最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第九話鎮守府カレー大会

鹿児島基地襲撃から1ヶ月、鎮守府ではある催しが始まろうとしていた。

 

「なんだその、鎮守府カレー大会ってのは」

 

「はい、毎週金曜のカレーのレシピを考案してもらおうと思ってまして、どうせなら艦娘達思い思いのカレーを作って貰い、優勝者のレシピを採用するんです」

 

間宮が説明し、ポスターを差し出す。しかしそこには

 

「なあ、なんで「毎年恒例」と「第一回」が混ざってんだ?」

 

「ホントは初開催なんですけど、気分的に毎年恒例にしときました」

 

「あ、そう」

 

なんか突っ込んだら面倒そうな為、敢えて突っ込まない長嶺。そんなのは気にせず、間宮は話を続ける。

 

「今の所の参加者は第六駆逐隊の皆、足柄さんと羽黒さん、島風ちゃん、翔鶴さんと瑞鶴さん、金剛さんと比叡さん、メビウスさんとオメガさん、それからバルクさんとマーリンさんですね。提督さんには審査員をって、提督さん!?」

 

顔が青を通り越して、真っ白になってる長嶺を見てビックリする間宮。それもその筈、生活力が皆無(長嶺以外)の霞桜隊員の中でもバルク&マーリンのコンビは特に酷いのである。どちらも料理をすれば包丁は全て刃こぼれし、まな板は燃え、鍋はザルと化し、微塵切りでもしよう物なら、キッチンごとを食材が木っ端微塵に吹き飛び、味噌汁を作れば硫化水素やらシアン化合物が発生したりと、料理するだけで被害がトンデモない事になるのである。

因みに昔、二人を潜入任務に出して二人で暮らさせた所、暮らし始めた翌日には自衛隊の化学防護隊が出動する大騒動となった事もある。尚、原因はインスタントラーメンを作ろうとしてアレンジしたら、どう言う訳かソマンを生成してしまったらしい。

 

「ヤバいヤバいヤバい!!」

 

「て、提督さん?」

 

「間宮、店に戻りなさい?」

 

「え、あ、あの」

 

「いいから」

 

「は、はいぃぃぃ!!!!」

 

そんな訳で間宮に出て行って貰い、速攻で対策会議を開く。

 

「さて二人とも、今回の状況はトンデモなくヤバい。我が隊内一のメシマズ連中二人が、今度開催される鎮守府カレー大会にエントリーしてしまった」

 

「「!?」」

 

二人とも驚愕と絶望の顔をしている。因みに二人共、メシマズコンビのハンバーグを無理矢理食わされた事があり、そのまんまぶっ倒れて3週間近く入院した事がある。

 

「総隊長、私としては今すぐにでも海外逃亡したいんですが。良いですよね?かまいませんよね?そうと言ってください。というか言いなさい」

 

「レリック、私もお供しますよ。一緒にレバノンにでも行きましょう」

 

2人して逃げようとする辺り、とてつもなくヤバい事が分かるであろう。内心長嶺も今すぐにでも宇宙に飛び出して、イスカンダル星にでもワープしたいレベルである。しかし艦娘と霞桜の隊員達という守るべき家族が居る以上、逃げる訳には行かない。

 

「ホントに逃げるのか?」

 

「こればかりは譲れません!!」

 

「右に同じ!!」

 

「お前達はアイツらを、可愛い部下や艦娘という仲間を捨ててでも行くのか?」

 

「クッ.......」

 

「.......」

 

コレを言われては、ぐうの音も出ない。

 

「あ、そうです!2人に連絡を取って、出場を取り消させれば良いんですよ!!」

 

「あ!!」

 

「その手があった!」

 

グリムの思いつきに、長嶺とマーリンも一気に顔が明るくなる。「俺達の勝利だ‼︎」と言わんばかりに希望に満ち溢れた顔をするが、直ぐに絶望に切り替わる事となる。

 

「そうと決まれば早速連絡してきます!」

 

そんな訳で連絡するも

 

「そう言えば今二人とも、フィンランドで暗殺任務中じゃ.......」

 

「「あ」」

 

マーリンが呟いた一言で絶望に逆戻りする三人。しかも調べたら帰国するのは大会当日であり、出場を取り消させたり妨害したりするのは不可能であった。

 

「八方塞がりですか.......」

 

「いや、まだ手はある。本番でヤバい調味料を片っ端から、狙撃で破壊する!!」

 

「ならば、私の出番ですね」

 

マーリンが狙撃銃を撫で、いつも以上に真剣な顔で言う。

 

「あぁ。俺は審査員としての役目がある以上、審査席を動く事ができない。頼りはお前の狙撃と、グリムのバックアップだ」

 

「了解しました。ここまで来たら、やるしか無いですね」

 

「最良の結果をお見せしましょう。というか、お見せできないのは死を意味しますね」

 

「確かにな。何が何でも阻止するぞ!!」

 

「「了解!!」」

 

阻止計画の立案をしている頃、第六駆逐隊の面々はカレーの試作を開始していたのだが

 

 

「高速クッキング、開始!」

 

ボォォォォォォォォォ!!

 

工廠に鍋を持っていき、まさかの高速建造剤、いわゆるバーナーを使って無理矢理煮込もうするなど、こちらも十分ヤバい料理を作っていた。この鎮守府にマトモな料理人は居るのだろうか.......

まあ勿論、数千度の高音に普通の鍋では耐える事は出来ず内容物のカレーの具材共々、黒焦げの炭へと変貌する。

 

「暁が煮えるのを待てないなんて言うから.......」

 

「あ、暁のせいだって言うの⁉︎」

 

「最初から私に任せておけば良かったのよ」

 

「何ですって!?」

 

暁と雷が喧嘩を始めるし、

 

「二人とも悪く無いのです。ヒック、変なことを思い付いた電が悪いのです.......」

 

電は責任を感じてガチ泣きし始めるという、プチ修羅場のカオスな空間になる。見兼ねた響が3人の頭を叩いて落ち着かせる。

 

「少し落ち着こう。第六みんなで優勝するんだろ?」

 

「そうよね。みんなで一人前のレディーを目指すんだもんね」

「金剛さん達に煽られて、熱くなりすぎちゃったかも」

「反省なのです」

 

この気持ちの切り替え用は流石である。さて、気を取り直してカレーを作ろうにも、鍋は炭と化して使い物には先ずならない。ならどうするか?普通なら新しく購入するとか、他の部屋から持ってくるとかを考えるだろう。所が四人は予想の斜め上の解答を出してくる。

 

「夕張さんに作って貰えばいいのです!」

 

なんとオーダーメイドで作って貰うのである。しかもタイミング良く夕張が工廠に入ってきて、二つ返事でOKして貰い、ついでに明石も参加して鍋を作って貰う。

 

カン!カン!カン!

 

艦これユーザーなら聞いた事であるだろう解体音を鳴らしながら鍋を作る二人。え?わからない。というか艦これユーザーでは無い。そんな方はYouTube等で「恋の2-4-11」と検索しよう。冒頭に流れてくる音が、その解体音である。

 

「できましたよ〜」

 

「みんなが遠征で取ってきてくれたボーキサイト、全部使ったから熱伝導率も高い鍋に仕上がったわ」

 

「ついでに持ち手にはナイフ用の滑り止めグローブを付けたので、水を触った手でも滑りません」

 

夕張と明石の説明に目を輝かせる四人。お礼を言って工廠を後にすると、今度は間宮の所に行って美味しいカレーの作り方を聞きに行く。

 

「美味しいカレーの作り方?愛情と言う名のスパイスかしら」

 

「「「「そう言うのはいい(の)です」」」」

 

「い、意外と現実的なのね。ちょっと眉唾だけど、東のボーキボトムサウンドにある幻のボーキサイトを使えば、どんな料理でも最高の味になるって聞いた事があるわ」

 

善は急げでボーキボトムサウンド目指して遠征に行く第六駆逐隊。結果はと言うと、失敗である。まあ人生そう甘く無い。それを悟ったのか、四人は自力での試作と改善を重ね、時は満ちた。

 

 

 

1週間後 鎮守府カレー大会当日

「はーい、皆さんお待ちかね‼︎鎮守府カレー大会開幕。実況は私、金剛型四番艦『霧島』!!現場実況は」

 

「艦隊のアイドル、那珂ちゃんでーす!それじゃぁ、出場者を紹介しちゃうよ?」

 

「バーニングカレー、金剛さんと比叡さん!!」

 

「提督のハートを掴むのは、私達のカリーデース!!」

「気合、入れて、作ります!」

 

「五航戦の力を見せ付けるために来ました、瑞鶴さんと翔鶴さん!」

 

「瑞鶴にはカレーの女神が憑いていてくれるんだから!!」

「一航戦の先輩方に少しでも近付ける様なカレーを作ります」

 

「ごはんも深海悽艦もお残しは許さない。一航戦の赤城さん、加賀さん」

 

「五航戦のカレーなんかと一緒にしないで」

「一航戦の赤城いただき、作ります!」

 

「辛き事、島風の如し。島風さんです!!」

 

「これ以上辛くなっても知らないから!」

 

「お嫁さんにしたい艦娘ランキング一位の羽黒さんと、お嫁に行かせて上げたい艦娘ランキング一位の足柄さん!」

「那珂、ちょっと工廠に」

「私が押さえている内に、早く逃げてください那珂ちゃーん!!」

 

「遠征のスペシャリスト第六駆逐隊、暁さん、響さん、雷さん、電さんです」

 

「どうやら相当の鍛錬をしてきた見たいね。いいわ、約束通り相手してあげる」

 

「イェース、正々堂々勝負ネ!!」

 

「日本が世界に誇るエース級飛行隊、メビウス1さんとメビウス8ことオメガ11さん!!」

 

「美味しいカレーを振る舞おう」

「あいよ隊長」

 

「日本最強の特殊部隊の中隊長、バルクさんとレリックさん!!」

 

「俺達が組めば最強最恐だな‼︎」

「カレーの王に、俺達はなる」

 

「そして審査員は我らが最強の提督!怒れる武装の数々!!日本の守護神、長嶺雷蔵さん!!」

 

「みんな(バルクとレリック以外)頑張れ〜」

 

そんな訳で確実大波乱になる鎮守府カレー大会の火蓋は切って落とされた。ギャラリー達がいるキッチン付近とは離れた、庁舎の屋上の屋根に北上&大井の二人組がいた。

 

「お、始まった」

 

「楽しそうね。これ以上北上さんと語らいを邪魔するのなら、九三式酸素魚雷片舷20射線ぶち込みますけど」

 

大井が目が笑ってないヤバい笑顔で言うが、それを無視して続ける北上さん。

 

「でもカレーか。どっちかって言うと、私肉じゃが派なんだよね」

 

「まあ、私の得意料理じゃないですか!!良妻賢母と言えば肉じゃが、良妻賢母と言えば私と言うくらいに」

 

ここぞとかばかりにアピールする大井。正直、必死すぎてドン引きである。

 

「そうなん?なら今度食べてみたいな、大井っちの肉じゃが」

 

「わかりました〜、幸せにします」

 

「楽しみにしてるね」

 

なんか不適切な返答があったが、気にしなーい。というか大井っちの目がガチで、結構怖い。

 

「所でさ、アレ何」

 

「え?」

 

後ろを振り返ると、完全装備のマーリンとスポッターの霞桜隊員がいたのである。

 

「あの、何してるんです?」

 

軽く怒気を孕んで話す大井。

 

「妨害工作です」

 

「「は?」」

 

事情を知らない2人は素っ頓狂な返事しかできない。

 

「勿論大会の公正さは保証しますが、約2名、キッチンに立たせると命の危機的状況を作り出す者が居ますので、その妨害です」

 

狙撃されるかもしれない何てのは知る由も無く、滞りなく進む大会。だがしかし、いきなりヤバい事が起きたのである。

 

「ゥウ〜ン。全ての具材が溶け込んだ、この黄金のカリースープ。優勝はコレで決まりデース!そうしたら提督も、モォー、ダメだよ提督ぅ。私は食後のデザートネ!!」

 

すんません、食べる予定は今の所入って無いんすけど。by長嶺

 

(このカレー、具が一切入ってない‼︎お姉様に恥は欠かせません‼︎こんな事もあろうかと)

「えぇーい!!」

 

なんか絶対モザイクが掛かるであろう、見るからにヤバい何かをぶち込む比叡。さっきまで美味そうな黄金色に輝いていたスープは、一気にジャイアンスープみたく紫に変色し怪しげな煙を出し始める。

 

「これは私とお姉様の合作、愛の共同作業!あーハァ、なんちゃってー!!」

 

「それでは比叡!一緒に味見デース!!」

 

「あちょ、絶対それヤバい」

 

長嶺が突っ込むがそんなのは聞こえる筈もなく、小皿に移してスープを飲む二人。案の定、顔が緑、青、赤、黄、緑に変色し卒倒する。

 

「カゥント、1、2、3!!お姉様方、まさかのダブルノックダウン、です!!!!」

 

横にあるベルを鳴らして、試合終了のゴングが如く会場に響くベルの音。多分霧島、テンションバグってる。

 

「き、霧島さん?」

 

那珂ちゃんも困惑である。

 

 

「栄えある一航戦に小細工など必要ないわ。そうよね、赤城さん?」

 

ほのとおりよ、はかさん(その通りよ、加賀さん)

 

なんと赤城、加賀が切ったじゃがいもを調理なんてせずに、そのまんま口に放り込んでいるのである。しかも大量に食べた結果、リスの頬袋みたくなっている。

 

「加賀さん見事なスループッス、今のは赤城さんの行動をした件と、食材をパスした件を掛けた解説ですぅ」

 

「自分で説明しちゃうの!?霧島さん、なんかテンション変じゃない!?」

 

 

「一航戦、恐るるに足らずね!!」

 

「そんな事を言ってはダメよ瑞鶴。五航戦の私たちが慢心してはいけないわ」

 

「わかってるって翔鶴姉。あ、翔鶴姉スカートにカレー跳ねてる‼︎」

 

「え!?どこどこ!!」

 

「ホラ、ここ」

 

「ちょっと待って、スカートにはあんまり触らないで」

 

その直後、何かに躓いたのか盛大にこける翔鶴。そのせいか、なんと瑞鶴が翔鶴のスカートを脱がせてしまったのである。しかも翔鶴の下着がピンク色のセクシーなデザインであったのである。

 

「もぉー、なんで私ばっかり!!」

 

「ちょ、翔鶴姉!わざとじゃないの!!」

 

「ありがとうございます、こう言うの待っていました」

 

「霧島さん声も顔も冷静だけど、実はテンションMAXだよね⁉︎」

 

こんなカオスな中、島風がなんと一番にカレーを完成させた。

 

「ふんふふーん♪できたー!」

 

「ねぇ島風ちゃん、もしかしてソレ、レトルトカレーじゃ」

 

「ん?だって、速いもん」

 

「速いからって、流石にレトルトは」

 

「ごちそうさまー」

 

「食べるのも速!!ていうか、島風ちゃんが食べちゃダメ!!」

 

 

「ハァ、鎮守府にマトモな料理人って居ないのか?」

 

「というか完全に各チームが自滅していってますね。実質、もう半数が脱落、もしくは作業が進んでいません」

 

本部席にいる長嶺とグリムが苦笑いしながらコメントしあう。でもって問題のグリム達はと言うと。

 

「よっしゃレリック!行くぞ!!」

 

「任せろ!!」

 

ドルドルドルドルドルドル

 

まさかの包丁を使わず、マニュピレータに持たせたチェーンソーで野菜を裁断しているのである。勿論、野菜と一緒にまな板もズタズタである。しかも肉に至ってはバルクが怪力で、引きちぎって裁断している。側から見たら、料理してる様には確実に見えない。

 

「よし。バルク、アレを」

 

「はいよ!」

 

そう言うとバルクは、巨大な遠心分離機を持ってくる。

 

「アイツら、遠心分離機を持ってきて何する気だ?分子ガストロノミーにでも目覚めた?」

 

「何か、いやーな予感が」

 

「コレをセットしてと」

 

何とセットしたのは本作第六話にて登場した、あのヤバい薬品である。

 

「アレ振ったら爆発するやつだ!!グリム、EMPで無力化しろぉ!!!!」

 

「了解!」

 

MGS4のジョニーみたく、ウェアラブルコンピュータを使って遠心分離機の停止を試みるが

 

「EMP対策されてます!!」

 

「ならコードを狙撃で切る!」

 

 

「隊長、総隊長からのオーダーです。狙撃で遠心分離機のコードを切断せよと」

 

「OK」

 

ダァン!!

 

得意の狙撃でコードを切断し、間一髪で遠心分離機を停止させる。

 

「命中!」

 

スポッターの兵がそう告げる。一安心ではあるが、油断はできない。

 

 

「あれ?止まった」

 

「おいレリック、コードが断線してるぞ」

 

「ホントだ。まあいい、取り敢えず土産を出して」

 

「よしきた!」

 

今度は何とくさやと、我が作品では常連のフィンランドのヤバい化学兵器、シュールストレミング(発酵度マシマシ、腐りかけ)を出してきたのである。しかも合計10缶も。

 

「入れるぞ」

 

開けた瞬間、周りに吐き気を催すレベルで臭い臭気が広がり、艦娘達も女の子の出しちゃいけない声があちこちから聞こえてくる。

 

「くっさぁ!?!?臭いで死ぬとか、お笑いにもならんぞ!!」

 

「シュールストレミング、恐るべし」

 

しかし二人だけ、この状況を救う勇者がいた。

 

ダァン!!

 

マーリンとスポッター兵である。開ける瞬間に弾丸で缶を変形させ、内部のガスを利用して爆発させる。ついでに周りにあった色々な薬品やら缶やらに引火し、大爆発を起こして二人は黒焦げになる。

 

「アガガガガ」

「我が生涯に一片の悔い有り」

 

いや悔い有るんかい。

何はともあれ、取り敢えずはヤバい奴2人は無力化した為、後は純粋に大会を楽しむこととなった。

 

「何かバルクさん達、吹き飛んだわね」

 

「何かしらこの、周りが脱落していく虚しさは」

 

「それより暁ちゃん、味見お願いなのです」

 

「美味しい!これなら勝ったも同然よ!!」

 

第六駆逐隊の頑張りが報われた瞬間である。しかし

 

「それはどうかしら?羽黒、お願い」

 

「は、はい!皆さん、どうぞ」

 

そう言って味見用のカレーを差し出す。それを飲む。

 

「な、ナニコレ、かりゃしゅぎる!!」

「でも凄く美味しいのです!」

「痺れる様な辛さなのに、何処かまろやかでコクがある。コレは後引く味だわ」

「は、ハラショー」

 

「な、何で!何で暁達のカレーとはこんなに違うの!?」

 

「これまでの知識と経験、それに数多の試行錯誤によって生み出された黄金比のスパイス。私とあなた達とでは年季が違うのよ‼︎それに何よりも、背負ってる重みが違う‼︎次の機会こそ確実に決める為の女子力、お料理No. 1という称号が私には必要なのよ!もうね、グスッ後がないの.......」

 

一気に絶対零度の重く寒い空気になる会場。その場にいる全員が絶望に染まったヤバい顔となる。

 

「あぁー、一気に会場がお通夜に!!今日みんなお祭り気分なのに、この人ガチ中のガチ、大ガチだよ!?!?」

 

「容赦なく教え子の心を折にいきますね。流石飢えた狼!」

 

「ヒッグ、ごめんなさい許してください。私はもう、ヤケ酒に沈む姉さんを見たくないんですぅ」

 

「そして羽黒さんはガチ泣き!?!?」

 

見事なまでに重っ苦しい空気に支配され、お祭り気分は遥か彼方に消えていった。その代わりにやってきたお通夜モードに支配され、楽しい筈の大会は、大人の出遅れ女性の末路とそれを間近で見る近親者の気持ちという、ネガティブ待ったなしの物になる。

 

「第六駆逐隊!!貴様らの頑張りは、その程度で折れる程脆いのか!?!?」

 

絶望に打ちひしがられた第六駆逐隊に、長嶺がエールを送る。

 

「お前達はここまで苦労を重ねた。ならば、後は当たって砕けろだ。成功するか否か、それは未来人か神にしか分からん。だが諦めれば、確実に努力は水泡に化す事になるぞ!」

 

「提督」

「どうしてそんなにも私達を」

 

「俺だけではない。というかぶっちゃけ、この重苦しい空気を変えてくれ!!」

 

「頑張ってみんな!」

「頑張って!!立ち上がるっぽい!!」

「頑張れ!!第六駆逐隊!!!!」

「負けんなー!!第六ぅ!!!!!」

「勝てえぇぇぇ!!!!」

 

艦娘と隊員達から、大きな声援が贈られる。もう全員、マジで足柄の作った空気を一刻も早く変えたいのでヤケクソである。

 

「何とここで、第六駆逐隊コール!彼女達の頑張りが、遂に会場を動かしたというのでしょうか!?」

 

「オーホッホッホッ、小娘達が私の人生の重みに太刀打ちできると思ってぇ!?」

 

皆の声援を受け、立ち上がる第六駆逐隊!!

 

「少し、軽くなった」

「皆んなが呼んでくれるなら」

「私達は立ち上がるのです」

「そうよ、暁達は誓ったんだから!勝つって!!」

 

「いくわよ皆!!」

 

「「「オォーー!!」」」

 

「この死に損ないが‼︎何処からでもかかって来るといいわ!!!!」

 

足柄が完全にラスボスの魔王みたいな事になっている。因みに言っておくが、こんな壮大な事になっているが、唯のカレー大会である。

 

「第六駆逐隊立つ!今、鎮守府の命運をかけた戦いが始まるのです!!」

 

「これカレー大会だよね!?ねぇ!?!?」

 

そんな訳で試合終了である。結果として出せたのは第六駆逐隊、足柄、メビウスの三チームだけである。因みにメビウス達はこんな波乱の状況でも、堂々と自分達のペースで黙々と作っており、完全に空気だったのである。

 

「さあ、全てのカレーが出揃いました!いよいよ審査の時です」

 

「全てと言いつつ、たった3つしかないとか皆が気にする前に、審査行っちゃってー!!」

 

「では足柄達のから行くか」

ガブッ

「うお、辛」

 

「次は第六駆逐隊」

ガブッ

「ふむ、マイルド」

 

「最後、メビウス達」

ガブッ

「あ、うん」

 

「さて、判定は如何に!!」

 

「まあどれも美味いし、普通に全部優勝にしたいところだが、今回の優勝は第六駆逐隊だ!」

 

「なっ!?」

 

「残念」

 

「提督、理由を説明してください!!」

 

足柄が食ってかかる。そりゃあ、もう色々と後がないらしいので、当然の反応である。

 

「さっきも言った様に、本来なら全部優勝にしたい所だ。お前のカレーは確かに美味いが、辛すぎて多分駆逐艦とかには合わない。そしてメビウス達のカレーは味も丁度いいが、辛さの欲しい奴や甘くしたいと言った奴に合わせて味を変えると、本来の味が崩れてしまう。で、第六駆逐隊のは派生の効きやすい味付けで、艦娘達のニーズにあった辛さを提供できる。以上の点から、第六駆逐隊に優勝は決定した」

 

完璧なまでの解答に、一周回って清々しくなる足柄。そこからは第六駆逐隊のカレーが皆に振る舞われ、カレーパーティーとなった。

 

 

 

 

 

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