最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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どうもリアルが忙しすぎる人です。土日なんて無いんや………


第百十二話廃墟探索

「…………なぁ、煉獄。これ、行き止まりだな」

 

「…………」

 

「「「「「「「………………」」」」」」」

 

放棄された核実験施設に入って、もう3時間だろうか。彼らは一向に、目的地に辿り着ける気配がなかった。コンクリート製の、全く変わらない見た目の通路。電力も死んでるらしく、真っ暗だ。放り投げたケミカルライトを目印代わりに、あちこち巡るがどれも部屋だったり行き止まり。これ以上、進める場所はない。

 

「周少校。探知はどうだ?」

 

「……ダメですね。そもそも元が核実験場ですから、コンクリートが分厚くて…………」

 

「遮断するか……」

 

飛龍部隊の数名は、地中探査用の特殊なレーダー機材を持っている。ソナーの様な物だ。これを使う事で、壁の奥の部屋の構造から、隠された地下空間まで、簡単に見つけることができる。

ところがここの場合、核実験を念頭に作られたコンクリートの障害物が、探知波を悉く遮断してしまっているのだ。お陰で全く役に立たない。

 

「契約者。どうするのかしら?」

 

「妾の砲でも使うか?」

 

「流石に46cmはバンカーごと破壊するわ。うーん、どうしましょうかね!」

 

長嶺が小石を力一杯蹴り飛ばす。勢い余って艦娘の力で蹴り飛ばした為、小石は音速を突破し壁に激突。粉々に砕け散った。

しかしその結果、何故か一緒にコンクリートの壁もヒビが入って砕け散った。しかも奥にはまだ暗い、つまりまだ確認されていなかった通路が通っていたのだ。これには全員、やった本人の長嶺も含めてフリーズしていた。

 

「………汝……狙ったか?」

 

「だと、よかったんだが…………」

 

「進むか?」

 

「……進むか」

 

なんとも言えない微妙な空気ではあるが、彼らは中に突入する。他と同様、ここも電気系統はとっくに死に絶え、放棄されてから時間も経っている。埃っぽいし、なんとなく臭う。

 

「凄い臭いね……」

 

「臭いわ………」

 

「我慢できぬほどでは無いが、何とも言えぬ。余り居たくないわ」

 

「汝らは、慣れておるようで……。我慢、できるのか?」

 

「いや、臭いものは臭いぞ。なぁ周?」

 

「はっ。慣れてはおりますが、不快ではあります」

 

彼らとて、しっかりとした人間ではある。単純に嗅ぎ慣れているというだけで、別に好き好む臭いでもなければ、不快に思わない訳でもない。臭いものは臭いし、できる事なら嗅ぎたくないのは確かだ。

 

「私モ苦手ダ。昔ハ平気ダッタノニ………」

 

「それはきっと、汝が人の世に染まった証よ。大事になさい」

 

(主様ー。この臭い、死体もあるよ)

 

(行け)

 

犬神が駆け出す。一応、飛龍の面々には犬神と八咫烏の事は隠している。犬神は大型の軍用犬、八咫烏も訓練を突破した軍用カラスという事にしてある。

 

「あっ!」

 

「ガルムが嗅ぎつけたな。付いていこう」

 

犬神を追いかけると、そこには扉の前に折り重なる様にして倒れている白骨死体があった。しかも完全な白骨死体ではなく、所々に肉片の名残が残っている。かなり臭い。

 

「大方、逃げようと辿り着いたが、電気が死んで開けられずにってところか。死因は餓死か衰弱か、そんなところだろ」

 

「壁に引っ掻いた傷がある。可哀想に……」

 

「そもそも、彼らは一体………」

 

「まるでゲームだぜ……」

 

飛龍部隊には、今回のミッションは廃墟探索という事になっている。深海棲艦だとか、そういうのは隠されていた。故に彼らは、詳しくは知らない。だがそれでも、少しずつ任務内容に疑問を持ち始めていた。しかし彼らもプロ。Need not to know、知らなくても良いこともある。

 

「はいはい野郎共。魔法使いだの神官だの復活の儀式だの、そんな便利な蘇生方法はない。死んだらそれまで。死人に構うなー」

 

一行は来た道を戻り、そこから更に奥へと進む。奥へと進むと、エレベーターがあった。しかも電力はまだ生きており、古びてはいるが全然使える。そのまま数回に分けて、下まで降った。

 

「驚いた。まだ電力が生きてるなんて……」

 

「自家発電だろうな」

 

「煉獄、どうかしたか?」

 

飛龍の兵士達が色々言い合っている中、長嶺は少し警戒した様子で周りを見ていた。それに張が気づく。

 

「前回奴らの拠点に乗り込んだ時も、こんな具合に予備電源だか非常用発電装置だかが生きててな。タレットやら防衛システムやら、とにかく色々と洗礼を受けた」

 

「警戒した方が良さそうだな」

 

なんて言っていると、弾丸が飛んできた。それも無数に。堪らず全員が物陰に隠れ、武器を構える。

 

「何処からだ!!」

 

「わかりません!!!!」

 

「李と毛がやられました!!!!」

 

「生きてるかぁ!?」

 

「ダメです!!派手に弾くらってました!!!!」

 

早速2人脱落である。しかもかなりの高レートで弾をばら撒くタイプな様で、着弾地点の予測が難しい。精度が悪いのは一撃必殺の狙撃には不向きでも、こういう弾幕貼って下手な鉄砲数撃ちゃ当たる戦法を取る時には、逆に有用になってしまう。

 

(我が主。目標のタレットは50m先に4基。いずれも天井だ)

 

「タレットを排除する!!物陰に隠れてろ!!!!」

 

とはいえ、それで止まるなら長嶺は既に死んでいるだろう。精度や射撃、正確には弾道の癖を見抜き、それに合わせて行動する。タレットは基本、その場からしか攻撃しない。故に弾道は限定的になりやすく、長嶺ともなれば、その射撃のクセを見抜いてしまう。後はそれに合わせて動けば良い。

 

「………ここ!」

 

阿修羅HGを早撃ちの要領で、素早く抜いて1発だけ撃ち、そのまますぐに物陰に滑り込む。放たれた弾丸は壁に当たり、跳弾してタレットを全て破壊する。本来跳弾はコントロールできないものだが、天性の勘を持った上で訓練を積めばコントロールはできる。しかし弾丸のストッピングパワー上、普通はタレット2つを破壊できるかどうかという所だ。1発で4基全部破壊なんて、拳銃でできる所業ではない。

 

「やっぱ、火力とかストッピングパワーは正義だわ。アイツら(第三大隊)が宗教作ってまで、崇め奉るだけはある」

 

「ちょ、ちょっと待ってください閣下!!何ですその銃!?というかそれ、拳銃じゃないでしょ!!」

 

「なんだね少校、拳銃だよ?」

 

そう言って周に阿修羅を持たせてみる。この阿修羅、25mm弾をぶっ放す仕様上、重さは5.8kgもあり、下手なアサルトライフルより重い。しかも大きさはデザートイーグルよりも大きく、サブマシンガン並みである。こんなの拳銃ではない。手に持てる大砲である。

 

「お、重ッ!!」

 

「なぁ、煉獄?やっぱりあれ、拳銃じゃねーよ。大砲だ大砲」

 

「俺もぶっちゃけ思ってる。でもストッピングパワーが強くて、使ってて楽しいんだよ。大体の敵、障害は1発だし」

 

「ホント、人間を辞めてるな」

 

この腕力は今に始まった事ではない。張は知っての通り、世界でも数少ない、かつての長嶺と共に戦場を駆け抜けた戦友。この程度、驚きもしない。武蔵らKAN-SENも同じである。だが飛龍部隊の面々は、あまりの惨状に言葉を失っていた。跳弾だけでも凄まじいのに、1発でタレットを全部破壊する。こんな事、まず無理だ。

 

「とっとと行くぞ、野郎共」

 

一行は更に奥へ奥へと突き進む。タレットは遮蔽物から狙撃で撃退し、最深部を目指していく。だがその最深部と思しき扉の前で、全員が止まった。

 

「さて、これをどうするかだな」

 

「ブリーチしようにも、この厚さは歯が立ちませんよ」

 

「ヒンデンブルクー、吹っ飛ばしておしまい」

 

「えぇ。任せなさい、契約者」

 

ヒンデンブルクの試作203mmSKC三連装砲が火を吹く。目の前の壁は恐らく、放射能漏れにも対応できる、耐爆性の重厚な扉。歩兵の火力ではどうにもできないだろうが、KAN-SENという人の身でありながら艦艇の能力を持つイレギュラーであれば、余裕で破壊できる。

 

「こ、これが艦娘の能力…………」

 

「大砲を積んだ軍艦が陸で暴れる……なんという……………」

 

「戦争のやり方、根底から覆るぞ…………」

 

飛龍部隊の面々は、余りの破壊力に驚愕していた。艦娘が在りし日の軍艦の艤装を纏って戦うことを理解していても、それを実感したのは今が初めてなのだ。因みにKAN-SENを艦娘と言っているのは、世間一般にはKAN-SENという言葉が知られておらず、艦娘と混ざっているからである。

 

「俺も艦娘と戦ってる姿ってのは初めて見たが、この能力であれば深海棲艦を倒すのは簡単か」

 

「人類の兵器と比べたらな。だが艦娘にしろ深海棲艦にしろ、艤装と呼ばれる超高火力かつ硬い装甲を持った人型兵器。そう簡単に倒せるものでもない」

 

「の割には、お前は別として艦娘5人は少ないんじゃないか?」

 

張の言葉に長嶺は鼻で笑う。確かに3人だ。されど、3人である。彼女達は、4人で戦力として十二分に活動できる。

 

「あの銀髪の狐耳は、空母『信濃』。かの大和型戦艦三番艦を空母に改装した、当時最大の空母であり、世界最強格の重装甲を持つ艦艇だ。その姉妹みたいな黒に紫メッシュの方は、あの戦艦『武蔵』だ。

金髪の方はドイツのビスマルクを改造した、戦艦『ビスマルクZwei』赤髪に山羊の角みたいなのを生やしてるのは、恐らくドイツの中でも破格の性能を持つ『ヒンデンブルク』だ。そして病的に白い、角を生やした巨女は、あー。こ、港湾だ。うん。拠点型で強いぞ!

とまあ彼女達は俺の有する艦隊の中でも、破格の性能を持つ連中だ。そこにこの俺が加われば、国1つ簡単に破壊して見せる。お望みとあらば、中華民国を破壊しようか?」

 

「やめてくれ。お前が暴れて、無事で済む未来が見えん。お前だけで十分だ」

 

「そうか?」

 

「そうだ、この破壊神」

 

長嶺の場合、なんというか悪ふざけとかのノリで中華民国滅ぼしかねない。そんな気がしてならない張は、ただただ恐怖するだけだ。まあ、その一方でやらないだろうとも思うのだが、長嶺のこれまでの所業的に信用できそうでできない。

 

「閣下。それに英雄殿。そろそろご指示を」

 

「おう。野郎共、突入だ。何が出てきても驚くなよ」

 

中に入ると、まずあったのは研究施設。例によって様々な標本が、シリンダーの中に入っている。奥の方に行くと、グズグズに腐った遺体もチラホラある。

 

「これが指揮官の言っていた、深海棲艦の成れの果てね」

 

「………どうやら内部の液体が循環して、酸素と栄養を送っているみたいね。どういう方式で体内に吸収してるかは分からないけれど、外部からの酸素供給が行われなかったことによる窒息ってところね」

 

「やっぱこれ、生命維持装置というか、全身で浸かるタイプの点滴みたいなのだよなぁ。ヒンデンブルクナイス!あっ、港湾と武蔵と信濃は警戒ヨロ」

 

「わかっておる。どうせ、その手のことは分からないわ」

 

「本職に任すが吉……。妾はそれを支援するのみ……」

 

「守ル。任セテ」

 

この手の事に慣れている長嶺は勿論、慣れてしまった4人も普通にしている。特に今回、医学班や技術班として連れてきたヒンデンブルクとビスマルクZweiは、死体をマジマジと観察している。

一方の飛龍部隊の面々は、慣れてる者と慣れてない者の差が激しい。慣れてる者は直視しても顔を顰め、多少目を背ける程度。普通位であれば、好んで見ようとしない。こういう感じだが、本当に慣れてない者は外に駆け出して吐いている。まあこの惨状、本来なら吐いて同然だ。

 

「閣下……これは一体…………まさか……………」

 

「あー……」

 

「いいよ。どうせ、ここまで来たんだ。何も知らずに帰るってのは、流石にキツいだろ」

 

飛龍部隊はプロフェッショナルなのは間違いないが、それでも1人1人が普通の人間である。機密を「機密だから」だけで命を賭けるのは難しい事だ。やはり命を賭ける以上、中身を知りたいと思ってしまう。その心理を長嶺はよく知っている。

 

「さて周少校。その続き、言ってみな」

 

「その、まさかと思うのですが、深海棲艦………じゃないですよね?」

 

「そのまさかだ」

 

その場にいた隊員達が息を呑む。彼らにとって、いや、今この世界に生きる者達にとって深海棲艦とは、不倶戴天の敵である。それがこんな風に保存、保管されている。しかも放棄された施設と来れば、彼らも察しがつく。それでも、藁にも縋る思いで周は希望的観測を話す。

 

「つまりここは、深海棲艦の放棄された研究所で、英雄殿はそのデータの回収に………」

 

「あぁ、その通りではある。だが恐らく、少校の考えているのとは真逆だ。ここは深海棲艦の研究所ではあるが、アイツらが世界を滅ぼしかけてから設立された訳ではない。その前、それも出現の数年以上前から設置されている。それがここだ」

 

「な、長嶺閣下!!まさか、深海棲艦は!!!!」

 

「その通りだソルジャー。俺達は深海棲艦は人為的に、それも今亡き中華人民共和国が製造に関わった、言うなれば生物兵器だと考えている。殆ど答えが出ているが、今回はその仮説を検証し、更にはこんな馬鹿げた茶番劇を誰が仕組んだか。誰が始めた物語かを知る為に、ここに態々やって来たんだ」

 

「なぁ煉獄。念のため聞くが、いや、というか、ここにいる彼ら飛龍の連中のためにも聞くが、それを知ってお前どうするんだ?」

 

張は大体の答えを知っている。なんだかんだで長い付き合いなのだ、今の長嶺が置かれた状況で、こういう情報を手に入れて、それをどうするのか。そんなのは大体想像がつくが、飛龍部隊が長嶺に誤解したイメージのまま任務を終えぬために質問した。

 

「そりゃ勿論、これを世界に告発し世の為人の為に、これを仕組んだ奴らと戦うさ!」

 

この答えに飛龍部隊の面々は声を上げる。「彼こそが真の英雄だ」だとか「俺達は英雄誕生の瞬間に立ち会った」と囃し立て、勝手に盛り上がる。

 

「なんて、言うと思うか?」

 

「「「「「「へ?」」」」」」

 

「だよなー……。そんな聖人君子の英雄な訳ないよなー」

 

「か、閣下?その、え?」

 

「いいか周。目の前にいる長嶺雷蔵という男はな、側から見れば英雄だろうさ。コイツが長官時代に築き上げた戦果も、さっきの戦闘も含めて、英雄に申し分ない。英雄とはコイツの代名詞に相応しいかもしれない。

だがな、それは第三者の視点。ようは結果論だ。偶然、結果がそうなったに過ぎない。コイツ本来の考えは、世界だ平和だなんてどうでもいい。そんなのを気にするタマじゃない」

 

「説明ありがとう」

 

知っての通り、長嶺の関心は家族を守る事。霞桜に艦娘&KAN-SEN、それから付いてきたパイロット達。つまりが長嶺の言う家族である。長嶺にとっては世界が核戦争で滅ぼうが、エイリアンが大群で攻めてこようが、隕石が降ってこようが、家族と呼ぶ数千名の仲間達が無事でいれば、別にどうだっていいのだ。

 

「俺は俺の家族が無事なら、それでいい。別に世界を救うつもりはない」

 

「な、なら何故、こんな事を?」

 

「深海棲艦を作った連中は、どうやら俺達を消したいらしい。というのも幸か不幸か、俺達は奴らの思惑とは真反対の事をしでかしてきた。そろそろ報復とか、そういう話になるだろう。

だから、こっちから出向いてやる。俺達やさしいから、こっちから出向いて先手必勝で奴らを殲滅する。その過程で、もしかしたら世界を救うかもしれない。ついでに世界を救うのも、それはそれで楽しそうだしな」

 

「うん。ついでに世界を救うとか言って実行できる奴、お前だけだからな」

 

張の言う通り、何かのついでに世界を救えるスーパーヒーローが何人もいては、違う意味で世界が崩壊する。そんな化け物、1人でいい。

 

「指揮官!こっち来て!!」

 

「どうした!」

 

「メインフレームよ!奥にあったわ!!」

 

ビスマルクが叫ぶ方に向かうと、研究スペースの更に奥に何やらサーバールームのような場所があった。埃かぶって汚らしいが、取り敢えずは動くらしい。

 

「データを丸々全部コピーする。コイツを繋げてくれ」

 

「これは?」

 

「グリム謹製、コピーくんだ」

 

「こ、コピーくん?」

 

かなり安直というか、使えそうで使えなさそうな雰囲気を醸し出すコピーくん。だがこれ、名前の割に物凄い。これをUSBポートに突き刺すとき、対象のマシンのデータをそっくりそのまま衛星通信と世界各国のサーバー経由で、霞桜の外部接続用サーバーに送信される。例え通信環境が悪かろうと、ドローンのテンペストを併用し中継すれば問題ない。

 

「取り敢えずコイツを刺してくれ」

 

「わかったわ」

 

ビスマルクが投げ渡されたUSBを、サーバーコントロール用のパソコンに接続する。しかし接続した瞬間、部屋中に警報が鳴り響いた。

 

『不正アクセスを検知。システムロック……不可。脅威を強制排除します』

 

「総員警戒ッ!!!!なんか来るぞ!!!!!!!」

 

長嶺が叫んだ瞬間、研究所の方から悲鳴が聞こえてきた。それに続き、銃声も聞こえる。急いで駆け込むとそこには、突入部隊40名の内、8名を瞬殺する深海棲艦の様な髑髏兵の様な、なんとも言えない化け物が10体いた。

 

「なんだアイツは………」

 

「髑髏兵ならいけるぞ!!」

 

今の張はかつての戦闘スタイルである、『黒腕の張』の装備を纏っている。足、胴回り、腕に甲冑を纏い、黒いコートを羽織って、手にはメリケンサック、腕にはナイフ、腰には拳銃、背中には青龍刀を装備している。

髑髏兵は超高速移動だか、瞬間移動だかは知らないが、対象の死角からいきなり現れて攻撃してくる事が多い。その為、近接特化の装備は熟練の使い手であれば有効に扱える。

 

「俺の部下に手を出してるんじゃねぇ!!!!!!」

 

張は拳銃を乱射し、死角からの必殺を誘発させる。髑髏兵は性質上、情報が長期間に渡って共有されることは無い。一度髑髏兵となれば、タイムリミットを迎えれば死ぬ。それと引き換えに強大な力を手に入れるというのが、髑髏兵のコンセプトなのだ。その為、弱点を付ける対処法さえ編み出せば、髑髏兵側はその場の即興で合わせて対応するくらいしか手段がない。現れた瞬間から攻略法を封じる、という戦法は取れないのだ。

 

「消えた!?」

 

「………甘いわ!!!!」

 

案の定、髑髏兵の1人が張の背後に移動して襲い掛かる。普通の兵士や、今いる飛龍部隊の面々なら倒せていただろう。だが張であれば、しっかりカウンターを当ててくる。カウンターとして腕に装備した剣で攻撃を防ぐが、その剣が根本からへし折れてしまった。

 

「嘘ぉ!?」

 

「おいおっちゃん!!それ髑髏兵じゃない!!多分、髑髏兵に深海棲艦混ざってる!!!!」

 

「それもう俺無理じゃん!!!!」

 

「気合いでどうにかしろ!!」

 

「できるかぁ!!!!!」

 

と言いつつ、しっかり青龍刀で斬撃を加えている。どうやら深海棲艦程硬い訳ではない様で、ダメージは入ってないが避けはするらしい。攻撃でも十分に牽制となる。

 

「く、来るな!!来るなぁ!!!!!」

 

「このヤロー!!!!!!!」

 

「な、なんで効かないんだよ!!!!!」

 

だがどうやら、銃弾はダメらしい。普通に弾いて、兵士達を一方的に虐殺している。しかも飛龍部隊の兵士達は、同じ部隊員同士でお互いをカバーして戦う事はできても、艦娘やKAN-SENという部外者と連携するのは難しい様で、彼女達がサポートしようにも中々サポートできない。

彼女達の持つ艤装は、小型化しているとはいえ艤装は艤装。一歩間違えば、普通に攻撃に巻き込んでしまう。霞桜の場合、最初から連携を念頭に訓練を積んできている。その為実戦でも、しっかり位置関係を頭に入れた上で行動できる。所が飛龍部隊の場合、その辺が意識に入ってない。その結果、射線が通っていても攻撃できないという状態が続いていた。

 

「え、英雄殿!!艦娘を動かしてくださいよ!!!!」

 

「巻き込まれて死ぬぞ!!援護するから、連中を下げろ!!!!」

 

「ッ了解!!」

 

艦娘、正確にはKAN-SENと深海棲艦の装備では攻撃に巻き込んでしまう。ならば、長嶺が動くのみ。

 

「いつも通りだ、合わせろ!!」

 

長嶺が前に飛び出し、素早く阿修羅を放つ。例え転移しようが関係ない。とにかく弾丸を撃ち込み、牽制し、相手の動きの幅を封じていく。

 

「英雄殿!!!!」

 

「英雄を援護しろ!!」

 

「必要ない」

 

ぶっちゃけ邪魔なのだが、まあそれを言ってしまうのは彼らのプライドを傷つけてしまう。例えそれで死んでも、彼らの言う英雄を援護して死ぬのだ。悔いはないだろう。

 

「確かに奴らは強い。瞬間移動してくるし、硬いし、面倒くさい。だがな……」

 

背後に瞬間移動して来た髑髏兵の腕を引っ掴み、そのまま地面に叩きつける。そして首を渾身の力で踏み抜き、頸椎ごと首を粉砕してやる。髑髏兵だろうと、深海棲艦の因子を入っていようと、恐らく元は人間。頸椎を粉砕すれば、まず間違いなく死ぬ。

 

「所詮は人。殺せば死ぬし、不死身の化け物じゃない」

 

髑髏兵の動きというのは変わり映えしない物で、1人を無惨に殺せば、勝手に動揺して動きが鈍る。そして仲間と連携しようと、塊になり出すのだ。長嶺はそれを、よぉく知っている。

 

「やれ」

 

長嶺の短い指示に合わせて、後ろに控えていたKAN-SEN達と港湾棲姫が攻撃を加える。文字通り、一網打尽だ。

 

「指揮官!転送完了したわ!!」

 

「撤収する。さっさと行くぞ。仲間の死体を手分けして運び出せ!」

 

「周!」

 

「直ちに閣下!!」

 

数十名の死体を生き残った人員で外に運び出す中、長嶺は真臓弾頭を設置する。核実験を想定した施設らしいが、最上位の威力を持つ堕天旭陽失墜焔であれば跡形もなく消し飛ぶ。証拠は何も残らない。

 

「契約者。あなたが最後よ」

 

「おう。とっとと逃げるぞ。噴火に巻き込まれたくない」

 

ヒンデンブルクに促され、とっとと外へと逃げ出す。真臓弾頭は強力だ。言うなれば、長嶺の心臓を用いた核兵器である。しかも汚染はなく、単なる純粋な炎。恐らくは噴火として、奴らには伝わるだろう。事実、この辺りには火山もある。

 

「おっちゃん、俺達はここまでだ」

 

「そうか、消えるか」

 

「あぁ。……かつての同志に伝えておけ。この世界に今後、変革の嵐が巻き起こる。それも数年どころか、恐らく数ヶ月から1年以内に。オマケにそれは、恐らく世界秩序そのものがリセットされる様な革命に近いものだ。今回の情報を精査する必要があるとはいえ、もしかしなくても深海棲艦発生後は当然として、発生以前の現代国際社会そのものを破壊する結果となる。いつかまた、共に肩を並べて戦える時を待ちたいが、お前達の判断に委ねると」

 

「………………煉獄。お前、そこまで見越しているのか?」

 

「まあ、文字通りの意味で世界を相手にするからな」

 

長嶺はいつもの様に、かつて共に戦った少年兵と同じ様に張に笑いかける。何十年単位で歳が離れているが、それでも張にとっては最も信頼できる戦友だ。この言葉の意味もよく分かっている。

 

「オーライ同志。また会おう」

 

次の瞬間、真臓弾頭が起爆し施設が破壊され尽くす。爆炎に隔てられ、2人は目を合わす事なくそれぞれの道を歩く。張は飛龍部隊の居る方へ。長嶺はKAN-SENと港湾棲姫が居る方へと歩き出す。彼らの未来がどうなるかは、まだ誰にも分からない。

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