最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第百四話思わぬ拾い物

長嶺ら離脱より数分後 砂漠

「どうやら、向こうは大暴れらしいねぇ」

 

「あぁ。俺の家族が、テメェんとこの雑兵を片付ける音だ」

 

「一応あれでも、数人で普通の軍隊なら脅威になるんだがね?いやはや、流石と言うべきか恐ろしいというか………」

 

トバルカインは肩をすくめながら、自嘲気味に小さく笑う。恐らく目の前の男にとって、あのVille Pimordialeで命を散らす存在には何の価値もないのだろう。言うなればチェスや将棋の駒、或いはトランプのカードだ。もっと正確には"だった"と言うべきかもしれない。トバルカインにとって、もうあの軍隊は単なる捨て駒であり価値を持たない。

かと言って、もう勝負を諦めてる訳でもなさそうだ。ということは、あれだけの手札を捨てようと、或いは捨てなくてはならない、強力な切り札をまだ隠し持っているという事だろう。この勝負、油断できない。

 

「なぁ、この辺で良いんじゃないか?そろそろ始めようぜ」

 

「ん?まぁ、良いだろう。では始めようか」

 

一見すれば、全く緊張感がない会話だろう。だが両者が纏う気迫は、常人であろうと背筋が凍るほどに恐ろしい。相手の全ての動作、腕や脚どころか、息遣いやら指先の僅かな変化すらも見逃すまいという、達人だとか戦士にしか出来ない目で見つめる。

 

「こっちから行くぞ!!!!」

 

そして長嶺は、こういう腹の探り合いというのは苦手だ。とにかく即断即決即攻を持って、相手の命を刈り取る。そういう戦い方が最も得意とする物であり、その対極に位置する探り合いは避けたいとすら思う程だ。

 

「我願うは、大和民族の」

 

「言わせる訳ないだろう!?」

 

「火焔って危なぁ!!!!」

 

長嶺の立っていた場所に、ミニガンの7.62mm弾が命中し砂埃を上げる。これが変身ヒーローの世界であれば、きっと言わせてくれただろう。変身とか戦う前の口上を言う時に攻撃するのは御法度であり、そんな事をしてしまえば世界観は崩れる上にテレビの前の良い子のみんなに、トラウマを植え付けかねない。

だが生憎と、ここは現実。口上を述べるなんて決定的な隙、見逃して貰える訳がない。ならどうするか。避けながら言い続けるほかない。

 

「火焔なり!この身は火焔と一体となりぃ!!」

 

「ほう、避けるか」

 

「全てを破壊し尽くすぅ!破壊者となり!全てを!滅さん!!!!」

 

「踊れ踊れ総隊長!弾幕のオーケストラだ!!!!」

 

とは言ったものの、かなりキツイ。避けては言い、言っては避けてを繰り返す。しかも妙に射撃の腕がいいので、進路や着地点なんかの面倒な位置ばかり的確に付いてくる。

 

「八百万の神々とて、我が火焔は止められず!!この火焔は天に地にって危ねぇ!?!?」

 

「フハハハハハ!!!!!」

 

「だぁーもー!!海に山に巡りて全てを焼き尽くす!我眼前敵を排するその時まで火焔と成り例え果てようと悔いは無し!!!!」

 

無理矢理早口で言い終え、どうにか神授才のアーマーに変身できた。これで五分の勝負ができる。

 

「さっきまでのお返しだ!拡散拡大焔球!!!!」

 

大型の火の玉が飛んでいき途中で3連続で拡散。9個の小さな火の玉がトバルカインに襲い掛かる。だがトバルカインはミニガンで火球を迎撃し、代わりに周囲に火の粉を飛び散らせ、視界を一瞬奪う。

 

「チッ!」

 

本来ならお互い、攻撃を控えるだろう。見えない以上は目標を固定できない上、もし攻撃すれば相手に位置がバレる。セオリーは一応攻撃を警戒しつつ、視界が回復ないし相手を捉えた瞬間に攻撃できる様に備える事だ。

 

「彗星ッ!!!!」

 

「ぐぅっ!?!?」

 

だが長嶺は、そもそもの上がった土俵が違っていた。アーマーによって増幅された感覚器官がトバルカインを捉え、そこ目掛けて一直線に突撃。素早く何度も斬撃を繰り返す彗星で、攻撃を加えていく。

 

「アレで見えていたのか!!!!」

 

「そうだとも!!流星!!!!」

 

連撃の最後に2刀を同一方向から切り結ぶ技を使い、トバルカインを吹き飛ばす。アーマーに阻まれたのか、はたまた致命傷をうまく避けたのかは知らないが、少なくとも距離が開いた上にダメージを与えられた。

 

「つ、強いな総隊長………」

 

「テメェ、本気出してないだろ。お前はもっと強かった筈だ。お前はもっと殺り合える筈だ。何故力を出し惜しむ?」

 

「ははっ。確かに、強いよ私は……。だが、もう弱くなってしまった。あれから10年以上時は流れているんだ。しかもあの時の君達は、ある程度消耗していた。だが今の総隊長は強くなり、更には万全の状態。1対1なんて、そもそも無理があったんだ…………」

 

トバルカインから戦意が消える。見れば左脇腹、右腕、首の表面、右太腿から血が流れている。致命傷ではないが、小さな傷でも4箇所も同時に血を流せば動きは鈍る。

 

「だから………君には相応の相手を用意しよう!!!!!!」

 

トバルカインが叫ぶ。その瞬間、長嶺の真上からハルバードを持った黒いアーマーを着た戦士が攻撃を加える。殺気も音も気配も無い攻撃に、長嶺は一切気付いて無かった。だが犬神と八咫烏が同時に念話で警告し、間一髪の所で攻撃を避けた。

 

「のわっ!?」

 

だが攻撃の威力が大きすぎて、風圧で砂煙と共に後ろに吹き飛ばされてしまう。しかも丁度飛んだ所での風圧なので、碌にバランスも取れない。

 

「マジかよっ!!!!!!

 

しかも背後、正確には飛んで行く先に同じく黒いアーマーを着た大剣を持つ男が立っていて、まるでバッターがボールを打つ様にして剣をこちらに振り翳す。

 

「シールドビット!!!!!!」

 

剣によるガードも、ブースターによる回避も、かと言ってスピードの増減速も間に合わない。背中のビットを頭の方に移動させ、シールドモードでガードする他ない。シールドで剣撃を止め、そのシールドに手を付きハンドスプリングの容量で距離を取る。

 

「フッ!!!!」

 

「こっちにも居たのかよ!!!!」

 

今度は戦斧を持った戦士が、長嶺の真正面から振り下ろしてくる。刀で力の方向を変えて防ぎ、腹に強烈な蹴りを叩き込んで無理矢理距離を取る。

 

「流石だねぇ、総隊長。紹介しよう!我が戦闘団の幹部、将軍達さ!」

 

よく見れば、この3人は葉山が江ノ島を乗っ取った時に襲い掛かってきた連中だった。パワードスーツ機能搭載の大型フルフェイスアーマーと、今時の戦場では珍しいを超えて酔狂の域であるヨーロッパの近接武器。見間違い用がない。

 

「ハルバード、グレートソード、それに斧型のメイスか。時代遅れの化石とは言え、腕前は侮れないな……。犬神!八咫烏!」

 

長嶺の髪の毛の中に極小化して隠れていた犬神と八咫烏は、本来の姿である巨大な犬と鴉へと戻り、長嶺の背後に控える様にして立つ。

 

「タイマンを覆したのは、他でもない。そっちだ。ならこっちも、不利な1対多に興じてやるつもりは無い!」

 

「構わないよ?さぁ、第二ラウンドだ!!!!!」

 

トバルカインの宣言を合図にするかの様に、5人と1匹1羽は一斉に動く。まずは八咫烏が先手を取る。

 

「翼旋!!」

 

竜巻を発生させ、砂を巻き込み砂嵐とする。細かい砂の粒子は簡単に舞い上がり、尚且つ巨大な砂嵐となって互いの視界を奪う。これだけ煩く見えないと、長嶺も相手を捉えるなんて無理だ。

 

「氷結の術!!!!」

 

更に犬神が氷結の術で砂の大地を凍らせて、相手の行動能力を奪いに掛かる。何せ砂嵐で何も見えない中で、足場がいきなり滑りやすい氷に変貌する。普通なら混乱して、慌てふためく状況だ。

例え即座に対応できる様な強者であろうと、必ず一瞬の隙が生まれ焦る。その一瞬こそが、こちらの、長嶺の狙いだ。

 

「子鴉共!!!!」

 

空中超戦艦『鴉天狗』であれば、個人で使える凡ゆる武器は通用しない。これが神授才が合わさった『鴉焔天狗』となれば、手数とトリッキーさが加わり隙のない完璧とすら言える兵器となる。相手が何だろうが、理論上なんでも倒せる。

だがそれは、使えればの話だ。

 

「ッ!主様!!」

 

直後、背後からこれまで聞いたこともない轟音と強風が長嶺に襲い掛かる。犬神が盾になってくれたので吹き飛びはしなかったが、それでも音と風圧はかなりの物だ。影から覗いてみるが、最早1m先も砂埃で何も見えない状況である。数分して漸く砂埃が晴れると、そこには『鴉天狗』が墜落していた。

 

「か、鴉天狗が落ちよった…………」

 

「おいおいおいおい………」

 

「鴉天狗って、墜落するの……?」

 

余りの事態に普段冷静な長嶺も、一応神である八咫烏も、永い時を生きる犬神も、全員がフリーズした。考えが追いつかない。何故?どうして?という疑問が脳を埋め尽くす。

 

「サプライズはどうだね?」

 

「トバルカイン!!」

 

「分からなければ、答え合わせと行こうか。君の能力は、そう。艦娘の力だ。艦娘とは深海棲艦を倒す為にある。だが、その深海棲艦とは何なのだろうね?」

 

トバルカインはタバコに火をつけ、優雅に一服し始める。将軍達と呼ばれたアーマーを着る3人も、武器を下ろしている。どうやら戦闘の意思はないらしい。

 

「深海棲艦は世界の海を奪い、何ヶ国もの国を滅ぼした。更にはその余波で、こういう小国が集まる土地は紛争だテロだと大騒ぎ。まあ、その辺は少し前まで海軍提督であり、人類反抗の象徴たる連合艦隊司令長官で有らせられた総隊長だ。無駄な事だろう。確か、日本では釈迦に説法、とでも言うのだったかな?」

 

「……あぁ。そうだな。URもその混乱の最中、ここまで肥大化した組織だ」

 

「その通りだったねぇ。………おっと」

 

トバルカインはスマホを確認すると、すぐにまたポケットに仕舞う。そしてタバコをその辺にポイっと捨てると、武器を構えた。

 

「どうやら時間はないらしい。さぁ、もう少し遊ぼうか」

 

「犬神!!!!」

 

「うん!動くな!!!!」

 

犬神が得意とする、対象の行動を操る妖術。これを使えば仲間内で殺し合いさせる事も、単純に相手を拘束することも出来る。だがそれに引っかかったのはトバルカインだけで、残りの3人は普通に動いている。

 

「妖術が効かない!?どうして!!」

 

「落ち着かぬか!直接作用するのが効かぬだけよ!!」

 

「だったら!氷柱の術!!!!」

 

「羽斬!!」

 

すぐに持ち直し、攻撃タイプの妖術で攻撃を敢行。だがその全てを3人は避ける。これまで初見で避けた奴は片手で数えられる程しか居ないが、それでも犬神と八咫烏は攻撃を続けて惹きつける。

3人の意識が犬神と八咫烏に向いたのを合図に、長嶺が横合いから強襲。乱戦へと持ち込む。

 

「俺を忘れるな!!!!!」

 

まずは戦斧の奴に狙いを定めて、斬撃を加える。2刀でまるでXを描く様に、同時に切り結ぶ。だがそれを見切っていたのか、戦斧を器用に使って弾く。

 

「シッ!!!!」

 

刀が弾かれ、身体がのけぞってバランスを崩した瞬間、背後からハルバードが伸びてきて、後ろ側に付いている刃で長嶺の腹を引っ掛けようとする。幸いアーマーで防ぐが、衝撃は相当なもので腹に鈍痛が走る。

 

「グッ!!!ビームビット!!!!!」

 

ビットの一部を動かし、ハルバード持ちを攻撃。取り敢えずハルバードから離れる事さえ出来れば、取り敢えずは問題ない。なのだが、中々ハルバード持ちは力を弱めない。攻撃を見切っているのか、全く当たる気配がない。

右に左に振り回されながら、偶に攻撃してくる戦斧とグレートソードをどうにか弾きながら、逃げるチャンスを待つ。

 

「主様を離せ!!!!!!」

 

「ッ!?」

 

ハルバード持ちの真上に犬神が迫り、その顎で噛みつこうとする。今の犬神は大型犬サイズのいつもの姿ではなく、真の姿である超大型サイズ。人間どころか車とか列車も、齧ってしまえる程に巨大でパワーもある。ハルバード持ちは刃を長嶺から外して、そのまま犬神に向けて突き刺そうとする。

 

「わっとっとっ!!」

 

「オールビットソード!!焔槍!!焔柱!!焔輪!!!!」

 

「翼旋!!!」

 

犬神のお陰で生まれた一瞬を、長嶺と八咫烏が突く。八咫烏はまたもや砂嵐を作り、長嶺は神授才をフル活用して攻撃。これだけの術であれば、倒せる筈だ。

 

「やはり、奴は変わらない………」

 

そんな言葉が聞こえた気がした次の瞬間、信じられないことが起きた。神授才で生み出した焔を、目の前の3人は打ち消したのだ。耐えたのではない。ハルバードで、グレートソードで、戦斧で。その焔を一撃で散らしたのだ。

焔に限らず水だろうが風だろうが、神授才で生み出したそれらには核の様な物がある、と思われる。記録に残っているわけでも無いが、かつて4人で色々と試していた時に発見した弱点だ。核を一撃で正確に破壊できさえすれば、神授才で生み出された物は消える。だがそれを知っているのは、長嶺と亡くなった3人の親友のみ。そもそも神授才自体、日本の秘密。一般人どころか、裏に精通していようと、日本の歴史に食い込んでる連中だろうと、知る者は限りなく少ない。にも関わらず、考えてみれば3人は普通に対応していた。となれば………

 

「犬神……八咫烏………コイツらの相手は、俺がやる。手を出すな」

 

「主様!?」

 

「我が主!!」

 

となればコイツら、もしかしたらあの親友達かもしれない。そうなのかもしれない。そうであって欲しい。そんな願望を胸に、長嶺は3人にゆっくりと近付く。だがそれを、銃弾が阻んだ。

 

「総隊長。悪いが、そろそろタイムオーバーというか、契約満了だ」

 

「………何を言っている?」

 

「君達の勝ち、という事だよ。ファーストキングは死んだ。URは壊滅だな。我々の任務はファーストキングの警護だが、これでもう果たすべき契約も終わった。だから我々はお暇させて頂くよ」

 

「こっちもこっちで色々と聞きたくてな、逃すわけには行かねーわ」

 

口調はいつも通りだが、纏う雰囲気は明日だった。喜び、悲しみ、歓喜、憤怒、苛立ち。相反する無数の感情が、滲み出てくる様な雰囲気である。顔も凄いことになっているだろう。

 

「…………そうか。流石、というべきかな。なら私も、真剣に話そうか。長嶺雷蔵、よく聞いて欲しい。今世界は滅びの道を進んでいる。我々が、我々の組織が、そうしようとしている。私達では止められない。だが君達なら止められる。どうかお願いだ、世界を。私達を救ってくれ」

 

真剣な顔でそう言うトバルカインだが、生憎とこの空気感でいきなりそんな事言われても「分かりました!俺が世界を救いますよ!!」なんて、クソおめでたい考えになるわけが無い。現実はおちょくられている様にしか聞こえないのだ。

 

「………………トーラス・トバルカイン、死ぬ覚悟はできてるよな?ぶっ殺す!!!!!」

 

長嶺がビームビットで狙った瞬間、3人がトバルカインの前に立ちはだかった。堪らず長嶺は動きを止める。

 

「今の動きで分かったよ。恐らく、君の考えている推測は当たっている。だけどね、今はまだ話す時じゃない。我々を追い掛け、追い詰めろ。その時には必ず、答えが分かる。あそこのサーバールームに、置き土産がある。それを確認したまえ」

 

「テメェ、また逃げる気か?」

 

「逃げるのではない。帰るのだ、最早戦う必要はないのだから」

 

そう言うとトバルカインはトランプをばら撒く。トランプが周囲を覆い、全てが消えるといつもの様に忽然と姿を消していた。

 

「あ、主様…………」

 

「我が主よ……。その、大丈夫か?」

 

「あぁ。大丈夫、大丈夫だ」

 

とは口で言っているが、実際の所は自分でも良く分かっていなかった。嬉しいんだか、悲しいんだか、怒っているんだか、困惑しているんだか。だが一つだけ分かるのは、思わぬ希望が転がり込んできたという事だろう。

 

「取り敢えずアイツらと合流したい所だが………」

 

そう言いながら、長嶺は振り返る。視線の先には砂漠のど真ん中に墜落し、まるでSF映画の宇宙戦艦が座礁しているかの様な、見る人が見れば興奮する光景がある。

 

「うーん。ヤッベェ、どうしよう。マジで案が浮かばねぇ………」

 

「取り敢えず操縦してみたら?」

 

「…………あーダメだ。うんともすんとも言わん」

 

艤装とは言うなれば、身体の一部。人間が腕や手足を動かす様に、艤装と持ち主である艦娘とKAN-SENは文字通り一心同体となる。流石に痛覚とか触覚は無いにしろ、動く動かないの感覚とかは分かる。

 

「おっ!?」

 

「動いたのか!?」

 

「いや……。だが、なんか違和感を感じる」

 

長嶺が違和感を感じる部分の船体をよく見てみると、トランプのジョーカーが刺さっている。どう見てもトバルカインの物であり、試しに抜いてみると途端に艤装が息を吹き返す。

 

「これが問題だったのか………」

 

「何なのだそれは?」

 

「知らねーよ。だが、このデザインだ。どう考えてもトバルカインの、文字通りジョーカー(切り札)だろうさ」

 

「動いて良かったね、主様!」

 

「あぁ。それじゃ、早いとこ合流するぞ」

 

多分もう使う事はない『鴉天狗』をセカンド・エノに戻し、空を飛んでVille Pimordialeへと向かう。どうやら既に略奪中だった様で、色んな物品が外に並べられ、降伏したと思われる連中が拘束されていた。

 

「総隊長殿!ご無事でしたか!!」

 

「ご無事はご無事だが、悪いが今はそれどころじゃない。サーバールームは見つけたか?」

 

「サーバールームですか?いえ、まだ見つけてはおりませんが……」

 

「だったら人員全部サーバールーム捜索に回せ!何なら連中に、ハードなお話をしても良い!!」

 

「はっ、了解しました!」

 

空き巣よろしく色々と略奪していた隊員達は、すぐにサーバールーム探しを始める。元ヤクザとかマフィア、或いは諜報組織や特殊部隊でそういう事をしていた連中は外に出てきて、偉そうな奴から順に空き部屋に連れ込み、懇切丁寧に質問したりもする。

こんな方法だったので、思ったよりも早く地下のサーバールームが見つかった。見つかるや否や、長嶺はグリムを引き連れて地下のサーバールームへと走る。

 

「総隊長殿。一体、何故そんなにもサーバールームを探されるのですか?」

 

「……トバルカインが置き土産を残した、らしい」

 

「罠ですかね?」

 

「いや。罠だと仮定して、態々いかにも罠がありそうな場所を言うか?言わないだろ」

 

グリムの言う通り罠の可能性は捨て切れないが、あの時のトバルカインは罠に嵌めるとか、そういう手合いの感じではなかった。感情論とは言え、何ともあの話し方は信じられそうな気がする。

 

「総隊長!副長!!こっちです!!!!」

 

「ここですか。では君は、念の為外で待機してください」

 

「了解です!」

 

サーバールームを発見した隊員が外で待機し、2人は中に入る。途中にあるセキュリティは全て、グリムが無効化ないし長嶺が破壊しながら突き進む。

 

「見たところ、普通のサーバールームですね。データを見てみます」

 

データの閲覧やコピーなんかを行う、メインコンソールにグリムが滑り込む。入っているデータ、データの閲覧履歴等々、様々な情報を一気に表示させ目にも止まらぬ速さで、グリムはどんどん確認していく。こればかりは長嶺も真似が出来ない芸当なのだが、10秒もしない内にグリムの手が止まった。

 

「これは…………」

 

「どうした?」

 

「この履歴、最後のアクセス記録なんですけど、多分改竄されてますね」

 

「改竄だと?」

 

「えぇ。本部のでサルベージしてやらない事には何も分かりませんし、そもそも改竄してる臭いってだけです。ですが、なんか妙に気になるんですよ。この部分のノイズが、どうも腑に落ちません…………」

 

長嶺もパソコンに詳しくない訳ではないが、流石にこうもガチガチなITの話だとかハッカーの勘だとかになって来たら、もういよいよ持って何もわからない。だが経験上、この手のグリムの予測は当たる。悲しいくらいに当たる。

 

「通信で繋げるか?」

 

「いや…………。やっぱりここ、スタンドアローンですね。繋げても良いですが、もっと確実な方を取りましょう」

 

「確実な方?」

 

「サーバーをそっくりそのまま持っていきます。恐らくここまでやって何も起きてませんから大丈夫だとは思いますが、何か特定の行動をすると何かが発生する、例えば特定のデータを見ると全部のデータがデリートされるとか、そういう罠がある可能性はあります。セカンド・エノのメインコンピューターに繋げれば、そういうのも全て見透せますから」

 

簡単に言ってくれるが、かなり骨が折れるだろう。何せサーバールームのサーバーをそっくりそのまま移すとか、いくら霞桜でもキツい。だがやるしかない。

という訳で全員でどうにかサーバーを運び出し、捕虜を収監し、空き巣よろしく根こそぎ全部盗ってきた金目の物をセカンド・エノに運んだ。なんだかんだで3日間不眠不休で動き続け、最後にVille Pimordialeはセビオソが作ったMPBMで全部纏めて吹き飛ばした。

 

 

 

数日後 セカンド・エノ 長嶺自室

「まあ、別に良いんだが。何でわざわざ、俺の部屋に連れてこられたんだ?」

 

「総隊長殿。この間サーバールームから持ってきたデータが本物と仮定するなら、恐らく我々は真の意味で世界と戦うハメになります」

 

「は?」

 

ふざけた事を超絶真面目な顔で語るグリム。余りのギャップに、長嶺も困惑してしまう。だがそんな長嶺を置いて、グリムはパソコンを机に置きデータを見せてくる。

 

「まずはこれです」

 

「Project Siren?」

 

英語で書かれた極秘文書と思われるデータを読み進めて行く内に、長嶺の顔はみるみると強張っていく。そこに書かれていた図や表というのは、世界共通の敵たる深海棲艦。しかもその横には「製造」だの「クローン技術」だのと、つまりは「人為的に深海棲艦を生み出した」という旨の文章が並んでいた。

 

「深海棲艦が生物兵器………。いやまあ、驚くのは驚くが、これが世界の敵?どういう事だ」

 

「問題なのは深海棲艦を作っていた人間です。これを」

 

そう言って今度は画面が切り替わり、何かの名簿が映し出される。そこには各国の政財界のドン達が勢揃いであり、まるで世界長者番付の様だった。

 

「これは?」

 

「この計画書、計画したのは『世界評議会』とありました。そして添付されていた世界騎士団の名簿が、これです。敵の情報を鵜呑みにするわけではありませんが…………」

 

「まあ状況証拠的には、どう考えても黒、だわな」

 

世界各国の最新鋭兵器やらプロトタイプを量産し、装備しているばかりか、ロストテクノロジーと化している、ロストテクノロジーとして葬った筈のバーサーカーと髑髏兵を運用する謎の組織。それの上位組織ないし、協力組織が実は世界各国の政財界の集まりでした。

そうであれば、全ての謎が1つの線で繋がる。こと武力では最強の軍団ではあるが、所詮はテロリスト。政治なんかの日の当たる場所で、観衆に見られながら戦うのもバレない様にアレコレしながら戦うのも、その世界評議会とやらの方が格段に上だろう。というか向こうのホームグラウンドだ。

 

「総隊長殿、どうされますか?」

 

「どうする、というと?」

 

「あのVille Pimordialeも、URと共に吹き飛びました。これが納められていたサーバーも含めて、全てが吹き飛んでいます。いや、吹き飛んでいる事になっています。であればこの情報も、見て見ぬふりが出来ます。今の我々は、この世界評議会と相手取って戦えません。武力以外、その全てが負けていると言っていい。資金、社会的地位、権力、コネ、規模、人員。全てです」

 

「分かってる!………いつもなら、即断即決が俺の売りだって事ですぐに決めるだろう。だが悪い、今は1人にしてくれないか?俺も個人的に考えたい事がある」

 

「………わかりました」

 

グリムは部屋から出ていく。長嶺は1人、椅子に腰をかけながら、あの日、最後の出撃を前に撮った唯一の写真を見る。

 

「テメェら、生きてやがるのか?だとすりゃ………あー全く、俺のこれまでの人生の絶望は何だったんだ………………」

 

あの砂漠で戦った将軍達。江ノ島でも戦ったが、神授才の弱点を付く戦法に犬神の妖術の無効化。更には連携の癖に戦闘の癖。そのどれもが、あの3人に似ていたという事実。恐らく、親友と呼んだ3人の戦友は生きている。

だがあの日に、3人は死んだ。目の前で死んだ筈なのだ。生きている事はあり得ない。戦車に自爆特攻したミツ。海に身投げしたヒデ。サメ諸共自爆したノブ。全員がタグを置いて、死んだ。生きている訳がない。自爆、身投げ、自爆。そもそも自爆は身体ごと爆発してるので死体は残らないだろうし、死体が残る可能性があるのはヒデだけだ。そのヒデも身投げしたあの海域は流れが強い。普通なら死ぬ場所だ。

 

「あー…………でも、何だろうな。あの3人なら自爆しようが流されようが、生き残る、か?」

 

長嶺は自分が人外であることを、深く認識している。そしてその友人である3人もまた、か~な~り人を辞めている。霞桜の人外どもが常人に見えるほどに、人間を辞めている。それなら生き残っているかもしれないと、思えなくはない。

 

「やめだやめだ。そもそもアイツらは死んだ!うん!!生きてりゃラッキー、死んでりゃ残念!ってなるわけ無いよなぁ…………」

 

やっぱり吹っ切れないし、感情も可笑しい。情緒が不安定だ。だがその時、長嶺の脳裏に天啓が降る。

 

「待てよ?世界評議会がシリウス戦闘団と繋がっているのなら、追いかけて行けば見つかるんじゃね?…………全員とは言わずとも、大半が公人。その節から当たっていけば、シリウス戦闘団以上に分かる可能性がある……………。やってみるか?」

 

 

 

 

 

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