数日後 キューバ共和国 CIA秘密基地 執務室
「なんたる事だ!!!!何故私が、この様な目に遭わねばならない!!!!!」
キューバ共和国内に存在するCIAの秘密基地。かつて冷戦時代に「第二のラングレー」と呼ばれた拠点に、CIA長官ウォットシャー・ブラスデンの姿はあった。
「落ち着いてください長官」
「これが落ち着いていられるか!!!!!あの告発劇で私は………私の使命は完全に終わったのだぞ!!!!!!!」
ブラスデンが大荒れなのにも理由がある。あの長嶺による国連襲撃と告発劇で、世界は否が応でも変わらざるを得なくなった。何せ世界政府の要人達が、リストと証拠付きでネットの海にばら撒かれた。どうやら世界政府側も削除しようと躍起になったようだが、グリムお手製の通称フェニックスシステムと呼ばれる、削除するとデータが鼠算に増えていくという害悪システムにより、データは削除不可能となった。
その結果、全ての証拠は様々な公共、民間問わない組織から、一個人に至るまで。世界中のネット環境にアクセスできるすべての人間が、その証拠を閲覧できる状態となった。こうなれば世界政府に名を連ねた権力者達には、もう表世界に居場所はない。今や世界中で暴動が起き、権力者を引き摺り下ろす革命や警察組織による逮捕が相次いでいる。ブラスデンはそれを回避するため、この第二のCIA本部へと逃げ延びて来たのだ。
「貴様らはいいな!!元より表にはいないのだからな!!!!!」
「そう言わないでください。なぁ、トバルカイン?」
「ええ。我々にそうあれと望まれたのもまた、我らが主人たる世界政府なのですから」
恭しく、しかし何処か芝居ちっくに優雅に礼をするトバルカイン。その隣ではブラスデンに微笑む、初老の男がいた。
「うるさい!!!!大体貴様らは騎士団の中でも最強の名を冠していながら、負け続きではないかッ!!!!!!」
「それは団長の私としても、不徳と致すところですな。しかし彼の男は、単なる人間ではありません。化け物です」
「黙れケルビック!!!!!」
ケルビックと呼ばれた男。この男こそ、シリウス戦闘団の団長にして世界政府直属の戦闘部隊、世界騎士団の団長でもある。つまり、トバルカインの上司だ。
「落ち着いてください。血圧が上がりますよ?」
「こんのぉッ!!!!!!!」
トバルカイン目掛けてガラス製のゴツい灰皿が投げ付けられるが、そこは流石というべきか、ヒラリと避けて見せる。その横でケルビックは面白そうに笑っており、ブラスデンは顔を真っ赤にしそのまま血管が切れそうな程にブチ切れ、肩で息をする有り様だ。
「それで、この後のプランは?」
「政府からの連絡あるまで雲隠れしかあるまいッ!!」
「連絡が来ると?」
「貴様、政府を舐めているのか?この程度のことで瓦解するほど脆く無いわ!!!!!」
ケルビックとトバルカインは顔を見合わせる。そんな訳あるかと。彼らが成した事は、世界政府であっても大ダメージは免れない。本来なら一撃で全て決着するような、そんな攻撃なのだ。隠すのも不可能。変質、改変するのも不可能。しかもそもそも、元は悪の枢軸だとか秘密結社のような、フィクションの全てを裏から操る陰謀の黒幕みたいな事を本当にやっていた組織。何をどうしたって、状況はまずい。非常にまずい。
「とにかく良いか!!ケルビックは騎士団で、生き残った要人を移送できるようにし、更には救える者は1人でも多く救うのだ!!!!!トバルカインはシリウス戦闘団を指揮し、私の護衛に当てさせろ!!!!!!」
「それはやめた方がよろしいかと」
「貴様ッ!!!!!!私に逆らうのか!!!!!!!!」
「落ち着いてください。何も貴方に「死になさい」と言ってるのではありません」
トバルカインは芝居チックではあるが、本気でブラスデンの説得にかかる。またしても机の物を投げ付けようとしていたブラスデンだったが、取り敢えずは物を持つ手を下ろした。
「トバルカイン、説明を」
「はいマスター。この状況、理想は旗印を滅する事ではありませんか?」
「…………どういう意味だ?」
「知っての通り、今のこの状況は全て、あの男が引き起こしました。これまで何度も知ってか知らずか、我々の邪魔だけをしていた長嶺雷蔵。この男は『かつて世界を救った英雄でありながら世界を売った狂人にして史上最悪の裏切り者』から一転し、今や『かつて世界を救った英雄であり、世界に裏切られて尚、世界を救った大英雄』となりました。聖人君子、新しき男版ジャンヌ・ダルクとも言われています」
敵である長嶺を褒め千切る内容である以上、ブラスデンはまたもプルプル震えてキレる寸前である。なのでケルビックがフォローし、そのまま話を続ける様に促す。
「とまあ、今やあの男は英雄へと返り咲き、我々世界政府への反乱の旗印となっています。なら、もし、この旗印を殺せばどうでしょうか?」
「………なに?トバルカイン貴様、それができるとでも?奴の所在は我々、世界政府が何度も全力を上げて調査したにも関わらず、未だ手掛かりすら発見できぬではないか!!!!」
「ブラスデン様。そんなことしなくても、奴が近いうちに攻め込む場所は分かっていますよ」
さっきまで顔が真っ赤で怒りに染まっていたブラスデンの顔がスンと、真顔に切り替わる。どういう意味だと言いたげだ。一方、隣にいるケルビックは、どうやらピンときたらしい。
「奴は、いや、奴らは遠からず、江ノ島を取り返しに来るでしょう」
「江ノ島………ハヤト・レグネヴァとかいう、ガキが占領した基地か」
「あそこは元々、長嶺らの拠点でした。しかし我々の攻撃やURとのゴタゴタもあり、ハヤト・レグネヴァに明け渡すようにして世界の闇に消えた。しかし今や彼は、英雄となった。闇の世界に生きる必要はありません。必ず取り返しにきます」
「いいだろう。貴様は江ノ島に展開し、奴らが来るのを待て」
「仰せのままに」
トバルカインは恭しい優雅な礼すると、そのまま部屋を出る。暫くするとケルビックも部屋から出てきて、2人は廊下を地下格納庫に向けて歩く。
「マスター。プランはどうですか?」
「それだが、少しタイミングをズラそうと思う」
「まさか裏切りに怖気付いたと?」
「まさか。私は元より、この組織に忠義はないよ。君と同じでね」
トバルカインも、ケルビックも、実を言えば世界政府への忠誠心はない。滅んで欲しいとすら思っているが、中から変えることや、まして自浄作用を促して浄化させる事も不可能だ。そこで考えた外部からの強制的な変革。その役目を担う、というより担わせるのが長嶺雷蔵という男なのだ。これまでトバルカインが直接手を下さず、回りくどい手法を好んだのもこれが理由だ。
そしてケルビックは、トバルカインからマスターと呼ばれている事からも分かるように、単なる上司ではない。自らの師匠であり、恩人でもある。そもそもこの計画も、元はケルビックが考案し、トバルカインはあくまで尖兵にすぎない。
「しかし、では何故……」
「どうやら我らが政府は、未だ何かあるらしい。この状況下でも巻き返せるだけの、何かが」
「まさか核………」
「いや、それは無いはずだ。知っての通り世界政府の存在目的とは、己の利を追求する事にある。世界を滅ぼそうとしたのも、あくまで滅びが目的ではなく、滅びの数歩手前に追いやり、世界を一つにして自らの支配下に置くため。言うなれば手段だ。核を落として、世界をまっさらに、なんて事は無いだろう。
だとしても、局所的かつ限定的に使用し破壊を持って警告とする、位はやりかねない。とにかく、今はこれを探る。だが、計画はいつ発動しても良いようにしておけ。付いてくるのは?」
「将軍達のみです」
「やはり、シリウスは無理か………」
ケルビックは苦虫を噛み潰した様な表情だが、当のトバルカインはいつもの飄々とした笑みを浮かべている。シリウス戦闘団がケルビックとトバルカインの軍団だとしても、彼らの忠誠は世界政府にある。故にケルビックとトバルカインが裏切れば、全員が躊躇なく排除してくるだろう。
「ご心配なく。彼らには、江ノ島で戦死して貰います。我々は最後の一兵に至るまで、あの島で戦って死ぬ。そういう事にしておいてください」
「しかし実際はお前と将軍達は逃げると?」
「はい。まあ、上手い事やりますよ」
いつの間にか格納庫に到着し、トバルカインは黒塗りの超音速機に乗り込む。ケルビックはそれを見送ると、世界政府の他の拠点へと情報収集へと赴いた。
数週間後 セカンド・エノ 執務室
『全く、肝を冷やしたぞ。なんて事をしでかしたんだ、バカ息子』
「うるせークソジジイ。そもそも俺はもう、お前達の影じゃない。日本所属じゃないしな」
『ぐぬぬぬ………』
世界政府が密かに動いている事なんて知る由もない長嶺は、東川と電話で色々言い合っていた。というか、東川から連日の様にニューヨークでのクレームが来ている。曰く「やりすぎ」「俺をストレスで殺す気か」「もう少し世を忍べ」等々。だが長嶺はその全てに「知るか」の一言で終わらせている。
「そういや、ハヤトの方はどうだ?」
『そうだ、そうだった!貴様がまた流した情報で、今や江ノ島は大混乱だぞ。連日デモ隊が押し寄せて、ハヤト・レグネヴァ解任運動だ。しかも江ノ島に続き防衛省と、今や海軍の本部である横須賀鎮守府にも押し寄せている』
「んで、政府の見解は?」
『………逮捕に動き出しているが、物理的に逮捕不可能だという結論になりそうだ』
厄介な事に葉山は、今や長嶺と似た様な艤装の能力を手に入れている。何処から漏れたのか、誰が授けたのか、それは分からない。先天性ではなく、ほぼ確実に後天的に得た能力。しかもそれは人為的にとなれば、誰かが必ず葉山に与えている。途轍もなく厄介な話だ。
「誰が漏らしたんだ?」
『分からん。お前が被験体となり、今の能力を手にした第603号計画は、海軍が極秘裏に進行していた計画だ。しかも計画は凍結、後に中止され、関連資料は全て厳重に処分され破棄された。もう7年も前の話だ』
「だよなぁ。まあ、それは本人に聞くさ」
『お前、まさか江ノ島を……』
「勿論取り返す」
『やはりか……』
どうやら東川はそう答えると思っていた様で、溜め息をつきながらも、何処か少し嬉しそうにも思える。
『しかし、今の江ノ島は要塞だぞ?』
「親父、あそこは俺達の家だぞ?勝手知ったるってヤツだ。例え要塞だろうが、やり方はある」
『そうか。…………プレゼントだ。コイツを参考にしたらいい』
東川から今の江ノ島の見取り図や、改造・増築時の設計図が送られてくる。秘密兵器の類は無いだろうし、員数外の兵器もこちらの戦力なら問題にはなり得ない。
「大臣的にどうなの?」
『知るか!元より儂は、こういう性質だ。戻ってこい、長嶺連合艦隊司令長官!!』
「……はいよ、東川防衛大臣。派手に凱旋するから、期待して待っておけ」
電話を切ると、即座にいつものメンバーを集めて作戦会議を行う。江ノ島鎮守府を攻め落とす以上、生半可な作戦は許されない。だが幸い、こちらは何年もあそこに住み、そして作った連中だ。これほど得意とする、そして戦いたく無い場所はない。
「野郎共。次の戦場が決まった」
「総長!次は何処ですかい?」
「日本、神奈川県、湘南海岸。そこにある、軍事要塞と化した小島だ」
その場にいる殆どの者が息を呑んだ。唯一分からなかったのは、当時は江ノ島に居なかったラーマエルとテスラン。その2人だけは驚きこそしているが、そこまででは無い。だがそれ以外は驚き、目を見開き、笑みを浮かべる。
「総隊長殿……帰るんですね?我々は………あの故郷へ……………!」
「そうだ。目標は江ノ島、江ノ島鎮守府!本攻略作戦完了後、我々は我々の軍務に復帰する。最強無敵を誇った栄光の江ノ島艦隊、そして海上機動歩兵軍団『霞桜』の座を取り戻す。テロリストの名は返上するとしよう!!」
「しかし提督、江ノ島は要塞ですよ?」
「そうよね。かなり厳しい戦いになるわ」
大和とオイゲンという、運営側に長く居た2人は江ノ島の鉄壁さを良く知っている。かつてまだKAN-SENも合流する前に発生した、江ノ島鎮守府への深海棲艦による襲撃。これを受けて江ノ島の防衛面は、かなり強化された。まあ、佐世保の河本と共にシリウス戦闘団が攻め込んで来た際は、IFFでは味方識別であり防衛できず、いつぞやの日本本土同時攻撃の際は、大半が房総半島へと侵攻した為、江ノ島の能力が日の目を見る事なかった。
しかし今回は、必ず向こうはこちらを敵として迎撃してくる。何せ軍事施設かつ、霞桜の本拠点とする為に改装されたのだ。その防衛能力は、並みの軍事施設を凌駕する。
「ではここで、念の為に我々が放棄する前の江ノ島鎮守府の防衛設備を共有しておきましょう。まず対空防衛用のイージス・アショア。これに直結された61セルのVLSが40基。更に20mmファランクス230基が各所に分散配置されています。沿岸部にはMk.45 5インチ砲120基、
227mmロケット弾12連装発射機90基、MGM-140 ATACMS Block IIA80基が配備されています。
施設内にも監視カメラ連動式のHK416ドラムマガジン装備型が380ヶ所。その他、隠遁式のGAU-19 200基、M2重機関銃が手動自動含め480基、M134 320基、M249オートタレットが連装680基、通常型860基。これに加えてH&K GMW 40mm自動擲弾発射器オートタレット190基、TOW対戦車ミサイル280基も敷地内の屋外に配置されています。
そしてご承知の通り、島内には飛行場も完備。大型輸送機受け入れをも可能な滑走路を有しており、日本脱出時に基地航空隊は我々と共に離反しているとはいえ、穴埋めの航空隊は配備されています」
「うーん、我ながら要塞にしすぎたか?」
「間違いなく」
自分達で設計し整備していながら、いざ攻め込む立場になると、こんな大要塞にするんじゃなかったという後悔が生まれる。いくら何でも訓練ならともかく、本当に江ノ島に攻め込む時が来るとは思っていなかった。
「ハヤト、いえ。葉山が占領してからは大規模な改装はされていませんが、代わりに戦力は大幅増強されています。完全武装の基地警備隊が凡そ10,000人。これに加えて軽装甲車両、装輪装甲車、戦車も確認しています。さらに移動式のSAM、地対艦誘導弾、無誘導ロケット弾、対空砲も大量に。
そして何処から湧いて来たのか出所不明のF16とF15Eが三個飛行隊分ずつ、計80機いるそうです」
「サンダーボルトよ、これどうするんだ?隕石でも落とすか?」
「爆弾で全部吹き飛ばします?」
「落ち着けUR組!」
そんな事をしたら、江ノ島鎮守府以前に江ノ島そのものが綺麗に消え去る。それでは意味がない。これは家を取り戻す戦いだというのに、肝心の家を破壊しては本末転倒だ。
「しかし、これは難しい戦いではないか指揮官?」
「同志指揮官、江ノ島は最強の要塞だろう?不可能だ」
エンタープライズとソビエツカヤ・ロシアがそういうのも無理はない。実際、艦娘とKAN-SEN達の顔は諦めの色が若干出ており、大隊長達ですら内心では諦めとは言わないが、悩んではいる。だが長嶺、グリム、レリックの3人は何か企んでそうな、そんな含みのある笑みを浮かべている。
「問題ない。ツインタワーシステムは生きている」
「つ、ツインタワー?」
「何よそれ。聞いた事ないわよ?」
「そりゃそうだ。これを知ってるのは俺と、システムを作ったグリム、改装の設計を担当したレリックと、一部の隊員しか知らない極秘のシステムだもの」
「ツインタワーシステムとは、簡単に言えばコントロール権を奪えるシステムですよ」
ツインタワーシステムなんて大層な名前が付いているが、何も画期的な素晴らしいシステムではない。単なるコントロール優先権を奪えるシステムというだけだ。
「知っての通り霞桜は、非合法の極秘特殊部隊だった。霞桜関係の全ての設備が、地下に隠してあるのもそれが理由だというのは知っての通りだ。だから地下への出入りは制限していたし、現在は厳重にロックしてあるし、そもそも鎮守府のシステムからも切り離してある。だが、逆は違うんだよ」
「霞桜本部施設のセントラルコントロールルーム、発令所と呼ばれていた部屋であれば、鎮守府の全システムを完全掌握かつ鎮守府からのアクセスを全て遮断できます」
「監視カメラから防衛装置まで、全部操れる。同士討ちできる。任せて」
珍しくレリックが得意そうにサムズアップする。ツインタワーシステムが起動すれば、物理的に破壊なり妨害する以外でコントロールを遮断することは出来ない。彼らにとっての最強無敵の要塞が一変、最恐最悪のキリングフィールドに早替わりする。
「しかし総隊長。どのように入るのですか?」
「地下にあるのですから、突入するのはかなり難しいでしょう?ふふ、神のお導きにでも委ねますか?」
「ほう、リシュシューがジョークか。珍しい」
「あら、私もジョーク位言いますよ?」
「神のお導きよりもいい手がある。なぁ、レリック?」
レリックは無言で霞桜本部施設の見取り図を広げ、ある場所を指差す。そこにあるのは、大きな取水口だった。
「この取水口、サーバー冷却用。だから、繋がってる。本部の中に」
「おい、レリック。警備システムは?センサーくらいあるだろ」
「ある。でもその報告が行くのは本部と執務室と、それから総隊長の部屋。今の本部施設はスタンドアローン」
「つまり、問題はねぇのか?」
「そうだぞバルク。作戦はこうだ。まず先んじて偵察隊を送り込み、念の為に本部施設を偵察する。もし敵が使用していたら、その時はその時だ。別の案を考える。
問題が無ければ先遣隊を取水口から内部に送り込み、そのまま本部に潜入。セントラルコントロールルームを確保し、コントロール権限を奪取する。その後、江ノ島全域に空挺降下。内部に突入し、殲滅する。簡単だろ?」
本来なら色々と作戦を立てるだろう。だが、あそこは勝手知ったる江ノ島鎮守府。作戦なぞ必要はない。何をどうするのかは、皆言わずとも分かっている。
「指揮官様?これだけの作戦なら、何か陽動が必要なのでは?」
「確かにその方が作戦の成功率も上がるでしょう。姉様、であれば我々が出ますか?」
「うーん、あっ、俺いい事思いついた!」
長嶺はそう言いながら、ドス黒い笑みを浮かべる。この顔はいい事と書いて「狂ったロクでもないぶっ飛んだ事」と読む時の顔であり、まず間違いなくトンデモ作戦が飛び出す。
「ロケットだよロケット!!ロケット使ってよ、奇襲仕掛けるんだ!!!!」
「「「「「「「「「「………………はぁ?」」」」」」」」」」
「えっと…………あ!もしかして大陸間弾道ミサイルですか!?」
「サンダーボルト!テスランを止めろ!!コイツなら本当に撃ちかねないぞ!!!!!」
「いや、宇宙用のガチロケット」
ますます訳がわからず、全員が困惑し、爆弾魔のテスランだけは落胆した様に肩を落とす。恐らく、大陸間弾道ミサイルを撃ちたかったのだろう。あの「芸術は爆発だ」を地でいくタイプなのだ、多分死ぬまでにやりたい事ランキングに入っているだろう。
「ハニー、何処から持ってくる気?まさか作る?」
「いや、アメリカに頼む。ほらNASAなら持ってんだろ」
「総隊長殿!?そんな簡単に!」
「あ、もしもしハーリングのおっちゃん?」
「もう電話してる!?」
まるでギャグ漫画の様にトントン拍子で進んでいく。グリムはツッコミ疲れたのか、シナシナと椅子に座り込んで項垂れ、良き理解者たるマーリンが肩を揉む。
「グリム、貴方は頑張った。頑張りましたよ。だから、ほら深呼吸」
「もうやだ総隊長殿……なにあれ、チートでしょ」
「完全にダメな方ですね。ベルファストさん、副長殿にカモミールティーでも」
「す、すぐご用意します」
ベルファストがカモミールティーを入れてる間に、長嶺の方はどうやら話はまとまったらしく、グリムがカモミールティーを飲み始める頃に電話を切った。
「おっちゃんが良いってさ。なんか、廃棄物処理ついでに打ち上げるって」
「は、廃棄物処理?」
「なんでも昔、計画倒れした試作ロケットがあるらしくて、それで飛ばしてくれるってさ」
そんな電話1本でできるものかとツッコミたくなるが、長嶺なのだ。仕方がない。
「よって作戦は変更する。俺が先んじてロケットで打ち上げられて、残骸と共に江ノ島に特攻!混乱が広がっている間に、先遣隊が地下司令部に突入。コントロールを奪う。これが確認され次第、全軍が一斉に江ノ島へ上陸。これを叩く」
「なんともシンプルね。ボスからの私達への信頼の表れって事で良いかしら?」
「そんな所だ。野郎共、一世一代の祭りの時間だ。準備に取り掛かれ!!!!!」
長嶺の一言で、大隊長、特にベアキブルとバルクが大声張り上げて叫び、他もいつも通りの、自信に満ちた顔で応える。今回の作戦は間違いなく、今までで、そしてまだ知らない未来を合わせても一番の士気だろう。江ノ島を取り返す、家に帰るとなれば、当然、士気は否が応でも上がるものだ。
「さぁ、首洗って待ってろ。葉山………」