最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第百一話UR地獄のモーニング

同時刻 FOB B(ブラボー)付近 5km地点

「……バルク、相談がある」

 

『おぉ?レリックから相談事とは珍しい、言ってみろよ』

 

「ゼビオソ、仲間にしたい。同じ匂いがする」

 

レリックが言った言葉にバルクは予想外すぎて一瞬言葉を失うが、だがすぐに持ち直す。これから戦うゼビオソは爆弾魔であり、MIT、マサチューセッツ工科大学を中退とはいえトップの成績を持っていた男らしい。要はレリックと同じ技術屋である。

 

『それはテメェが決めたんだよな?総長や他の誰でもない、テメェ自身が』

 

「ずっと考えてた。で、今決めた」

 

『テメェが自分の意思を持つなんざ、まず殆ど無い。いいぜ、仲間にしよう。総長なら事後報告でも、笑って許してくれる!最悪怒られても、俺も一緒に怒られればノー問題!!』

 

「うん!お願いバルク!!」

 

『おうよ!!』

 

レリックとバルク。寡黙な頭脳系技術屋と豪快なパワー系弾幕ジャンキー野郎。性格も見た目も考え方すら対極と言っていい位に違う2人だが、これでも幼馴染である。レリックは独学で工学を収め、小学生低学年の段階でスポーツカー用のエンジンを自作し、高学年の頃には模型サイズとは言えジェットエンジンを制作。以来、色々な機械を生み出した天才である。対するバルクは地元最強の不良であり、12歳からは地下の違法格闘大会で初出場ながらチャンピオンとなり、以来ずっとベルトを守り続けてきた伝説のチャンピオンだった。

幸か不幸か2人の実家は隣同士であり、昔から一緒に遊びまくっていた。レリックは勉強や機械の知識を与え、対するバルクはレリックの身体を鍛え時には交渉や荒事から守る用心棒の様な役割を担っていたらしい。そんな訳で、数ある霞桜の隊員の中でもトップクラスに連携が取れる2人なのだ。これと同格なのは姉弟であるカルファンとベアキブルのコンビと、何組かいる兄弟ないし双子の連中だけだ。

 

『あー大隊長?ご歓談の所申し訳ないんですけどね、奴さんミサイルブチかましやがりました!!!!!』

 

バーリの報告は他の隊員と艦娘&KAN-SEN達にも聞こえており、全員が顔を強張らせる。だがそんな中でもレリックはいつも通りの無表情であり、バルクはニヤリと笑う。

 

『対策はあるんだろ、レリック!』

 

「ある。総員、メインシステムを戦闘モードに。迎撃してくれる」

 

『聞こえたな野郎共!!!!』

 

隊員達の乗るロードスレイブは次々に戦闘モードへと以降し、車体のあらゆる箇所から武器が出てくる。ショットガン、機関銃、機関砲、ライフル砲、迫撃砲、グレネードランチャー、ミサイルランチャー、ロケットランチャー、近接用に丸鋸やらチェーンソーやらドリルなんかも搭載している。

比較的中心部に固めて配置されている前線指揮車『パラディン』、機動本部車フェーズII『キャプテン』、総本部車『フォートコマンダー』といった車両群も武装を展開し戦闘準備を整える。

 

「レーダーとFCSで、敵弾は勝手に迎撃してくれる」

 

次の瞬間、ミサイルランチャーを搭載し、尚且つ種類が対空ミサイルである車両だけがミサイルを発射。敵ミサイルの飛来する方向へと飛んで行く。

 

『おぉ!!まるで映画だぜ!』

 

『気分は007ってな!!』

 

『ヒャッハーーーーー!!!!!』

 

隊員達は第二大隊、第三大隊関係なく喜んでいる。特に第三大隊はこういうのが大好きな連中が多い為、余計に喜び方が激しい。艦娘とKAN-SENにも好評なようで、興奮とまでは行かずとも驚き単純にすごいと思ってくれているらしい。

 

『ふぅん、悪くないじゃない』

 

『あら、思ったよりも色々ついてるんですね』

 

『男の子ってこういうのが好きなんでしょ?』

 

とか何とか言っていると、目の前で大爆発が起こる。間違いなくミサイルの迎撃に成功した証なのだが、明らかにその爆発が強すぎる。大爆発というか、馬鹿でかい火球が形成されているのだ。

 

『………え、何あれ』

 

『爆発だよな………』

 

「多分、燃料気化弾。絶対に窓を開けないで。普通の車なら溶ける温度だから、窓開けたら死ぬ。爆風も凄いから、気を付けて。引っくり返る」

 

燃料気化弾。FAEBとも呼ばれる兵器であり、火薬の爆発力ではなく衝撃波を用いる爆弾の一種である。普通の爆弾は火薬を爆発させて、その力を殺傷力として行使するのに対して、気化弾の場合は燃料を加圧、沸騰させて膨張、拡散させ広範囲かつ瞬間的に数千℃の高温と12気圧相当の衝撃波を発生させる代物である。

 

『また来やがった!!』

 

「大丈夫。車両の装甲は耐熱コーティングしてあるから、溶けたりはしない。だからこのまま突っ切る。窓さえ開けなければ死なない」

 

『それはミサイルが3倍くらいでもですか!?!?』

 

データリンクで送られてきたレーダー情報には、さっきの3倍以上のミサイルが接近して来ている事を示していた。勿論こちらもミサイルで迎撃するが、流石にこの数は捌ききれず突破され近くで爆発する。

 

『どぅおぉぉぉ!?!?!?』

 

『ねぇ今!!今ジュッて言った!!ジュッて言った!!!!』

 

『これ溶けない!?溶けないよね!?!?』

 

『嬢ちゃん落ち着けぇぇ!!!!!!』

 

お陰で無線では大絶叫中の叫び声が響き渡り、かなりカオスな状態だ。幾らダメージが無いとは言え、揺れるし炎に包まれるしで乗り心地は最悪。そもそも炎の中に飛び込むなんて、本能的に避けたい行為でもある。

 

『レリック大隊長!?これ大丈夫なんですか!!!!』

 

「大丈夫…………多分

 

『今多分って!!多分って言ったよなぁ!?!?』

 

「言ってないよ」

 

『あははは遺書書かなくちゃ』

 

『遺産も分けないと……あっ、遺産なんて無かったよ……』

 

『遺言書書く時間なんてあるかな……』

 

恐怖のあまり情緒がおかしくなる隊員達。一応あちこちの戦場を渡り歩いた猛者がこれなのだ、もっと精神が弱い艦娘&KAN-SENは酷い。完全に死ぬのを覚悟というか、諦めてしまっている。

 

『あぁ、空はあんなに青いのに……』

 

『自滅するものを守れる者はいない…!』

 

『多聞丸、今そっちに逝くね……』

 

もうこんな悲壮感漂いまくりの言葉が、無線のあちこちから聞こえてくる。どうにかミサイルの雨を叫び散らかしながら突破し、一行はFOBへと突入していく。

 

「さっきまでのお返しだ!!!!」

 

「おぉ!!野郎共、ガーランに続けぇ!!!!」

 

中に入るや否や、車から飛び出し素早く手近のテロリストを血祭りに上げる。さっきまでのFAEBミサイルの鬱憤が溜まりに溜まった隊員達からしてみれば、この位の事はどうってことない。

 

「いやー、俺もぶっちゃけ怖かったしな。という訳だ、テロリスト共。憂さ晴らしに付き合ってくれよ、なぁ!!」

 

「ダメージは無くとも、整備は大変。これからストレスかかる。先に発散、お前達はサンドバッグになるべき。死のう」

 

バルクはハウンド牙の銃身を回転させ、レリックは12対24本のマニュピレーターをワキワキと動かしながら2人の大隊長が構える。テロリスト達は顔を見合わせると、そのまま銃を乱射してきた。

 

「知るかボケぇ!!!!」

 

「テメェらが攻めてきたんだろ!!俺達被害者!!!!」

 

「そもそも普通ならミサイルで死ぬんだよ!!!!!!」

 

「なのに何で無傷!?ふざけんな!!!!!!」

 

「ファッッッッッッキュゥゥゥゥゥ!!!!!!!」

 

こればかりはテロリストが言ってる事が正しい。攻めてきてるのはこっちだし、あのFAEBなら普通は機甲師団でも倒せる。なのに無傷でカチコミ掛けてくるとか、言うなればチートなのだ。

 

「俺達は最狂の霞桜!!!!んなこと知るか!!!!!!!」

 

そう言いながらバルクは生まれ変わったハウンド、ハウンド牙を乱射する。銃身を回転させるモーターを高回転型に換装し、上部に40mm自動擲弾銃を搭載。明らかに人が持つ兵器ではない。

 

「ヒャッフゥゥゥゥゥ!!!!!!!」

 

こんな武器なので例えコンクリートブロックを遮蔽物にしようが、すぐに粉々になってしまう。一応デメリットとして、撃ちながら歩く事はできてもスピードは当然遅く、遮蔽物に隠れながら撃つなんて芸当ができない程に取り回しは最悪。というか撃つ方向を素早く変えるなんてできず、もし死角から襲われたら気付けても反撃する事はできないだろう。

だがそれを帳消しにする程の、圧倒的なまでの破壊力がこの銃の魅力だ。死角は味方が埋めれば良いし、何より加害範囲には途切れる事なく毎秒数百発の弾丸の雨を降らせることができる。例え戦車を出そうと、後方に回り込み徹甲弾を装填して撃てば倒せる。そのくらい強いのだ。

 

「遮蔽物が溶けてる!?」

 

「んなアホな!!!!」

 

「退避!!退避ぃ!!!!」

 

テロリストは逃げようとするが、次々に倒れていく。だが何人かは、死に行く仲間を囮にする形で、どうにかバンカーの中に逃げ込むことに成功した。

 

「あっちゃー。あれは流石に無理だぜ」

 

「ん、問題ない」

 

そう言ってレリックが後ろから声を掛ける。バルクが振り返ると、レリックはトンデモない代物を担いでいた。

 

「んー、レリックさんや。そのデカ物は何処から持ってきた。というか、それ何」

 

「そこら辺にあった。榴弾砲。名前は知らない」

 

「いや、うん。どこからどう見ても、榴弾砲だな。そうじゃないのよ、何でそげな物を持ってやがる!?」

 

当然の反応である。榴弾砲は普通、地面に置いて使う。車両で引っ張る代物であり、頑張れば人力でも押すなり引くなりで動かせはする。だが目の前の男は、文字通りそれを担いでいるのだ。

 

「フリーダムメカハンド。1本で車位なら持てる。任せて」

 

「おいバカ待て!!!!!!」

 

「装填、良し。撃つ」

 

ドオォン!!!!

 

腹に来るどころか、頭蓋骨の内側で脳みそを直接シェイクされる様な物凄い衝撃波が襲い掛かる。榴弾砲というのは150mm程度の口径がある物が多く、単純なサイズで言えば戦車とか現代の駆逐艦の主砲よりも大きい。そんなのをダイレクトにバンカーに撃とうものなら、例え鉄筋コンクリート製だろうが問答無用で破砕される。

 

「吹き飛んだ」

 

「そりゃ吹き飛ぶわ!!あークッソ、頭がシェイクされた気分だぜ………」

 

余りの所業に、さっきまで戦っていたテロリストも武器を捨ててしまう。というか味方である筈の霞桜及び艦娘&KAN-SENも、あまりの所業にポカーンとしていた。

 

『……こちらはUR、当基地の指揮官、ゼビオソである。侵入者よ、どうか銃を収めて頂きたい。我々は降伏する。繰り返す、我々は降伏する…』

 

屋外のスピーカーからゼビオソを名乗る声が聞こえてくる。暫くすると、丸メガネに白衣を着た筋骨隆々な白人男性が現れた。なんか属性が対極的だが、シルエットは歴戦の兵士、だがアイテムは理系という訳がわからない出立ちで合っている。

 

「私がゼビオソです。どうか代表者とお話がぁぁ!?!?」

 

「俺代表者!!あのミサイル作ったのお前か!?アレの威力凄い!!他にも作品見せろ!!」

 

「いや、え、あの…」

 

目を子供が憧れのヒーローに会ったかの様に輝かせ、両手で手を握りながらブンブン振り回すレリックに、ゼビオソは予想外の行動に戸惑っている。

 

「同志よ!!俺は嬉しい!!爆発は芸術!!だがあのミサイル、弾頭以外は色々と改善の余地がある!!俺に任せて!!!!もっと凄い芸術を共に作ろう!!!!!」

 

「えっと、ありがとうございます…?」

 

「レリックー、落ち着け」

 

そう言いながらバルクが、文字通りレリックを引き剥がす。片手でヒョイっと、いとも容易く。

 

「俺も一応代表者だ。俺達としちゃ、アンタらを皆殺しにしたい。だがまあ、降伏したんだ。これ以上は攻撃しない。そこでお前達には、俺達の拠点に連行させて貰う。いいな?」

 

「捕虜の権利は認められますか?」

 

「俺達に法律はない。だが流石に無抵抗かつ俺達の知る限りで非道な事をしてないし、理不尽に扱われる事はないだろう。少なくともアンタに限ってはな」

 

ゼビオソは少し考えると、やがて覚悟を決めたような顔をして口を開く。

 

「……分かりました、良いでしょう。所で一つ、お聞きしても?」

 

「なんだ?」

 

「そこの、あー、同志さんは一体………」

 

「コイツの事は、まあ、気にしないでくれ。頭が良いが残念な奴なんだ」

 

酷い言われ様だが、これで良い。実際頭は良いが、他はダメダメなのがレリック……というか霞桜の連中が基本ソレである。何か一個二個の芸に秀でる代償に、他が壊滅的にダメというのが多い。

 

「あー、はい」

 

「そんじゃ、生き残ったUR連中!!武器を捨てて、そのまま両手を頭の後ろで組んどけ!!そして何も言わず、今から来る機体に乗れ!!」

 

URのテロリスト達は拘束され、黒鮫弍型のカーゴスペースに押し込まれる。そしてそのまま、この世の楽園であり地獄でもあるセカンド・エノへと連行されていった。

 

 

 

同時刻 FOB A(アルファ)付近 6km地点

「どうやら、DとBは抑えられた様ですね」

 

『それは吉報。では我々も、後に続きますか副長?」

 

「えぇ。車列の指揮はお任せしますね、マーリン。私はフォートコマンダーで、オモテナシの準備をします」

 

『……グリム。君また、良からぬ事を考えているね?』

 

マーリンの問いに、グリムはニヤリと笑う。霞桜の人間で、この手の言葉を言葉通りに発する奴はいない。裏の、負の方の意味を持たせている。

 

「今に始まった事ではないでしょう?」

 

『確かに。指揮、確かに受け取りました副長。そちらはお任せしますよ』

 

グリムは愛車のポルシェ 911Turbo Sを、車列中心にいるフォートコマンダーの後方に付け、そのまま車ごとカーゴの中に入る。まるで映画のワンシーンだ。

 

「さて、では始めましょうか」

 

車をカーゴに入れると、自動的に車体とタイヤが固定され動かなくなる。グリムはそのまま、奥のコントロールルームに移動。そこで歓迎の準備を行う。

 

「副長、予定通りですか?」

 

「はい。では私は彼らの切り札を奪います。皆さんは、このまま戦闘に備えてください」

 

時は少し前に遡る。長嶺が侵攻に先立ち、兵糧攻めがてらURが主に使っているロシアの闇サイトЗловещий узел(邪悪なる結び目)を買い取り、それをそのままICPOに通報して検挙してもらったのは知っての通りである。

実はこのサイトの記録をリーク前に検めさせて貰っており、そのお陰で資金の流れから色々と分かった。その中の一つが、今回攻めているFOB Aアルファの指揮官、憲兵隊長アドロアがドローンをメインに使っているという情報である。どうやら大型のUAVから、ドローンと聞いて頭に思い浮かぶクアッドコプターまで、かなり色々と使っているようだ。今回もこれら無人兵器を使うだろうが、これを逆手に取らせて貰う。

 

「衛星回線接続。ネット回線を通じ、UR本部サーバーのバックドアからFOB A(アルファ)のサーバーに潜入。チェイサートレースデーモン、起動」

 

まずはネット回線を通じ、いつかのペリコール島強盗でこっそり仕込んでおいたバックドアからサーバーに潜入し、そこからさらにFOB Aアルファが使うサーバー潜入。そこから全ての通信回線に、通信を追跡し中身をトレースするデーモンを差し込む。これで何処に何目的の通信か、全部丸裸になる。

 

「………え、まさかもう終わりました!?」

 

「流石にこんな早くは終わりませんよ。今は、そうですねぇ……。釣りで例えるなら、エサを付けた釣り糸を垂らしている状況です。ここから待たなくてはなりません」

 

「待つって、そんな悠長にしていて良いのですか?」

 

「まあ、君の言うことも分かりますよ。しかし、昔から言うでしょう?果報は寝て待てと。先程私は釣りを例えに出しましたが、釣りと違うのは待てば確実に成果が手に入るところですよ。

それに釣りは魚が引っ掛かるかは運任せですが、今回のお目当てはUAVへの通信。我々という極上のエサが近付いているのに、動かさないなんて事はありえません。彼らは必ず動かします。動いたとその時には……」

 

「そのままこちらの作戦が動く、と?」

 

グリムは部下の答えに何も言わず、ただニッコリと微笑む。今は待つしかない。というか待つことしかできない。今はデーモンが通信を洗っており、UAVへの制御や起動に関する通信が入れば報せが入る。それまではキャンプ椅子にふんぞり返りビール片手に海を眺めるオヤジのように、ただ堂々と待っていれば良いのだ。

 

「………おや、噂をすれば何とやら。デーモンが見つけましたよ」

 

「本当ですか!?」

 

「えぇ。念の為、レーダーを確認してください。数分以内に探知できる筈です」

 

1分もしない内に、70機の航空機の反応がレーダー上に出現する。70機という数は、こちらで起動を確認したUAVと数が一致する。

 

「恐らくこの速い20機がロシア製UAVのグロム。こっちの遅いのがEMB314スーパーツカノをUAVにした物ですね」

 

「スーパーツカノって、確かCOIN機の」

 

「取引のログを洗いましたが、どうやら深海棲艦の出現から払い下げられたのが、どういう訳か闇サイトまで流れ着いたみたいですね。意外かもしれませんが、最近はこういう兵器の類いも売られていますよ」

 

昔の闇販売サイトは銃と弾薬が精々で、稀に古びた東側の軍用装甲車が売られている位だった。だが深海棲艦の出現で国が消えたり、国は残ってても「深海棲艦相手には使わないから」という理由で第三国に流れていった兵器が、最終的にこういう場所に流れ着く例が激増している。特にCOIN機みたいな、安価で現代戦では低性能な兵器というのは大量に流れ着いている。

とは言えCOIN機という安価な機体でも、戦闘を目的とした兵器であり航空機。そもそも軍隊でもパイロットは貴重な存在であるのに、こういう闇サイトで買うような連中にとっては替えが効かないどころか、そもそもレアな存在である。となると無人機にしてしまった方が早い訳で、その結果がこのCOIN無人機なのである。

 

「さて、では魔法を掛けましょうか。通信システムをクラッキングして、無人機への通信を遮断。UAVをこちらのプログラムで上書きしてと……」

 

この操作プログラムは一度ダウンロードすれば、後は自動的に他のUAVにも流行り病の様に蔓延していく。そうすれば自動的に、操作権限はこちらの物だ。

 

「………全部乗っ取りました。マップ情報を」

 

「はい!」

 

画面にFOB A(アルファ)の衛星写真が映る。その写真を元に攻撃目標を選択し、そのままUAVの大群を突っ込ませた。敵はまさか自軍のUAVが敵に制御されているとは思っておらず、何の妨害もなく主要な防御火器の尽くを破壊。道を切り開く。

 

『マーリン、道は開けました』

 

「了解」

 

マーリンは無線を全周波数帯に切り替えて、全員に指示を出す。

 

「マーリンより全軍に伝達!FOB A(アルファ)への道は開けました。直ちに行動を開始しなさい!!」

 

マーリンの指示により、全ての車両が加速する。その勢いのまま敷地内に突っ込み、混乱の渦を更にかき混ぜていく。

 

「ガルルル、やってやるぜ!!!!」

 

「夕立、突撃するっぽい!!!!」

 

グリムとマーリンが指揮する攻略部隊には、速度に勝る水雷戦隊が多く配置されている。水雷戦隊にいる軽巡及び駆逐艦は、その見た目とは裏腹にかなり肝が据わっている。今では平然とまではいかないが、一応人殺しを出来るくらいには覚悟が出来上がっているのだ。

クレイジーサイコ野郎だらけの霞桜の隊員でも、雀の涙ほどの良心はある。本来なら人殺しはして欲しくはないが、だがこういう時の斬り込み役には適しているのも事実。実際、いきなり現れた少女にテロリストは戸惑っている。

 

「お、女!?」

 

「なんだコイツら!!!!」

 

「と、とにかく殺せ!!考えるのは後だ!!!!」

 

全員とはいかないが、それでもまあまあの数が持ち直し、手近の艦娘とKAN-SENに弾丸を撃ち込む。今やURの武器はAK74の様な東側の銃ではなく、M4やHK416といった西側の高性能軍用自動小銃を持っている。それをフルオートで撃てば、どんなに強かろうと当たれば確実に死ぬ。アーマーに阻まれようと、痛みで動きが必ず止まる。アーマーはダメージを抑える物ではあるが、食らった時の痛みまでは抑えられない。そこに隙ができる。なのに……

 

「なんで効いてないんだ!!!!」

 

「あり得ない!!!!」

 

「こいつら化け物か!?」

 

あくまでも、それは人間であれば(・・・・・・)の話。今テロリストが相手しているのは、かつて大海原で果てしない闘争を繰り広げた軍艦の艤装を身に纏い戦う者達。見た目こそ可憐な少女かもしれないが、その実情は軍艦とイコールである艦娘とKAN-SENである。

軍艦の装甲を、たかがアサルトライフル如きで撃ち抜けるだろうか?そんなので撃ち抜けるなら、軍艦に大砲を積む必要も、現代艦が対艦ミサイルを積む必要もない。

 

「おいテメェら!!!!」

 

「俺たちの可愛いアイドルに何しやがる!!!!!!」

 

「おじさん怒らすと怖いぞ!!!!!」

 

そして部隊の癒やしかつアイドル的存在であり、場合によっては娘や孫の様な存在である彼女達に、傷を付かないとはいえ弾丸を撃ち込もうものなら後ろに控える霞桜の怖いおじさんが黙っちゃいない。

 

「粉砕!!!!」

 

「破砕!!!!」

 

「大粛清!!!!!」

 

「「「「ワーハッハッハッハッ!!!!!!」」」」

 

いつもは狙撃や精密射撃で全体を援護する第一大隊の隊員達も、今回は接近戦用にグリフィスを持ってきている。一部隊員はシービクター専用のアサルトライフル、エリミネーターを装備している。グリフィスもアサルトライフルにしては、かなりの高威力を発揮する特別性であり、エリミネーターはそもそも対深海棲艦用かつ、シービクターというパワードアーマー装備での使用が前提に開発されている為、大口径大威力である。というか人に向けちゃいけない類いの代物であり、当たれば半身が吹き飛ぶ。

 

「こ、コイツら何なんだよ!!!!」

 

「に、逃げろ!!!!逃げるんだ!!!!!!!」

 

テロリストの誰かが、そう叫ぶ。次の瞬間、1人また1人と逃げ始め恐怖は伝播していき、最終的には全員が散り散りに逃げようとする。逃げ場所なんて無いが、一歩でも遠く戦場から遠ざかれと本能的に逃げる。

 

『赤城さん。敵の退路を断つ形で空爆をお願いします』

 

「わかりましたグリムさん。皆さん、聞きましたね?」

 

艦娘の赤城の言葉に、近くにいる艦娘の加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴は返事の代わりに弓を番える。勿論矢に込められているのは、爆弾を搭載した自慢の爆撃機だ。

 

「第一次攻撃隊、発艦してください!」

 

「ここは譲れません」

 

「行くよ!二航戦攻撃隊、発艦はじめ!」

 

「二航戦!攻撃隊、発艦!」

 

「全航空隊、発艦始め!」

 

「翔鶴姉、やるよ!艦首風上、攻撃隊…発艦、始め!」

 

矢が一斉に放たれ、炎に包まれる。炎が晴れればそこには無数のラジコンサイズの航空機が現れる。勿論知っての通り、見た目こそよく出来た模型とかラジコンだが、その能力は小さいだけで実物と何ら変わり無い。爆弾を落とせば見た目以上に爆発するし、機関銃や機関砲の類も実機と全く同じ威力である。そんな攻撃隊が現れれば最期、テロリスト達はなす術なく倒れていく。

 

「き、貴様らぁぁぁ!!!!!なんだこの体たらくは!!!!!!!!!」

 

そう叫びながら、霞桜の強化外骨格の様な全身アーマーを身に付けた男が、機関銃片手に叫びながら出てきた。隊員がその姿を捉え、即座に声紋分析が行われる。

 

『憲兵隊長アドロアを確認しました。仕上げは任せます』

 

「だそうだが、どうです?」

 

「…あっ、発見しました。方位035の、半壊した建物の隣です」

 

「…………こちらでも見つけました」

 

スナイパーのマーリンと、副隊長でありスポッターであるビーゲン。いつものコンビは、FOBから少し離れた位置にパラディンを停車させ、その屋根から狙撃の準備に入っていた。

それを知らないアドロアは、部下達に色々喚き散らしながら銃を乱射する。だが次の瞬間、アドロアは胸に激痛を感じ膝から崩れ落ちた。

 

「ハートショット、ヒット。崩れ落ち、膝で一瞬止まる。ヘッドショットエイム………」

 

マーリンは心臓を撃ち抜き、そのままスコープの照準を頭に合わせる。その間、僅か0.3秒。距離は離れているが、マーリンにとっては必中の間合いだ。

 

「ファイア」

 

ズドォン!ジャキン

 

「…ヘッドショット、ヒット。目標沈黙」

 

マーリン専用超長々距離狙撃銃『ケルベイザー』。これまでマークスマンとしても使えるようにしていたバーゲストから乗り換えた、完全狙撃特化仕様の特殊スナイパーライフルである。弾丸を電磁加速機構で加速させる事により、従来のスナイパーライフルを遥かに凌ぐ初速と射程を実現した代物である。.338ラプアマグナムを持ってすれば、アーマーを着込もうと無意味だ。

 

「グリム。目標は排除、掃討はお願いしますよ」

 

『いつもながら、見事な腕前ですね』

 

「ふふっ。それが私のお役目だからね。まだまだ若い者には負けんよ」

 

この十数分後、FOB A(アルファ)は完全にこちらの占領下となる。侵攻開始から、僅か45分の出来事であった。

 

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