最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第百九話復讐の深海棲姫

「メビウス1より全機。我らが提督よりオーダーが入った。手薄となった鬼ヶ島後方より、超低空にて高速侵入。中心部の超重爆飛行場姫及び、飛行場姫を破壊せよ。との事だ。なんでも流石に飛行場姫30体以上に、超重爆飛行場姫4体は、こっちの航空隊が殲滅されかねないらしい」

 

長嶺率いる艦隊及び霞桜の全軍が、真正面から深海棲艦と戦っていた一方、メビウス1を指揮官とする元江ノ島鎮守府基地航空隊の面々は、長嶺らのいる場所から真反対の方角よりか超低空で鬼ヶ島に接近していた。

 

『そりゃまたデンジャラスなオーダーだ。しかも俺達だけか』

 

『霞桜の援護は無し。無論、艦娘とKAN-SEN達の援護は無し。ははっ、普通なら自殺任務だよ自殺!』

 

『だけど、俺達ならやれる』

 

『むしろ余裕ー。あれ?というか、俺達もこっちの航空隊枠じゃね?』

 

レジェンド、フォーミュラー、グレイア、カメーロの各隊長達がそう言いあう。対深海棲艦戦闘に於いて、航空機は基本的には無力だ。何せ同じ航空戦力である深海棲艦の航空機のサイズは、ラジコンくらいのサイズであり飛行機には小さすぎる。にも関わらず、攻撃力は通常の戦闘機と大差ないばかりか、タイプによっては上回ってくる。

故にドッグファイトして制空権を、というよりは海上或いは地上に展開する深海棲艦を直接叩く戦法が主流だ。とはいえ空対艦ミサイルを満載し積んでるのを全部単一目標に向けたとしても精々軽巡が限界であり、4機の小隊規模を動員すれば、どうにか重巡クラスを倒せる位である。なのだがやはり相手は深海棲艦なので、弾が擦れば即撃墜。生還率は高くない。しかし軍としては、一度やられれば数百人単位で死ぬ艦艇よりも、一度やられても1人か2人しか死なず、尚且つ機体も高いとはいえ艦艇よりは安い航空機は、深海棲艦戦闘に駆り出されてきた。

大量の死人を出したが、その中で生き残ってきた者達。それが現代の航空戦力である。なので大半がエース級であり、なにより江ノ島鎮守府に配置されていたメビウス中隊を筆頭とした基地航空隊は、航空自衛隊の中でも選りすぐりの精鋭達。この程度の任務、難なくやりのけて見せる。

 

「全機、俺が先導する。しっかり頼むぞ!」

 

メビウス1はパネルを軽く弄り、更にスロットルレバーを押し込む。次の瞬間、機体が急激に加速し一目散に鬼ヶ島へと突っ込んでいった。メビウス1のラプターには、ジェットエンジンの他にスクラムジェットエンジンが搭載されており、最大でマッハ7.5を叩き出す。

 

「ぐっ…………」

 

当然、特別な対Gスーツを着用しているとはいえ、それだけで抑え込める程、マッハ7.5という世界は優しくはない。パイロットであるメビウス1には、相当な負荷が掛かる。Gに耐性を持つパイロットですら、並のパイロットなら耐えられないだろう。

しかしメビウス1は数少ない、深海棲艦の航空機相手にドッグファイトを仕掛けられる存在。そもそもの生まれ付き持っている天性のG耐性と、その戦闘で鍛え上げられた身体を持ってすれば、しっかり耐えた上で操縦できる。

 

「お……おぉ!!」

 

メビウス1の駆るラプターは、鬼ヶ島に到達し暴れ出す。まずは上空にいる艦隊側への迎撃機と思われる航空機の群れに、機首のバルカン砲をばら撒きながら突っ込む。迎撃機は正面の艦娘達相手に配備された物であり、まさか後方から食い散らかされるとは思っていなかったのか、目に見えて混乱している。

 

「深海棲艦は化け物だけど、意外とこういう所は人間くさいんだよ……ね!!」

 

そのままメビウス1は戦闘に入る。目算で200機はいるラジコンサイズの高性能戦闘機の群れに対し、自らと無人機4機の計5機で挑もうというのだ。自殺に等しいどころか、単なる自殺である。だがメビウス1ならば問題はない。

 

「さぁ、倒せる物なら倒してみろ」

 

メビウス1は深海棲艦航空機の特性を良く理解している。感覚派のパイロットなので説明しろと言われると難しいらしいが、それでも本人の身体に染み付いている。脳で考えるよりも先に、反射で対応する事ができる。しかも姿勢制御スラスターで、予想外の動きをするオマケ付き。

無人機だって、単なる無人機ではない。拠点防衛用に作られたMQ58改ハイパーヴァルキリーだ。ステルスUCAVのXQ58ヴァルキリーに、ラプターのシステムと黒鮫のエンジンを積み、ついでに姿勢制御スラスターまで搭載した高性能機。人間ではまず不可能なあり得ない挙動を実現させた、化け物機体がいるのだ。

深海棲艦側も人間の乗る戦闘機が襲いかかってくるなんて、そんな事態はイレギュラーすぎるケースだ。それ故に対応はかなりモタ付く。その隙こそが、メビウス1の、ひいては航空隊の目標である。

 

『レジェンド1よりオールレジェンド、ビジネススタートだ。破城槌を叩き込んでやろう』

 

『こちらカメーロ1。カメーロ隊、エンゲージ』

 

メビウス1が単機で暴れ回ってる中、航空隊が鬼ヶ島に接近。攻撃を開始する。先陣を切るのはF3Aストライク心神TYPE鬼を配備するレジェンド隊とカメーロ隊、それから攻撃機仕様のメビウス5、メビウス7。これに加えて各機に4機ずつのヴァルキリー改が付くので合計50機だ。

 

『ターゲット…ロック!発射ァ!!!』

 

レジェンド隊のストライク心神には、大量のASM3が搭載されている。本来なら姫級には効果が無く、精々目眩しとか虚仮威し程度だろう。黒鮫弍型持って来て数百発単位で撃ち込めば効果あるだろうが。

だがしかし、ただのASM3ではない。テスランの加入により、姫級相手にも、ある程度は通用する特殊弾頭の量産に成功したのだ。それでも編隊丸ごと使う必要はあるが、そうだとしても大躍進だ。

 

「キャァァァァァ!!!!!」

 

「ヤァダ、イタイジャナイ!」

 

「……コワレチャウ…ウフフッ!アハハハハッ!!」

 

飛行場姫も超重爆飛行場姫も、少なからずダメージを受ける。しかもそこに、間髪入れずにメビウス5が突っ込んでいく。

 

『ほれほれぇ!!!!ミサイルだけじゃ足りないだろうからなァ!!!!おかわり持って来てやったぜェェェ!!!!!!』

 

メビウス5のラプターには、速度を犠牲にした代わりに装甲とGAU8アヴェンジャー30mmバルカン砲を搭載している。しかも今回は、機体本体のウェポンベイと外付けのウェポンベイに、大量の対姫級の爆弾を積んでいる。ミサイルと違い、爆弾は誘導装置とかを載せない分、ギリギリまで炸薬を増やせる。テスランが作り上げた、至高の一品だ。

とはいえ無誘導爆弾なので、当然敵の上空まで届ける必要がある。ミサイルの様に離れた位置から撃って逃げる、という戦法が取れない以上、当然だが姫級の真上まで行く必要がある。それ故に扱えるのは限られるが、対地上攻撃のスペシャリストには無用の心配だ。

 

『投下ァ!!!!!』

 

6発の爆弾が飛行場姫の真上に襲い掛かる。先程の攻撃でダメージを受けていない個体であっても、この爆弾で倒れた。人類の悲願が達成された瞬間でもあるのだが、当の本人メビウス5は全く気にするそぶりはなく、単純に爆弾を落として爆発して大戦果という結果を大喜びしている。平常運転だ。

 

『カメーロ隊各機。楔を打ち込むぞ』

 

ASM3を満載していたレジェンド隊とは違い、カメーロ隊とメビウス7のストライク心神にはウェポンベイにミサイルを搭載していない。代わりに機体下部にはEMLこと航空機用の大口径レールガン、上部にはTLSことレーザー砲が搭載されている。文字通りの楔だ。

 

『……コーション!飛行場姫及び超重爆飛行場姫、対空小鬼及びelite個体大量召喚!総数……凡そ100体!!』

 

電子戦機仕様のラプターを操るメビウス3の報告が上がる。このラプターは電子戦機である事から、レーダー系統とセンサー類が大幅に強化された結果、こんな具合に敵の観測や偵察を熟せるのだ。

 

『構わない。目標飛行場姫及び超重爆飛行場姫。EMLフルチャージ、発射』

 

バシュンという、軽いが大きな爆音と共に砲弾が発射される。単純な質量弾であり、当たっても爆発しない。その代わり貫徹能力を極限に引き上げた、レリック謹製の特殊徹甲弾だ。この砲弾を持ってすれば、例え姫級であろうとタダではすまない。

しかもEMLと同時に、周りに控えるヴァルキリーからはASM3が発射されている。質量弾とミサイルの群れは、姫に打ち込む楔の群れそのものである。

 

『こちらメビウス3。飛行場姫4体及び、対空小鬼20体は無力化を確認した』

 

『続けて攻撃する。TLS、照射開始』

 

続けてカメーロ隊は、TLSの照射に移る。こちらも無誘導兵器であり、本来なら当てるのは難しい。しかし彼らの腕を持ってすれば、造作もない。しかもTLSはビーム砲であり持続して照射されるので、映画の様に薙ぎ払う形で合わせていけばいい。

 

『飛行場姫2体、無力化を確認。………上半身消えてんぞ。恐ろしいなTLS』

 

一応チャリオットの高出力TLSよりは弱いが、それでも姫級相手にある程度当て続ければ溶かしきる位には強い。ただしグロい。

 

「こちらメビウス1!敵航空隊が動き出してる!!予想通りだ!!!!」

 

『了解メビウス1。フォーミュラー1より、フォーミュラー隊全機!俺達も暴れるぞ!!!!』

 

『グレイア隊全機!エースパイロット、そしてファイターパイロットとしてのプライドを見せてやろう!!続けッ!!!!』

 

飛行場がやられた以上、上にいる航空隊は帰るべき場所を失った。普通なら不時着とか脱出とか、そういう生き残る手段を選択するだろう。だが深海棲艦の航空機には、恐らく魂とかそういうのがない。あるのかもしれないが、まあその辺はこの際どうでもいい。重要なのは、飛行場を失った航空機達は、弾薬や燃料尽きるまで戦うという事だ。

ましてここは、深海棲艦の本拠地たる鬼ヶ島。是が非でも落とされる訳にはいかない、そんな超一級の最上位戦略的要所でもある。もしかしたら深海棲艦にも、故郷の為に戦う様な気概があるのかもしれないが、余計に航空機の動きは攻撃的かつ活発になる。となればメビウス1と随伴ヴァルキリーだけでは、どんなに頑張っても抑えきれない。5機で大立ち回りができるのも、向こうから勝手に寄ってくるからだ。流石に逃げてる相手を追いかけて、なんて真似は間に合わない。

 

『メビウス2よりメビウス中隊各機へ。隊長を援護する、集結せよ』

 

フォーミュラー隊とグレイア隊に続く形で、メビウス1を除く7機の中隊所属機がメビウス2の元に集まる。先ほど、攻撃に参加していたメビウス5とメビウス7もだ。

 

こちらメビウス2。スタンバイ(Mobius 2 on standby.)

 

メビウス3から7、スタンバイ(Mobius 3 through 7 on standby.)

 

メビウス8、スタンバイ(Mobius 8 on standby.)

 

攻撃準備完了。(Preparations are complete.)攻撃を開始する( Ready for battle.)全機メビウス1に続け!(All aircraft, follow Mobius 1!)

 

メビウス2の号令に、7機の猛禽共と8機の令和の零戦が敵編隊に突っ込んでいく。そのまま大空中戦が始まり、空はミサイルの爆炎と落ちていく深海棲艦機の炎に彩られた。

 

 

 

同時刻 鬼ヶ島付近の海上 艦隊最前線

『こちら観測部隊より全軍!!お出ましだッ!!!!』

 

「総員警戒!!水中に注意しろッ!!!!!』

 

鬼ヶ島上空で基地航空隊が暴れ回っていた頃、海上も海上で大物が現れた。地震計で観測された、特殊な波形を持つ海中を進む物体。しかもこのタイミングともなれば、それはもう奴しかいない。

 

「全部全部死ンデシマエ!!!人間ハ死ネ!!!!艦娘モ死ンデシマエ!!!!長嶺雷蔵ハ絶対殺ス!!!!!!」

 

怨嗟に塗れた深海の女王、深海棲姫である。深海棲艦は意志薄弱というか、感情をあまり表に出さない。にも関わらず、ここまで凄まじい怨嗟を出してくる辺り、かなりの特殊個体だ。心なしか深海棲姫の周りに、ドス黒いオーラまで漂わせている。

 

「うおぉ!!出やがった!!!!」

 

「嬢ちゃんを守れっ!!身を挺してでも守れッ!!!!!」

 

「触手だ!!注意しろ!!!!!」

 

あの北方海域攻略戦、ペルーン作戦で霞桜の隊員達はこれ以上ない位学んでいる。長らく年単位で死傷者を1人も出してこなかった霞桜だったが、あの作戦の日、久しぶりに死人を出した。86名もの死者と、12名が後遺症などにより退役を余儀なくされた苦すぎる思い出がある。

戦場だ。そんな事もある。人死になんて、日常の一コマなのだ。なにより隊員達は全員が戦場か、戦場と同じく死が身近どころか真横にいる様な裏世界や闇の中で生き抜いてきた。それ故に、死者を生かせるのだ。死を持って彼らは、触手の危険性を示した。もう2度と、触手の奇襲では死なない。

 

「みんな注意して!!」

 

「戦隊旗艦は各々の仲間を取りまとめよ!!固まって警戒するのだ!!!!」

 

「装甲に自信のある戦艦は前に出るぞ!壁になるんだ!!」

 

艦娘とKAN-SENだって同じだ。幸い江ノ島艦隊では轟沈者、つまり死者も命に関わる被害を受けた者は出なかった。しかし他鎮守府では轟沈者は出たし、更には初手の触手攻撃で足や腕を切り落とされた者、腹を貫かれた者等々、大破した重症者が続出した。生き残ったものの、結局は退役し解体なんて末路もかなりの数だった。

だからこそ、彼女達は対応できる。また同じ様にできる保証はないが、前回できたのだ。今回だってできる。

 

「死ネッッッ!!!!!!」

 

「触手くるぞ!!!!」

 

誰かの叫びに、一斉に全員が構える。触手の動きを予測し回避し、或いは攻撃して迎撃する。唯一対応が違ったのは、長嶺だけだ。

 

「そぉ……れっ!!!!!!」

 

触手を避けず、真正面から受け止める。一応、おそらく音速を超えているのだが、それを素の能力だけで見切って受け止めて、そのまま引きちぎって見せる。だが事前の情報通り、特段痛覚とかで悶えるとか叫ぶとか、そういう類いの動きは見せない。それでも引きちぎられた以上、かなりの動揺が見て取れる。

 

「貴様………ヤハリ止メルカ。ダガ、私ハ強クナッタゾ。ソノ程度デハ止マラン」

 

「そうか?なら来いよ。相手になってやる」

 

「殺スッッッ!!!!!!!」

 

「やってみろ!!!!お前達!!!!」

 

「嵐気!!」

 

「氷結の術!!!!!!」

 

全ての触手が長嶺に襲い掛かるが、2匹が術で止める。嵐気、正確には単純に風を吹かせて海水を巻き上げる小技を使い、触手に海水を大量に付着させる。そこに犬神の氷結の術を使えば、海水は凍り付き触手も氷漬けとなる。いくら海水が凍りづらかろうと、氷結の術であればスルーできる。

 

「へっ!ざっとこんなもんよ!!」

 

「消エ去レッッッ!!!!!!」

 

触手を止めても、所詮触手は艤装の一部。『艤装』と言うだけあって、そのメインの武装とは大砲や魚雷だ。深海棲姫はそれで攻撃してくる。しかも、長嶺はそれをマトモに食らってしまう。

 

「ぐはっ!!!!」

 

「指揮官!!!!」

 

「提督っ!!!!」

 

「雷蔵!!!!」

 

「総隊長殿ッ!!!!!」

 

長嶺は忘れていた。戦場では気を緩めたら、死んでしまう事を。例え相手の攻撃を止めても、二の手三の手を考えなくてはならない事を。

…………まあそんな訳はなく、これは敢えてやられたのだ。倒されたフリをして、一旦海中に隠れるために。態々、神授才の焔影という蜃気楼で自分の偽物を作る術を使い、さもマトモに食らって沈むかの様な、そんな演出付きだ。

 

「呆気ナイ物ダナ。サテ、次ハ貴様ラダ」

 

深海棲姫は気をよくしたのか少しオーラが消える。それでも怨嗟には事欠かない様で、しっかり残ってる長嶺ファミリーの方を向く。全員結構演技派な様で、ちゃんと長嶺がやられたかの様な雰囲気を醸し出してくれている。希望の灯火が潰えたかのような、そんな雰囲気を適当なセリフとかを吐いて無理矢理演出してくれた。

 

「そんな!嘘よ雷蔵が死ぬ訳ない!!!!」

 

「オイゲンさん!」

 

「大和!!そうでしょ!?雷蔵は死なないわよ………」

 

「テートクぅぅぅ!!!!!!」

 

特に艦娘及びKAN-SENの方は鬼気迫るものがあり、危うく霞桜の隊員達が「いやあの、あれで死ぬ訳ないから」みたいな慰めをしかねない程だった。逆に霞桜の隊員達はというと……

 

「クッソォォォォ!!!!!!総隊長の仇じゃぁぁ!!!!!!!」

 

「あいや待たれたい!!」

 

「殿中!!殿中に御座る!!!!!」

 

こんな具合にふざける奴も居るくらいには、結構適当だった。こちらは演技力の代わりに、顔の怖さと声の大きさで無理矢理カバーしている。顔が怖いと、何もしなくても悲しみが怒りにスライドした感じを出せるから便利だ。そんな中、当の本人、長嶺は海中でお札を取り出し呪文の様な祝詞の様な、神授才を本格使用する為の言葉を水中で唱える。

 

我願うは、大和民族の火焔なり。この身は火焔と一体となり、全てを破壊し尽くす破壊者となり、全てを滅さん。八百万の神々とて、我が火焔は止められず。この火焔は天に、地に、海に、山に巡りて、全てを焼き尽くす。我、眼前敵を排するその時まで、火炎と成り、例え果てようと悔いは無し

 

と言ってはいるが、実際は水中なので全部「ガボゴボガボゴボ」みたいな感じで、言葉としては聞こえない。それでも唱えた事にはなるので、しっかりと問題無く発動できた。

海の上では炎の巨人が現れ、海中の長嶺の元に分解した炎が集まっていく。その炎と共に海中から空中へと上がっていき、炎が晴れた時には空中超戦艦『鴉焔天狗』となっていた。

 

「空中超戦艦『鴉焔天狗』推参なりってな」

 

「何故ダ!!何故生キテイル!!!!」

 

「それは…」

「馬鹿ですか、貴女。我らが総隊長殿が死ぬ訳ないでしょ?」

 

長嶺が言うよりも先に、グリムが言った。グリムの後に続々と大隊長達が続く。

 

「我々の総隊長は文字通り最強無敵。生憎と、お嬢さん如きでは倒せませんよ」

 

「無駄な足掻き。非効率」

 

「総長舐めんな!!」

 

「そうよ?ボスを舐めたら痛い目見るわよ」

 

「親父はお強い。殺したければ分裂して増えてこい!!!!」

 

『アレでサンダーボルトが倒せるなら、この世はもっと平和だ』

 

「総隊長さんが簡単に死ぬんなら、URだって消えなかったよホント」

 

「雷蔵さんは死にません!我々の総旗艦なんですから!!!!」

 

「何より雷蔵を殺したければ、まず私達を殺す事ね」

 

なんかちゃっかり、大和とオイゲンも入っている。しかもその後ろでは、他のファミリー共がギャーギャーと言っている。艦娘とKAN-SENはオイゲンとか大和の言葉に同意したり、愛らしい物からヘビークラスまで自分の長嶺への想いをぶち撒ける感じなので良いのだが、霞桜の野郎共は殆ど罵詈雑言だった。

 

「とまあ、こんな訳だわ。という訳で深海棲姫。第二ラウンドと行こうぜ?俺を殺せる物なら、殺してみな。尤もこっちは!!」

 

そう言って長嶺は、右腕を軽く上げてパチンと指を鳴らす。その瞬間、全員が構えた。艦娘とKAN-SENは自らの艤装を構え直し、全ての火器を深海棲姫に向けて狙いを定める。霞桜の方も、銃や装備を全て深海棲姫に向けて構える。

 

「質に加えて、数の暴力も加えるがな」

 

「死ネェェェェ!!!!!!!!」

 

深海棲姫の叫びに応えるかの様に、海中から様々な姫級達が現れる。それもどれもこれも、いつもの病的なまでの真っ白な美女ではなく、腕や足が増えてたり減ってたり、艤装もあちこちから取ってつけたかの様な、異形の奇形という見た目だ。皮膚が破れ、中から血や肉とは違う赤黒い何かが見えており、グロいを通り越して禍々しい。

 

「何を出したか知らないが、あの深海棲艦も血祭りにあげてやれ!!!!!見た目が恐ろしかろうが、気にする事はない!!いつもの様に殲滅しろッ!!!!!!!!!!」

 

霞桜も艦娘もKAN-SENも、一斉に動き出す。自然と謎の深海棲艦を露払いがてらに彼女達が担当し、深海棲姫を長嶺が担当する形となる。

 

「死ネ!死ンデシマエ!!絶望ト苦痛ヲ貴様ニ与エテヤル!!!!!」

 

艤装の触手全てが長嶺に襲い掛かる。今度は確実に超えているだろう。なにせマッハコーンを生み出し、ソニックブームの轟音を轟かせている。

 

「まずは触手を撃退しよう。オールビットシー…いやソード!!」

 

数百本ものビットが即座に、200cmはあろうかという巨大なソードに変形する。ブレイド、ガード、ヒルトの全てがビームで形成されており、手に持つ事は不可能だ。唯一ビームではないのは、ビット本体があるブレイド、ガード、ヒルトにかけての一部分のみ。オレンジ色のビットは、神々しさよりも恐怖を感じる。

そのソードビットは変形するや否や、全てが迫り来る触手目掛けて飛んでいく。そしてそのまま、あちこちに様々な角度で杭を打ち込むかの様に突き刺さっていき、完全に動きを止める。

 

「焔菫!!!!」

 

そしてソードビット自体に神授才を掛ける。使うのはお馴染み、普段は幻月と閻魔に仕掛けて使う焔菫。内部に炎で形成されたバイオレットカンディルを流し込み、身体の中から食い荒らすという恐ろしい技だ。

 

「ギャォォォォォォォ!!!!!!!!」

 

「おいおい深海棲姫。艤装が苦しんでるぜ?」

 

流石の艤装も、焔菫相手なら痛覚があるらしい。どうやらこれまでは痛覚が無いというより、単純に鈍かっただけだろう。はたまた外は効かないが、内部は弱いのか。別にどっちでもいいし、他の理由でもいい。重要なのは痛みで悶え苦しんでいるという事だ。明確な隙になる。

 

「貴様ノ力ハ何ナノダ!!ソンナノ知ラナイ!!」

 

「そうかい?ならこんなのはどうだ!!」

 

次の瞬間、青白いビームが主砲と副砲から発射される。この『鴉焔天狗』の状態であれば、砲弾の他にも何処ぞのヤマトの様にビームを撃てる。ビームは貫徹力に優れ、硬いはずの深海棲姫の装甲も容易く貫通してみせた。

 

「舐メルナ!!!!」

 

そう叫び、後ろの艤装から凄まじい数の艦載機を一斉に発艦させる。数は数百にも及ぶだろう。空母どころか、機動部隊や飛行場クラスである。しかも飛ばしてる艦載機は、見たことが無いタイプな上に妙に動きが素早い。

 

「艦載機緊急発艦(スクランブル)!!行ってこい!!!!」

 

艦載機のF27Zマスターフェニックス358機が、左側の艤装から物凄いスピードで発艦していく。スーパーフェニックスの進化版の様な機体だが、武装から性能まで、その全てが従来機を凌駕する。機首に40mmバルカン砲6門と76mm速射砲2門、機体上部のコックピット後方にTLSを連装ビーム砲に束ね、TLSの真下にPLSLを装着した回転砲塔が1基、機体下部前方には高出力TLS1基、下部中央の両サイドには連装レールガンが1基ずつ配置。これに加え主翼にはPLSLが片翼に8門の計16門搭載され、機体後方の上下にADMMが1基ずつの計4基搭載された。従来通りスラスターも搭載しているので、その格闘戦性能は考えうる限り全ての戦闘機を凌駕する。

これに加えて翼端には、マスターフェニックスの半分程度のサイズになったMQ2ストライクワイバーンと呼ばれる無人機が横向きに搭載されている。このストライクワイバーンには30mmバルカン砲1基、固定型のTLSを機体上部、下部にはレールガンを1基ずつ搭載しており、MDMMも2基積んでいる。無人機なので当然、自立行動も可能だが、翼端に搭載されたことで追加エンジンの様な機能も持っている。角度をつけて機体ごと推力方向を変えることで、高機動からスピード特化まで何でもこなせる万能装備と化した。

 

「こっちも殴り合おうぜ!!!!!」

 

真上で艦載機達が踊り狂う中、長嶺は艤装のエンジンをフルスロットルで回し、目の前の深海棲姫に刀を両手に突っ込む。

 

「殺ス!!!!!!」

 

本来なら触手で防ぐのだろうが、触手は初手で全部破壊した。となると避けるしかないのだが、なんと深海棲姫の艤装から主砲か何かが腕にスライドし、それを盾にして防いだ。

 

「そんなのできるのかよ」

 

「貴様ヲ殺ス為ナラ!!」

 

「そりゃどうも!!」

 

深海棲姫がシールドバッシュの要領で、長嶺を弾き飛ばす。その力を利用し、長嶺も一度距離を取った。間髪入れずに深海棲姫が砲撃を加え、長嶺がその砲弾を刀で切る。深海棲姫は物凄い殺意マシマシという顔で睨み付けてくるが、当の長嶺はそれに対して狂った様な笑みを浮かべる。

 

「楽しい‥‥楽しいぞこれ!!さぁ、もっとやろうぜ深海棲姫!!俺を殺せるなら殺してみろ!!!!」

 

戦いはまだまだ続くらしい。長嶺は今一度、艤装と刀を構え直し深海棲姫を注意深く観察する。一方の深海棲姫は、長嶺を変わらず睨み付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

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