最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第百三話ファントム・キングダム

1時間後 Ville Pimordiale付近 移動司令拠点『プレジデントファイター』

「まあ、流石に固めるわな」

 

「これで固めてなきゃ、逆に罠を疑います」

 

「違いない」

 

全てのFOBをほぼ同時に陥落させてから1時間が経過した。現在は本丸であるVille Pimordialeへの攻撃を加えるべく、近くの指定座標にて他の部隊と合流を図っている。

ただ待ってるのは暇な上に無駄な時間なので、取り敢えずUAVを飛ばしてVille Pimordialeの状況を探っているのだが、当然と言えば当然だが既にURの、正確にはシリウス戦闘団と思しき連中が防御陣地を築いている真っ最中だ。

 

「しかし総長。こーれ邪魔じゃないですか正直」

 

「すこぶる邪魔だ。という訳で、1つ芸術的にやってやろうじゃないか」

 

「げ、芸術的?」

 

オペレーターの隊員の脳裏には、先刻のアートが蘇る。ついさっきまで攻略していたFOB D(デルタ)には、死体を加工してアートと言い張る猟奇殺人野郎がいた。その所業を実際に見たわけではないが、それでも話は聞いているし記録映像も職務上確認している。今のオペレーター達にとって、アートは軽くトラウマワードなのだ。

 

「心配すんな。死体をバラバラにする訳でも、生きたまま解剖する訳でもない。古典的かつ伝統的なアートってヤツをやるだけだ。メビウスと鬼を動かそう」

 

「あぁ、そういう事で。了解!」

 

これまでずっと待機していた上、戦闘でも余り活躍していなかった航空隊がいよいよ動き出す。江ノ島鎮守府には元々、長嶺の着任と同時に航空自衛隊最強にして世界トップクラスの実力を持つメビウス中隊、そして対深海棲艦相手の戦闘で駆逐艦や航空機相手だったとはいえ、全て殲滅させる事に初めて成功したグレイア隊、フォーミュラー隊、カメーロ隊、レジェンド隊の4部隊が在籍した。今回の日本脱走でも長嶺に付いてきており、今では貴重な航空戦力として所属している。

そんな貴重な航空戦力を生かし、尚且つ強化させるべく、安定のレリックの手により機体を魔改造されている。元々カメーロ隊とレジェンド隊は使用機体がステルス攻撃機のF3Aストライク心神であるが、これに加えてメビウス5とメビウス7も攻撃機仕様となった。その真価がどれ程のものかは、すぐに分かる。

 

「ウィルコ、攻撃に移る」

 

『俺達にオーダーか?』

 

「イェース。提督閣下の思し召しだぜ」

 

『そりゃ大変だ。しっかりやんねぇと、後でキツイお仕置きだぁ』

 

メビウス5とメビウス7の機体は、中隊の編隊から離れるべく機体を翻して高度を下げる。途中、カメーロ隊のF3Aストライク心神心神TYPE鬼と合流。6機での変則的なデルタ隊形で忍び寄る。

 

「俺と7で先行しよう。奴らの事だ、恐らくツングースカがいやがる。アレはさっさと退治しないと、流石に面倒だからな」

 

『同感』

 

『こちらとしては願ってもない!頼む!!』

 

「んじゃ、行こうか」

 

メビウス5のが前に出て、そのすぐ後ろにメビウス7が付ける。メビウス5が使うF22AラプターMobius Editionは、ステルス性能と速度が落ちた代わりに装甲車並みの増加装甲を標準搭載した攻撃機仕様である。

同じアメリカが開発した傑作攻撃機、A10サンダーボルトIIの設計を元に改修した事で設計段階以上の装甲を手に入れており、35mm弾を数発は耐える。オマケにバルカン砲を通常のM61A2 20mmバルカン砲から、A10と同じGAU8アヴェンジャー30mmバルカン砲に換装している。

 

「FCS!ミサイルくるぞ!!!!」

 

『これでツングースカは確定だな!!』

 

何度も聞いた敵からのロックオンを告げる警告音だが、やはり慣れるものではないし心臓に悪い。だが、伊達に最強のエース部隊に名を連ねている訳ではない。ミサイル如きで落とせるものか。

 

『コイツがMobius Editionなんてご大層な名前を付けられてるのは、決して伊達や酔狂じゃねーのよね!!』

 

本来なら航空機にとって、対空ミサイルは天敵である。勿論数発なら搭載しているチャフ、或いはフレアをばら撒く事で命中率を下げる事はできる。だが戦闘機の場合、戦闘をメインにしている上に機体の大きさからも、あまり多くは搭載できない。

その為、実は意外とすぐ切れる。少なくとも映画の様に、空に花を咲かせる花火の様にド派手にばら撒いて使うなんて出来ない。そんな事をすれば1発アウト、即撃墜されるだろう。ツングースカに搭載されるSA22グレイハウンドも、ロシア製近距離地対空ミサイルであり脅威だ。

 

「…………今だ踊れ!!!!!」

 

『オーレィ!!!!!』

 

メビウス5の合図で、ラプターが航空機のしてはいけない挙動で急に動く。幾ら2次元スラスト・ベクトル・ノズルを持っていようと、それが例えロシアの推力偏向ノズルだろうと、絶対にあり得ない急機動だ。ミサイルの誘導性能も戦闘機相手を想定しており、戦闘機外な動きは追い掛けられない。結果、グレイハウンドは目標を見失いヒョロヒョロと大空を迷走。やがて時限信管が作動して爆発した。

 

「……分かっちゃいたが、結構びっくりするな」

 

『あんまり使いたくはねーが、意外と楽しいな。スラスターってヤツは』

 

このMobius Editionは通常のラプターとは異なる。まずエンジンが通常のプラット・アンド・ホイットニー社製F119ジェットエンジンから、レリック及び第二大隊の技術者連中が長嶺その他のツテやコネを総動員し、尚且つグリムによるハッキングで集めた世界各国の技術を統合し組み上げた高性能ジェットエンジンに換装されている。

これに合わせてアビオニクスやレーダーも専用の物に入れ替えられているのだが、最大の目玉がスラスターの追加である。機体各所にまるで宇宙船の様にスラスターを搭載しており、各国現役のあらゆる機体を凌駕する機動力を手に入れた。

 

「ツングースカ発見!!」

 

『こっちでも捉えた!!俺が右、左はお前だ!!』

 

「あいよ!落ちんなよ!!」

 

『そっちもな!!』

 

ここで2機は二手に別れて、それぞれの獲物目掛けて飛んでいく。だがツングースカも黙ってはおらず、2A38 30mm連装機関砲二基4門の機関砲が火を吹く。ついでにVille Pimordialeの周囲をぐるっと覆う壁の上に配置された、恐らくエリコン35mm機関砲と思しき対空機関砲も火を吹いており、多数の火線がメビウス5のラプターに襲い掛かる。

 

「まあ並みの機体なら落ちるが、俺はそう簡単には落ちないぜ!!」

 

だが装甲にモノを言わせて強引に突破し、あっという間に真上に差し掛かる。真上に到達したのと同時にGBU39 SDBを投下。単純な威力こそ弱いが精密誘導に長けた爆弾は、正確に戦車の弱点である後部のエンジン区画へ正確に落ちて行く。

 

「いっちょ上がりだ!!」

 

メビウス5が悠々と大空に逃げていく中、メビウス7も負けじと攻撃を開始していた。

 

『ターゲットロッッッック!!!!!!ファイァー!!!!!』

 

メビウス7のラプターは、機体下部のウェポンベイがキャンセルされている。ラプターのメイン兵装はこの位置なのだが、その代わりにEMLもしくはTLSユニットを搭載できる様に改造してあるのだ。要はレールガンかレーザー、そのどちらかをミサイルの代わりに搭載できる訳である。

今回はEMLを搭載しており、砲弾には対戦車フレシェットを選択。密集状態の対装甲目標には絶大な威力を誇る、ご機嫌な凶悪兵器だ。そんな砲弾に襲われたツングースカ及び周囲の兵器群は、一撃で大爆発を引き起こし砂漠を赤く染める。

 

「メビウス5よりカメーロ隊。クリアだ、掃除してくれ」

 

『よしきた、任せてくれ』

 

『やったろうぜ』

 

『ふーふふふっふー♪ハハァ!地獄の黙示録の時間だぜ!!』

 

『チャージ!!!!!』

 

メビウス5とメビウス7が切り開いた道を、今度はカメーロ隊が突き進む。このストライク心神も、安定のレリックの手により魔改造済みだ。小型マイクロミサイルを搭載するADMMを8基搭載し、エンジンもオリジナルの物に換装。スラスターを実装し、機関砲もアヴェンジャーに変更した無敵の対地攻撃機へと変貌している。

 

『ターゲットロック!!』

 

『ADMM全弾発射!!戦車を血祭りに上げろ!!!!』

 

『うっしゃぁ!!!!』

 

所詮はマイクロミサイル。威力はそこまで強く無いが、それでも数十発同時に撃てば話は変わってくる。寧ろ迎撃困難な程の飽和攻撃を実現する兵器として、ADMMは果てしなく有効な兵器となる。

 

「カメーロ隊より報告。敵前衛戦車群、ほぼ壊滅したとの事です」

 

「おー、スゲー。いい感じに燃えてやがる。よーし、このままこっちも動く。全艦に伝達!砲撃しつつ前進!航空隊も挙げろ!!霞桜もこれに続け!!」

 

「了解!」

 

オペレーターが無線の周波数を合わせ、長嶺に代わり全軍に指示を出す。

 

「こちらプレジデントファイター。全軍に達する。全艦隊、航空機を発艦させ砲撃しつつ前進せよ。霞桜各隊は艦隊を援護しつつ、前進を開始せよ。繰り返す、航空隊発艦。全艦砲撃しつつ前進。霞桜はこれに続け」

 

この指示に即座に陣形を組み直しつつ、砲撃を加えながら前進を開始。これに霞桜も合わせ、艦隊の周囲を取り囲む様に布陣して動き出す。

 

「お前達!このまま情報を取りまとめ、逐次報告しろ!!俺も出る!!!!」

 

「了解!」

 

「総長、武運を祈ります」

 

「おう!」

 

長嶺はプレジデントファイターの屋根に登る。勿論梯子とかは無いので、ドアを開けて上手に上へよじ登る。屋根の上は特等席で、配下の艦娘とKAN-SENが砲弾を撃ち込み、その上を空母の艦載機群が飛んで行く。何とも言えない絶景だ。

 

「じゃあ、俺も始めますか。子鴉共!!」

 

いつもの様に『鴉天狗』を呼び出して、自らの身体に纏う。今回は神授才は使用せず、単純な『鴉天狗』として暴れる。だが今回は、これまでの『鴉天狗』とは違う。

 

「スキル発動!絶対支配者……とでも言えばいいのか?いや、これ結構恥ずいな………」

 

今回は少し前、試しにKAN-SENのキューブを取り込ませてみたら覚醒しアンロックされたのか、はたまた身に付けたのかは知らないが、取り敢えず何故か使える様になったスキルを使用する。

絶対支配者の効果は敵対的な凡ゆる存在は鴉天狗を発見した場合、回避、火力、命中が45%低下する。指揮下の艦娘、KAN-SENは回避、火力、命中が60%増加するというものだが、どうやら「敵対的な凡ゆる存在」とは人間が含まれていないらしい。つまり事実上、深海棲艦かセイレーンにのみ適用される。それでも強化の方は使えるので、全く持って問題はない。

 

「ッ!?いつもより身体が軽いわ!!」

 

「Wow!Admiralの言っていた、鴉天狗のAbilityね!!」

 

「KAN-SENのスキルはKAN-SENにしか通用しない筈なのだけれど………。やはり艦娘が母体となる鴉天狗であれば、艦娘へもスキルは使用可能。しかもキューブ由来だから、当然私達にも恩恵がある。奇跡の領域だわ」

 

絶対支配者によって能力が向上した艦娘とKAN-SENは、更に苛烈となった砲撃を続行。未だ本格攻撃前だと言うのに、Ville Pimordialeの周囲を取り囲む壁は崩れ去り、中からは黒煙と火の手が上がっている。

 

『あー、こちらグリム。総隊長殿?これ、やりすぎなんじゃ………』

 

『そうだぜ総長!俺達の暴れる場面が無くなっちまいますぜ!?』

 

「なーに、心配すんな。中に入ればわかる」

 

残骸を突破しVille Pimordialeの中に突入する一行。中は既に廃墟と化し、死体やら兵器の残骸が転がっている有り様で勝ったも同然の状況だった。

 

「敵は粗方倒してしまった様ですね」

 

「ダメじゃないっすか親父!!!!」

 

「これで済むなら苦労はしない」

 

長嶺がそう呟いた瞬間、長嶺は刀を抜いて背後を振り向きざまに斬った。空中から血が吹き出し、ドサッという何かが落ちた音が聞こえる。地面に転がっていたのは、真っ黒な強化外骨格の様な戦闘スーツを着た兵士、髑髏兵であった。

 

「総員警戒!!ここは既に敵の罠の中だと思え!!!!いつもの様に正面から食い破る!!!!!!」

 

廃墟となった建物や壁の上に、大量の髑髏兵が現れる。それだけじゃない。奥からは更に大量のバーサーカーが現れ、周囲を取り囲まれてしまう。

 

「総隊長。これ、知ってた?」

 

「知ってたというより、まあこうなるよなっていう経験則だ。さっきの攻撃で綺麗さっぱり吹っ飛んでくれるなら、どんなに楽だった事か。コイツらは稼働時間が短い特性上、稼働前の状態なら意外と生存性が高い。バンカーにでも放り込んで、やばくなったら放出するだけでいいんだからな」

 

攻撃が始まれば予め頑丈なバンカーにでも逃しておいて、こういう事態になった時に解放する。髑髏兵はともかく、バーサーカーは単独ないし同じバーサーカー同士で運用するか、或いは髑髏兵の様な強い兵士としか共同運用ができない。普通の兵士のいる場所でバーサーカーを放てば、FOB C(チャーリー)の二の舞となる。

 

「GOOD GOOOD! VEEERRYY GOOOD!!」

 

「………いやまあ、髑髏にバーサーカー、ついでにシリウス戦闘団の兵器があれば、そりゃぁ居るわなトバルカイン」

 

一際大きな建物の2階に、安定の茶色のソフト帽とコートを着こなす紳士がいた。トーラス・トバルカインである。奴はイラつく事に、仰々しく拍手をしながらこちらを見下ろし嘲笑うかの様な笑みを浮かべている。

 

「総員、奴には手を出すな。周囲を警戒しろ」

 

「やはり、最初期から髑髏兵を相手にしていただけはある様だね総隊長?」

 

「お褒め頂きどうも。それで、何故俺が最初期から髑髏兵と戦っている事を知っているんだ?」

 

そもそも髑髏兵自体、早々裏の世界でも出回る代物ではない。何より何故、何度も戦っていることを知っているのか。あの中国で関与していた一連の出来事は、当時も今も知る者は少ない。記録にも残っていないはずだ。

 

「それは、まあ、こうすれば分かるんじゃ無いのかね?」

 

トバルカインは勢いよくコートを脱ぐ。下には赤黒いボディアーマーを来ており、背中には巨大なジェットパックと2本の青龍刀。腕にはミニガンとロケットランチャーも装備している。

 

「やっぱり、アンタだったんだな。極東の死神!!」

 

忘れもしない。鴉天狗最後の任務地で相対し、尚且つ親友の1人であるミツを恐らくは間接的に殺した奴であり、他の2人も拡大解釈してやれば殺した存在。長年影を追い求め探し続けるも、遂に突き止められずにいた最後のターゲットだ。

 

「おや、てっきり感情に任せて切り掛かってくるかと思ったがね。意外と理性的だ」

 

「確かに今でも突撃してやりたいがね、少しばかり可能性が見えている今となっては、報復するのは別として聞きたい事もある。何より折角最後のターゲットが来たんだ、楽しまなきゃ損だろ?」

 

「………良いだろう総隊長。諸君、彼を借りていく。諸君は我が兵士達と、存分に戦ってくれたまえ」

 

トバルカインは空に舞い上がると同時に、周りにいた髑髏兵とバーサーカーが一斉に襲い掛かる。普通の指揮官なら、トバルカインの言う事は無視して部下を優先するだろう。

だが長嶺は違う。長嶺は仲間を、家族と呼ぶこの軍団を信じているし、この程度で負ける様な柔な連中じゃない事を知っている。例え自分が居なくとも、必ず撃退するどころかVille Pimordialeを占領してしまう。その位の能力は持っているのだ。

 

「そっちは任せる!!好きなだけ暴れろ!!!!!!」

 

長嶺はそう言い残すと、トバルカインの後を追い掛けていく。それを一瞥して見送るや否や、いつもの様に全員が敵に襲いかかった。

 

「バーサーカーは艦隊が!!我々は髑髏兵を相手しましょう!!!!」

 

「聞いたな野郎共!!!!いつも通りだ!!!!!!Barrage junkie(弾幕ジャンキーこそ)!?!?」

 

「「「「「「is the messenger of peace(平和の使者なり)!!!!!!」」」」」」

 

まず最初に動いたのは第三大隊。弾幕を展開し、髑髏兵に先手を打つ。だが髑髏兵も得意の瞬間移動だかワープで避けて、そのまま死角となる真上や背後に飛び出してくる。当然だ。不意打ちこそが髑髏兵の真骨頂であり、唯一にして必殺の一撃である。

だが生憎と、今この場に集う隊員達は単なる兵士ではない。全員が特殊部隊級、或いは格闘や射撃等、何かしらの戦闘術に秀でた戦闘狂共。背後や真上の取っての不意打ちなら、装備の恩恵と己のスキルを組み合わせればカウンターを食らわせてやれる。

 

「甘い!!!!」

 

「おらぁ!!!!」

 

「ドラァ!!!!!」

 

ある者は素早く銃口向けられて、弾丸をばら撒かれる。無数の弾丸の嵐は容易くアーマーを突き破り、ミンチ肉へと加工され地面に散らばる。

またある者は銃をフルスイングでぶつけられ、ホームランよろしく吹き飛ばされてしまい、そこを他の隊員達がこれ幸いと喰らい付く。

はたまた持っている武器を掴まれて地面に叩き落とされてトドメを刺されるか、ナイフやマチェットを持って攻撃してきた者は逆にそれを奪われて喉元や胸に突き立てられる。

この辺りの死に様なら、まだ良かった。1番エグいのは、近接戦に秀でた者が多い第四、第五大隊に襲いかかった連中である。

 

「どぅらぁ!!!!!!!」

 

回し蹴り1発で斬殺(・・)され…

 

「あ"あ"い"!!!!!!!!」

 

爪先を顎下に突き刺す形で蹴り飛ばされ…

 

「せいやぁ!!!!!!」

 

踵落としで脳天を突き刺し…

 

「ふぅらぁ!!!!!!!!」

 

肉を掻き出される。では何故、こんなにも酷い惨状となるのか。というか回し蹴りで斬殺とは、一体全体どういう事なのか。その秘密は、隊員達が纏う強化外骨格Mk2である。

これまでの強化外骨格から色々と変わった訳だが、その中の目玉機能の一つが近接武装の搭載である。腕にはアサシンクリードの仕込み剣ならぬ、仕込みチェンソー。スネの部分にもチェーンソー。そしてつま先と踵には毒を仕込める仕込み剣と、全身凶器とも言える武装が施されている。狙っていたわけではないが、結果的にアンチ髑髏兵兵器として活躍しているのだ。

 

「次はどいつじゃぁ………」

 

「狩りじゃぁ……狩りじゃぁ!」

 

「いい音聴かせてくれやぁ!!!!」

 

恐れ知らずであり、完全無欠の絶対兵士とすら言える髑髏兵とて、人の領域を超えて人外の域に片足を突っ込んでいる連中には敵わない。見るからに動揺や恐怖というのが滲み出ている。

 

「敵が恐れた!!テメェらぁ!!!!!俺の背中に付いてこい!!!!!!!!」

 

ベアキブルが愛刀、悪鬼羅刹を抜いて走り出す。髑髏兵はこれ幸いとワープを使い、今度は一気に距離を詰めベアキブルの真正面でマチェットを構えて現れる。

 

「んなもん見切っとるんじゃぁ!!!!!」

 

だが、そんなのは想定内。走った勢いを殺す事なく、そのまま下っ腹に突き刺して斜め45度に抉り込む様に切り上げる。一撃で命を刈り取るが、それでも尚髑髏兵4人が一気に襲い掛かる。

 

「ッ!!」

 

真上と背後からマチェット、正面から2人がライフル。一瞬の内にセンサーと肉眼で看破し、そのまま攻撃を仕掛ける。

 

「相手が悪かったなぁ!!!!!」

 

まず背後の奴を巴投げの要領で上から迫る奴にぶつけ、そのまま正面にいた連中にまでぶん投げる。空中で身動きが取れなくなった所を、仕込み武器の5.7mm仕様シャドウデスで射殺する。

 

「こっちは!!!!!」

 

アタフタしている正面の2人の内、右側の奴を縮地で一気に間合いに踏み込み頸動脈を、首を切り落とさん勢いで切り裂く。

 

「修羅場通ってん!!だ!!!!!!!」

 

最後の1人は足を払って転けさせ、転けたところを力一杯踏み抜き頭を潰す。武術も何も無い、修羅場と喧嘩の中で磨かれた独学の喧嘩殺法。これがベアキブルの戦い方だ。

 

「ベーくん暴れてるわねー。そろそろ私も頑張らないと、姉の威厳が保てないかしら?」

 

ベアキブルに感化される形で、カルファンも獲物の鋼鉄糸改を構える。構える、というよりは糸を自分の周囲で滞空させると言った方が正しい。太陽に照らされ、極細の糸がキラキラと輝く様は美しくもある。

 

「———!」

 

ベアキブルで学習したのか、今度は10人がかりでカルファンに襲い掛かる。前後左右、上からも襲い掛かる鉄壁の同時攻撃。勿論ワープで距離を縮めてだ。普通なら倒せる戦術だが、カルファンには効かない。

 

「あら、お馬鹿さんが一杯ね」

 

カルファンの周囲というのは、鋼鉄糸改の絶対加害範囲。銃弾すらも切り裂いて防御する鋼鉄で出来た糸は、人体やそのアーマーも熱したナイフで切るバターの様に容易く切ってしまう。髑髏兵とて、それは例外ではない。

 

「ふぅん。少しは学習したかしら?でも、もう遅いわ」

 

乱切りになった死体を踏み越え、その死体の返り血を滴らせた糸を周囲で滞空させている様は正に死神。髑髏兵達も抗おうと必死に戦うが、余りに相手が悪すぎた。

 

「ベーくん!援護するから潰して!!」

 

「任せるぜ姉貴!!!!!」

 

防御をカルファン、攻撃をベアキブルが担当し髑髏兵の中に飛び込む。ワープできるとしても、それをさせる前に倒せばいい。1人でも多く格闘術で無力化しつつ殺し、或いは傷を負わせて妨害する。

 

「———!」

 

だが乱戦となれば、ベアキブルも背後やサイドに隙が生まれる。そこはカルファンが鋼鉄糸改でカバーし、そもそも近付かせない。

 

「弟を守るのは、お姉ちゃんの務めなのよ!」

 

となれば、今度はカルファンを狙う。数人がカルファンを襲おうとするが、逆にベアキブルが即座に射殺する。

 

「人の背後狙ってんだ。テメェの背後もガラ空きだって忘れんな」

 

カルファンとベアキブルの、姉弟コンビネーションの前では髑髏兵も形無しだ。程なくして、髑髏兵は大半が撃退されてしまう。

 

「全主砲薙ぎ払え!」

「全砲門、開けっ!」

「行くぞ、主砲一斉射!て――ッ!!」

「選り取り見取りね、撃て!」

「バアァァァニングゥ、ラアァァァァァァブ!!!!!」

「榛名!全力で参ります!」

 

「時は来たれり!」

「ファイアコントロール、頼むわよっ!」

「勇気による成功のため.......全艦、撃て!」

「虚無の交響とともに、跡形もなく消え去るがいい――!」

「アリーヴェデルチ!!」

「天の裁きを受けよ!」

「兵装起動、火力全開」

「吹っ飛べ!」

 

バーサーカーの方も、艦娘とKAN-SENの攻撃で壊滅。いくら頑丈かつ強力な生体兵器も、戦闘艦の火力の前では意味を成さない。外では未だに長嶺とトバルカインによる物と思われる戦闘の轟音が鳴っているが、その間にこちらはVille Pimordialeの占領に移る。

隊員達が建物の中を次々に検め、確保したり抵抗勢力を排除したりしている中、かつてURの幹部であり何度も訪れていたラーマエルは1人、一切の迷いなくファーストキングがいる部屋を目指していた。

 

「何とも、早い帰還だな。ラー」

 

「ブレキリフヌアデ……!!」

 

ファーストキングのいる居室の目の前に居たのは、六騎士の筆頭にしてファーストキングの側近。ブレキリフヌアデが完全武装で立ちはだかる。

 

「まさかキングを裏切るとはな。まあ、今となってはどうでもいい。キングを裏切るナイトは死罪だと、相場が決まっている」

 

ブレキリはレイピアを抜き、構える。ブレキリは確かに銃や格闘もできるが、最も得意とするのはレイピアでの戦闘。そしてそれは、相対するラーマエルもまた同じだった。

ラーマエルは腰に吊り下げたアダムを抜いて、グリップを伸ばしリボルバーからレイピアモードに切り替えて構える。お互いに顔の前に剣がある状態であり、まるでフェンシングの試合の前のようだ。

 

「行くぞ!!!!」

 

最初に動いたのはブレキリだった。レイピアの刃がラーマエルに届きかけたその時、ラーマエルはグリップを下に下げてアダムで刃を弾く。

ブレキリはそれを読んでいたのか、弾かれた勢いを利用して回転し、再び切っ先をラーマエルに向ける。

 

「危な!!」

 

ラーマエルは咄嗟に引いて弾く。ブレキリは冷静に体勢を立て直し、またも攻撃してくる。

 

「シッ!!」

 

ブレキリが放つ刺突を、ラーマエルもレイピアで弾き返す。互いに一歩も引かずに剣戟を繰り返す。激しい金属音が何度も鳴り響き、その度に火花が散る。

だが、二人の表情は対照的だった。ラーマエルは不敵な笑みを浮かべており、ブレキリの表情は険しかった。

 

「やはり良い腕をしているな!!だが俺には敵わない!!」

 

ラーマエルの攻撃が激しくなり、ブレキリの反撃を許さない。何度も刃と刃がぶつかり合い、火花を散らす。

 

「どうした、もう終わりか?そんな訳はないよな、ブレキリ!!」

 

ラーマエルの挑発にブレキリは激昂する。

 

「黙れ!!」

 

ブレキリが渾身の一撃を放つ。しかし、ラーマエルは難なくそれをレイピアで弾く。ブレキリの体勢が崩れると同時に、ラーマエルはアダムを逆手に持ち替える。

 

「終わりだ!」

 

ラーマエルはアダムの切っ先をブレキリの胸に突き立て、そのまま刺し殺した。ビグンとブレキリの体が飛び跳ねると、遂には動かなくなった。

 

「本当ならアダムの隠し玉を使うつもりだったが、まさかこんなにも弱いとは思ってなかった。まあ、いいさ。化けて出てくれるなよ?」

 

ラーマエルはそう言い残すと、ファーストキングの居室へと入る。部屋の中の玉座には、堂々としたファーストキングが座っていた。

 

「………よもや、飼い犬に手を噛まれるとッ」

 

「うるさい黙れ口を閉じろ」

 

そう言いながら、ラーマエルとはアダムとイヴを撃つ。今回は実弾の代わりに、暴徒鎮圧用のゴム弾を装填している。別に殺してもいいが、ファーストキングは良い土産になる。そう思っての独断だった。

 

「サンダーボルト、こっちは片付けたぞ。そっちは、どうなんだ……」

 

 

 

 

 

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