襲撃より一ヶ月後 横須賀鎮守府地下室
(ここは.......。この天井、恐らく横須賀鎮守府の地下室か)
そう思い起きあがろうと動くが、体に激痛が走る。体を見てみると左腕は千切れてるし、左目が見えない。
「あーらら、我ながら手酷くやられたな。ていうか、左側のダメージでかいな。何アイツ、俺の左半身に恨みでもあんの?」
取り敢えず周りを見回し、ナースコールらしき物を見つける。それを押すと数分後、東川が現れる。
「雷蔵、また無茶をしおってからに」
「許せよ親父。俺が全力を出せないの知ってるだろ?この鎖を外してくれんと、またここに逆戻りだ」
ため息をつく東川。しかしその目には隈ができており、眠れてない事が見て取れる。
「お前はこの状態をそっちの艦娘見られてんだ。こんな傷じゃ除隊は確実だろうし、艦娘達に完全復活した姿は見せられん」
「ならどうするんだ?」
「だから見せれるようにしてある。渋られたが無理矢理説得して、陛下や防衛大臣に許可して貰った。喜べ、603号計画の力を行使できるぞ」
「マジでか!」
「マジだ。そうと決まれば、ホレ」
そう言うと緑色の液体の入った注射器を渡す。その注射器を首に刺し、ピストンを押し込む。
「グッ、うぅぅ」
液体が体内に入ると、千切れていた腕が生えてきて目も綺麗に戻る。他の傷も傷跡すら残らずに消え、痛みも無くなる。
「やっぱ効くな」
「いつ見ても凄いな。まるで進撃の巨人の、九つの巨人の能力みたいだ」
「尤も、俺がなるのは違うがな。そうだ、鎮守府はどうなっている?」
「グリムと大和達が運営しているよ」
「そうか。で、俺はどれくらい寝ていた?」
「一月だ」
この時間に長嶺が驚く。一月後といえば、ミッドウェー攻略の辺りなのである。
「ミッドウェー攻略は滞りなく進んでいる。一週間後には部隊が出港するぞ」
「なら、そこでお披露目だ」
そう言ってニヤリと笑い、それを見た東川は大暴れするのが分かった為、顔は苦虫を噛み潰したようになり胃も痛くなった。
同時刻 江ノ島鎮守府 執務室
「大和さん、こちらの書類にサインを。大和さん?おーい、大和さーん」
「あ、は、はい。サインですね」
(こ、怖っ!目のハイライトが消えてるじゃないですか)
長嶺が居ないため、鎮守府はグリムと秘書艦組が回していた。しかし艦娘達にはショックが大きかったようで、皆元気を失っている。特に所謂提督LOVE勢、金剛とか大和とか鈴谷とかは悲惨であり、常時目のハイライトOFFで、呪文の如く「提督」を連呼していたりとヤバい事になっている。更に声も抑揚が無く、まるでロボットか何かのように言っている為、不気味さ増量してたりする。
「グリムさん。1つ、よろしいですか?」
「何です?」
「何故、霞桜の皆さんは提督が居なくても普段通りなんですか?」
実を言うとショックを受けているのは艦娘達だけで、霞桜の隊員達は普通であった。確かに最初は泣いている者も居たが、二日も経てば普通に戻っていた。
「我々霞桜は、常に世界の闇で生きています。正直艦娘よりも死亡率は高いですし、殺す人数も多いです。我々の世界には「人を殺すならば、自らも殺される覚悟を持て」という暗黙のルールもありますから、仲間が死んだところで仕方がない、という考えなんです。
それに我々の部隊は皇国最後の砦であり、唯一の深海棲艦に対抗できる人間の部隊です。そんな人間が長を失っただけで機能不全を起こしていては、笑われてしまいますよ」
「私達とは考え方が違いますね.......」
「それにあの方は簡単には死にません。昔ある任務の時、敵の攻撃に遭い私の部下が捕まった事がありました。でも捕まった場所は敵の要塞の中で、どう足掻いても助けに入れない。私は機密保護の為の焼死装置*1のスイッチを押そうと、スマホでパスコードを入れました。しかしその瞬間に総隊長殿が通信装置を叩き落とし、私に「俺が行くから少し待て」と一言行って単身で突撃して行きました。
その30分後その兵士を救い出して、ついでに爆弾まで仕掛けて要塞を吹っ飛ばしました。そんな不可能を可能にしてしまう、不思議な力を持った御方です。だからきっと、あの人はまた戻ってきますよ」
そこまで言うと大和の顔は少し柔らかくなり、それ以降の執務は効率が上がった。
21:00 霞桜幹部執務室
「にしても、アレから一月。何にも音沙汰無しか」
「総隊長、生きてるのか?」
「グリム、何か情報は?」
「なにも。恐らく生きてはいるんでしょうが、昏睡状態か或いは植物状態か。少なくとも、あのケガでは我々の先頭に立ってくださる事はないでしょう」
実を言うと、4人揃って連絡は何も来ていないのである。
「誰が、先頭に立たないって?お前らより年下なのに、隠居生活するつもりは無いぞー」
「あのケガで先頭に立つのは化け物って、え!?」
バルクが突っ込んもうとするが、ここにいない筈の人間の声な事に気付き、声の方向を向く。そこには総隊長である長嶺雷蔵が立っていたのである。それも五体満足で、傷も元から無かったかのように完治していた。
「総隊長殿!?」
「まさか幽霊ですか?」
本来なら常識人枠のグリムとマーリンも驚きの余り、素っ頓狂な声を上げる。逆にバルクとレリックは口を開けて固まっていた。
「まあ驚くよな。あんな傷を受けてんのに、こんな五体満足で生きてるなんて。この際だから、お前達にも隠してきた俺の姿を見せてやろう。ついてこい」
そうして案内されたのは執務室であった。徐に懐から短刀を取り出し、指の一部を切って血を流す。その指を何も無い壁に押し当てる。
ゴゴゴゴゴ
重苦しい音ともに本棚が上に上がり、エレベーターが現れる。
「こっちだ」
4人を乗せると、そのまま下に下がっていく。数十秒後、扉が開くとそこは管制室になっており窓の外には大和型を超える巨大な戦艦が鎮座していた。
「せ、戦艦!?」
「これ、大和より遥かに大きい.......」
バルクとレリックが口々にコメントを言う。
「さて、じゃあ俺の正体を教えようか。俺の正体、それは人体改造によって生み出された初の「人工艦娘」だ。まあ娘とか言いながら、中身も体も男なんだがな」
読者の皆は、明石、霧島、大淀がデータベースから情報を盗み出したのを覚えているだろうか?その中にあった「第603号計画」というのが、この「既存の人間を改造し、新たな艦娘を創造する」という計画なのである。
「艦娘って人工的に作れるんですかい?」
「出来なくはないが作ろうとした場合、3429京4893兆9803億3256万8093分の1という、気の遠くなる様な天文学的確率を突破しないといけないし、出来たとしても力を使いこなせるかどうかは別問題だ。実際、俺以外にも今まで世界中から約8万人が被験者になったそうだが、その悉くが施術中に亡くなった。
なんか一人だけ力をほぼ無に抑える代わりに、成功確率を無理矢理上げた奴がいたらしいが、暴走して最後は体が残らないまでに溶けて死んだ奴が居たらしい」
「良く生き残りましたね」
マーリンがサラリと言ったヤバい事に突っ込む。まあ主人公補正掛かってから、しゃーないよね。
「総隊長、足が治ったのも艦娘の力?」
「鋭いな。流石、霞桜の技術屋だ。俺の場合は高速修復剤を体内に直接注射する事によって、実質的な不死身の力を手に入れている。今回の怪我も、それで治した」
「総隊長殿、我々にこれを見せたと言う事は明日の作戦に参加するのですね?」
グリムが指摘する。流石と言うべきか、察しの良さはピカイチである。
「勿論。ただ、参戦するのは後になってからだ。何処ぞのヒーローみたく、ピンチの時に出て行った方が艦娘達の士気向上につながるだろ?だから最初の内はここに隠れて、戦況を見ておくさ」
「それでは間に合わないのでは?ここからミッドウェーまで、直線距離にして約4000kmあります」
確かにその通りである。仮に音速で飛んで行っても3時間ちょい掛かり、即応性に欠ける。
「フフフ、まあ、とっておきの方法で登場してやるから安心しろ。それにコイツらは秘密裏に同行させるから、いざって時の時間稼ぎにはなるだろう」
そう言うと懐から、黒い式神を取り出して戦闘機の形にする。
「凄い。一体どんな仕組みに」
「レリック、お前は落ち着け」
目をキラキラさせて、今にも戦闘機に飛び掛かろうとするレリックをバルクが止める。
「コイツの名前はF27スーパーフェニックス。この艦の艦載機として使用している最強の航空機だ。ほら、ウェーク島の時に現れた謎の戦闘機あったろ?あの時の機体がコイツだ」
「総隊長、貴方はどれだけ秘密があるんですか」
マーリンが次々とカミングアウトされていく力に、いよいよ頭が追いつかなくなって呆れる。
「まだまだあるぞ。俺の人生ってのは、国家機密と軍事機密そのものだ。今だからこそ言うが、俺はまだお前達に見せた事ない力を隠している」
この言葉を言った瞬間、全員の顔が驚愕の顔となる。そりゃあ、秘密だらけだとか言ったらそうもなる。
「まあその内見せる事になるから、今は一週間後の作戦に集中しろ。俺の予感だが、今回の戦いは一筋縄じゃいかない気がする」
「「「「?」」」」
「特に赤城、加賀、飛龍、蒼龍には気を付けておけ」
「総隊長殿、まさか」
「あぁ。ウェーク島での戦いでは如月が爆撃で死にかけ、MO攻略、いや、珊瑚海海戦では翔鶴が被弾した。これは全て史実に於いても同じダメージだ。もしかしたらこれは史実の再現をしているのかもしれない。犬神に八咫烏が居るんだから、そう言う運命的な事も本当にあるのかもしれない」
「ならどうするんですかい?」
バルクの問いにニヤリと、不敵に笑う長嶺。
「簡単だ。何もしない。普通に敵と戦い、敵を殺せ。あの時、俺達は存在すらしていなかった。だが今は俺達がいる。この時点で昔とは違うし、第一アイツらは運命如きに負ける程ヤワじゃない」
そう言う長嶺の顔はいつもの戦闘狂の顔ではなく、自信と確信に満ちた堂々たる顔であった。
翌日 鴉天狗艦橋
「さーて、アイツらの晴れ舞台をしっかり見ないとな」
子烏の映像を、艦橋の大型パネルに映し出す。映ったのは、赤城達が岩礁にいる姿だった。
「来ませんね」
赤城達は江ノ島鎮守府から出撃してる筈の大和達を待っていた。ミッドウェー攻略部隊は本来であれば全員がトラック泊地に居るのだが、長嶺が負傷した関係で大和と他数隻は江ノ島に帰還していたのである。
そして集結ポイントも予め確認し、作戦開始の号令と同時に最終確認までして予定通り進んでいるのだが、大和達が中々来ないのである。
「加賀さん、そっちは?」
「ウチの子達もダメみたい。あなた達は?」
「こっちもダメです」
「同じく」
空母4隻が索敵機を飛ばして探すが、一向に発見できない。天気が悪く敵味方含め艦船自体を見つけにくいのもあるが、赤城はそれとは別の「何か」のせいだと考えていた。
(無線封鎖中とは言え、ここは敵の勢力圏内。長く留まれば留まるほど、敵に発見される可能性も高い。けれど今動くと、大和艦隊とも合流できないかもしれない。最善は何?)
「赤城嬢ちゃん、ここは進んだらどうだい?」
バルクが赤城に意見する。
「バルクさん.......」
「アンタの考えも分かる。大方アンタは、このまま進めば大和嬢ちゃんの艦隊と合流できないと考えているんだろ?でも一方で、ここに留まるのも危険だというのにも気づいている。どっちも一長一短だし、選択肢としても合っている。
だが今回の作戦の肝は奇襲だ。ここに隊員を残して、俺達は先行しながら索敵。そこからは状況に合わせて叩けそうなら叩いて、厳しそうなら一度撤退して合流してから再度攻撃したっていい。まあ決めんのは他でもない、旗艦の赤城嬢ちゃんだ。どうするね?」
「わかりました。その案でいきましょう」
「わかった」
グリムに目配せすると、グリムが指示を出す為に部下に近づく。
「君と君、それからそこの分隊は残ってください。残りは進みますよ」
そう言うと指名された水上バイク兵と水上装甲船に乗っていた分隊が、グリムに「了解」の合図を送る。
「それでは皆さん、行きます!」
旗艦である赤城の号令に合わせて、他の艦娘と霞桜の面々も動く。一方長嶺は、飛ばしている小鴉の一機を通じて状況を観察していた。自分が居なくても艦隊や部隊が回っている事に、指揮者としては嬉しくも、何処か寂しい矛盾した気持ちの中、行く末を見守っていた。
「さて、じゃあミッドウェーの方を見てみようかね」
そう言うと、別の小鴉を動かしてミッドウェーの上空に飛ばす。しかしそこには、予想通り敵の姿がいたのである。
「やっぱり居たか。飛行場姫!!」
赤城達も同じタイミングで飛行場姫の存在を確認し、すぐに航空隊を上げた。奇襲は成功したが流石に一撃では倒せず、第二次攻撃隊を続け様に発艦させた。
しかし敵もタダでは攻撃させてくれず、敵の艦載機からの猛攻が加わる。
「敵襲ー!!」
夕立がいち早く気づいて攻撃し、他の艦娘達も続く。しかし他勢に無勢であり、しかも一目散に空母に群がる。瞬く間に被弾し中破相当のダメージを受ける。更には敵の艦隊までもがやってきて、一気に形勢は不利となる。
(どうして?こんな事態は、避けようと。なのに)
実を言うと赤城は作戦の開始前から、長嶺と同じ不安を抱いていたのである。全ての出来事が前大戦と同じように続き、その度に霞桜、正確には長嶺の手によって救われ続けているのにも気づいた。そして相談しようとしていた矢先、長嶺は凶弾に倒れ音信不通となった。正直、どうすれば良いかわからないが、やれる事はやったつもりだった。しかし神の悪戯か悪魔の意思か、事はそう簡単には行かなかった。
「赤城さん直上!!」
吹雪が大声で叫ぶ。その声に気付くも、もう敵機は避ける事も堕とすことも出来ない位置にまで迫っていた。
(やっぱり、抗えないの?運命には.......)
そう赤城が心の中で呟いた瞬間、目の前に真っ赤な一筋の光が通り落とされた爆弾と敵機を貫いた。
「あの機体って!?」
「ウェーク島の.......」
ウェーク島攻略に参加していた艦娘達は、飛来した航空機に驚く。今度も飛び去るのかと思いきや、今回は編隊を組んでエンジンのとは別の炎を後ろから吐きながら、炎の軌跡を残しながら半円を描く様に飛ぶ。
その炎は残り続け段々と巨大な旭日旗の形を成す。そして旗に向けて回り込んだ7機が、炎の旭日旗をぶち破って突き進む。すると後ろから巨艦が姿を現し、完全に出て来ると炎は消え、戦闘機も高度を上げる。
「戦艦?」
「なんてbigなbattle shipネ.......」
「大和さんよりも大きい」
今度はその戦艦が一気に業火の炎に包まれ、パーツごとに分解していく。そのパーツ達は炎の玉となり、上空に浮かぶ何かに集まり巨大な火の玉を形成する。パーツが全て収まると炎は一気に消え、そこには見知った男が立っていた。
「あ、アレって!!」
「提督.......!提督ですよアレ!!」
「提督!?」
驚きの余り大半の艦娘が固まる。一方で霞桜はというと。
「総隊長、カッコつけすぎ」
「総隊長殿、派手すぎます」
「総隊長らしいですね」
「いいぞー!総長もっとやれー!!」
海に降り立つとワラワラと艦娘達が集まり、泣き崩れる物や笑う者など様々な反応を見せる。その後ろで霞桜の隊員達も同様に喜んでおり、絶望的な戦場で有りながら、希望に満ち溢れたものになる。
「みんな言いたい事は後で幾らでも聞いてやるし、心配かけた埋め合わせは幾らでもしてやる。だから今は目の前の深海棲艦を深海に返品しに行くぞ」
一呼吸置いて、大声を張り上げる。
「超戦艦『鴉天狗』ここに見参!!さあ何処からでも、かかって来い!!!!」
知能はあまりない筈の雑魚艦ですら、余りの気迫に圧倒されて後退りする。逆に艦娘達や霞桜の隊員達は、その気迫に安心感と希望を抱き前に出る。
「沈メ、沈メー!!」
飛行場姫が今まで無いくらいの航空機を繰り出して来る。その数、優に800を超えているだろう。
「ハハハ、その程度か?えぇ!?飛行場姫様よぉ!!!!」
そう言って狂気の笑みを浮かべ、自分の艤装に宿る妖精に命令する。
「対空戦闘用意!主砲副砲、超多重力弾装填。電磁投射砲モードへ!!」
この命令が出された瞬間、砲塔が航空機の未来予測位置を指向し、砲身が四分割に割れる。イメージ的には、蒼き鋼のアルペジオのハルナ&キリシマの主砲を考えもらったらいい。因みに中に棘というか槍というか、謎の突起物は無い。
「撃てぇ!!」
ドガァァァァァン!!!
合計で75門の大砲の一斉射は圧巻の一言であり、全員が余りの音に耳を塞ぐ。砲弾は艦載機集団の手前で起爆し、巨大な火球が出来ると思いきや、出来たのは禍々しい紫というか黒というか、言うなれば闇色とでも言える謎の球であった。その球にちょっとでも近づこうものなら、中に引きずり込まれて、忽ち消えてしまう。
この超多重力弾とは球形のフィールド内の至る所に、新たな重力点が出来るSFみたいな兵器である。中に入るとどうなるかと言うと四方八方に重力が働くので、すぐに限界が来て勝手に自壊する。それも原型すら留めないのだから恐ろしい。
「まだまだ行くぞ?全艦載機、スクランブル!目標、周囲の航空母艦!!行け!!」
今度は艤装の外側側面から、数百機のスーパーフェニックスが発艦する。戦闘機達は上空で編隊を組み「さっきの痛ぶってくれたお返し」と言わんばかりに敵空母に群がり、絨毯爆撃やらASM3の飽和攻撃によって周りの深海棲艦ごと海に沈める。
「皆さーん、大丈夫ですかー!?」
ここで大和達の艦隊も合流するが、やはり長嶺が五体満足で生きている事に喜びを露にする。何なら少し涙すら見せていた。
「遅いぞ、お前達?折角のパーティーはもうすぐお開きだ。どうする?最後のフィナーレ位は一緒に飾るか?」
「勿論です!」
「総隊長、NOと答えると思いますか?」
「気合い、入れて、撃ちます!!」
そんな訳で参加している全員が飛行場姫に照準を合わせる。
「お前達、一撃で決めるぞ。全艦、砲撃よーい!撃てェェェェ!!!!!!」
今までに無いくらいの巨大な爆発音が響き、飛行場姫が業火に包まれて爆散する。
「我が主、飛行場姫は消し飛んだぞ?」
「他の気配もないし、ミッドウェー島は完全解放だよ」
「OK。さあ、俺達の家に帰るぞ。ってか腹が減ったし、帰ったらみんなで宴会だ!!」
この一言で大歓声が上がる。料理できる組は「張り切って仕込みをしなきゃ」と意気込み、駆逐艦や普通の子達は「目一杯楽しもー」とか言っている。酒飲める組は「朝までコース行くぞー!最初に酔い潰れた奴は、顔に墨で落書きの刑だー!!」とか何とか言っていた。
「あ、そうだ提督」
「なんだ?」
大和が不意に長嶺に声を掛ける。長嶺は何の用かと考えるが、長嶺以外のの全員はこれからの事が分かったのか並びだす。
「せーの!」
「「「「「「「「提督(司令)(司令官)(総隊長殿)(総隊長)(総長)、お帰りなさい!!!」」」」」」」
各々の呼び方で、長嶺の帰還を祝ったのであった。長嶺はいきなりの事で驚くが、今度は穏やかな笑顔で一言返す。
「あぁ、ただいま。みんな」
半年後 防衛省 防衛大臣執務室
「おぉー、雷蔵よく来たな。いや、第三十三代目連合艦隊司令長官、長嶺雷蔵元帥?」
「うるせー、仕事押し付けやがった張本人」
なんとこの半年の間に長嶺は、東川の後を継いで連合艦隊司令となったのである。鎮守府は霞桜がいる観点や、東川が一応まだ指揮を取っている等の諸々の理由から江ノ島鎮守府には居るが、現在の連合艦隊の総本山は江ノ島鎮守府である。
「まあ、そう怒るでない。本題に入ろう。実はだな、ある島の偵察に行ってもらいたい」
「島?」
そう言うと東川はタブレットを取り出し、1枚の衛生画像を見せる。
「何だこれ」
そこに写っていたのは、入江があり中心部に都市とまでは行かないものの、街程度には発展した構造物のある孤島であった。
「わからん。だが明らかに人口構造物があり、ここをよく見ると大戦中の連合国の艦船が停泊している。だが艦娘は艤装は使えても、お前の様な艦船形態にはなれぬ。そして今の時代にこんなのを造船したところで、精々映画の撮影セット程度の需要しかない。
しかし一番不審なのは、こんな島は元々存在していない。おまけにこれは、つい最近になって突然現れた」
「何だそりゃ。まるで神隠しか何かって、俺が言えた口じゃないか」
「しかも似た様なのがもう一個ある。そっちも行く行くは調査してもらうが、今はこっちだけ教えおく。取り敢えず暫定処置として、各国の衛星にハッキングでここの島は映らぬ様にしてある。今この事を知っているのは俺達と、総理、それから陛下のみだ」
「わかった。で、任務は偵察だけで良いのか?敵対勢力なら消すし、友好的なら仲間にしてくるが?」
「case-by-case、お前の勘と経験に任せた。出発は明日、潜水艦で行ってもらう」
「はいよ。んじゃ、俺は用意してくるわ」
そう言って退室する。退室して扉を閉めようとした時、東川が「言い忘れていた」と言って新たな情報を渡す。
「この島に居る謎の勢力なんだが、「アズールレーン」というらしい。因みにもう一つの島の勢力は「レッドアクシズ」という」
「アズールレーン?レッドアクシズ?直訳で色の線、赤の枢軸。ますます分からん」
「まあ、その辺りも調べて来てくれ」
「わかったよ。特別ボーナス、期待してるぜ」
「お手柔らかに」
この時の長嶺は知る由も無かった。この島での出来事が、今後の運命をガラリと変える事を。
同時刻 「アズールレーン」と呼ばれた島の近海
「でさー、この事態どうする訳?」
人間の形はしているが生気を感じない、異様なまでに真っ白なセーラー服を着たポニーテールの女が、別の女に聞く。
「不足な事態ではあるけれど、計画はこのまま進めるわ。それにこの世界は色々奇跡の様な存在が多いみたいだし、興味深いデータは取れるわ」
指揮官クラスと思われる、長髪で謎のタコの触手の様な艤装を装備した女が答える。
「さあ、始めましょう。未来の演算、若しくは過去の再現を」
そう言って2人は霧の中に消えていった。