最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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すみません。難産だった上に、忙しさのダブルパンチで遅れました!!ホントごめんなさい!!


第百十四話真実を白日に

『国連本部に正体不明の武装勢力が突入 未確認の大規模軍事行動か』

 

本日現地時間、午前11時ごろ、アメリカ・ニューヨーク上空にて、国籍不明の長大型航空機8機が突如レーダーに出現。アメリカ空軍がスクランブル対応を行い、戦闘機が接近したところ、相手側からは「こちらゴールドフォックス。大戦争をしに来た」との音声応答があり、交戦意志を明確に示しました。

 

直後、航空機群は多数の機体に分裂。極めて密接な編隊飛行によるレーダー欺瞞が行われていた可能性があります。航空機はそのまま低空で市街地に突入し、国連本部上空で重武装兵や車両を空中投下。以降、建物への突入が確認されており、内部の状況は依然として不明です。

 

また、市民や報道関係者からの映像により、降下した兵士や投入された装甲車両は、これまで確認されたどの国の軍装備とも一致しておらず、一部には"空飛ぶ要塞のような巨大VTOL機”の存在も記録されています。なお、一部航空機に航空自衛隊のF3心神、F3Aストライク心神に類似したシルエットが確認されたとの未確認情報もありますが、防衛省は「現時点で関連情報は確認されていない」としています。

 

政府は国家安全保障会議(NSC)を緊急招集し、関係各国との連携強化と情報収集を急いでいます。

 

——日本 NHKより——

 

『国連本部が正体不明の兵力により襲撃 米軍、緊急対応中』

 

14日午前、ニューヨーク州上空に出現した未確認の航空機群が、米空軍の警告を無視し、市街地へ突入後、国連本部へ攻撃を開始。現場では複数の重武装兵士や装甲車両の投入が確認されています。

 

突入した兵士は未知の強化外骨格と見られる装備を着用しており、ヘルメットやスーツデザインには動物や仮面のような意匠が確認され、従来の軍隊装備とは一線を画す様子です。加えて、航空機から投下された巨大な装甲トレーラー部隊が市街地を移動する映像も確認されています。

 

一部報道では、上空に確認された航空機に日本の次世代戦闘機「F-3心神」またはその発展型「ストライク心神」に酷似した機影があったとの未確認情報もあります。アメリカ政府は「これまでに確認された兵器とは完全に異なる、新たな戦力」とし、国防総省が緊急分析にあたっています。

 

——アメリカ CNN速報——

 

『ニューヨークに未確認勢力が侵入 国連本部に突入』

 

本日午前、ニューヨーク上空に現れた8機の航空機が、極めて高い密度での編隊飛行を行いながら市街地に接近、突如複数の機体に分裂し、国連本部を中心に兵力投下を開始しました。

 

兵士は高機動外骨格を装着しており、動物的な意匠を持つヘルメット、推進ユニット付きの流線型装甲などが特徴。映像では、地上に降下した部隊が重武装車両とともに建物内部へ侵入する様子が確認されています。

 

これらの兵器・装備・航空機はこれまで国際的な情報機関にも登録されておらず、未知の軍事技術と見られています。現時点で「F-3心神に似た戦闘機」の存在が確認されたという未確認の報告もありますが、詳細は依然不明です。

 

——フランス France24速報——

 

『ニューヨークに出現した武装勢力、未知の航空兵力で攻撃開始』

 

アメリカ・ニューヨークにおいて、正体不明の大型VTOL航空機が上空に出現し、一斉に市街地へと突入。国連本部へ直接的な攻撃を開始しました。映像からは、多数の高性能兵器、外骨格兵士、そして要塞規模の車両部隊が確認されています。

 

これらの装備について、ロシア軍関係筋は「地球上のいずれの国家にも存在しない兵器体系である」と分析。さらに「一部の機体が、日本のF-3心神シリーズと非常に類似していた」とする未確認情報も出ていますが、公式発表はありません。

 

—— ロシア タス通信速報——

 

 

「総隊長。早速、ニュースは大荒れですよ」

 

「報道は?」

 

「入ってますね。それも大量に」

 

「…………この、平和の敵め!!」

 

1人の男が立ち上がり、長嶺の前に詰め寄ろうとする。それを制止するべく、霞桜の隊員が立ちはだかるが、長嶺はそれを逆に制止する。

 

「見た所、学者か。その勇気は買うが、中々に無謀だ。勇気と無謀は違うぞ、教授(professor)

 

「くっ………」

 

「まあ、それに心配するな。何も俺達は、民間人を殺して回る下賤なテロリストとは訳が違う。神への祈りを唱えながらライフルを乱射し、神罰と宣ってレイプし強奪する、そういうクズじゃない」

 

「………では、何だというのだ」

 

学者の言葉に、長嶺は鼻で笑いながら両手を広げる。その様はまるで、オペラ座の怪人のようにも見える。

 

「戦士だ!兵士だ!英雄だ!」

 

「なんだと……?」

 

「俺達は、俺達の為に戦う。国や主義思想、まして金の為でも無い。俺達に取って戦う事こそが、戦闘理由なのだよ。仲間の為……いや、最早仲間なんて言葉では言い表せない。俺達は全員、今や世界に居場所がない者達だ。生まれながらにして無かった者、その後の人生ロクでもなくて居場所を失った者、そもそもロクでなしの自業自得ってのもある。だが俺達は、全員が家族だ。俺達は、家族の為に戦う」

仲間なんて言葉では言い表せない。俺達は全員、今や世界に居場所がない者達だ。生まれながらにして無かった者、その後の人生ロクでもなくて居場所を失った者、そもそもロクでなしの自業自得ってのもある。だが俺達は、全員が家族だ。俺達は、家族の為に戦う」

 

訳がわからないという顔をして、学者も、他の聞いていた人間達も唖然としている。そしてその顔はやがて恐怖に染まっていく。誰もが「コイツらヤバい」と思った。

 

「………総隊長殿、準備完了です。いつでもどうぞ」

 

グリムがカメラの前でOKサインを出す。どうやら、生配信の準備が整ったらしい。長嶺は演壇へと登り、準備を整える。

 

「OKだ」

 

「では始めましょうか。はいじゃあ、5…4…3…」

 

2と1は指だけで合図し、カウントが終わるとカメラを回す。同時に映像が各SNSと、本部前に立体映像で表示された。

 

『……世界に住まう、全ての人間達に告げる。我々は『霞桜』だ。世界をあるべき姿、というよりは、世界を解放する為にこうして国連本部ビルを襲撃し、今制圧している。このホールにいる約400名は人質であり、証人である。

我々はこの制圧に際し、非殺傷弾によって無血占領を行った。しかしそれは、今までの話。これ以降、外に待機するNYPDやアメリカ軍による奪還作戦展開時、またあらゆる障害についてはは、武力を持って全て排除する。その際に人質がどうなろうが知ったことではない』

 

余りに一方的ではあるが、今回こちらは別に交渉も何も無い。終われば全員、五体満足で返還予定だ。これで良い。

 

「あー、サンダーボルト!外から電話、FBIのネゴシエーターだ!!」

 

「すぐにスピーカーに切り替えろ」

 

長嶺の指示で、すぐに電話回線がスピーカーに切り替わる。しかもグリムが言うには、向こうは暗号化された物を使っているらしい。本気で交渉する気のようだ。

 

「こんにちはネゴシエーター。俺が総大将、ゴールドフォックスだと言えば分かるか?」

 

『………ゴールドフォックス、了解。先ほど上空から“宣戦布告”したのは、君か。私はFBI交渉官コールマン。この件の窓口だ。今後、君の言葉はこの私を通して世界へと届く。まずは確認させてくれ。

君たちは、国連本部の占拠を「解放」だと表現した。世界を「あるべき姿」へ導くためだとも言ったな。その「あるべき姿」とは何だ?なぜこの場を選んだ?

そして……400人の命を担保にする必要が、本当にあったのか?』

 

言葉に親しみやすさを持たせつつ、しかし威圧感は与えずに威厳は保つ話し方。その一方で役割を意図的に明示して、対話のルールを提示し、わざと繰り返す事で釘を刺している。どうやら、一流らしい。

 

「もちろんだ。生憎と、こうでもしないと握り潰されかねない。それから、ここから先はこちらもネットで配信させてもらう。この会話も今、ホールにスピーカーで流しながらやっている。構わないな?というか、そっちがNOと言ってもやる」

 

この言葉に、向こうも予想外だったようで、一瞬の沈黙が流れる。だがすぐに元に戻り、話を続ける。

 

『……ゴールドフォックス、君のルールを受け取った。こちらは交渉の専門家として、人質の安全と、何より君の『語る意志』を尊重しよう』

 

悪くない手である。向こうは態々、語る意志というのを強調してきた。これは暴力で支配するテロリストではなく、こちらを話せる相手だと認識している事を暗に示してくれている。

 

『ただひとつ、念を押させてくれ。君が今、何百万人に対して公の場で言葉を放っているのは、単なる暴力者の自己正当化ではなく、何か理念があるからだと、私は信じたい。

君は「解放」いう言葉を使った。それは『今の世界が間違っている』という認識に基づく言葉だ。教えてくれ。何が間違いなのか。そして、どうすれば、その「解放」とやらにたどり着けるのか』

 

「勿論だ」

 

ハンドサインで、配信を再開させるように合図を送る。すぐにグリムがパソコンを操作して、すべての配信を再開させた。

 

「………Mr.コールマン。配信は見えているか?」

 

『ああ、見えている。確認した。続きをどうぞ、ゴールドフォックス。今、世界中が、君の言葉に耳を傾けている』

 

「まあ、その前に、こちらも誠意を見せよう。ゴールドフォックスなんて偽名、そしてこのヘルメットも外してやる」

 

この行動に、明らかに向こうが動揺している事がわかる。何せ顔と名前を晒すということは、それは言うなれば自殺に等しい。確実に捕まる行為なのだから。

しかし長嶺は既に、裏切り者の公人。今更別に、何とも思わない。寧ろこうやって相手のペースを乱せるなら、やる意味があるというものだ。

 

『……それは、君にとって命綱を外す行為だ。

だが、“偽名を脱ぎ捨てる”というのは、交渉の場において最も重い誠意の一つ。受け取った。名を晒すということは、ただの敵ではなく一人の人間としてこの舞台に立つ、ということだ。

見よう。世界が、君の“顔”と“声”にどう応えるのかを』

 

長嶺はヘルメットを外し、そのまま地面に投げ捨てる。今世界に、ヘルメットを外し、かつて初めての反攻作戦を成功させ、その後、あらゆる作戦で勝利を収めた最精鋭にして最大規模の艦娘が達が集う江ノ島鎮守府の提督であり、先代の帝国海軍のトップ、連合艦隊司令長官に僅か18で名を連ねた、世界を救った英雄でありながら、深海棲艦と癒着したと告発され、防衛省のワンフロアを破壊し警官達を殺し、日本から江ノ島鎮守府の全戦力を引き連れて脱出した有史以来最悪の裏切り者、長嶺雷蔵の顔が久しぶりに顔を見せた。

 

「画像検索なんかしなくても分かるだろ?俺が誰か」

 

『……ああ。まさかとは思ったが、間違いようがない。長嶺雷蔵。世界を救った男でありながら、世界を裏切った大英雄。こんな形で会うとは思わなかったよ……………』

 

コールマンの声には、珍しく本物の感情が乗っている。敬意と、怒りと、侮蔑と、畏怖。相反するが、それでも分かる。世界を救いながら裏切った大英雄を前にして、ある意味で模範的な反応かもしれない

 

『君が今、なぜこの場に立っているのか。なぜ再び姿を現し、そして銃ではなく、言葉を選んだのか。世界中が知りたがっている。君がこの場に立つ理由を、語ってくれ。今度こそ、逃げも隠れもせず『提督』として、『英雄』として堂々と』

 

今度は逆に長嶺が驚く。まさかここまで買われているとは思っていなかった。しかし、こちらとしてもそれが狙い。喜んで乗せてもらおう。

 

「オーライ………。さて、Mr.コールマン。アンタ、この世界をどう思う?あぁ、思想がヤベェテロリストが言いそうな綺麗だクソだではなく、状況を客観的に見ての話、世界の共通認識としての話な?」

 

『………わかった、感情は抜きにしよう。数字と事実だけを話す。……10年前、深海棲艦による海の制圧率が70%を超えた時点で、物流の60%は崩壊。沿岸部に依存していた国家の6割が経済機能を停止。3年以内に政変または内戦へ移行した国家は実に92。国連加盟国のうち、常任理事国ですら内部統制に苦しんでいる』

 

今の常任理事国であるアメリカ、フランス、イギリス、中国、ロシア。アメリカはしぶとく生き残っているが、フランスとイギリスは治安も悪くなり、どうにかこうにか保っている状態。ロシアに至っては内戦一歩手前。中国はそもそも中華人民共和国から中華民国への移行に伴うゴタゴタから漸く、復活し始めたような状態である。余程の内陸国だとか、元から荒れてる国でもないと、深海棲艦の被害を受けなかったと言う国は少ない。

 

『深海棲艦という正体不明の敵に、通常兵器が通じない。地球上の海洋が封鎖され、人類は陸地に縛られ、バラバラに喘いでいる。誰かが「世界は『沈みかけの船』だ」と言っていていたが、その通りだと思うよ。わずかに残る安全地帯と、維持困難な同盟条約と、情報の信頼性すら保証できないニュースメディアの上に、ギリギリで立っている。そして今、国連本部という最後の象徴を、君が制圧した。

それが現状だ。俺の個人的な意見ではなく、世界の共通認識としての崩壊寸前の現実だ。なぁ。君は、それを終わらせる側として来たのか?

それとも、引導を渡す側として来たのか?』

 

「その通りだ、Mr.コールマン。で、まあ、質問の答えは、終わらせる側だろうな。引導を渡すなんて、そんな優しい事じゃない。俺はこの世界を破壊するつもりだよ」

 

電話口でも分かる。向こうの、ブースの空気が張り詰めた。だが、そこはプロ。コールマンの声に動揺はない。むしろ、核心に踏み込んだ手応えを感じているのか、何処か嬉しそうにも見える。

 

『……いいだろう。「破壊」と、そう言い切ったな。君が世界を終わらせると言うならば、それはただの脅迫や暴力ではなく、既存の秩序そのものに対する宣戦布告と受け取る』

 

その言葉に長嶺はニヤリと笑う。なんと理解が早い事か。分かりやすくていい。

 

『なら聞かせてくれ、長嶺提督。君が終わらせたい、この世界とは、どの構造だ?誰が敵で、何を壊せば君の言う解放になる?君の敵を、教えてくれ。世界を滅ぼすに足る。その理由と標的を』

 

「核心に踏み込んだな、ネゴシエーター。………さて、ではMr.コールマン。次の質問だ。深海棲艦って何だろうな?」

 

『……それが分かれば、今ごろこの世界はこんな地獄にはなっていない』

 

「まあ、そりゃな。それは俺がよく知ってるよ」

 

確かにこれはコールマンの言う通りではある。本当に、その通りだ。だがもし深海棲艦の事実が公になっていれば、世界はこの程度では済まない。だからこそ、公表してやるのだ。

 

『そうだろうな。………10年前に突如として現れ、人類を明確に敵として認識し、世界の海を奪った。人型の女性と魚のような怪物の2種類があり、既存の兵器では核を除いて撃破は困難。唯一互角に対応できるのは、艦娘のみ。こんなところか』

 

「そうだな。深海棲艦の正体は、これまで一切分からなかった。生物、生命体であるのは確定だが、ならこれが何なのか。生物兵器の暴走、何処かの国の実験の成れの果てという現実的なSFから、エイリアンの侵略、地球の環境破壊による超自然的な地球の怒りの具現化etc。色んな説があるな」

 

「ま、待ってくれ!まさか君は、君は……人類の不倶戴天の敵、深海棲艦の正体を…………」

 

モントーヤが立ち上がり、長嶺に詰め寄る。だがそれを、近くにいたマーリンが銃を構えて止める。

 

「議長、どうか席にお戻りを」

 

『まて!!撃つな!!!!』

 

「………私も撃ちたくはありませんよ。だから、どうか、席にお座りを」

 

モントーヤは両手を上げ、席に戻る。モントーヤは衝動的に立ち上がったが、今このホールにいる人質達も同じような思いだった。

 

「さて、ではお集まりの紳士淑女の諸君。そして今、配信をご覧いただいてる世界市民の諸君。これが、真実だ」

 

長嶺はグリムにハンドサインで合図を送ると、一斉にデータを送信する。全てのSNS、全ての公的機関と報道機関に、これまでの戦闘で手に入れた深海棲艦の資料とProject Sirenの文書を送り付ける。例え削除しようが自動的に復活する、オマケも付けて。これでもう、インターネットそのものを遮断しない限り、全てを無かった事にはできない。

 

「今各SNS、世界各国の報道機関と公的機関にはデータを送った。それが証拠となる。なので詳しくは後から確認するなりしてくれ。

さて、ではお答えしよう。深海棲艦とは何か。結論から言うのなら、彼女達は生物兵器だ。それも何処かの国が作り上げた代物ではなく、何カ国、正確には世界を牛耳る一部権力者の集団が作り上げた代物だ。世界征服……正確には支配する為のな」

 

『…………データはこちらでも確認した。つまり、君が言いたいのは、深海棲艦は脅威ではなく、道具であると。世界を恐怖で支配するために設計され、国家を崩壊させ、秩序を再構築する、言うなれば人工のカタストロフだと。そう言いたいのだな?』

 

「話が早くて助かるよ」

 

人工のカタストロフとは、よく言ったものだ。彼らの目的とは深海棲艦という未知の脅威を通して、人類を一つにするという、原理的にはナチス・ドイツによるユダヤ人迫害と同じ方法だ。

 

『アドミラル長嶺、君が知っているなら教えてくれ。誰がそれを作った?関係者の名前、国名、組織名。世界の敵を、教えてはくれないか?』

 

最早、コールマンはもう交渉とかどうでも良くなっていた。今の彼にあるのは、真実を渇望する1人の男。この地球に住み、深海棲艦によって苦しめられた被害者の1人として質問していた。

 

「生憎、よく映画であるような、例えば「アメリカの大統領がボスです!全てはコイツが始めました」みたいな話ではない。

どうやらこの組織、歴史が長すぎて、そもそも誰が始めたのかは分からなかった。代わりに、リストを発信しよう。また各SNSと世界各国の報道機関及び公的機関にリストを送った。彼らのは名は『世界政府』と呼ばれている。そしてその下には実働部隊たる『世界騎士団』がいる」

 

『……確認した。この瞬間、君の言葉はただの主張ではなく、証拠付きの告発に変わった。世界の根幹を揺るがす黒幕のリスト。アドミラル長嶺、少し見ただけでも分かる。このリストに記載された名は、既存の国家首脳部から財閥、科学者、宗教的権威まで多岐に渡っている。君の情報が真実ならば、文字通りこの世界の支配構造そのものが改変されることになる。しかし、これを君はどうやって手に入れた?そしてなぜ今、この瞬間にそれを公開した?』

 

証拠自体は、全て一緒に送り付けてある。だが確かに、何処で手に入れたかは記載していない。もう今更、隠す必要もない。

 

「勿論、コイツらの施設に行って集めた。URを知っているだろう?Unstoppable Revolutionと呼ばれた、世界最大の麻薬犯罪組織にしてテロリスト。これ、そもそも、どうやらCIA長官のウォットシャー・ブラスデンが、世界政府の幹部だかなんだか知らんが、コイツ主導でURを作っていた。

俺達はこういう日陰者なだけあって、何度もちょっかいを掛けられてた。だから日本を飛び出した後に、アイツらを地上から消した。ほら、あのURが1日というか半日で壊滅した爆発事件。あれ俺達が犯人」

 

『……あのUR壊滅事件。アフリカ全域に展開していた超国家的麻薬武装組織が、数時間足らずで全拠点を消滅させられた挙句、襲撃者の正体不明。残骸も分析不能だった、アレが、君たち霞桜の仕業だったというわけか』

 

本来なら、こんな事信じないだろう。だがアメリカ最大の都市であるニューヨークに突撃し、鮮やかなまでに国連本部ビルを掌握した上、これだけの行動をやってのた事に、誰もが疑う事なく受け入れた。

 

『だが、アドミラル長嶺。何故、君達は国連本部ビルを襲撃した?君は、この告発を、なぜ言葉で行った?いつでも軍で潰すこともできたはずだ。なぜ今この舞台で見せつけるように暴いた?というかそもそも、何故こんなふうに真実を暴いた?これは……本来なら、誰もがそっと蓋をする様な、そんな内容だろう?』

 

「そんなの簡単だ。俺達は別に、世界が滅ぼうが何しようが、俺の仲間さえ生き延びてりゃそれでいい。世界の命運だの、英雄だの、そもそもそんな事には興味がない。だが、奴らは俺や仲間の生存に脅威となる。そして喧嘩を売られた。だから、壊してやったのさ」

 

コールマンは思わず面食らう。まさかそんな理由で、ここまでの事をした。それにはただただ驚くばかりだ。

 

「そして、襲撃の理由だがな。見ての通り、連中は世界中の権力に根を張ってる。こと武力では俺達が遥かに勝るが、だがそれで戦えば最後、俺達は逆に苦境に立たされるだろう。お前達、何も知らない民意をバックにな。

俺達が今回、態々こんな事を仕出かしたのは、これをデカデカと目立たせる為。こんな真似、何をどうやったって隠滅は不可能。証拠の改変も不可能。本当なら警備員だの何だの皆殺しでも良かったんだが、心証良くするために面倒な不殺までした。そして今、こうして全てを明るみに出せた」

 

『……………世界を救った僅か10代の英雄は、やはり只者ではない。君は世界最強の武力を持っていながら、それを使わずに民意や世論という最大の武器を使った。君は、正義の姿を武器に選んだ。連中の汚れた情報操作を封じ、後戻りのできない情報爆発を起こし、世界中の目と耳を、この戦いに巻き込んだ。

だから人質は殺さず、撃てたのに撃たず、交渉という舞台で、暴いた君たちは、もう勝ったようだな。これ以上、血を流さずとも、君たちは世界の真実を晒すという目的を達成した。なら、もうここからは交渉も何もない。この後はどうするんだ?まさか、爆破して逃げる、なんて事はしないだろ?』

 

「まさか。俺はとっとと帰る。だが、逮捕されたり外に出てズドンは面倒だ。まずは警察も軍も退け。それから一時的に1番近いジョン・F・ケネディ国際空港を封鎖し、我々に使わせろ。それが確約され次第、一先ずは女性や学者、役職がない者を解放する。

残りの役職持ちに関しては、我が隊の撤退が完了次第、即座に解放しよう」

 

コールマンは即座にインカムで本部に連絡し、FBI、国防総省、州政府、空港局、ニューヨーク州兵司令部と、複数の承認経路が同時に動き始める。

 

『了解した、アドミラル長嶺。君の条件、戦術的撤退のための空路確保と非戦闘的処理。空港管制区域の封鎖と民間機制限は、45分以内に開始される。警察・州兵は国連前から段階的に後退し、空域にはドローン監視のみを残す。君の部隊に対する実弾行使は、全面凍結された。

本部は現在、承認のための手続きに入っている。だが、それには誓約が必要だ。君の言葉通りなら、400人の命は救われ、血を流さずに、世界の真実が明るみに出る。その意志を、最後まで貫いてくれると、君の名に誓えるか?』

 

「勿論だ。神だろうが何だろうが、好きなのに誓ってやる。だが当然、1発でも銃弾が飛んでくれば、どうなるかは分かっているな?」

 

『当然だアドミラル。ネゴシエーターとして、今回君と話せた事は、生涯の誇りだ。ありがとう』

 

それを最後に、コールマンは連絡を切った。長嶺は即座に、全周波数帯で無線を入れる。

 

「よう、我が愛しの家族ども。俺たちは勝利した。完全勝利、文句なしの完全勝利だ」

 

次の瞬間、無線から歓声が聞こえる。人質の監視にあたっていた隊員達も武器を下げ、ホールに安堵の空気が流れる。

 

「さて、このホールに残らせた諸君。協力に感謝する。聞いての通り、我々は間も無く撤収し、君達も自由となる。だが一応念のため、警察や軍の撤退作業が確認できるまでは、今しばらく残って頂きたい。なーに、30分もすれば出られるだろう」

 

「アドミラル長嶺」

 

そんな中、モントーヤが立ち上がり長嶺に近付く。本来なら止められるだろうが、すぐにマーリンにアイコンタクトで合図を送ると、マーリンは何もせずに黙って道を譲る。

 

「モントーヤ議長、なんだ?」

 

「君はまた、我らの英雄になってくれるか?」

 

「…………俺は俺のやりたい様にやる。世界政府は潰すから、その行為を英雄と呼びたいなら好きにしろ」

 

こうして長嶺達は、国連本部ビルから安全に離脱し、セカンド・エノへの帰還の途についた。世界はこれで変わる。変革の時は訪れた。

 

 

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