を持っている様です。MITを中退とは言え、それまでは主席と変わらぬ成績を残しており高い頭脳を持っています」

 

「爆弾魔か。あまり戦った事がない相手だな」

 

「そうなの?」

 

「俺達は正面切っての戦闘が多い。爆弾魔は後方から一撃必殺でドカーンだからな。合わねぇんだよ」

 

勿論爆弾魔に襲われた事は何度もあるが、本人自身の戦闘能力は低い為、大抵はサクッと終わる事が多い。言うなればエースパイロットなのに、肝心の戦闘機無しで相手と戦う様な物だ。

 

「次は拷問担当のチュクウ。この様な見た目ですが、その実は男です」

 

映っている写真は、何処からどう見ても女である。胸もしっかり膨らんでいる、ラテン系のスタイル抜群美女だ。正直これには長嶺も驚いている。

 

「女にしか見えないよ!?」

 

「いや、だが、よく見れば喉仏が出っ張っているしシルエットも男寄りだ」

 

「リットリオすげー。よく分かるわ」

 

「ヘルメースがオカマだと言うなら、この男は完璧な女装と言えるでしょう。この様な見た目でありながら、その性格は残忍そのもの。人を人とも思わぬ拷問で有名だそうです。時にはその牙は、仲間にすら及ぶとか。獲物は拳銃を主に使うそうです」

 

次に映ったのは陰険そうな、目の下に隈を作った男。明らかに神経質そうで、性格も悪そうである。

 

「内部粛清を担当する、言うなれば憲兵隊の長アドロアです。性格は冷酷であり、疑り深く常に味方すら疑っています。裏切りは決して許さず、裏切りや或いは不手際があった者は容赦なく粛清して回るそうで仲間からも恐れられている存在だそうです。無口だそうですが、唯一チュクウとは話せるそうで、仕事も共にする事が多いそうです。獲物はショットガンで、ナイフでの格闘戦も強いと言われています」

 

「なんかアレだよな、しくじりが発生したら癇癪起こしてそう」

 

「わかるわー!なんかあれだよね、拳銃乱射してそう」

 

「顔を真っ赤にしながら、であろうな。そういうのは悪役に1人はいるものさ」

 

会った事もないのに、ここまでボロクソに言われる位顔が悪い。尚、実際の所そういう性格である為、一応間違ってはいない。

 

「次は暗殺者のアラです。ハニートラップの達人でして、カルファンがよく知っていました。彼女曰く「ジョーカーの通り名で恐れられる、高い成功率を誇る凄腕のアサシン」だそうです。狙われれば最期、文字通りのババだそうですよ。獲物は近接武器のククリ刀です」

 

確かに黒髪に巨乳、更にエジプト系の美女。クレオパトラの再来だとか何とか言って、男達は群がりそうではある。

 

「指揮官はこういうのも好みかな?」

 

「まあ雰囲気は嫌いじゃない。だがなぁ、お前達のお陰でものの見事に美女のレベルが壊れてるから、こういうのを見ても何も感じん」

 

「嬉しいことを言ってくれじゃないか!見たまえ、鈴谷が照れているぞ!」

 

「て、照れてないし////!何言ってんのさリットリオー!」

 

なんか長嶺の周りだけ真っピンクな空気が漂っているが、グリムはそんな事気にしない。グリムは女よりも、パソコン弄ってる方が好きなのだ。

 

「はいはい、話を戻しても宜しいですか?」

 

「すまんすまん。で、あと何人残っているんだ?」

 

「1人ですよ。魔術担当のエグングンオヤ。ですがまあ、これはどうでも良いでしょう、死んでますし」

 

そう言いながら映し出された写真に、長嶺は見覚えがあった。つい数日前、ミギ・ワ・ギザ・ナ・マシュタニで殺した魔術師(?)の男だった。

 

「俺が焔菫で殺したアイツか」

 

「はい。今後この魔術がどうなるかはわかりませんが、どうやら大半が例の襲撃で死んでいるそうなので余り考えなくてもいいでしょう。以上が報告です」

 

「そうか。今後も調査は怠るな。取り敢えず1ヶ月を目処に攻め込みたいと思っているが、それで情報は集まりそうか?」

 

「恐らくは」

 

「ではこれを基準としよう」

 

いよいよ本格的に始動しようとしている、URへの全面侵攻。どうなるかは分からないが、一つ言えるのは碌な末路を辿る事はないのは確かである。

 

 

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