最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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今週やばい。マジでやばい…………


第百十話鬼ヶ島の秘密

「楽しい‥‥楽しいぞこれ!!さぁ、もっとやろうぜ深海棲姫!!俺を殺せるなら殺してみろ!!!!」

 

長嶺はそう言いながら、再び深海棲姫に突っ込む。さっきはシールドバッシュの要領で弾き飛ばされたが、いずれにしろ近接兵装がない深海棲姫は接近戦に弱いはずだ。

逆に距離を取っての殴り合いは、艤装に搭載されてる砲火力がある以上、普通に厄介だろう。こちらにも四連装86cm火薬、電磁投射両用砲を筆頭にVLSまでもがついているが、それでも面倒なのには変わりない。

 

「死ネェェェェ!!!!!!!!」

 

「うげっ!まだそれ使えるのか!!」

 

深海棲姫が叫ぶと、再び異形の姫級達が現れた。最初より数は少ないが、その代わり腕や足から多分骨で出来ていると思われる、剣や槍状の物体がある。しかも艤装も色々と混じっているが、メインが重巡クラスの主砲と戦艦クラスの主砲だ。いずれも、この距離では面倒臭いし、何より槍状の骨が槍衾の様になってしまい突撃の邪魔だ。

 

「止まると…」

 

たまらず止まると、当然各砲の砲身が光る。そりゃ目の前で敵が止まれば、撃つのは当然だろう。

 

「ですよねッ!!」

 

この距離ではシールドビットは間に合わない。避けるか、素の装甲で耐えるかだが、こうなるのは分かっていた。何より止まった所に全力砲撃なので、推力全開で左右何れかにずれれば全弾避けられる。

 

「読ンデイタゾ」

 

「は?うおっ!!!!!」

 

だがまさかの避けた先に、深海棲姫が砲弾を撃ち込んできた。流石にこれは対応しきれないし、完全なる奇襲だった。

 

「カカッタ。ヤレ!!!!!!」

 

そして怯んだその一瞬に、呼び出した深海棲艦と自らの火力を集中させてくる。しかも艦載機まで襲ってくる始末で、ここまでされては長嶺とて逃げる他ない。

 

「アハハハハ!!!!これヤベェッ!!!!!!!久しぶりに防戦一方だわ!!!!!!!!」

 

普通なら恐怖する所だが、この男の場合は大笑いしながら逃げる。何せこうも追い詰められるのは、本当に久しぶりなのだ。笑いもする。長嶺は根っからの戦闘狂。恐怖は感じず、本当に楽しいのだ。

その一方で、こうも攻撃してくるのなら早いところ対処したい。あまり遊びすぎても、今度は味方に流れ弾や最悪「コイツ倒せないから、先に他の味方を倒す」とか考え出したら被害が出かねない。指揮官としての立場では、とっとと倒したいのだ。となれば、最大限楽しみながら攻撃する他ない。

 

「逃ゲロ逃ゲロ!!逃ゲ惑エ!!!!!」

 

ラッキーなことに、深海棲姫は防戦一方で逃げるだけの長嶺に喜んでいる。しかもあの感じは、こっちが本当に逃げ惑ってると思っているらしい。よもやワザとだとは、考えてもないだろう。

 

「焔龍!!!!」

 

となれば、まずは艦載機の対処からだ。上をブンブン飛ばれて攻撃されては面倒なこと極まりない。特に認識外からの攻撃なんてされたら一番面倒だ。にも関わらず数が多いので、全部を把握するなんて無理がある。早いとこボコボコにして、全部破壊するにこしたことはない。

焔龍はこんな時に役に立つ。炎で形成された龍が航空機の群れに、文字通りに喰らいつく。龍の過ぎ去った所は綺麗に全部破壊されていき、身体が炎でできてるので、横を飛んでいる機体も勝手に当たる。

 

「オールビット、ビーム!!!!!」

 

間髪入れず、ビットをビームビットに変更し乱射。このビームビットは便利で、通常のビームの他、チャージに時間がかかるが重い一撃を照射するモードと、威力を落とす代わりに照射時間を長くさせるモードの3種類が選べる。今回の様な対空戦闘であれば、後者の威力落として照射時間を長くさせるモードが最適解だ。

 

「あらま。本当は艤装でも弾幕張ろうと思ったんだが、全部倒したか。まあいい」

 

航空機は倒した。次は20体いる取り巻きの深海棲艦。内訳は飛行場タイプ6体に、戦艦タイプが14。相手にとって不足はない。

 

「さぁ、行こうか。VLS開放!!トマホーク!!!!」

 

艤装のVLSのハッチが開き、中から数百発ものトマホークが飛んでいく。本来、深海棲艦には精密誘導兵器が通用しない。安定の雑魚には通用するが、戦艦や姫級にもなると特殊なジャミング電波でも出てるのか、誘導装置が狂ってしまう上に対空砲で迎撃してくる。一方でトマホークの様な兵器であれば、戦艦にでも当たればダメージを与えられる。

その為、対深海棲艦戦闘では大量に高火力兵器を撃ち込み、当たる事を祈るのだ。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるのである。とは言え、精密誘導兵器を数撃ちゃ当たるすれば、予算がすぐに消えてしまう。しかも、どこの国も深海棲艦の出現で軒並み弱体化しており、アメリカでもそんなバカスカ撃てない。なので基本はペルーン作戦の様な大規模作戦か、本土への直接攻撃の防衛等の重要な局面でしか使用されない。

対して長嶺のトマホークは、艤装からの代物。このジャミングの影響を受けない。今回こんなにも撃っているのは目眩し兼、確実に後方の飛行場タイプを殺すためだ。飛行場タイプが再び航空機を繰り出して来ては困る。徹底的に破壊し、確実に息の根を止めて無力化しなくてはならない。

 

「「「ッッッ———!?!?」」」

 

「トマホークのお味はいかがってな?」

 

深海棲艦の姫級は人型。しかも身体の作りは、99%人間と同じ。内臓もしっかりあるし、食事を必要とはしないが、食事をすれば消化器官を通って栄養として吸収され、最後は便として体外に排出される。

つまり攻撃が通用しないだけで、弱点自体は人間と同じなのだ。例えば今回の様にトマホーク数百発が命中すれば、身体中が炎と熱波に包まれる。叫び声をあげようと空気を取り入れた瞬間、超高音の熱波ごと吸い込むので一瞬で喉から肺まで全部焼き尽くす。その苦痛は凄まじい物で、声は出せないし、空気も取り込めないどころか、代わりに二酸化炭素や一酸化炭素を吸い込むし、ついでに超高音の熱が通った場所を火傷させ、空気の通り道をも塞いでしまう。いつもならダメージを負わないが故の油断だろうが、深海棲艦でもこの苦痛は逃れられない。

 

「キ、貴様………!!」

 

「おいおいおいおい、何そんな怖い顔してんだ。せっかく遊んでるんだ。笑えよ(・・・)?」

 

余りの惨状に軽く恐ろしさを感じている深海棲姫に、長嶺は心の底から楽しそうな笑みを浮かべながら話す。いつもの狂気的な笑みでは無い。ただただ無垢の少年が、目を輝かせて外を駆け回っている時のような、そんな無邪気な混ざり気のない澄んだ純粋な笑顔だ。

だがそれが、いつもの狂気的な笑みを超えた、狂気だとか恐怖だとかを超えた恐ろしさを深海棲姫に与える。例え戦闘の為に生み出され、長嶺に復讐を誓っていようと、本能で分かってしまうのだ。「この男はヤバい」と。

 

「バ、化ケ物メ!!」

 

配下のキメラ深海棲艦と一斉に、長嶺に砲弾を浴びせてくる。戦艦級の砲弾が降り注ぐ以上、例え大和型であろうと当たれば無事では済まない。大破は確実、下手すれば轟沈。だが長嶺は、それを敢えて受ける。これまで攻撃を避けたのは、そっちの方が盛り上がりそうだったから。今度は逆に、受け止めた方が盛り上がるだろう。

 

「……………その程度か。俺は死なんぞ」

 

煙が晴れ、中から現れる無傷の長嶺。すかさず深海棲姫とキメラ深海棲艦達は、更に全力砲撃を加えるが今度のは威力が落ちていた。

 

「悪いな、もうそれは通用しない。ここからは本気で行くとしよう」

 

長嶺は艤装のスキルを解放する。EXスキル1 殲滅あるのみで600秒間、敵の回避、火力、雷装、対潜、対空、航空、装填、命中が80%低下させ、自身の耐久力、運、回避、火力、雷装、対潜、対空、航空、装填、命中が150%上昇させ、50%の確率で回避が20%低下させる弾幕を自動展開。EXスキル2 国堕としの再臨で、神授才の発動に消費するエネルギーが50%カットし、威力が30%上昇させた上で、10%の確率で、更に威力を70%上昇させる。最後のEXスキル3 堕ちた英雄の背中の効果で、相手の動きを完全に止める。これにより、どんな相手だろうと弾幕が全部まとめて命中した上で、通常の主砲や副砲の攻撃も命中させられる。

例え敵がどんなに強かろうと、これだけの火力をぶつけられては耐えられない。ところが深海棲姫はキメラ深海棲艦を全て、己の肉盾にするという荒技でボロボロになりながらも生き残って見せた。ちょうどそのタイミングで動けるようになり、一目散に逃げ出す。

 

「あれ、逃げる?にしてもスキル強すぎて、全く楽しくない。こりゃ封印かもなー」

 

長嶺は興味なさそうに深海棲姫を見送り、スキルの効果が強すぎる事を気にしだす。今はそれどころではない筈だが、どうせ彼女は逃げられない。問題はない。

 

「八咫烏。犬神」

 

「嵐気!!」

 

「氷結の術!!!!」

 

そう。長嶺は1人で戦っていたが、決して孤独ではない。頼れる仲間達はいるし、長嶺が適当に深海棲姫を相手している間に他は全部、家族達が殲滅しているし、八咫烏と犬神も気配を消して隠れていただけで、奇襲を狙っていたのだ。

深海棲姫は巻き上げられた海水ごと、駆けていた海面を凍らされて完全に身動きが取れなくなる。海水が氷となって足や腕に取り付き、腕はまだしも脚の方は簡単に抜け出せないだろう。

 

「さて、深海棲姫。お前はいつかの北方海域で、俺の部下を殺してくれたよな?あぁ、別に怒っちゃいねぇよ?戦争だ、死ぬのは当然。奴らも敵を大量にぶっ殺してるんだ、テメェの番だったら報復するなんてダブルスタンダードだろ?

だが、それはそれ、これはこれだ。俺達の大切な家族を殺した落とし前は、しっかり付けなきゃダメだって連中も大量にいるしよ」

 

長嶺の合図で、いつのまにか集まっていた艦娘、KAN-SEN、家族となった深海棲艦、そして霞桜の隊員達が武器を構える。

 

「貴様………私ヲ殺セル物カ。トイウカ、何故ソッチニ深海棲艦ガイル!!」

 

「え、今気付いたのか?最初から居たぞ。まあ、どうでもいい。俺は最初、質に加えて、数の暴力も加えるって言ったしな。有言実行って事で」

 

長嶺の指がパチンと鳴る。次の瞬間、一斉に全ての火力が深海棲姫に集中した。どんなに硬かろうが、これだけの攻撃を浴びせられてはひとたまりも無い。しかも最後には、しっかり素粒子砲を叩き込んでる。これだけやってまで生きていたら、いよいよお手上げだ。

 

「よーし、このまま本島の制圧に移れ!!」

 

「あ、終わってますそれ」

 

「終わっ……え?」

 

「さっきの深海棲姫が呼び出した深海棲艦、あれ倒した後が暇だったのでサクッと」

 

確かによく見ると、鬼ヶ島の各所から大量の煙が立ち昇っている。手際が良すぎる。流石だ。

 

「じゃあ上陸して、中を調べるとしよう」

 

流石に全員上陸は無理があるので、霞桜を中心に鬼ヶ島への上陸を進める。陸上戦では、艦娘やKAN-SENよりも霞桜の方に軍配が上がる。無論、一部は艦娘とKAN-SENも上陸だ。さらに深海棲艦の内、港湾棲姫や集積地棲姫の様な陸上型も上陸し、拠点を展開。随時補給と簡易整備を行う。

 

「さて、どっかどう見ても怪しいのこれだよな」

 

「ですね。禍々しい深海棲艦の本拠地に、ただ一つある普通の人間が建てた施設。これが元凶、なのでしょう」

 

目の前に聳え立つのは、明らかに「研究所です」という感じの白を基調とした建物。周囲には背の高い塀で覆われ、タンクやパイプの類もある。こんな施設、これまで深海棲艦の拠点で見たことがない。明らかに異質だ。

 

「中に突入する。グリム!レリック!ベアキブル!テスラン!それからオイゲン!大和!戦艦棲姫!俺と来い!!他の人選任せる!!」

 

「了解しました、総隊長殿」

 

まあまあの規模なので、一個中隊を分隊単位で散らばらせ中の散策に割り振る。これに加えて周囲を残りで固め、外部施設や離れた施設等にも他の部隊を向かわせた。

 

「さーて、じゃあ俺達も行くぞ」

 

「はい!」

「ん」

「へい!」

「はい!」

「了解よ」

「いつでも行けます!」

「行クカ」

 

長嶺らも中に入る。当然だが中の電気は付いておらず、ついでに埃っぽい上に、所々建物自体にガタがきている。流石に歩いてたら床が抜けるとかはなさそうだが、屋根が崩れている箇所は幾つかある。

 

「やはり深海棲艦は、人間の様に掃除や管理はしていなかった様ですね」

 

「治してすらいない。ボロボロ」

 

「我ラハ無駄ナ事ニ、リソースヲ裂カナイダケダ。建物ハ不必要ナノダロウ」

 

当然だが深海棲艦にも、掃除や修理するという概念はある。ただそれは、基本的にやるかやらないかの極論だそうで、必要であれば行うが、今回の様に不必要だと判断されれば、捨て置かれるらしい。それが例え、こういうデカ物だろうと。かといって解体も無駄という発想だそうで、もし拠点を増築するという際には解体する、という感じらしい。わからなくは無いが、あまりに極端である。

 

「それにしても、どこにあるんでしょうか」

 

「地下じゃないかしら?映画だと、そんなイメージあるわよ。大和も見たことあるでしょ?」

 

「まあ見たことありますけど、そんなお決まりの展開にしますかね?」

 

「オイゲン正解。地下、怪しい。嫌な物、面倒な物は地下に置く。これ、定石」

 

割と地下に秘密基地というのは、お決まり展開でありながら、色々利点がある。出入り口を少なくする事で出入りを制限、管理しやすいだとか、攻撃に晒された際に生存率が上がるとか、そんな感じだ。

 

「とすると、まずは地下を探しからかな?」

 

「だな。レリック!」

 

「ん。任せろ」

 

レリックがリュックから、小さなパラボラアンテナの様なパーツを付けた謎の機械を地面に設置。そのまま電源を入れる。

 

「あー、レリック?それ何」

 

「ベアキブル、初めて?これ、音波探査機。建物探索に使えるソナー」

 

「いつもの事ながら、なんでもあるねぇ」

 

暫くすると探査が終わった様で、タブレットに結果が表示される。それをそのまま長嶺と大隊長達にはHUDに、他は自前のタクティカルスマートフォンに共有して表示させた。

 

「見ての通り、地下には地上にある建物の何倍もある。しかも厚いコンクリートの壁付き。これ大変」

 

「入口は何処だろう?」

 

「ここ。今、マーキングした」

 

「じゃあここに向かうか」

 

という訳で一行は、マーキングされたポイントへと向かう。だがお決まりというか、ポイントには何もなかった。あるのは壁と、左右に部屋があるだけ。しかしその左右の部屋は、どちらも物置か何かで出入り口の類はない。

 

「謎解きするのかな、脱出ゲームみたいに」

 

「私ハ苦手ダゾ、ソウイウノハ」

 

「テスラン。やはり、あなたはまだ我々のやり方が実感できてない様ですね。オイゲンさん、お願いできますか?」

 

「………あぁ。そういう事ね」

 

「はいはい野郎共。退避退避。でないとオイゲンに巻き込まれるぞー」

 

オイゲン以外が少しオイゲンから距離を取り、長嶺とレリックとテスランが平泉を構える。長嶺とレリックはこの後の展開が分かっているが、テスランだけは分かっていない。その為、盾を構えながらも2人の方をキョロキョロ見ている。

 

「これ、何が始まるんですか総隊長さん。なんか、ものすごーくいやーな予感がするんですけど………」

 

「まあ見てろって」

 

「テスラン大丈夫。死なない」

 

「Feuer!」

 

次の瞬間、オイゲンが主砲の試作203mmSKC三連装砲を撃つ。艤装の見た目こそ小さいが、その威力は現実の物と相違ない。例えコンクリート製の壁があろうが、問題なくぶち抜く。

 

「総隊長さんッ!!!!!殺す気ですか!!!!!!!」

 

「これが霞桜流だ、覚えておきたまえ」

 

「テスランよ、慣れるのだ」

 

「慣れってね、大事なんだよ」

 

「……………犬とカラスに慰められるって無茶苦茶だ」

 

一応、これまでの訓練で霞桜の事を知っていた気でいた。だがやはり、コイツらヤベェ。マジでヤベェ。どんな思考回路してんだ。訳が分からん。と、テスランは思った。

 

「雷蔵、開いたわよ」

 

「おー、いい感じに開いたな。なら突入!」

 

そのまま穴に飛び込み、中へと入る。どうやら地下の方は、少なくとも電気は生き残ってるらしい。しかも最悪なことに、機関銃タレットまで生き残っている。

 

ドカカカカカッ!

 

「あー、機関銃タレットあるのね」

 

まあ機関銃タレットで殺せるのなら、コイツら相手に深海棲艦は勝利を収められただろう。普通に対処されて、破壊してしまう。だが一方で、少し意外なことがあった。

 

「ッ……」

 

「?オイ!大和ガ血ヲ流シテイルゾ!」

 

「はぁ!?」

 

すぐに全員が大和の元に集まる。周囲はテスランとレリックが平泉を構えて防御し、ベアキブルとグリムが大和の周りに立って、周囲を警戒する陣形に移る。

 

「大和。艤装は展開しているよな?」

 

「はい……。普通なら例え掠っても問題ないのですが、さっきのタレットにやられました…………」

 

「嫌な予感がするぞ……。レリック!!タレットの残骸から弾丸を見つけ出して、それを解析に回してくれ!!!!」

 

「うぃ!」

 

手早く残骸を更に分解し、タレット上部の給弾機構からマガジンを抜き取る。それをテンペストに載せて、そのまま地上に待機している隊員に渡して解析してもらうのだ。

 

「野郎共。恐らくは、俺達の使う対深海徹甲弾と似た様な物なのだろう。そうじゃないと願いたいが、とにかく念には念を入れたい。警戒しながら進むぞ。以降の陣形は、霞桜を先頭に中心はお前達だ」

 

「総隊長さん。先陣は、僕に切らせてください」

 

そう言ったのはテスラン。一応長嶺本人か犬神が先陣を切るつもりだったが、どうやら何か考えがあるらしい。

 

「タレットを確実に無力化する為には、クリアリングが必要ですよね?なら僕に任せてください」

 

「まあ良いが、どうするんだ?」

 

「こうします!」

 

そう言うとテスランは、廊下の先に向かって手榴弾を一気に4、5発ぶん投げた。当然手榴弾は爆発し、廊下に穴が開く。

 

「これで問題ありませんよね?」

 

「あ、あぁ。うん。そうね」

 

物凄いにこやかに聞いてくるテスランに、長嶺は頷くしかなかった。結局、テスランを先頭に進む事になり、陣形はテスラン、レリックとベアキブル、長嶺、大和、オイゲン、戦艦棲姫、犬神と八咫烏、グリムの順番となった。

 

「ひゃっはー!!!!!」

 

「ひゃっふーー!!!!」

 

「マンマラミーヤ!!!!」

 

そして先陣を切ってるテスランは、超ハイテンションでポンポン手榴弾を投げまくる。まるで豆まきだ。

 

「…………親父。もしかしたらアイツ、俺達の中で一番狂ってますよ」

 

「激しく同意。テスラン怖い」

 

「言うな。うん、気にしたら負けだ」

 

軽く引きながら一行は進むと、突然テスランが立ち止まった。壁に張り付き、そこから動かない。

 

「しまった!これ以上は進めません!!」

 

「罠か!?」

 

「解除する。グリム、手伝って」

 

「お任せを!」

 

罠か、あるいは大量のタレットとか敵が見つかったのかと、全員が陣形を変えて対応に備える。だがテスランが止まった理由は、なんともアホらしい物だった。

 

「あ、そうじゃなくて。手榴弾在庫切れです。使いすぎちゃった」

 

「「「「「…………」」」」」

 

「ちょっと待っててください。おかわり持って来ます!」

 

そう言ってテスランは走って地上に戻っていく。それから約10分後、テスランは帰って来た。のだが、持って来た物がヤバかった。

 

「テスラン……。背中のそれ、何かな?」

 

「?グレネードですよ?」

 

「うん……じゃあ、その背負ってるのは?」

 

「籠ですよ?」

 

「「「「「……………」」」」」

 

この男、リンゴ狩りとか、そういう時に付けそうな籠にリンゴを入れるかの様に、大量の手榴弾をこんもり、これでもかと詰めて帰って来やがったのである。流石の大隊長と長嶺も言葉を失うが、そんなのお構いなしにテスランは突き進む。勿論、豆まきの様に手榴弾をばら撒き、ついでに歓喜の雄叫びを上げながら。

 

「………ヤベェわアイツ」

 

「ベアキブル……激しく同意しますよ…………」

 

「後ろに当たったら即ドカン。後ろに立ちたくない」

 

「な、なんというかその、爆弾魔なんですかね……?」

 

「爆弾魔というか、あれじゃ爆弾その物よ」

 

「アレガ狂人カ?」

 

「狂人というより、爆弾魔であるな」

 

「人間爆弾かもよ」

 

「しまった……。アイツ霞桜に入れたの間違いだったかも」

 

もう全員からアイツヤベェわ判定されていた。さっきまではテスランの方がヤバいと他の皆を判定していたのに、テスランはそんなのが可愛く思えるくらいにはヤバかった。

だがそのお陰で、トラップごと全部破壊しながら突き進む事ができ、最終的に最奥の区画まで無傷でたどり着く事ができた。

 

「ひゃっは?ひゃっはーーー!!!!!」

 

「おいテスラン」

 

「ひゃは?」

 

「……人間に戻れ」

 

多分テスランにとって、爆弾は麻薬とかその他の類なのだろう。言葉がバグっている。勿論、本当にヤクをキメてラリってる訳ではないので、この一言で戻ってくれた。

 

「……あー、その……すみません」

 

「まあ暴走も使いこなして見せよう。さて、問題はコイツだ。レリック」

 

「ん。多分これ、電子ロック。グリムの出番」

 

「クラッキングして開けますよ」

 

グリムがコードを端末に接続し、そのまま腕部分に内蔵されてるキーボードを叩く。本人のHUDには画面が表示されているとはいえ、側から見れば腕のキーボードを叩いてる痛い奴である。

 

「どうだ?」

 

「思ったより楽ですね。余裕です」

 

なんて言っていると、ピーという音共に扉が開いた。厚みがメートル単位はあり、手榴弾ではどうにもできなかったのも頷ける。ブリーチ用のガジェットを持って来ても、物理的に破壊するのは不可能だろう。艤装を使えば突破できるだろうが、多分中が悲惨な事になるし、グリムのスキルがあって大助かりだ。

 

「何これ!!」

 

「酷い臭いですね………」

 

「死ノ臭イダナ。私ハ嫌イジャナイ」

 

「嬢ちゃん達!これつけな!!」

 

ベアキブルがガスマスクをオイゲンと大和に手渡す。強化外骨格MkIIを装着している長嶺達は、ヘルメットにガスマスク機能が搭載されている。問題はない。それに毒ガスの類ではない様で、恐らくは単純に臭いだけ。吸っても身体的に問題はないだろう。

 

「まあ死の臭いとか言ってたし、分かっちゃいたが案の定か」

 

「見事にホトケの山ですぜ。しかも多分、戦闘の後だ」

 

「大体10年前ってところですかね?」

 

床に散らばる白骨化した遺体。壁には血が飛び散っており、それが変色している。遺体の着ている服装的に、研究者や技術者だったのだろう。だが何らかの理由で殺された。それも逃げてるところを、容赦なく背後から。

 

「臭いの原因これ。多分、生育ポッド」

 

「あっ!これ見ちゃヤバい!!嬢ちゃん方見るな!!」

 

ベアキブルが即座に大和、オイゲン、戦艦棲姫の前に立ち塞がる。映画のクローン製造シーンの様に、透明の液体に深海棲艦らしき肉塊が浮かんでいる。変色して腐り切り、グズグズになっていて臭いしグロい。流石の長嶺もオエっとなる位には酷い。

 

「……今日の夜はうなされそうですよ」

 

「暫く肉は見たくねぇ…………」

 

「グロい………」

 

「なんというか、チュクウを思い出す………」

 

「おいテスラン!やめろ、それは俺とオイゲンに効く」

 

更に奥に進むと大量のポッドや、生体パーツ、あるいはサンプル標本と思われる物まで色々あった。大和とオイゲンは吐きそうにながら、目を背けそうになりながらも、全てを見始めた。

 

「………これが深海棲艦なんですね」

 

「そうね………」

 

「2人とも、無理はしちゃダメだよ」

 

「左様。再三言うが、お主らは我が主と違い慣れておらなんだ。無理はするでない。目を背けたって良いのだ」

 

犬神と八咫烏が2人のフォローに回り出した時、不意に戦艦棲姫が立ち止まり、長嶺に声をかけた。

 

「提督。私ハ、ココヲ知ッテイル………」

 

「マジ?」

 

「…………ソウダ!ソウダッタ!!思イ出シタゾ!!!!」

 

戦艦棲姫がそう叫ぶと、我先にと走り出す。まあまあの期間を共に戦い、その中で害するタイミングは幾らでもあったのだ。流石に今更、この期に及んで「裏切った」だの「逃げた」だのとは思わない。しかし走り出されては危険だ。仲間に死なれては困る。すぐに全員で戦艦棲姫を追いかけると、奥の一際巨大でゴツい装備に囲まれたポッドの前に立ち止まった。

 

「ヤハリ……遅カッタ………………」

 

そう言って戦艦棲姫は崩れ落ち、まるで懺悔するかの様にポッドの前に座り込んだ。そして、追い付いた全員は驚愕した。中に居たのは……

 

「深海棲姫!?」

 

さっき倒した筈の深海棲姫だった。長嶺は即座に待機状態にしていた艤装を展開し、臨戦体制に入る。他の全員もそうだ。こんな狭い中で、触手に絡まれては地獄だ。長嶺ですら危ういかもしれない。

 

「待ッテ欲シイ。彼女ハ……敵ジャナイ」

 

「説明しろ。悪いが、深海棲姫と瓜二つだ。こっちとしては、今すぐに排除したい。そして場合によっては、悲しいがお前達ごと殺す必要すらある。理解できるよな?」

 

「………彼女ハ深海棲姫。デモ、サッキノトハ別物。深海棲姫ハ、本来ナラ2ツデ1ツダッタソウダ。詳シクハ、グリムナラ分カル筈ダ。データヲ見ルト良イ。私達ハ彼女ニ生ミ出サレ、世界ヲ平和ニスル為ニ各地ニ散ッタ」

 

「待ってください戦艦棲姫さん。話が、読めないのですが……」

 

「大和の言う通りよ。もっと詳しく話しなさい」

 

戦艦棲姫が語るにはこうだ。目の前のポッドで眠る深海棲姫は、オリジナルの深海棲姫らしい。このオリジナルから怨嗟とかを負の感情を搾り取り生み出したクローン体が、さっき長嶺の倒した深海棲姫だそうだ。

絞りかすの深海棲姫には、数少ない慈愛とか慈しみとかの言うなれば善の心しか残っておらず、クローン生育に干渉し自らの思想を植え付けた特別な深海棲艦を生み出した。それが現在、江ノ島鎮守府に揃っている深海棲艦達。所謂『穏健派』らしい。

どういう訳か今の今まで、穏健派とか戦いではなく対話だとか、そういう平和的な手段での共生を目指したいという思想は残っていたが、自分の生まれやその辺りのことについては忘れていたらしい。この研究施設の光景を見て、思い出したそうだ。

 

「………信ジテクレルカ?」

 

「今の段階じゃ何ともな。恥ずかしい話、俺達人類は深海棲艦を知らなさすぎる。だけど、お前達が俺達を裏切ってるとか、そういう風には考えてないぞ?でもまあ、取り敢えずはデータを見ないことにはな。

おうグリム!データを全部写せ!解析に回すんだ!!ベアキブル!人員をここに回して、サンプルとか物的なアレコレを回収しろ!!指揮はレリックに任せる!!」

 

これより数時間後、霞桜は鬼ヶ島から撤収することとなった。こんな空間、長居はしたくない。それにサビの問題もある。これ以上は、いよいよ帰れなくなる。

だがそれと入れ替わる様に、比企ヶ谷指揮下の艦隊が向かっているのを捉えた。後は彼女達が、勝手に日本に情報を持って帰るだろう。

 

「ねぇ雷蔵。次はどうするの?」

 

「次?」

 

「鬼ヶ島は落とした。深海棲姫も倒して、多分深海棲艦の秘密も分かった。その次は?」

 

「世界評議会だの世界騎士団だの、この辺を追い掛ける。幸い、名簿とかは握れてるんだ。これを元手に探し出すさ」

 

 

 

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