最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第十話鎮守府襲撃

カレー大会より三週間後 執務室

「あぁ〜、仕事したくねーなー」

 

いつも通りの代わり映えしない書類を片付けていると、大淀が血相変えて執務室に飛び込んでくる。

 

「提督!!」

 

「ゴブッ」

 

しかも運悪くお茶を飲んでいた為、ビックリして吹き出す長嶺。

 

「ど、どうした大淀」

 

「演習に出ていた第五遊撃隊からの通報で、加賀が被弾したとの事です!!」

 

「無事なのか!?」

 

机を飛び越し、大淀の肩をガッチリ掴んで鬼の形相で聞いてくる長嶺に、完全にドン引き状態の大淀。というか、テンションについていけてないのである。

 

「は、はい」

 

「すぐに埠頭に行く!!お前は続報に備えて、無線室で待機してろ。それからドックの用意も頼む」

 

返事も聞かず、そのまま窓から飛び降りて埠頭にダッシュする。念の為言っておくが、3階から飛び降りてる為、着地ミスれば骨折不可避である。

 

「加賀さん、痛そうなのです」

「大丈夫ですか?」

 

艦娘達も口々に心配の声を上げている。でもって長嶺は

 

「加賀ぁ!!無事かぁぁ!?!?」

 

空中から立体機動で降ってきて、着地するや否や質問攻めである。

 

「何処も痛まないか?骨は折れてないか?頭打ってないか?攻撃してきた奴は何処にいる?血祭りにちゃんと上げたか?上げてないなら、ちょっと御礼参りに行ってくるから海域と特徴を教えろ」

 

「Heyテートク、落ち着くデース」

 

「あ、すまんすまん。で、実際の所、大丈夫か?マジで」

 

「問題ありません」

 

「私のミスです。旗艦なのに皆に的確な指示を出せなくて、本当にすみません!!」

 

「いえ、遭遇戦は事故のようなもの。そこで出過ぎて、失敗したのは私です。面目次第もありません」

 

旗艦である吹雪は責任を感じ、加賀がそれを庇う。最初期はギスギスしていたと聞いていた長嶺だったが、案外絆が深まっていた事に驚く。

 

「カッコ、つけないでよ。アンタは私の代わりに被弾したんじゃない。一番悪いのは油断して出過ぎた私なのに、どうして責めないの!?!?」

 

「勘違いしないで。アナタがあの無防備な体制で被弾していれば、恐らく轟沈していたわ。でも私は被弾箇所も選べたし、沈まない自信もあった。例えそれが五航戦でも、提督の大事な戦力を失う訳にはいきません。私はあの絶望的な瞬間に見えた僅かな希望に賭けただけ。そして勝ったわ」

 

「何よ!そんなボロボロのクセに!!何でそんなに偉そうなのよ!!!!」

 

側から見れば、こんな状況でも喧嘩してる様に見えるだろう。しかし何方も両者を思っての事であり、言葉こそキツいが心配しているのである。

 

「ヘイヘイ、every buddy。落ち着きマショー。被弾したのはunluckyだけど、高速修復剤を使えばno problemネー!」

 

「所が、そうは問屋が卸さない。生憎とウチの高速修復剤は、来る大規模作戦用の備蓄命令が出てる奴以外は在庫切れだ」

 

「but、定期便が来てるはずデース」

 

「その定期便で来るヤツは、この間襲撃を受けた大湊へクソジジイ、じゃなくて東川長官が送りやがった。現に先日被弾した赤城も、未だに長風呂中だ。まあどうにか交渉はしてみるが、それでもMO攻略には間に合わないな。今回は合同だから中止にも出来んし、どうしたモンかなぁ」

 

色々考えてみるも、妙案が浮かばない。しかしここで文字通りの鶴の一声で、活路を見出す。

 

「私が参ります」

 

「翔鶴姉!」

 

「加賀さん、瑞鶴が守ってらっしゃった事、本当に感謝します」

 

「さっきも言いましたが、別にお礼を言われる様な事ではありません」

 

「提督、お願いです。一航戦の先輩の代打としては不安かもしれませんが、どうかこの翔鶴をお使いください」

 

そう言って深々と頭を下げる翔鶴。だが正直それをされては、長嶺の立つ瀬がない。

 

「おいおい、そこは俺が頭下げるべき所なんだが。翔鶴、やってくれるか?」

 

「お任せください」

 

「では、第五遊撃隊、旗艦吹雪!!」

 

「はい!」

 

「明日のMO攻略には加賀を一時的に外し、第五航空戦隊より翔鶴を編入する。補給と整備点検を万全にし、明日の作戦に備えろ!!」

 

「了解!!」

 

後の事を大淀に任せ、自分は執務室へと戻る。そして秘密裏にMOに先行させたグリムに連絡し、自分の考えていた仮説の意見を聞く。

 

 

「やはりか」

 

『えぇ。推測通り、奴らは我々の暗号を解読しています。最近の反攻作戦の前哨戦の戦績が伸びてないのは、これが原因でしょう。幸い、まだ一部しか解読できてない様ですから、「作戦全部筒抜けで、手の平で遊ばれてる」なんて事は起きてませんが、いつ起きても可笑しくないでしょう』

 

「例の大湊襲撃が証拠だな」

 

実は長嶺は、この所の深海棲艦の動きに疑問が湧いていたのである。何処か此方の手の内を分かっている様な素振りを見せる個体が、まあまあの頻度で見られたのである。最初はただ単に「向こうも学習して、こちらのパターンを読めてきた」と思っていたが、何か引っかかっていた。そこで考え出されたのが、暗号を解読されているという物であり、そう言った暗号や電脳に詳しいグリムを、次の攻撃目標であるMOに送り込んだのである。

更に並行して、東川の策で「偽情報を流して、反応を見る」というのを実行したのである。その結果、進行中の反攻作戦とは余り関係のない大湊基地に白羽の矢が立ち、大湊基地の提督含め、極秘裏に実験が行われた。結果は深海棲艦の襲撃があり、近隣基地やメビウス隊、更には霞桜のほぼ全隊員も配備した事で基地への被害は最小限に抑えられたのである。

 

『総隊長殿、我々はどうしますか?』

 

「そのまま現場海域に留まり、情報収集を続けてくれ」

 

『了解』

 

(さて、吹雪くらいには伝えておくか)

 

そんな訳で、執務室に吹雪を召喚する。

 

 

「駆逐艦吹雪、入ります!」

 

カッチコチに緊張し、手足が一緒に出ながら歩いてくる。

 

「吹雪、取り敢えず安心しろ。別にお前を責めるつもりは無いし、寧ろ良くあの艦隊を纏められてると思うよ」

 

「は、はい!」

 

「犬猿の仲の2人、ちょっとぶっ飛んだ奴、北上絡んだらクレイジーなヤベェ奴、マトモなのが居らんからな。金剛と北上くらいか?まともなの」

 

「アハハ.......」

 

空笑いで返す吹雪。長嶺の言う通り、実際マトモなのがおらん為、こう言う返ししか出来ないのである。

 

「さて、本題に移ろうか。どうやら深海共、こっちの暗号を一部だが解読してやがった。恐らく、今回の作戦も漏れてる可能性が高い」

 

「そんな!?」

 

「俺も「冗談です。ドッキリ大成功〜」なんてノリで返してやりたいが、悲しい事にグリムを派遣して突き止めた」

 

「では作戦を中止するんですか?」

 

「いや、このまま継続する。幸い、彼方さんはこっちが暗号解読の件を知ってるのを知らない。ならばこれを逆手に取り、奴らの油断を利用してやるんだ。何かあれば、グリムを頼ると良い。今も秘密裏に情報収集を継続させてるから、作戦中は情報を流す様に命令しておく。後、この事は内密に」

 

「はい。失礼しました」

 

一応伝えはしたが、これがどうなるかは分からない。しかしこの一件は結果的に、最悪の形で長嶺達に牙を剥く事になる。

 

 

 

数日後 MO付近海域上空、高度8000m

「ほお、アレがアイツの艦隊か」

 

「あぁ、中々に良い練度だ」

 

「アイツに似たのか、何か強い力を感じるね」

 

本来であれば雲海で立てるはず無いのだが、大太刀を持った人間、槍を持った人間、棍棒を持った人間の3人が立っていた。いや、浮いていると言った方が正しいかもしれない。

 

「にしても、僕たちが見ない間に、あんな化け物が居るなんて驚きだよね〜」

 

「言えてる。なんなの、あのキショイの」

 

「でも女タイプのはエロ可愛やぞ〜。あと、あの艦隊の子達もな」

 

目をキラキラさせながら語る槍を持った人間に、棍棒を持った人間が持っている棍棒で頭をぶっ叩く。

 

「イデッ!!」

 

「平常運転だね」

 

大太刀持ちの方は横から眺めて、呆れながら言っていた。

 

「お前は本気で殴りすぎなんだよ。あ"ー、脳が震える。ガチ目の方で脳が震える」

 

「それアレ。私は魔女教大罪司教のヤツ」

 

棍棒持ちが突っ込む。

 

「ワタシは魔女教、大罪司教『怠惰』担当、ペテルギウス・ロマネコンティ、デス!!」

 

今度はそれに便乗して、無駄に上手い声真似を披露する。

 

「お、似てる似てるw」

 

槍持ちがコメントを言いながら、下の様子を伺う。ちょうどマークしてる第五遊撃隊の艦娘達が、初動の動きを見せていた。

 

「どうやら索敵、それも二段索敵か」

 

「中々に慎重だな」

 

「でも作戦海域からは距離もあるし、何なら本隊に遅れかねないけどね」

 

この3人は知る由も無いのだが、この動きは長嶺の齎した情報の為である。

 

「アイツの指示なら、大方敵にこっちの動きがバレてる可能性がある、若しくはバレてるって所だろうか」

 

棍棒持ちが考えに、他の2人も頷く。

 

「お、艦隊が出てきたぞ!かわい子ちゃんは?」

 

「そんなのを観察してる場合か!!」

 

棍棒持ちがまた突っ込む。

 

「どうやら艦載機を出すみたいだね。ロングレンジでの先制攻撃、その後に他の艦が外様の掃討って所かな?」

 

「そうみたいだな。そして空母を外して、本隊に送り込むみたいだ」

 

「まあでも、こんな敵地のど真ん中で護衛無しの空母は中々にリスキーだぞ」

 

吹雪の指示で翔鶴型の2人を本隊に向かわせ、他の艦が残敵掃討に向かう。しかしこの判断が、後に不幸を齎すのは上空の3人以外は知る由も無い。

 

「あのキモい艦隊の艦載機だな。でもって目標の空母2人は気付いてないと」

 

「あ、機銃撃った」

 

深海棲艦艦載機の機銃掃射と爆撃により、翔鶴が中破相当のダメージを負った。瑞鶴は辛うじて無事だった為、翔鶴を守りつつ周囲を索敵する。

敵を見つけるも、攻撃で苛烈で直掩機を出せない。それどころか、翔鶴を救い出そうにも敵が邪魔で手が届かない。翔鶴もそれを察して、瑞鶴に見捨てる様言うが、そんな事なんて出来る筈もなく、どうにかこうにか救い出す。

 

「おー、あのツインテールまな板嬢ちゃん、中々にガッツあるじゃねーか」

 

槍持ちが本人聞いたら爆撃されんのが関の山の事を言う。残り2人も瑞鶴の勇気と、度胸に賞賛を心の中で贈っていた。

 

「スコール入ると言うのは、中々に頭が良い。艦載機が飛べないという枷はあるが、それは敵も同じ。しかもスコールの切れ間から艦載機を飛ばせれば、もしかしたら敵を倒せるかもしれない」

 

「どうやら敵さんの狙いも同じみたいだね。敵の方もスコールの切れ間目指して、動き出し始めてる」

 

「なら、切れ間に先回りだ」

 

そんな訳でスコールを上から偵察し、手近の切れ間に先回りする。その下ではスコールの中を、翔鶴と瑞鶴が進んでいた。スコールの切れ間という、一筋の希望に賭けて。

そんな中、吹雪達は残敵の掃討を終えて一段落ついていた。しかし暗号が読まれていたとして、敵の狙いとなるのが護衛無しの空母である事に気づく。そこで吹雪は他の僚艦を引き連れて、翔鶴達のいる海域へ全速で向かっていた。

 

「お、艦載機」

 

「さーて、倒せるかな?」

 

3人の傍観者達が戦いの行く末を見守る。まず先制を撃てた五航戦の2人は、外様艦を沈める。突然の奇襲で戸惑う深海棲艦であるが、直ぐに反撃の態勢を整え、反撃を開始しようとしていた。しかしここで、吹雪達が合流し敵を一気に殲滅する。結果としてヲ級を一隻取り逃すも、大破に追い込んだ上に他は殲滅という大戦果を上げたのである。

 

「あの無鉄砲さ、完全にアイツに毒されたな」

 

棍棒持ちのコメントに、「あー、やっぱり」という顔を浮かべた2人が空笑いで答える。

 

「っておいおい!!アレ見ろ!!!!」

 

「な!?」

 

「アレは不味いよ」

 

なんとそこには、リ級が見るからに40隻、レ級8隻、ヲ級12隻の大艦隊が居たのである。どう足掻いても、第五遊撃隊が全滅するのは目に見えている。というか、仮に今回の作戦に参加してる全戦力を投入した所で全滅待った無しである。

 

「どうするよ!?」

 

「不本意だが、介入する他ない。これでは本来の目的である「艦娘達を生かす」というのを達成できない。彼女らにはまだ、我々の計画の為の駒としての役割がある。出来る限り残しておきたい」

 

「わかった。なら、やるぞ」

 

棍棒持ちの意見に、槍持ちがさっきまでのチャラい雰囲気から、ガチの雰囲気になって答える。

 

「身バレは最小限に抑えたい。取り敢えず、能力は使うな」

 

「わかってるよ」

 

「よし、じゃあアイツが居らんが、我らcrow、己の使命を果たすぞ!!」

 

「「おう!!!!」」

 

棍棒持ちを先頭に、一気に降下して敵の前に出る。第五遊撃隊の面々もいきなりの登場に、豆鉄砲を食らった鳩の様な顔となる。

 

「ナンダ、貴様ラ」

 

「「何だ」とか「誰だ」とかと聞かれて、答えるバカはいねーよ。というか人に会ったら、まずは挨拶だろうが!!」

 

槍持ちが話しかけてきたリ級と、その後ろにいた別のリ級2隻を纏めて突き刺す。

 

「さて、僕達も始めようか?」

 

天使の様に優しく微笑む大太刀持ち。しかし次の瞬間には、大太刀を振り下ろし胴体を真っ二つに切り裂く。

 

「2人も始めたか。さて、隊長代理として頑張らないとな」

 

そう言いながら、棍棒持ちが棍棒を上で回し始める。回転は段々と早くなり、遂には周囲の海水を巻き込んだ竜巻となり、それを敵に向かって撃ち出す。勿論なす術なく取り込まれて、そのまま遥か上空に送られて落下死する。

深海棲艦を物ともせず、艦娘をも凌駕する力で殲滅していく3人に第五遊撃隊の皆は驚き続けていた。まず格好である。全員が細部は異なるが、昔の甲冑とSFに出てくる歩兵のボディアーマーの二つが織り混ざった見た目をしており、時代に矛盾が生じているのである。さらに各々が鎧と同じ色のマントをつけており、それぞれ棍棒持ちは青、槍持ちは黄、大太刀持ちは黒である。

極め付けに戦い方である。この戦い方はまるで、長嶺が深海棲艦と相対した時のソレであり、武器は違うが何処かに長嶺と同じ雰囲気を感じるのである。敵を諸共せずに突っ込み、圧倒的な力でねじ伏せ、一切の躊躇や迷いなく敵を倒し続けるキリングマシーン。まさにその言葉通りの戦い方なのである。程なくして深海棲艦を殲滅させ、第五遊撃隊に目を向ける。

 

「お嬢さん方、ケガは無いかい?」

 

「は、はい」

 

槍持ちが声を掛け、吹雪がそれに答える。しかし吹雪含め、味方なのか敵なのか分からない相手の登場に戸惑っている。

 

「そうかい。んじゃ、俺達も退散するか」

 

「そうしよう」

 

「あ、あの!あなた方は、一体誰なんですか?」

 

吹雪の問いに、3人が顔を見合わせる。まさか正体を聞いてくるとは、流石に思わなかったらしい。

 

「あー、なんて言えばいいんだ?俺達は、そうだな。「怨霊」って所だな」

 

「お、怨霊!?」

 

槍持ちの回答に、大井が驚く。

 

「コイツの言う通り、俺達は地獄から這い出てきた亡者だ。まあ呪い殺したりとか、祟ったりする事は無いから安心していい」

 

「そうそう。僕達には、そんな能力ないしね」

 

棍棒持ちと大太刀持ちが付け加える。

 

「さて、お前達、行くぞ」

 

「「おう」」

 

そう言うと、また何処かに飛び去る3人。第五遊撃隊の面々は、その背中を見送った。

 

「ブッキー、大淀に報告するデース。もしかしたら、自衛隊のレーダーに映るかもしれマセンヨ?」

 

「そ、そうですね」

 

そう言うと無線の電源を入れ、チャンネルを鎮守府に合わせる。

 

「こちら吹雪。大淀さん聞こえますか?」

 

『グッドタイミングだ、吹雪』

 

「提督!?」

 

本来であれば大淀が出る筈なのに、長嶺が出ている事に驚く。

 

『いいかよく聞け。今鎮守府は深海棲艦の空襲によって、大損害を受けている。既に港湾施設は爆撃で吹っ飛んだか、火災でバイトテロばりに大炎上中だ。もうこの鎮守府は、司令部機能を喪失している。MO攻略艦隊は、このまま予定通りにトラック基地に向かえ』

 

「提督は無事なんですか?」

 

『俺か?無事、と言いたいが、生憎とトラックには行けそうに無い』

 

「どういう事なんですか!?!?」

 

『そのまんまの意味さ。でだな、念の為、今度のミッドウェー海戦での鍵を話しておく。今度の戦いの鍵は、空母だ。

敵味方問わず、空母を先に全滅させた奴が勝つ。だから何が何でも、空母を守るんだ。特に吹雪、貴様は改となって護衛艦となれ。わかったな』

 

「提督!?返事してください!!提督!!!!」

 

「ブッキー、どうしましたカ?」

 

金剛が吹雪に聞く。吹雪は震えながら、声を絞り出して答える。

 

「鎮守府が、空襲を受けて、提督との連絡が、途絶えました.......」

 

「あ、アハハ。ブッキー、そんな面白くないブラックジョークはよすネー」

 

「.......」

 

何も答えない吹雪に、他の艦娘も本当である事に気づく。

 

「嘘デース!テートクは、テートクは生きてマース!!絶対、私達を遺してヴァルハラに逝ったりしないデース!!!!」

 

段々と涙を流しながら、長嶺は生きてると主張する金剛。では本当にそうなのか、時間を1時間前に戻して、検証してみよう。

 

 

 

1時間前 江ノ島鎮守府

「大淀、艦隊の移動状況は?」

 

「既に大半がトラックに向かっており、残りは私達2人と、赤城と加賀だけです」

 

「そうか。それじゃ、留守を間宮達に任せて、俺達も行こうか」

 

この日、ミッドウェー攻略に向けて、参加する戦力の大半をトラックに移動させていたのである。一部は完成したウェーク島にも進出しており、いよいよ作戦も最終段階を迎えようとしていたのである。

 

「提督!深海棲艦の空襲です!!」

 

部屋にいきなり飛び込んで来た睦月から、超巨大な爆弾発言を投下される。

 

「おいおい不味いぞ。霞桜とメビウス隊も居ないし、主力艦隊の大半はトラックに向かってる。それに残存艦も今日に限って、演習やら遠征で留守だ。ん?」

 

ここで長嶺は何かに気付く。鎮守府が最大の脅威である霞桜や、主力の艦娘達がおらず、文字通りのもぬけの殻状態で攻め込んで来た深海棲艦。出来すぎている。

 

「まさか、奴らこれを狙ってたのか!?」

 

長嶺の予想は不幸な事にあたっていた。暗号を解読した深海棲艦は、ちょうど今日が鎮守府が手薄になり、絶好の襲撃日和となっていた事を察知していたのである。

 

「クソが!!大淀、睦月!」

 

「「はい!」」

 

「お前達は他の留守番組を連れて、シェルターに逃げ込め。俺は、敵の侵攻を食い止める」

 

「待ってください提督!!」

 

「大丈夫、俺はこの程度の攻撃じゃ死にはしない。寧ろ俺からしてみれば、あの地獄が戻ってきたみたいで嬉しい限りだ」

 

一気に狂気の笑顔となり、戦闘狂のそれとなる。

 

「お前達、行くぞ!!」

 

そう言うと何処からとも無く、犬神と八咫烏が現れる。そして長嶺と共に窓から飛び降り、巨大化して深海棲艦艦載機に攻撃を開始する。

 

「食べちゃうよ!!」

 

犬神が強靭な爪と牙で噛み砕き、

 

「セイッ!!」

 

八咫烏が翼をナイフの様に変化させ、バラバラに裁断する。

 

「オラオラどうしたどうした!?その程度じゃ、俺のタマは獲れんぞ!!」

 

長嶺はグラップルを駆使して、艦載機に飛び移っては鎌鼬を撃ち、倒したら別の艦載機に飛び移りを繰り返していた。しかし百戦錬磨で一騎当千の強者と言えど、数の暴力には勝てない。ただ単に戦うだけなら勝てるが、今回は鎮守府を守りながら戦わないといけない。

まだ言っていなかったので言っておくが、今回襲撃してきたのは艦載機約2000機である。しかもそれを、たった1人と2匹だけで500機は撃退している。

 

(不味いぞ、鎮守府に被害が出始めてる。このまま行けば、首都陥落もあり得る。こうなりゃ、短期決着でアレをやるしかないな)

 

「八咫烏!犬神‼︎援護しろ!!」

 

「我が主、まさかアレを使うのか?」

 

「リスクが大きすぎるよ!!」

 

「やるしかないだろ!?」

 

そう言うと、八咫烏の背中に飛び移る。そして力をため始め、体から真っ赤なオーラが出始める。そのオーラは段々右手に集まり出し、更に濃い赤となる。

 

「行くぞ!必殺、焔龍!!」

 

野球ボールを持つ様な手の形をつくり、それを勢いよく前に出す。その瞬間、背後から巨大な炎の龍が現れ、艦載機編隊に向かい突撃する。

 

 

グォォォォォォン‼︎

 

 

「行っけぇぇぇぇぇ!!」

 

巨大な口を開けて、中に機体を取り込む。飲み込まれた機体はその業火に耐えきれず、どんどん爆発していき、一撃で残存機全てを破壊した。

 

「ヤベェ、力使いすぎた」

 

そのまま八咫烏の背中に倒れ込む。

 

「取り敢えず、地上に降ろすが構わないな?」

 

「頼んだ」

 

そのまま地上に降ろして貰い、手分けして残存敵の捜索、掃討にあたる。

 

「あー、この間建てたばっかなのに、ボッコボコじゃん」

 

知っての通り建ててまだ半年と立っていない。しかし襲撃でボロボロである。「事後処理面倒だなぁ」とか思っていると、背後の建物をぶち破って何かが出てくる。

 

「うおっ!?」

 

「今ノヲ避ケルノカ。貴様、中々ニ出来ル」

 

「深海棲艦?」

 

そこに立っていたのは、未だかつて観測されていない個体であった。艤装が5m近くあり、様々な姫級の艤装を統合したような禍々しい見た目をしており、一目で強者である事がわかる。

 

「私ハ深海棲姫。深海棲艦ノ女王ニシテ、総旗艦デアル」

 

「ようは親玉か」

 

「ソノ認識デ合ッテイル」

 

そう言うといきなり飛び掛かる深海棲姫。しかしそれが間一髪で読めた為、刀を抜いて受け止める。

 

「重ッ!!」

 

しかし一撃がクソ重いのである。何でも切り裂く名刀が、ギシギシと音を立てる。

 

「死ネェェェェ!!」

 

今度は艤装の砲を動かし、砲撃態勢に入る。

 

「おいおい嘘だろ!?!?」

 

身の危険を感じ、上手いこと避ける。それとほぼ同時にさっき立っていた所は、綺麗さっぱり吹き飛びクレーターが出来ていた。

 

「避ケタ。デモ、コレハ避ケレナイ」

 

そう言うと、腕に何かが触れる感触がするのに気付く。視線を落とすと地面から生えた触手に、左腕全体が巻き付かれていたのである。

 

「クソッ!離れろ!!」

 

渾身の力で振り解こうとするも、中々離れない。それどころか巻きつけが更にキツくなり、痛みが増してくる。

 

「フン!」

 

遂には腕を反対方向に捻じ曲げられ、骨が砕ける音がしながら激痛が走る。

 

「グォォォォォォ!?!?」

 

「降参シロ。ソシテ、私ニ命ヲ差シ出セ」

 

「フッ、フハハハハ。何を、言ってやがる。まだ腕が、一本砕けた、だけじゃぁねーか。命を差し出せ?こっちが逆に命を奪ってやる。ほら、かかってこい‼︎」

 

右手に持っていた幻月を口に咥え、左手に持っていた閻魔は右手に持つ。

 

「行くぞ!」

 

突撃する長嶺。しかしそれを笑いながら深海棲姫は、容易く止めて逆に反撃する。

 

「クソッ、たれ、が」

 

そのまま前のめりに倒れ込む。今の一撃で、左腕は完全に千切れ、右太腿に大穴が開き、左脇腹が抉り取られたのである。更には小石を弾かれ目に命中し、左の眼球までもが潰される。

 

「時間切レ。死ネ、人間」

 

そう言うと深海棲姫は海に潜り、姿を消した。長嶺はそのまま何とか立ち上がり、刀を杖にして通信室に入った。

 

「吹雪に、作戦の事を伝えねーとな」

 

そして何とか気力を振り絞り、通信室からさっきの連絡をしたのであった。通信を切ると、そのまま倒れる。

 

「ハ、ハハ。やっぱ、力を封じられるのは痛いな。あんな奴、本当の力でなら、余裕で倒せたのによぉ」

 

そのまま力尽き、通信室で意識は闇の中へと吸い込まれた。その後、犬神が発見し合流できたマーリンらの手によって、病院に搬送されるも、意識は一向に戻らないのであった。

 

 

 

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