最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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皆様、お久しぶりです。約半年ぶりですね。本当に遅くなって申し訳ありません!!


第百十七話江ノ島鎮守府襲撃

長嶺突入数分前 江ノ島鎮守府 執務室

「どうして……どうしてこうなるんだッ!!!!」

 

「落ち着きなさいな」

 

かつての長嶺の執務室は、今や葉山の色に染まり切り、当の葉山は机の上の書類を撒き散らし、物に当たり始める。それを見てオブザーバーは止めはするが、本気で止めている様には見えない。

 

「教えてくれオブザーバー………。俺はどうなるんだ…………?」

 

「まさか防衛省への出頭命令なんてね。私達がやった事、そのまま返されてるわ」

 

「分かってる!!なんでなんだ!!俺は世界を救う英雄なんだ………。世界を救い、ヒーローとして歴史に名を刻む男なのに………」

 

葉山の元に届けられた命令書は、防衛省本省への出頭命令書。しかしこれは実質的な逮捕予告であり、防衛省に行けば最後。確実に捕まる。例え行かずともここに警官隊や、陸上自衛隊の憲兵、場合によっては特殊作戦群や空挺団、他鎮守府の艦隊すら派遣されかねない。

だが一方で江ノ島は何処かの総隊長と狂人軍団によって要塞化しており、さらにそこに葉山着任後の改装で防衛能力は日本どころか世界的に見ても、難攻不落の軍事要塞と化している。葉山は立て籠っている方が安全と考え、実際に今、立て籠っている。

 

「レグネヴァ、いい?今はとにかく立て篭もることに集中なさい。好機が来るまで耐えるのよ」

 

「わかってる………」

 

「ならいいわ。本土に続く橋は爆破した以上、物理的には隔絶しているわ。早々、敵が入ってくる事は無いわよ」

 

オブザーバーはそう言い残すと、執務室を出ていく。今のオブザーバーは一応、葉山の副官である。だが葉山に忠誠はない。目的のために利用しているに過ぎないのだ。

 

「それにしても、おめでたいわね。立て籠った所で、どうしようもないって言うのに」

 

「あら、オブザーバーも人が悪いわね」

 

「テスターじゃない。首尾はどうかしら?」

 

「動いてるわよ。もう後数時間もすれば、ここは陥落するわ」

 

「そう」

 

陥落とかいう物騒な単語が出ているにも関わらず、オブザーバーはいつもの微笑みを浮かべている。テスターも悲壮感や諦めはなく、仮面を貼り付けるかの如く笑顔を浮かべている。

 

「全てはこれでいいわ。これで私達は救われるの。だから、このまま彼らの敵として立ちはだかればいい」

 

オブザーバーは笑いだし、テスターもまた笑い出す。彼女達が笑い出したのは、丁度、レーダーが降下する長嶺を捉えた時だった。

 

『葉山提督!!!!弾道ミサイルです!!!!!』

 

「なんだと!?」

 

『種別不明なれど、到達予測はここです!!現在迎撃ミサイルを撃っていますが、念の為、防空壕に避難を!!!!』

 

葉山は大急ぎで防空壕に逃げ込む。その間にも迎撃準備はは進み、裏でレリックによる火器管制システムの制御も相まって、通常よりも早く、ミサイルのロックオンと発射が行われる。

 

「ミサイルアウェイ」

 

「シーカー、正常に作動。目標追尾中!」

 

程なくして、SM6は寸分の狂いなく命中し、江ノ島上空にはオレンジ色の火球が花開く。葉山は防空壕の入り口からそれを目撃し、まるで季節ハズレの花火とでも言いたげに見つめる。

 

「一体どこの国なんだ………」

 

防空壕の前で何処の国の犯行か考える。日本か、アメリカか、国連か、はたまた別の国家、勢力か。軍事知識を殆ど持たない葉山には分からないが、すぐにわかってしまう。

見てしまったのだ。上空に現れる巨大な戦艦と、それを纏った憎んでも、憎みたりない男を。

 

「まさか…………ありえない…………………」

 

『鎮守府上空に………エネミー1……………。長嶺雷蔵です!!!!!』

 

次の瞬間、江ノ島鎮守府に警報が鳴り響き、スピーカーからは自動音声のアナウンスが流れる。

 

『総員、第三種戦闘態勢。敵勢力上陸に備えよ。総員、第三種戦闘態勢。敵勢力上陸に備えよ。総員……』

 

「なんで………なんでアイツがここに………!!」

 

「落ち着きなさい、レグネヴァ。寧ろ好都合よ」

 

「何言ってるんだオブザーバー!!!!」

 

いつも通りの飄々とした態度のオブザーバーに、葉山は掴みかかる。葉山とて、長嶺の強さというのはよく分かっている。故に怖いのだ。

 

「落ち着きなさい、ハヤトくん。焦っていては仕損じる。何より女性に、それも仲間に掴みかかるのは紳士とは言えないねぇ」

 

「………トバルカインさん」

 

「彼は我々、シリウスに任せてくれ。きっと奴の仲間もいるはずだ」

 

トバルカインはいつも通り飄々としているが、その表情は真剣だ。何よりオブザーバーには無い、安心感というのを葉山は感じられた。オブザーバーから手を離し、何も言わずにトバルカインに頷く。

トバルカインはトレードマークの帽子を脱ぎ、胸の前に置いて、恭しく一礼すると、トランプがトバルカインの周りを囲みトランプが無くなると、既に誰も居なくなっていた。

 

「全機突撃!!!!江ノ島に殴り込みじゃぁぁぁ!!!!!!!」

 

「行くぞ野郎共!!!!兄貴に遅れんなぁ!!!!!!!!」

 

第三大隊と第五大隊を乗せた黒鮫弍型が先んじて突入し、凄まじい弾幕に晒される。しかし対深海棲艦及び深海棲艦支配域への突入、兵力投入及び支援、撤収を念頭に設計された機体にとっては豆鉄砲に等しい。

 

「対空火器が大量ですぜ!!!!」

 

「無視だ無視!!ヤバそうなのだけ破壊しとけッ!!!!!」

 

「了解!!」

 

装甲で対空砲火を弾き、大型のものだけをピックアップして破壊しておく。いくらコントロール下に置いていようと、今はまだそれを気取られる訳にはいかない。気取られない程度に手を抜いているが、全く命中しないのは無理がある。そこで適当に当てているのだ。

 

「カーゴオープン!!」

 

「スタンドアップ!!」

 

まずは第三大隊と第五大隊の連中が飛び降り、続いて後続の他大隊も降りる。ラーマエル率いる第六大隊は艦隊と共に海上封鎖が任務だが、それ以外の全大隊は数分の後に江ノ島に上陸した。

 

「野郎共!!!!俺達について来い!!!!!!!」

 

「漢の見せ所じゃぁぁ!!!!!!!!!」

 

真っ先に飛び出したのは、バルクとベアキブルだった。ベアキブルが悪鬼羅刹片手に敵陣に殴り込み、そのままお腹に抉り込む。

 

「グボァッ!?」

 

「なぁっ!?それ最新鋭の防弾防刃プレートなんだぞ!?」

 

「ば、化け物だ……コイツら化け物だ!!!!」

 

恐らくシリウス戦闘団の者だろう。黒いアイアンマンのような現代版フルプレートとでも言うべき装備の者達が、ベアキブルの一撃で及び腰になる。その瞬間、バルクが動く。

 

「うおらぁぁぁ!!!!!!!」

 

ハウンド牙による弾幕である。一回スーッと薙ぎ払うだけで兵士達がバタバタ倒れ、遮蔽物に隠れようと遮蔽物ごと破壊する。

 

「兄貴ぃ!!その後ろ!!装甲車だぁ!!!!!」

 

「任せろやぁ!!!!!」

 

三連装ミニガンの射撃を止めると、下部にマウントした自動擲弾筒で後ろにいる装甲車を破壊する。

 

「どーだ!?」

 

「やった!!!!」

 

「よーしぃ!!!!!」

 

ベアキブルとバルクは更に進む。爆炎に包まれ、黒煙が上がる装甲車の登り、周りを見る。しかし敵側から見れば、謎の兵士が小刀と馬鹿でかいミニガン片手に炎の中から現れる絵面であり、後続の兵士達はそれだけで恐怖を覚える。

 

「たくさんいるなぁ。こりゃ暴れがいがある」

 

「兄貴、先陣はこっちで貰うぜ?」

 

「おうよ。俺たちは後ろから援護してやる。好きに暴れろ!!!」

 

次の瞬間、第五大隊のヤクザどもが襲いかかる。銃ではなく、拳や角材、木刀、日本刀、短ドス、鉄パイプなんかを片手に。本来ならカモなのだが、身体の内側から発せられる殺気だとかの類により、兵士達は本能的に恐怖を覚える。

 

「死んどけワリャ!!!!」

 

「あぁん!?タマ付いてんのかゴラァ!!!!」

 

「大阪や!!!!死んどけぇぃゴルァァァァァァァ!!!!!!」

 

「兄貴それマル暴!!!!!俺たちの敵!!!!!」

 

一応フルプレート故に、顔にも装甲面があるのだが、そんなのお構いなしにタコ殴りにする。そればかりか、パイプで首を絞めて、そのまま脊髄へし折る蹴りをかましたりしている。

 

「あ、武器発見」

 

「こっちも!」

 

「大量大量。武器は現地調達が基本だと、どこぞの蛇も言ってたしなぁ!!」

 

中にはその辺の観葉植物の入ったゴツい植木鉢やら、テーブルに椅子、役者や病院の待合室にある長いソファを片手にぶん回す輩もいる。

 

「こ、コイツら人間じゃねぇっ!!!!!」

 

「逃げろ!!!!中に逃げ込め!!!!!」

 

兵士達は散り散りに敗走を始める。敗走するのは結構なのだが、変に逃げられては困る。掃き掃除の基本は一箇所にゴミを集めて、最後に回収なのはご存知の通りだが、これもまた同じなのだ。

 

「掃き掃除と違うのは、物騒すぎる武器でしょうかね」

 

バーゲストを構え、行かれては困る方向に走る兵士達の先頭を撃つ。先頭を走る者が倒れれば、誰もが動きを止めて、近くの遮蔽物に隠れるだろう。

 

「動きを止めました。みなさん、よろしく」

 

「攻撃開始」

 

「タンベルク、左の二人組だ。押し込め」

 

「おう」

 

「ウジッツ!ケツに蹴りを入れてやれ」

 

桜舞IIを装備した隊員達が一斉に弾丸を放ち、兵士たちを自在に操る。右に出そうな者を押し込み、背後に弾丸を撃って馬に鞭を打つように集団を操り奥へ奥へ、そして一塊にしていく。各隊数名のスポッターが一団を監視し、それを中心に数名をスナイパーが狙撃するという、狩りの手法そのものだ。

 

「こんなところでしょう。レリック?」

 

『掃除』

 

レリックがセントラルコントロールルームから、いよいよ完全に防衛システムの制御権を奪う。これまではあくまでも、いつでも手綱を操れるように握っただけでコントロールは任せていた。だが今、江ノ島の全てはセントラルコントロールルームが掌握した。ドアの開け閉め、エアコンの温度の調整から、防衛兵器の操作までメインシステムに接続されている物なら何でもできる。

 

「IFF書き換え」

 

「終わってますよ大隊長!」

 

「攻撃」

 

「待ってました!!」

 

セントラルコントロールルームに先んじて潜入していた隊員達が、コンソールを軽く操作する。その瞬間、地上では屋内外問わず、壁や天井、地面や床下に格納されていた重火器が即座に姿を現す。

 

「おっ!ようやく防衛兵器が動き出した!!」

 

「蹴散らせぇ!!!!」

 

江ノ島を警備する兵士達は、ようやく防衛兵器が動き出したと思っていた。彼らも緊急時には各所から火器が飛び出して、侵入者の迎撃に当たることを知っていた。そればかりか、その火力に援護されながら戦うことも想定している。故にようやく、防衛システムが動き出しこれで奴らを殲滅できると、形勢逆転だと、そう考えていた。

 

「お、おい………なんかこっち向いてね?」

 

だが、そうなる訳がない。銃口が捉えるのは、その兵士達である。しかも防衛用に配置されている兵器というのは、ウクライナ製の自動擲弾発射器UAG-40、M2重機関銃、GAU-19ガトリング砲、M134ミニガン、MG3を双銃身化したMG14z、M249、といった高火力、高レートの武器達である。遮蔽物に隠れようが、その遮蔽物ごと破壊してくる。そんな火器だ。

 

「に、逃げろ!!散———」

 

散開して逃げろと、そう言うよりも先にタレットの攻撃の方が早かった。何の障害もなく、無数の機関砲弾が兵士達をズタズタに引き裂いていく。遮蔽物に隠れる暇もなく、数秒で数十人がミンチ肉に加工されていく、そんな空間になっていた。

 

「な、なんで防衛兵器が!!」

 

「敵に乗っ取られてんだよ!!」

 

「アイツら何者だ!!!!」

 

「俺が知るっ!?」

 

なんとか遮蔽物に逃げ込めた運のある者達も、40mmグレネード弾の雨や12.7mm弾の暴風雨の前に吹き飛ばされていく。しかも、これだけではない。

他の守備隊の兵士達も、各所で奇襲を受けてしまう。そればかりか一部には、対戦車用にTOWやジャベリン、84mm無反動砲カールグスタフをタレット化して配備してある。戦車や装甲車はこれで排除されていった。

 

『レリックより総隊長。江ノ島、ほぼ陥落』

 

「みたいだな。おっとぉ?」

 

空中から成り行きを見守っていた長嶺は、洋上に現れた無数の戦艦群を目にする。かなり久し振りにみる、KAN-SEN達の怨敵。セイレーンの艦艇と人型のセイレーンである。

 

「洋上にセイレーンを確認。予想通りだ」

 

『…………援護いる?』

 

「必要ない。艦隊で対応するし、何よりそろそろ我が愛しの艦隊も動かさないと、一部の戦闘狂が欲求不満で大爆発しそうだ。何より、俺が暴れたいんだよ!!」

 

一気に高度を下げて人型セイレーンの一団に突撃し、そのまま幻月と閻魔で両断。それと同時にソードビットで襲わせる。

 

「相変わらず、テメェの死ぬ間際まで薄ら笑みを張っつけたまんまかよ。まだ深海棲艦の方が表情豊かだぞ………。全艦及び第六、第七大隊総員!!セイレーン共を血祭りに上げろ!!!!!」

 

長嶺のその号令で、洋上待機していた全艦が動き出す。まず最初に動くのは最後方に待機している空母機動部隊。艦載機を発艦させ、援護に当てるのだ。

 

「一航戦赤城!」

「同じく一航戦、加賀」

 

「二航戦蒼龍!」

「二航戦飛龍!」

 

「五航戦、翔鶴」

「同じく瑞鶴!」

 

「「「「「「戦闘機隊発艦!!」」」」」」

 

「一航戦、赤城」

「一航戦、加賀」

「「推して参る!!」」

 

「終わりだ……Funebre!」

 

「聖なる光よ、私に力を!」

 

「汝、罪ありき…!」

 

「この行いはすなわち、アイリスの願い」

 

「全機発艦だ。行け」

 

空を無数の戦闘機達が彩る。その上空で、長嶺もまた艦載機を発艦させる。最強無敵の艦載機、F27マスターフェニックスである。機首に40mmバルカン砲6門。機首下部に76mm速射砲2門。機体上部に連装ビーム砲(TLS)と連装パルスレーザー(PLSL)砲が合体した砲塔1基。機体下部中央に連装レールガン2基。主翼に片翼8門、両翼合わせて16門のパルスレーザー(PLSL)砲。機体後部の上下にADMM4基。空対艦ミサイル4発を機外に、空対空ミサイル8発を機内に搭載可能。

その上で翼端には、MQ2ストライクワイバーン搭載されており、追加ブースターとしても稼働する。このストライクワイバーンには30mmバルカン砲1基、固定型のTLSを機体上部、下部にはレールガンを1基ずつ搭載しており、ADMMも2基積んでいるという、戦域殲滅支配戦闘戦闘機とすら言える代物だ。

 

「…………姉様。指揮官の戦闘機は……やはりおかしいな」

 

「指揮官様の戦闘機なのよ?あのくらい当然だわ」

 

「いやいや赤城先輩!?あれが当然って………まあ、言わんとすることはわかっちゃうですけどね………」

 

そんな戦闘機を投入すれば起きるのは、いわば一方的な虐殺である。初手でレーザーとレールガンで編隊を攻撃し、その次は無数のミサイルが弾幕となって襲い掛かる。足を取られれば最後、40mmバルカン砲とPLSLでズタズタに引き裂かれ、逆に後ろを取れたとしてもレールガンとPLSLで迎え撃たれてしまう。言わば空域支配戦闘機ならぬ、空域殲滅戦闘機である。

 

「指揮官!私達は前進してもいいのかしら?」

 

『任せる!突撃部隊は、いつも通りお前が指揮をとれ。オイゲン!』

 

「わかったわ!聞いたわね?行くわよ!」

 

オイゲンを戦闘に駆逐艦、軽巡、重巡の艦娘とKAN-SEN達が前進を開始する。上空では戦闘機隊が制空権を完全に確保しており、攻撃隊が艦隊に合わせて攻撃ができる。ここに艦隊中衛に位置する戦艦及び一部の砲撃特化の重巡が支援砲撃を加え、突撃部隊には第六、第七大隊が随行する。江ノ島の王道常套戦術にして、最強の戦術だ。

 

「ぶっ飛ばす!」

「衣笠さんにお任せ♪」

「弾幕を張りなさいな!撃て!撃てー!」

「全砲門、開いてください!」

 

「海の藻屑と!!」

「なりなよ〜」

「どきなさい、私とガリィの前から!」

 

「「「鬼神」の力、味わうがいい!!!」

「努力の成果を試す時です!」

「Jクラスの実力見せてあげる!!」

「状態良好。行こ!」

 

艦隊の動きに合わせて、セイレーンも動き出す。どのような仕組みでやっているのか全く見当がつかない、海上での超信地旋回を行い艦首を艦隊に向けて前進を始めつつ攻撃を加えてくる。

 

「お前達!前に出るぞ!!」

 

しかしそれを見るや、最高方から戦車が飛び出す。ラーマエルが駆る特殊強襲戦車『チャリオットロード』である。その後ろにはシービクターを装備した、第六大隊の隊員達が続く。

 

「オラオラぁ!!!!なに艦船が超信地旋回してんだ!!それは戦車とか装甲車の領分なんだよ!!!!!!!」

 

まずは固定型高出力TLS3基を収束して撃つ、レーザービームでセイレーン艦隊に穴を開ける。チャージとクールダウンに時間を要するが、セイレーン艦であれば一撃で3隻くらいは貫徹できる。

だがセイレーン艦もやられっぱなしではない。両翼に艦隊を広げ、側面からの雷撃を仕掛けてくる。

 

「雷跡!右95!!」

 

「回避しなくていいわ!!このまま前進!!!!!」

 

アトランタの報告に、オイゲンが即座に命令を返す。普通なら回避を命じなくてはならないのは、どんな素人でも分かるだろう。だが、江ノ島に限ってはこれが正しい。

 

「僕達が迎撃する!艦隊は前進を!!」

 

艦隊の両側面を固めていた第七大隊が、魚雷の迎撃に動き出す。霞桜の各大隊には、固有の役割や得意分野がある。本部大隊はサイバー関連、第一大隊は狙撃、第二大隊は工兵の行う工作と物作り、第三大隊は圧倒的な弾幕による支援、第四大隊はトリッキーな戦闘での攪乱、第五大隊は近接格闘による超近接戦、第六大隊は重装甲高火力を生かした攻撃、そして第七大隊は爆破である。

しかもこの爆破は何も、建物や瓦礫のような障害物を爆破して経路を作るだとか、爆破で標的を破壊、殺害するだけに留まらない。今回の様な状況では、得意な爆弾を用いて脅威を破壊する。

 

「ソーナー!魚雷の位置を正確に測定して!!」

 

「………魚雷郡第一陣、速力およそ58.9ノット!包囲変わらず!!」

 

ソーナーの情報をHUDに視覚的に投影する。ARで作られたマーカーが魚雷の上に表示され、魚雷の移動に合わせてマーカーも移動していく。

 

「総員、攻撃用意!! Skiet(撃て)!!!!」

 

「撃てぇぇ!!!!」

 

テスランの左腕に、まるで盾の様に装備されたヴォルカニックフォージを構え、勢いよく振り上げる。テスラン謹製超小型高性能グレネード30個がポチャポチャという可愛らしい音と共に、小石が落ちた様な波紋を広げる。だが数秒経たないうちに、大きな爆発が発生し魚雷をまとめて吹き飛ばす。

第七大隊の隊員達も負けていない。肩に装備している六連装小型多目的ミサイル発射機から、テスランの作った対魚雷ロケットを撃つ。地雷除去に使われる小型爆弾付きのロケット弾をヒントに開発された代物であり、発射後は一直線状に除去エリアを構成する。小爆弾着弾後は、小型魚雷となり各敵魚雷に自動追尾で攻撃を加える。

 

「目標群α、殲滅!艦隊はこのまま前進を!!第七大隊はこのまま右翼の艦艇を叩く!!」

 

『任せるぜテスラン!!第六!!このまま姫君のエスコートだ!!!!騎兵隊突撃!!!!!!』

 

テスランの第七大隊が艦隊から離れ、右に広がるセイレーン艦に向かって突撃を開始する。先陣を切るのはテスランだ。普段のテスランなら後方に下がりがちだが、とある装備を持てば戦闘狂に早替わりする。

 

「テスラン隊長!!これを!!!!」

 

部下の1人が持ってきた、何の変哲もないカゴ。栗拾いでもする時に使いそうな、大きな背中に背負うタイプのカゴだ。しかし中身は栗やどんぐりの様な、可愛らしい木の実ではない。多種多様な黒光りする、禍々しい球体。手榴弾である。

 

「ウッワァヒャッァァァァ!!!!!!!!!!」

 

「あーあ、始まった。第七大隊ー、隊長には近づくなよー」

 

「ボマーズハイだな」

 

テスランの悪癖、爆弾見るとアホみたいに興奮し、色々遊び出す癖の上位互換。カゴに手榴弾山積みにし、豆まきよろしく何にでもぶん投げるボマーズハイである。後ろに背負ってるのが単なるカゴである以上、もし後ろに弾丸がかすれば最期。死体も残らず、文字通りに消し飛ぶ。しかも周りにいれば確実に巻き込まれる訳で、歩く人間火薬庫と化しているのだ。

 

「それそれそれぇ!!!!」

 

カゴから手榴弾を取り出しては、数個まとめて放り投げる。手榴弾でありながら、その全てが高火力を発揮できるように開発された特殊炸薬である以上、セイレーン艦でも簡単に吹き飛ばせる。それが雨霰と降るのだから、溜まったものじゃないだろう。

 

「ヒャハハハハ!!割れろ割れろ割れろぉッ!!」

 

爆圧が空気を殴り、衝撃波が波頭を削ぎ、セイレーン艦の装甲が紙細工のように捲れ上がる。艦橋が吹き飛び、砲塔が宙を舞い、なんというか可哀想に思えてくるほどだ。

そんなレベルで大暴れしていれば、テスランの方にも注意が向く。その間にオイゲン率いる艦隊が突貫し、一気にセイレーン艦を削って行く。

 

「もっと、もっとだ!」

 

「海の藻屑と!!」

「なりなよ!!」

 

「撃ちます!当たってぇ!!!!」

 

「夕立、突撃するっぽい!!」

「ガルルル!やってやるぜ!!」

 

眼下に広がる光景を見つめ、長嶺は笑う。良い感じに皆暴れている。家を取り戻す戦いとなれば、この流れは当然だろう。そろそろ長嶺も乱入しようかと思ったその時、奥からオロチ型のセイレーン艦が現れる。

 

「おいおいマジか。出てきちまったよ。しかも3隻ってマジか」

 

オロチ。KAN-SENの赤城と加賀が、レッドアクシズ時代に作り出した戦艦型セイレーンである。大口径レールガンに飛行甲板、島一つを壊滅せしめる弾道ミサイルまで搭載した代物。しかもシールドまで搭載し、KAN-SENと艦娘の火力を持ってしても撃退は容易ではない。

 

『提督!オロチが出てきましたよ!?』

 

「あぁ、見えてる。オイゲン!量産艦の殲滅率は!?」

 

『大体8割ってとこよ!どうする?撤退?時間稼ぎ?』

 

「オロチ相手だ、取り敢えず撤退して後方と合流!守りを固め、体勢を立て直せ!!」

 

KAN-SENと艦娘が無理でも、長嶺ならば問題ない。鴉焔天狗を持ってすれば、容易く撃退は可能だ。

 

「まずは目隠しの必要があるな。焔舞!!」

 

手を軽く掲げ、そのままオーケストラの指揮者のように手を振る。それに合わせて巨大な炎の塊が蠢き、左右からオロチ3隻をグルリと取り囲んでいく。オロチが何を持って敵を認識するかは分からないが、炎の壁を用意すれば光学系のセンサーは全滅だ。しかも超高温に到達すれば、プラズマ化しレーダー波を反射、吸収、散乱、屈折と、妨害することができる。

それ以外の方法で探知されていたら打つ手無しだが、基本的にセイレーンも軍艦。艦艇の目標探知はレーダーか有視界であり、無人機であれば光学センサーの類だ。GPSや衛星による探知であったとしても、高速で動く極小の人間サイズの物体を狙うとかは不可能である。

 

「シールドを貼ってない?オロチの量産艦か?大和!!」

 

『はい!』

 

「主砲砲撃戦!支援砲撃だ!!今送った地点に砲撃しろ!!」

 

『………砲撃座標確認!砲撃します!!』

 

大和の指示の下、後方に控えていた戦艦が砲撃を開始する。数十秒後、砲弾がオロチに降り注ぐ。無数の水柱と共に、爆炎も無数に上がる。戦艦数十隻による主砲一斉射。散布界も広ければ、確実な有効弾を撃ち込める。

 

「やはりシールドがない。なら簡単に倒せる!!」

 

オロチは素の装甲も当然ながら分厚い。だがこちらは、物量に任せて無理矢理破壊できる。問題はない。

 

『硬いってのはいい事だ!!殴り甲斐があるいいサンドバッグって事だからな!!!!!』

 

後方の戦艦群が砲撃を加える中、ラーマエルの駆るチャリオット・ロードが一気に飛び出す。オロチの主砲がチャリオット・ロードを指向するが、チャリオット・ロードの方が早かった。

レーザーとミサイルが襲い掛かり、砲塔や速射砲の類は大口径バルカン砲の餌食になる。例え抵抗しようと、対深海棲艦戦を想定したオニオン装甲はそれを容易く防いでしまう。

 

「あーあ俺の獲物なのに………」

 

結局長嶺が手を出すまでもなく、オロチは撃沈されてしまう。しかし、まだ終わりではなかった。海に葉山が現れたたのである。

 

「長嶺ぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

 

「ようやくお出ましか。全く、遅いぞ。待ちくたびれた」

 

長嶺は海に降り立ち、葉山を堂々と見据える。本来なら敬意を表する相手でもなんでもないが、今の葉山は良い感じにボコボコにできる頑丈なサンドバッグ。使わない手はない。

 

「さぁ、今度は本気だ」

 

 

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