最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第九十八話ラーマエル

数十分後 ロンドン市内の高級ホテル ロイヤルスイート

『Sir長嶺、ニュースは見たか?』

 

「あぁ。いや、言ったのは俺だぜ?だけどよ、幾ら何でも早すぎない?」

 

『きっと最後の支えが、君に会う事だったのだろう。それが叶った今、もう思い残すことはないと……』

 

「この上なく光栄なことではあるが、同時にこの栄誉は謹んで辞退したいよ」

 

ホテルから帰ってすぐに、チャールズから連絡があった。その声はやはり落ち込んでおり、覇気がない。

 

『Sir長嶺。無理は承知で頼みたい。どうか是非とも、女王の、母の葬儀に出席して貰いたい。無論、外の一般客に紛れてで良い!どうか、母を見送ってやってくれないか?』

 

「無論そのつもりだ。死に顔を崇めないのは残念だが、見送ってから帰るさ」

 

『そうか……。そうかぁ……』

 

声に嗚咽が混じりだす。どうやら、いよいよ持って限界だったらしい。今くらいは騎士として、友達として、その涙を許そう。

 

『すまない……。みっともない声を聞かせてしまったな…………』

 

「いいさ。アンタの立場じゃ、そんなザマを見せられんだろ?今くらい、俺の前で幾らでも情けなくあれ。アンタと俺は対等、なんだろ?なら別に序列だ何だは必要ねぇ」

 

『………ありがとう、我が騎士よ』

 

チャールズはそう言うと電話を切った。エリザベスが死んだ事は悲しむべきことではあるが、生憎と今の長嶺には大量にやるべき事、考えなくてはならない事がある。そっちを考えるため、思考を切り替えた。

 

「雷蔵様。よろしければ、こちらをどうぞ」

 

ベルファストが淹れたのは、紅茶よりも透明度の高いお茶だった。香りもりんごに似た、甘い香りである。

 

「この香り、カモミールティーか」

 

「はい。今の私には、この位しかできませんから」

 

「ありがとう。だが、気にする必要はない。別に今更、知り合いがが死んだ程度で極度に落ち込んだりはしねーよ。それに婆さんは、1世紀以上生きた。それこそギネス級だ。正直知り合ってからずっと、すぐ死ぬとは思ってたしな。存外長生きだったが。だから気にしなくていい。まあ悲しいのは悲しいし、それを否定はしない。でも俺は大丈夫だ」

 

「……はぁ。承知しました。しかし、ご無理だけはなさりませんようにお願い致します」

 

「そんじゃご無理しないついでに、俺はもう寝るよ。流石に疲れたしな」

 

そのままベッドに倒れ込む様にして眠り、そのまま翌朝を迎えた。2人で朝食を摂っていると、イスマエルから連絡があった。何でもこの後、直に会いたいらしい。すぐに予定を付け、イスマエル宅近くのカフェで待ち合わせる事にした。

 

「イスマエル様は、こちらに寝返ってくれるでしょうか?」

 

「さぁ?まあでも、別に寝返って貰わなくてもいい。最悪敵対的な関係になっても、お互いの被害が最小限に収まるように取り計らうという密約が結べれば御の字だ。奴にも奴なりの忠義や守るべきものがある。それをかなぐり捨てさせるのは、俺とて本意じゃねぇ」

 

軽く紅茶を飲みながら談笑していると、外の駐車場に見覚えのある車が止まった。青のマクラーレン720S。イスマエルの車だ。

 

「待たせたなサンダーボルト。それに確か、あー、ベルファストさん?」

 

「ベルファストでございます、イスマエル様」

 

ベルファストは丁寧にお辞儀をしつつ、イスマエルに上品に微笑んだ。

その態度に若干困惑した様子のイスマエルは、おどおどとした様子でウェイターにメロンソーダを注文する。

 

「……それで、なんでまた俺を呼んだ?」

 

「まず第一に、お前達の目的はなんだ。何故俺たちを襲った?」

 

「URの経済力、それが欲しい。今の俺は知っての通り、国際指名手配中の人類最大の敵にして史上最悪のテロリストだ。前みたいに表では動きにくい。その点、お前の所属するURは金もコネも経済力もある。それを奪おうとするのは、まあ当然っちゃ当然の帰結だろ?」

 

「なら何故、俺を殺さない?俺はUR傘下のPMCの社長だ。殺せばいいだろ?」

 

「それは昨日言った通りだ」

 

昨日、長嶺の自作自演で行われたイスマエルの妻と娘の誘拐劇。その時に語った「共に暴れたい」というのは、長嶺の本心に他ならない。

 

「……相変わらず、その無茶苦茶っぷりは変わらないのな。しかもなまじ知識をつけた分、前みたいな可愛げゼロだ。なぁベルファストさんよ、コイツはずっとこんな感じなのか?」

 

「えぇ、出会った時からそうですよ」

 

「やっぱりな。よーし、分かった!お前の部下になってやるよ。だがこっちにも条件がある」

 

「あぁ。何でも言ってくれていいぞ」

 

イスマエルはメロンソーダを飲み干し、そのグラスをガン!とテーブルに叩きつけた。

 

「まずは金、給料だ。今の俺は月に8,800ポンド貰ってる。最低でも、その位は補償してもらいたい」

 

「良いだろう。支払いに関しては今度決めるとして、他には?」

 

こっちにはURから掻っ払っい、ついでにカジノで巻き上げた大量の金もある。現生でも支給できるし、無限仮想通貨製造機を使えば仮想通貨で支払うこともできる。

 

「第二に、今いる俺の部下達の世話だ。絶対に数人は連れていくが、それ以外の連中も家族みたいなものだ。次の就職先の世話位は手伝え」

 

「それだが、こちらとしては全員を受け入れる用意がある。望むのなら会社丸々こっちに来い。幸い、ウチは国際色豊かだ。衣食住は勿論、各地の文化的なあれこれ、宗教その他の問題もない。ただ、俺に対する忠誠や規則を遵守して貰うのは絶対だがな」

 

「勿論だ。クライアントに恥は欠かせないのがウチのモットーだ。規律もある。そして第三だが、ある意味これがもつ重要だ」

 

イスマエルはゴホンと咳払いして、長嶺の目をまっすぐ見た。

 

「家族を護ってくれ。俺だけじゃない。部下達全員のだ」

 

「ほう?」

 

「俺はこれから、URを裏切る。そうすれば報復で狙われるのは、その家族だ。だから、頼む。家族を護ってくれ」

 

イスマエルはテーブルに頭をぶつける勢いで頭を下げた。その姿にベルファストは目を丸くしていたが、長嶺はこう来ると分かっていたので驚きもせず、不敵な笑みを浮かべて答えた。

 

「オーライ。流石に俺の部下を付けるわけにはいかないが、コネをフル活用してどうにかしよう」

 

「……なら、契約は成立だ」

 

イスマエルは、長嶺に右手を差し出す。長嶺もそれに答え、ガッチリと握手を交わした。

 

「よろしく頼む」

 

「こちらこそ」

 

こうしてイスマエルは正式に長嶺の部下として、霞桜の一員になる事が決まった。この後はカフェで食事を摂ったり、イスマエルの家族と公園で遊んだりして平和に過ごした。

それから3日間は市内を観光したり、イスマエルが借りた部屋でゲーム大会したりして時間を潰すことになった。そして最終日、長嶺の姿はウェストミンスター寺院の屋根の上にあった。

 

「あれが、婆さんの棺を載せた葬列か」

 

今日、ウェストミンスター寺院では国葬が行われた。この後棺はデカい人力の台車に乗せられて、バッキンガム宮殿に近いウェリントン門に運ばれ、そこからロンドン西郊のウィンザー城に向けて移動する手筈になっている。その道中に、長嶺は奇跡を持って婆さんを送るのだ。

 

「八咫烏、犬神。頼むぞ」

 

「任せて!」

「任されよ!」

 

この為だけに、わざわざ犬神と八咫烏を呼びつけたのだから長嶺の本気度が伺える。まず犬神が長嶺の指示で、この辺り一帯にいる人間全員に術をかける。今から聞こえる長嶺の声を無作為の適当な声に聞こえるようなり、尚且つ自分の使う言語に翻訳されるという術だ。

 

「八咫烏、備えろ」

 

「いつでも良いぞ!」

 

「それじゃ… 神よ、この者の生き道に祝福を与えたまえ。神よ、この者の到来を神聖なる焔をもって迎えたまえ。神よ、彼の者が迷わぬように道を示したまえ。神よ、奇跡を持ってこの者の別れを惜しむ者達に応えたまえ」

 

葬列は長嶺の言葉に足を止めた。それだけじゃない。周りに居た警備の警察官、一般人、来賓の各国要人達も騒ぎ出す。

 

「焔舞」

 

次の瞬間、空には真っ赤な炎の4つの十字架が現れた。それを合図に、まあまあ巨大化した八咫烏が飛来。葬列の真上を何度か周回する。突如現れた巨大なカラスと、謎の4つの炎の十字架に葬列は奇跡だ何だと騒ぎ出す。

そんな中、この奇跡を見てその理由を分かった者達がいた。ロイヤルファミリーとハーリング、そして天皇陛下である。彼らは皆、長嶺と神授才の事を知っている。十字架が出た時にすぐこれが長嶺なりの見送りだと分かった

 

「じゃあなエリザベス婆さん。今度はあの世で会おうぜ」

 

—————アップルパイとお茶を用意しておくわね

 

「ッ!?」

 

誰かが長嶺の後ろに立っている気がして、すぐ振り返るが誰もいない。当然だ。ここは寺院の屋根の上で、周りに人なんているはずがない。だがその代わりに、長嶺のすぐ横を1羽のヨーロッパコマドリが飛び去っていった。しかももう1羽が上にいて、2羽は長い間待ち望んでいたかのように遠い空へと飛び去っていった。

 

「……どうやら、奇跡ってのは本当にあるんだな」

 

 

 

数日後 セカンド・エノ 執務室

「グリム、報告を」

 

「はい。今回のイスマエル、いえ。第六大隊大隊長ラーマエルと共に合流したのは、彼傘下のPMC兵が1052名です。現在人員と必要物資の空輸を継続しており、今日中には終了予定です」

 

「兵士達の練度については?」

 

「新参としては申し分ないでしょうや。元々雇われで金次第で戦場に赴く戦争屋ですんで、元の伸び代とかは大いにあるんですわ。後はちょいとスキルと知識を身につけりゃ、こっちと対等に肩並べますぜ」

 

当面の訓練を面倒見ることになったバルクからの報告を聞く限り、兵士としては使い物になるのだろう。問題は規律を始めとした、生活面での話だ。知っての通りここは、女性の割合が高い上に艦娘とKAN-SENは全員が全員、揃いも揃って美女か美少女で構成されている。普通ならセクハラやレイプ事件が起きたって何ら可笑しくない。それが発生していないのは一重に、霞桜の待遇の良さと厳しい規律、そして長嶺への恐怖から成り立っている。

元より霞桜は非合法組織ではあるが、しっかり給料その他は出ているし福利厚生面もかなり気を使っている。給料は下っ端の所謂一兵卒で80万円相当であり、ここに戦闘を行えば各種手当やらが随時加算されていく。ボーナスも存在し、高い戦果を上げた場合は別途賞与がある。衣食住は最低限、と言いつつ考えられる中では最高グレード級の物を無償で提供しており、何か戦闘や業務で必要な物を自前で買う場合は何にでも補助が付く。

その一方で隊内には厳しい規律も存在する。規律の中身自体は至極真っ当な物であり、例えば「仲間内での殺し合いは御法度」だとか「盗み禁止」の様なものや「喧嘩をするのは許すが殴り合いのみに限る」という、ちょっと特殊なものも存在する。だがこれら規律を破った場合の罰則は細かく決められており、始末書や営倉入りの様なよく聞く物から、「実弾演習に身一つで放り込まれ四方八方から撃たれまくる」とか「ジャングルに1人置き去り」の様な命の危機に関わる罰則、果ては「拷問による処刑」まである。

ご覧のように極端なまでの飴と鞭がありメリハリがあるが、これら罰則以上に恐れているのが長嶺雷蔵という個人である。知っての通り長嶺は味方には優しすぎるくらいに優しいが、一度敵と出会えば凡ゆる手段を用いて殺しにかかる。しかも例え霞桜全員が力を合わせて戦っても、まず勝てないとかいう化け物並みの強さを持っている。この矛先に自分に向けば最期、確実に死ぬわけでこれが最大の抑止力として機能しているのだ。

 

「部屋の方は足りるか?」

 

「部屋自体は足りています。しかしながら用意はできていないので、数日間は体育館内で避難所暮らしの様にして貰いますよ」

 

「そうか。まあ、そこは我慢してもらおう」

 

長嶺はそう言いつつ、書類に手早くサインをしていく。そうしていると、執務室にあの男が入ってきた。

 

「入るぞ、サンダーボルト」

 

「イスマエル。いや、ラーマエルと言うべきだな。よく来た!」

 

イスマエル改めラーマエルだ。ラーマエルは執務机の前に立っている2人を、まるで品定めをするかのようにじっと見る。

 

「アンタ、かなり強いな。そっちのも、弱くはないが頭か?」

 

「今度改めて機会は作るが、先に紹介しておこう。そこの眼鏡掛けているのは、副長兼本部大隊大隊長のグリム。そっちの筋骨の塊みてぇのは、第三大隊大隊長のバルクだ」

 

「よろしくお願いしますラーマエル。歓迎しますよ」

 

「よろしく頼むぜ、ラーマエル!」

 

「あぁ。よろしく頼む」

 

取り敢えずは好感触らしい。早急に幹部会を開き、すぐにでも顔合わせを済ませたい所だが、まだやるべき事がある。長嶺はラーマエルを連れて、工廠区画へと向かった。

 

「ラーマエル、お前の役職は知っているな?」

 

「第七大隊の大隊長だろ?」

 

「そうだ。だがお前の仕事は大隊長としての業務と同時に、最前線で戦うことが求められる」

 

「……どういう意味だ?」

 

「基本的に何とか長ってつく役職は、戦闘中、後方にいる事が多い。大隊長ともなれば尚更だ。大抵は司令部のテントから戦況を見て、部下である兵士を動かすのが仕事だ。兵士を動かすというのは同じだが、ここでは基本的に前線に立って戦う。言うなれば兵士達を勇気付ける為の象徴として、最前線に立ってもらう。

その分、大隊長には様々な特権が与えられる。その1つに、専用兵器の所持というのがある。これはネジ1本に至るまで、全てを大隊長専用に調整が施された正真正銘の専用ワンオフ武器だ。これからお前の専用兵装を作る」

 

専用兵装という言葉に、ラーマエルは目を輝かせていた。戦士にとって自分だけに特別に作られた武器というのは、この上ない名誉であり一種の夢でもある。それを所持できるというのは、とてつもなく喜ばしい事なのだ。

 

「ここだ。今度案内するが、ここが工廠区画になる。武器やら装備やら、何かしら問題があればここに来い。新規開発から修理まで、大体の事はここで完結できる」

 

「あっ、お疲れ様です総長!」

 

「おう。レリックはいるか?」

 

「レリック隊長なら奥の設計室に居るはずですが、ここ最近寝てないみたいですんで……」

 

「あー、うん。わかった」

 

もうこの時点で嫌な予感しかしない。起きていることを願いたいが、せめて兵装の要望だけでもして貰いたい。

 

「なぁサンダーボルト?その、今から誰と会うんだ?」

 

「第二大隊の大隊長だ。コードネームはレリック。大隊長だが、メインは技術開発だ。この施設の設計も、兵器の設計も、なんでも出来る霞桜の技術屋だな」

 

話している内にレリックのいる作業室についたが、何だか周囲の空気が淀んでいて重い。流石に孤独死とかはしてないだろうが、威圧感というかネットリしているというか、開けるのを憚られる空気だ。

 

「入るぞレリック!」

 

ドアを開け中に入ると、レリックはいた。デスクに向かっている。だがその周囲には書類の山と、ファイリングした資料の山が積み重なっており、机に入りきらない分は床に散らばっている始末だ。

 

「お、おぉ……」

 

「総隊長、おひさ。どうした?」

 

「この間言ってた新入りの専用兵装の件だ。設計を頼みたい」

 

「任せろ!!」

 

入ってきた瞬間は髪はボサボサ、目にはマジックでも塗ったのかと突っ込みたくなる位の濃ゆい隈、唇カサカサの死人のような見た目だったのに、設計と言った瞬間には目を輝かせ、まるで元気という名の成分を直接注入したかの様に活き活きとしだした。

 

「(さ、サンダーボルト!?これ大丈夫なのか!?)」

 

「(慣れろ。いつもの事だ)」

 

「(えぇ………)」

 

ラーマエルもこれまで様々な戦場を渡り歩いたことで、ワールドクラスの奇人変人は目にしてきた。だが目の前の男は、その中でもかなりの部類だろう。歴代1位かもしれない。

 

「それで!アンタは一体どんな武器がいいんだ!?」

 

「あ、あー。えーっとだな、俺はメインでリボルバーを使っているんだが……」

 

「なら作ろう!何か要望は!?」

 

「大口径の物を使いたい。それから……」

 

何やら色々と要望が出ている様で、その度にレリックはパソコンにそれを打ち込んでいく。暫くすると様々な設計図が投影され、今度は色々とコンセプトを決めている様だ。

 

「リボルバーはロマンだ。それにジャムを起こしにくいというメリットがある。だが継戦能力がな」

 

「ならここを……」

 

「こんなのができるのか!?」

 

「任せて!」

 

この感じだと何やら時間がかかりそうなので、久しぶりにこの工廠区画を見て回ることにした。最近は戦力強化の為に、様々な新兵器群が開発、量産されており見ていて楽しい。

 

「あーれ、総隊長?どうしたんですか?」

 

「おう、ヴァーリか。いや、ちょっと暇つぶしがてらフラーっと」

 

「そうですか。なら、あれ見ますか?新兵器の大型戦車」

 

「戦車……チャリオットか!?え、アレもう完成したのか!?」

 

「もう組み立ててます。こっちですよ」

 

レリックの副官であるバーリに連れられ、やって来たのは奥の方にある大型の作業室。そこにあったのは、最早『戦車』という形容が烏滸がましい程に巨大な機甲兵器であった。

 

「設計図とか模型の段階からデカいのは分かっていたが、まさかこれ程とはな」

 

「長さだけなら、あのラーテ並みですからね」

 

ラーテというのは、かつてナチスドイツが第二次世界大戦中に計画した陸上戦艦である。シャルンホルスト級戦艦の主砲、28cm三連装砲の真ん中の砲身を撤去して搭載する予定だったという化け物兵器だ。当然、そんなのを作ればマトモに運用できる訳ないので結局は頓挫した。

同規模のチャリオットではあるが、こちらは最初から殲滅を目的に運用されている。普通であれば軍隊は戦闘後にそこを占領する事が殆どだ。対してこちらは、そんなのは一切考えていない。前提が違えば、使える兵器や戦法も変わってくる。

 

「都市内部での運用は余り向きませんが、広い場所での運用には適しています。というか街を破壊しながらというのなら、寧ろ1番いい兵器でしょう。

それにラーテと違ってエンジンの馬力も充分ありますし、下部にホバー装置を搭載してますんで、浮きこそしませんが素早く動けますよ」

 

「我々に似合っている兵器だな」

 

見れば見るほどカッコいい。というかこれ、デザインが何処ぞのカタフラクトに似ている。大方レリック辺りが影響を受けたのだろう。

なんてことを考えていると、ふと思い付いてしまった。ラーマエルはSASに入る前、戦車乗りとしての訓練も受けており戦車を動かせる。そればかりか、かなり優秀だったはずだ。

 

「なぁ、バーリ。コイツ、改造できるか?」

 

「詳しく聞きましょうか」

 

「新入りの大隊長、ラーマエルだがな、戦車とかの大型兵器に乗せても強いんだ。コイツ、専用のに改修できねーか?」

 

「いや、それなら丁度いいものが。俺の部屋に来てください!」

 

今でこそ前線でバリバリ戦うバーリだが、元々は技術者である。兵器の設計もできる男であり、レリックの右腕なのだ。

 

「実を言うと、あのチャリオットは俺が設計したんです。元はレリック大隊長だったんですが、余りにコストが高くて。それで本来の仕様よりも、アレはかなりダウングレードしてるんですよ。でもちょっと改修すれば…」

 

バーリが見せてきたチャリオットの3Dモデルは、さっきのチャリオットよりも大型かつ重武装であった。重武装すぎて、チャリオットとは似ても似つかなくなっていると言っていい位に違う。

 

「コイツはどうですか?」

 

「俺的には悪くないと思う。よし、早速レリックの部屋に行くぞ!」

 

「はい!」

 

バーリはノートパソコン片手に、レリックの研究室に走る。丁度研究室からラーマエルが出てきたので、両腕を2人で引っ掴んで押し戻す。

 

「ちょー!?ちょちょちょ!!!!」

 

「……何の用?眠い」

 

「あー待て待てレリック!チャリオット、お前の原案のヤツ作ろうぜ!」

 

「詳しく!!」

 

レリックとラーマエルにラーマエルが戦車乗りの才能があること。どうせなら専用兵器にしたいこと。そして専用兵器なら、お前設計の原案チャリオットが良いことを伝えた。

 

「そういう事なら、まずは設計を見たい。どんな戦車だ?」

 

「バーリ!!」

 

「どうぞ!」

 

「おいおいおいおい……コイツは……ハハッ!気に入ったぜ!!」

 

ラーマエルは年甲斐もなく、目の前に映し出された兵器に心が躍ってしまった。300mmの主砲、レーザー砲、聞いたこともない大口径のバルカン砲と20mmバルカン砲、それにミサイルまで付いている。なんともご機嫌な兵器だ。

 

「決めたぜサンダーボルト。俺はコイツに乗る」

 

「なら早速作ろう!どうせならエンジンも弄るか。そうだ!ホバーの数と出力を上げて……」

 

何やら色々と考え始めるレリック。恐らく何かしらヤベェ代物に魔改造する気なのだろうが、こればっかりはやって貰わなければ本人以外はわからない。というかこのモードに入ると、周りの声は一切聞こえずコミュニケーションは取れない。

 

「バーリ、後頼んだ」

 

「あっ、ちょっと!」

 

「ラーマエル、最初の総隊長命令だ。逃げるぞ!!」

 

「はいよ!」

 

ラーマエルと長嶺は猛ダッシュで研究室を出て、そのまま工廠区画から逃げ出した。後はバーリがどうにかしてくれるだろうと、そう願って。

 

「それにしても、ここはいい場所だな!おもしろい!!!!」

 

「気に入ってもらえたようで何より。まだまだネタ切れには程遠いから心配すんな」

 

まだこのセカンド・エノにはヤベェのが大量にいる。言ってしまえば、さっきまでのは全て単なる入り口に過ぎない。今後、このラーマエルという男の加入により、更に面白くなるだろう。それを考えるだけでも、長嶺のニヤニヤは止まらない。

 

   

 

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