最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第十四話KAN-SENとの邂逅

戦闘が終結し赤城らが撤退したのを合図に、アズールレーン側は傷付いたKAN-SENの回収やら、セイレーンの残骸の撤去作業を始めていた。一方で長嶺は、持ちこんだ機材を使ってサンプル採取を行なっていた。

具体的には装甲板を取ったり、砲弾やコンピューターの確認、全体のスキャニング等である。取られらたデータは霞桜の本部が置かれている江ノ島鎮守府に送信され、スーパーハッカーのグリムとチート技術屋のレリックによって解析が進んでいた。

 

「それにしても、手酷くやられてるなぁ」

 

そう言って振り返り、基地の惨状を見る。幾つかの軍艦は「キャンプファイアー」をしていたり、沈みかけていたりと少なからずダメージを負っている。基地の方は謎の塔に戦闘機が突き刺さってたり、港湾の出口は残骸によって塞がれていたりと結構深刻である。しかし次の瞬間、目を疑う事が起きる。

 

「ん?え、あ、ふぁ!?!?」

 

何と何の前触れもなく、綺麗さっぱり残骸が消えたのである。余りに予想外すぎて、流石の長嶺も素っ頓狂な声を上げた。

 

『我が主、他の残骸も消えたぞ』

 

『こっちもー』

 

空から監視していた八咫烏と、近くを警戒していた犬神からも報告が上がる。因みに戦闘も終わったので、いつもの普通のサイズへと戻っている。

 

「しゃーない。当初の目的通り、接触して交渉するぞ。相手はそうだなぁ、さっきの金髪ショートにでもするか。八咫烏」

 

『その娘なら、桟橋にいるぞ。主から見て、右奥の奴だ』

 

「りょーかい」

 

そんな訳で桟橋に向かって進む。勿論素顔を晒す訳にはいかないので、フェイスカムで架空の顔を作り、その上に狐面を装備し、懐に土蜘蛛HGを隠し、両腕のグラップリングフックにも6インチのタクティカルナイフも忍ばせて金髪ショートの女性、プリンス・オブ・ウェールズ(所謂PoWさん)の所へ向かう。

 

 

「所でお前達、狐面の男は見ていないか?」

 

「見てないです.......」

 

「ラフィーも」

 

ウェールズとイラストリアスは戦闘から帰還したジャベリンとラフィーに聞き込みを行なっていた。既に何人かにも聞いており、皆同様に「知らない」という答えしか返ってこなかった。他を当たろうとした時、空から何かが目の前に降ってきた。

 

「何だ!?」

 

「初めましてだ、プリンス・オブ・ウェールズ?それとイラストリアス?」

 

目の前に現れ、しかも名前まで当てられて完全に混乱する二人。二人だけではない。ジャベリンとラフィー、それにイラストリアスについてきていたユニコーンも同じく混乱していた。最初に混乱から立ち直ったのはウェールズであった。

 

「貴様、一体何者だ?」

 

「俺は唯の審査員だ。ゴールドフォックス、それが俺のコードネームだ」

 

「ゴールドフォックスか。それで、貴様は敵なのか?」

 

「まあ敵意は今の所無い。俺がお前達の敵となるかは、こっからのお前達次第って所だ。あ、そうだ。ラフィー、ジャベリン、ユニコーン、例の黒ローブの子の正体って何だったんだ?」

 

ジャベリン最早混乱を通り越して放心状態になり、ユニコーンは何が何だか分からず、色々キャパオーバーして泣き始める。

 

「ふえぇぇ.......」

 

「え!?何か怖がらせる事したか!?!?ヤベェ、どうしよ.......」

 

予想外すぎてワタワタしてるのを見て、取り敢えず敵では無い事をイラストリアスとウェールズは悟った。

 

「フフ、ユニコーンは恥ずかしがり屋さんなんです。だから、お気になさらず」

 

イラストリアスが聖母の様な微笑みで、長嶺を落ち着かせる。

 

「そ、そうか。というか、多分状況把握出来てないよな」

 

そう言うと長嶺はスーツとフェイスマスクの機能を使って、さっきのフォックス・ハウンドの格好となる。

 

「ああぁぁ!!フォックスちゃん!」

 

ジャベリンが大声で驚く。ラフィーとユニコーンも同様に驚きの声を上げる。

 

「さっきぶりね、三人共。騙して悪かったわね。私はフォックス・ハウンドではなく、本当はゴールドフォックスっていうの。まあこれも本名じゃなくて、唯のコードネーム何だけど」

 

そこまで言うと、またさっきの姿に戻る。ラフィー、ジャベリン、ユニコーンの3人はその早い変化に目を白黒させていた。

 

「まあこう言う訳だ。すまないな、騙したりして」

 

そう言うと同時に、深々と頭を下げる。その誠実な姿に3人が笑顔になる。

 

「問題ない.......」

「大丈夫ですよ!」

「ユーちゃん見つけてくれてありがとう」

 

「んっんん。何かハッピーエンドになりかけている所悪いのだが、君は本当に何者なんだ?」

 

「余り人には聞かれたくない。聞かれた場合、余計なパニックが起きる可能性がある。何処か適当な部屋を用意して頂きたい」

 

「いいだろう。イラストリアス、ついてきてくれるか?」

 

「分かったわ」

 

 

 

基地施設内 小部屋

「さてと、何処から話したものか。取り敢えず二人に聞くが、ここ最近、それも数日から一週間の間に不可解な事は起きていないか?」

 

「特には有りませんわ」

 

「私の方もだ」

 

「まあ言って信じてくれるとは思っちゃいないが、お前達の基地は恐らく異世界に転移している」

 

これを言った瞬間、二人が顔を見合わせて笑う。そりゃそうだ。こんな事を大真面目に言うなんて、戯言もいい所である。

 

「面白い冗談だな」

 

「所が冗談じゃねーんだよ。こっちの経緯を説明するが、一週間前に衛星が二つの謎の島を捉えた。勿論これまで何も存在していない、唯の海原だった場所にだ。しかもよく見ればどっちにも、明らかな人工構造物と第二次世界大戦時の艦船の姿が確認できた。一体何が起きてるかを探り、可能なら友好関係なり何なりを取り付ける目的で俺が派遣された。そんでもって潜入したら」

 

「私達が居た、と言う事ですか?」

 

「そう言う事だ。実際俺の知識についても潜入中に色々調べた結果の知識だ。まあ艦船関連に関しては、同じ物がこっちの世界にも存在してたから、ある程度は自前で分かるがな」

 

信じられないと言う様子で見つめてくる2人。今度はウェールズが口を開く。

 

「証拠はあるのか?」

 

「それが無いんだよなぁ」

 

「「は?」」

 

「いやマジな話、俺の仕える国に来て貰えば一発で分かるんだろうが、流石に完全に敵対していないと分かっていない存在である以上、そう簡単に上げる訳にもいかない。衛星写真でも良いんだが、アンタらが「捏造写真だ」とでも言われたらアウト。まあ無難に、アンタらの本国に連絡してみればどうだ?転移した以上回線は切れてる筈だから、多分繋がらないと思うぞ?」

 

そんな訳で連絡してみたらしいが、案の定予想通り繋がらない。

 

「これで信じて貰えたかな?」

 

「そうだな。そうだ、幾つか質問いいか?」

 

「答えられる限りなら」

 

そう言うとウェールズとイラストリアスが顔を見合わせて、質問を開始する。まず最初にしたのはウェールズである。

 

「じゃあまず、貴様の所属する国家の名前と、所属を言って貰いたい」

 

「日本って国だ。所属は新・大日本帝国海軍という組織になる」

 

今度はイラストリアスが口を開く。

 

「貴方は先程「審査員」と言っていましたが、一体何の審査なのですか?」

 

「お前達の脅威判定だ。こっちにしたって、お前達は未知の存在だ。有効的なら良いし、例え友好的でなくとも邪魔にならなければそれで良し。だが祖国に敵対し、もし攻め込む様なら潰す。その為に来た」

 

「潰す」と言った瞬間、二人の顔が強張る。

 

「安心しろ。今の所潰すつもりはねーから」

 

「わかった。次の質問なんだが、貴様この後どうするのだ?」

 

ウェールズの質問にハテナを浮かべる。質問の意図がよく分からなかった。

 

「その審査は一応は終わったのだろう?このまま、重桜に行くのか?」

 

「まあそれでも良いんだが、部隊が到着するまではここに居させて貰う」

 

これを言った瞬間、さっきの比でない程強張った顔となる。

 

「部隊とは?」

 

「俺の指揮する直属の部隊だ。実を言うとこの辺は、お前達で言うセイレーンみたいな存在が出没する所なんだ。で、恐らくアンタらの装備ではダメージを与えられない。正直、こんな綺麗な美女達に死なれちゃ後味悪いしな。勝手なお節介だが此処を守らせて貰う。実際こっちの国際基準では日本の領域だし」

 

因みに顔にこそ出していないが、内心「美女」と言われて照れまくってる2人である。

 

「では最後に、これは個人的な質問なんですが、なぜ仮面を取らないのですか?」

 

「あぁ、これね。俺は存在自体が国家機密だ。素顔は隠す様にしている。俺が素顔を見せるのは、お前達が完全に仲間と認識した時だけだ。んで、他に質問あるか?」

 

「私は有りませんわ」

 

「私もだ。なら貴方には、此方で用意した部屋に入って貰う。イラストリアス、頼めるか?」

 

「分かったわ。フォックス様、此方へ」

 

イラストリアスの案内で部屋を出て、そのまま充てがわれた部屋へと案内する。途中でユニコーンとも合流し、三人で部屋に向かう。部屋に通されたら2人は帰っていた為、色々執務やら何やらを片付けて就寝した。

翌日は特にやる事もないので、基地の中をプラプラ散策する。特に自分の目で見ていなかった場所には興味があったので、まずは港湾設備のある区画へと足を進める。通達で長嶺の事は認知されている為、なんか至る所から視線を集めているが本人は気にしない。

 

「クリーブランド級か.......」

 

目の前の波止場に停泊している軽巡洋艦に目を向ける。最上を連想させる三連装砲に、副砲として搭載された三基の連装砲。さらに2本のマストと、板型のレーダー。その姿はアメリカ海軍が量産しまくった軽巡洋艦、クリーブランド級に他ならなかった。

 

(まさか、二次大戦の軍艦を現役の状態で見る日が来るなんてな)

 

「えぇーと、私の艦に何か用か?」

 

振り返ると金髪ロングの、まあ女なんだろうけど「カッコいい」と言うのが似合う少女がいた。

 

「あ。もしかして、あなたが通達の人か?」

 

「そうだ。ゴールドフォックス、長いしフォックスでも、お前でも好きなように呼んでくれ」

 

「わかったよフォックス。私はクリーブランド、海上の騎士だ!」

 

「騎士か。俺も「侍」だし、話が合いそうだな」

 

「騎士」と「侍」。西洋と東洋の戦士達の邂逅、って程大きなものではないが、一応クリーブランドとは良好な関係を気付く事に成功した。次は例の崖を目指して見ることにして、散歩で居なかった犬神と八咫烏とも合流して、また歩き始める。

 

「あら?フォックス様」

 

今度はお茶をしてたイラストリアスとユニコーンに声を掛けられる。イギリスとほぼ同じ文化を持つロイヤルもまた、紅茶を飲んでお茶をする文化がある様だ。

 

「イラストリアス、それにユニコーンも。お茶会中かな?」

 

「えぇ。フォックス様いかがですか?」

 

「頂こう。お前達はどうする?」

 

「我も貰おう」

「僕も!」

 

此処で動物で喋る筈のない2匹が喋っているのに驚く。

 

「犬と烏が喋った.......」

 

「コイツらは普通じゃないからな。烏の方は八咫烏と言って、導きの神であり日本の王、天皇陛下の初代を導いたとされる神鳥だし、犬神は相手に取り憑いて意のままに操れる妖怪、西洋風に言うなら悪魔みたいな物だ」

 

「ホント、フォックス様は何者なんですか.......」

 

「唯の国家機密の塊だ」

 

最早ツッコミをする気力が無くなるほど呆れて、開き直ってお茶会が始まる。

 

「どうぞ」

 

「それじゃあ貰おう」

 

差し出された紅茶を一口飲む。鼻腔に花の様な香りが広まり、甘味、酸味、渋みの三つが丁度良いところで交わり個性的な味わいである。

 

「この紅茶、ダージリンだな」

 

「よく分かりましたね」

 

「何で分かるの?」

 

イラストリアスは一発で当てた事に驚き、ユニコーンは何故わかったのか聞いてくる。

 

「味や香りで分かるさ。仕事内容によっては今回の様に敵に見つからずに潜入する事もあるが、真正面から別の人間になりすます事もある。有能な暗殺者やスパイは、万に通じている物だ」

 

実際長嶺は様々な資格も持っている。各国の車、バイク、航空機、船舶の免許は勿論、潜水士や調理師免許、A級ライセンスや医師免許まで幅広く持っている。まあ殆どが偽の戸籍の架空の人物達が持っている為、長嶺雷蔵としての免許は余り多くはない。

 

「ねぇフォックスさん、お兄ちゃんって呼んでも良い?」

 

「いきなりだな。まあ、良いけど」

 

「じゃあこれから宜しくね、お兄ちゃん!」

 

「お、おう」

(何故だろう、妹ができた様で落ち着かん)

 

「ユニコーンがこんなにも懐くなんて、やはりフォックス様はお優しい方ですね」

 

少し照れているのか、ユニコーンはユーちゃんで顔を隠す。しかしその後ろの真っ赤な顔は、完全に隠れきれておらず丸見えである。

 

「ハハ、俺が優しい、ねぇ」

 

「えぇ。ユニコーンがこんなに心を開くなんて、男の人では貴方が初めてですわ」

 

「そうなのか」

 

(まあ2人もまさか「悪魔」だの「大災厄」だのと言われてる奴だとは、夢には思わないだろうな)

 

この後も引き続き楽しいお茶会が続き、とても良い思い出となった.......と言いたい所だったが、生憎そうはならなかった。

 

『総隊長殿!聞こえますか!?総隊長殿!』

 

霞桜副長のグリムから緊急連絡が入ったのである。

 

「はいはいこちら総隊長。どうした、そんな血相変えた声で」

 

『例のセイレーンが日本近海にも現れ、現在第二、第三大隊が応戦中です。またアズールレーン基地方面に向かう艦艇も衛星で確認しており、確認できる限りでは日本、いえ、重桜の翔鶴型2、綾波型1。鉄血のアドミラル・ヒッパー級1、Z23型1、重巡タイプセイレーンも多数確認されています。更にその進路上に、アズールレーン所属と見られるKAN-SENも確認しました』

 

「わかった、こっちで対応する。確かメビウス中隊以下、ウチの航空隊が訓練でこっちに来てたよな?それを応援に回してくれ」

 

『了解しました。ですが40分は掛かります』

 

「上等だ。時間位は稼いでやるさ」

 

『御武運を』

 

通信が終わると長嶺の表情はさっきまでの笑顔ではなく、完全に戦闘狂としての顔となっていた。

まあ、狐面してるから口元以外見えないんだけど。

 

「イラストリアス、どうやらレッドアクシズ御一行様がアンタらの仲間を襲おうとしてる。すぐに知らせに行ってくれ。俺は歓迎パーティーの準備をしてくる。犬神、八咫烏‼︎仕事の時間だ!!」

 

そう言うと二匹が雄叫びを上げて、八咫烏は空へ舞い上がり、犬神は海へ駆け出す。長嶺も同様に海に駆け出し、あっという間に入江の出入り口へ向かう。

またこれを察知したのかエンタープライズが出撃し、それを止める形でついて行ったクリーブランド、そして何故かいるジャベリンとラフィー、合計4隻のKAN-SENが出撃した。

 

 

 

アズールレーン基地 近海

「防戦一方ってのは、性に合わないんだけど、な!」

 

旗艦であるホーネットは現在彗星爆撃機の攻撃を、ジャンプしたら横にスライド移動したりでどうにかこうにか躱している。しかし敵は重桜五航戦の翔鶴と瑞鶴の2隻であり、正直言って戦況はホーネットの不利である。

 

「この笛の調は、亡者を鎮める鎮魂曲」

 

笛を持っている翔鶴が艦載機を繰り出し、瑞鶴が得意の接近戦を仕掛ける事によって隙を無くしている。しかしそんなのは、この男には関係ない。

 

「もらったぁぁぁ!!」

 

「ッ!?しまった.......」

 

瑞鶴の太刀がホーネットを斬ろうとした瞬間、突如横から別の太刀が現れ、瑞鶴の太刀を払い除ける。

 

「オラァ!!」

 

「だ、誰!?」

「な、何なのよアンタはぁ!?!?」

 

二人からの疑問はほぼ同タイミングであった。

 

「味方だ。アンタの姉貴が救援部隊連れて向かっている」

 

「エンプラ姉が?」

 

今度は瑞鶴に向き直り、軽く相手を観察する。すると一つ、気付いたことがあった。

 

「ん?お前、誰かと思えば昨日の式神飛ばしてきた奴か」

 

「お前は、先輩方を倒した男.......」

 

「覚えててくれたか。そりゃ光栄。だが生憎、相手は俺じゃなくてBig Eに譲るがな」 

 

そう言った瞬間、背後から3機のF4Fワイルドキャットが機銃を撃ちながら突進してくる。

 

「何⁉︎」

 

瑞鶴が持っている太刀で機銃弾を弾いている隙に、ホーネットを救援艦隊に誘導する。既に他のKAN-SEN、アリゾナ、ノーザンプトン、ロングアイランド、ヘレナ、ハムマンを回収し始めていた。

 

「ホーネット!助けに来たよ!」

 

一応指揮官ポジのクリーブランドが、ホーネットに駆け寄る。

 

「ナイスタイミング。間一髪だったよ」

 

「怪我はない?待ってて、今艦をだすから」

 

fɔʏər!(フォイヤ)

 

今度は空中から砲弾が降ってくる。しかし加害範囲の全員が気付いており、バックステップでギリギリ躱す。

 

「Guten Tagアズールレーン。私たちとも遊んでよ」

 

今度は空中に銀髪の女性が浮遊しており、言語的に鉄血の所属とわかる。

 

「空中浮いてるとか何でもありかよ」

 

「ここは任せていいかしら?ニーミ」

 

長嶺のツッコミを他所に、ニーミと呼ばれたKAN-SENが前に出てくる。装備や見た目、名前の語呂的にZ23である事は分かった。

 

「鉄血駆逐艦、Z23と申します。あなた達はここで倒します」

 

(この状況、絶対殿がいるよなぁ)

 

そう思っていると、ラフィーが前へと出る。

 

「皆を連れて撤退して」

 

「ラフィーちゃん!?」

 

なんとラフィーが殿を買って出たのである。

 

「自ら殿を買ってでますか。敵ながら敬意に値します」

 

所が、である。何とラフィーは向けていた艤装を、収納し出したのである。

 

「な、何ですか!?」

 

「やっぱり眠いから止める」

 

「え、えぇぇ.......」

 

何と殿は買って出たものの、「眠いから」と辞めたのである。あまりに自由人すぎて、味方諸共困惑している。しかも相手のニーミは完全に怒っており、なんか色々文句を言っているのが聞こえる。で、長嶺はと言うと

 

「プッ、アハハハハ!!!ヒヒヒヒヒ!!!ラフィー、そりゃあ無いぜwww。だか、良くやった。ウヒヒ!!」

 

腹が捩じ切れる位爆笑していた。

 

「だがまあ、これじゃあ余りにあっちが不憫だしな。俺が殿してやっから、早いとこ撤退しな」

 

そんな訳で急遽、長嶺が殿として前へ出る。

 

「貴方も「眠い」と言って、止める気ですか?」

 

「大丈夫。流石に2回目はねーし、俺は戦闘が大好きだ。売られた喧嘩は買うし、こういう場を貶すつもりはサラサラ無い」

 

そう言うと少し安心と言って良いのか分からんが、迷いが消えて砲口をしっかり向ける。

 

「さて、じゃあ俺も名乗っておこうか。新・大日本帝国軍ら海上機動歩兵軍団「霞桜」が総隊長、長嶺雷蔵だ。さあ、名乗った事だし始めようぜ」

 

そう言うと、ニーミが主砲を撃つ。どうやっても必中の距離であるが、しかしその全ての砲弾は炸裂することは無かった。

 

「な!?」

 

「あら?」

 

何と長嶺が指と指の間で放たれた4発の砲弾を止めており、ちょうど目の前で海に投げ捨てられていたのである。

 

「ならば!」

 

今度は掴みきれない18発もの砲弾を連射するが、その全てを止めたのである。まずは砲弾を掴み取り、掴み取れない分は手に持っている砲弾を投げて起爆させて、全弾迎撃したのである。

 

「非常識です.......」

 

「非常識?何甘ったれた事言ってんだ。戦場に常識も非常識もねーよ」

 

「うるさい!」

 

今度はなりふり構わず連射し、魚雷まで撃ってくる。しかし今度はその全てを懐に忍ばせておいた土蜘蛛HGの20mm弾によって、長嶺に当たることなく全て迎撃されたのである。

 

「何なんですか、アナタは」

 

「俺をそこらの有象無象の衆とは考えんな。俺は言うなれば人類最強クラスの力を持った男、正直駆逐艦如きじゃ倒す事は愚か、傷をつける事すら不可能だ。仮にもう一人の駆逐艦、それから空中浮遊してる重巡を戦列に加えた所で勝てねーよ」

 

「あら、それは心外ね。まるで私が弱いみたいじゃない」

 

さっきまで傍観していた銀髪の女性、プリンツ・オイゲンが降りてくる。

 

「嫌だって、実際俺から見れば弱いし。というか言っとくけど、俺は本気の一割も出してないぞ?ついでに言うが俺を本気で倒したいなら、お前ら+アズールレーンでも勝てない」

 

「中々舐めてくれるじゃない」

 

「ブラフと思うか?なら、証拠を見せてやるよ」

 

そう言うと長嶺は体中から殺気と怒気を出して、得意の本能への攻撃を始める。

 

「か、体が動かない!」

 

「お前達の本能に直接殺気と怒気を送り込む事で、足をすくませ言う事を聞かなくしてある。今はまだ動きを封じているだけだが、更に力を強めれば気絶させる事も、殺す事だってできる。お前らが目の前に相手しているのは、そういう」

 

途中で言葉を止めた為、全員が次の動きに注目する。長嶺はそんな事には構う事なく、懐の土蜘蛛HGを空に向けて撃つ。1秒もしないウチに空中で爆発が起きる。

 

「来やがったか。悪いな、お前らとのお遊戯はここまでだ」

 

そう言うと殺気と怒気の矛先を変えて、3人を自由にする。

 

「あー、それから。クリーブランド、もう少し下がった方がいい。今から少し本気で暴れるから、巻き添え喰らいたく無かったら指示に従え」

 

「わ、わかった」

 

「さーて、八咫烏‼︎ !幻月、閻魔、鎌鼬、朧影、竜宮、薫風、月華を出せ!」

 

指示が出るや否や、八咫烏の左右のウェポンラックから頼まれた武器が射出される。幻月と閻魔は左右の肩の辺りから柄を下にして、鎌鼬SGは尻と腰の間に、朧影SMGは左右の太腿に、竜宮ARは左腰に、薫風RLと月華LMGは背中にそれぞれ装備される。

 

「さあ、殲滅戦の開始だ」

 

不敵な笑みを浮かべ嬉しそうな目をするその先には、黒くてキモい巨大魚と、病的なまでに白い女がいた。深海棲艦である。

 

「発射ァ!!」

 

まず先手を取ったのは長嶺である。背中に担いでいた薫風RLを発射し、前衛の駆逐艦を一気に殲滅する。しかし向こうも先手を取ろうとしていたのか、即座に反撃を開始する。しかし

 

「遅いわ!!」

 

前後左右、縦横無尽に駆け抜けて全て回避する。所が深海棲艦は悔しがる素振りを見せるどころか、何処か笑みを浮かべている。何かトラップがある事に気が付いた長嶺は、即座に意識を周りに張り巡らせ罠を探り出す。すると大体4時方向から、深海棲艦の気配がする事に気付く。

 

「そこか!!!!」

 

今度は背中の月華LMGを接近中の深海棲艦へ向けて、引き金を引く。

 

「ギィシェェェェェ!!!!」

 

悲鳴を上げながら大炎上し、海の底へと消えていく。

 

「今度はこっちのターンだ。行くぞ!!!!!」

 

この言葉を聞いた瞬間、犬神が巨大化し敵本陣へ突撃を敢行する。想定外の戦法に迎撃行動が遅れ、ワタワタしてる合間に一気に肉薄する。

 

「オラオラどした!どした!!その程度か深海棲艦様ヨォ!!!!」

 

そう言いながら進路上のリ級2隻とハ級8隻を、朧影SMGの弾幕に任せて強引に突破する。

 

「皆、退ケ!コイツハ危険ダ」

 

隊長格であろうル級が指示を出すが、もう何もかもが遅かった。遅すぎたのである。

 

「撤退させると思ってんのか!?」

 

そこからは地獄の所業であった。竜宮ARと鎌鼬SGに持ち替え、至近距離から12ゲージ散弾と5.56mm弾を浴びせ続ける。しかも急所に的確な射撃をしてくる為、大体10発も食らえば大半の艦が大爆発を起こして沈んでいく。更には中破相当の艦にはグレネードやC4を取り付け、他の生きてる仲間の元へ蹴り飛ばす。仲間が受け止めた瞬間吹っ飛ばすなど、もうどっちが悪役か分からない戦い方をしていた。一方犬神は駆逐艦を相手にしており、取り敢えず片っ端からバリボリ食っていた。

しかし深海棲艦にも勇者がいた。ヌ級が艦載機を発艦させたのである。

 

「艦載機上げやがったか。だが、ママんとこ帰るんだな!!」

 

腕に装備しているグラップリングフックでワイヤーを艦載機に撃ち込み、それを間抜けにポッカリと開けてる発艦口の中にセットし巻き上げる。みるみるウチに発艦口に吸い込まれ、中に入り込んだ瞬間大爆発が起きる。更に追い討ちを掛けるが如く、月華LMGをその発艦口にぶち込み、ゼロ距離マシンガンを喰らわせ木っ端微塵に破壊する。

 

「化ケ物メ.......。散ッテイタ仲間ノ恨ミ、ココデ晴ラサシテ貰ウ!!」

 

「出来るもんならやってみろ!!」

 

この言葉を合図にリ級が主砲を撃ってくる。しかし長嶺は放たれた砲弾を踏み台に、一気に至近距離まで近付く。こんな事を想像すらしていなかったリ級は抵抗できず、ただただ目の前に迫る死の恐怖をひしひしと感じるだけだった。

 

「奥義、彗星!!!!」

 

2本の刀を抜き、得意の技を使ってバラバラにする。因みにこの彗星という技は、刀をなり振り構わずとにかく相手に向かってふり続け、知覚不能な速度での攻撃と圧倒的手数の多さで敵を完全に細切れにしてしまう技である。

 

「終わったな」

 

だが、まだ終わってなかったのである。今度はエンタープライズらが戦ってる方で、大きな爆音が鳴り響く。

 

「クッ.......」

 

「アハハハハ、弱イナァ。ソンナンジャ、私ヲ倒セナイヨ?」

 

何と一人連合艦隊のレ級が居たのである。ただでさえ深海棲艦に対抗できないのに、一人連合艦隊の異名を持つレ級が相手では笑えない。

 

「翔鶴姉、生きてる?」

 

「何とかね」

 

「エンタープライズ様、お怪我は?」

 

何か謎の白服メイドまで増えており、色々ごちゃごちゃな状況である。

 

「大丈夫だ.......。というか、貴女は誰だ?」

 

「唯のメイドです。しかし今はそれよりも、この状況をどうするかです」

 

「ネェ、逃ゲテモ良インダヨ?マァ逃ゲテモ逃ゲナクテモ、ドノミチ殺スケドネ。アハハハハ」

 

完全に舐め切っているレ級。だがしかし、その態度は直ぐに改められる。

 

「セイッ!!」

 

空中から長嶺が降ってきて、ついでに刀を振り下ろして腕を一本斬り落としたのである。

 

「アハハハハ。オ前、霞桜?」

 

「おお、よく分かったな」

 

「ソリャア人間デ唯一、私達ト対等ニ戦エル部隊ダヨ?私達ノ間デモ有名サ」

 

「そりゃ良かった。で、これからどうする訳?コイツら殺す?」

 

「ソウダヨー」

 

「あっそう。んじゃ、とっとと死ぬ事だ」

 

この時KAN-SEN達は、私達を殺す事を容認したかに思えた。しかし長嶺が「死ぬ」と言った対象はレ級である。次の瞬間、レ級の背中が立て続けに大爆発を起こし、更に真上からも何かが降ってきて同じく爆発が連続して起きた。爆炎が晴れるとそこには、虫の息のレ級が横たわっていた。

 

「クソ.......」

 

「どうだ?ASM3空対艦ミサイル16発と、GBU-39精密誘導爆弾64発のお味は」

 

「.......」

 

「答えないか。まあいいや、んじゃ深海に戻りな」

 

懐から土蜘蛛HGを取り出し、頭に一撃で終わらせる。その直後、頭上を12機の航空機が通過した。江ノ島鎮守府所属のメビウス中隊とカメーロ隊である。因みに使用機種はそれぞれF22ラプターとF3Aストライク心神である。

 

『こちらメビウス1。提督、ご無事で?』

 

「健在だ。よくやってくれた」

 

『提督のご指示とあらば、世界中どこへだって攻撃しに行きますよ』

 

「頼もしいこった。帰ったら酒倉から好きなの持っていていいぞ」

 

この言葉を聞いた瞬間、無線の先で大歓声が巻き起こる。長嶺は酒のコレクターでもあり「名酒」と呼ばれる様々な種類の酒が揃っているのである。

 

『高いの取っても文句言わんでくださいよ?』

 

「わかったよ。そんじゃ、留守を頼むぜ」

 

『ウィルコ!』

 

12の翼は進路を江ノ島に取る為、幾つかのマニューバを行い進路を調整する。そしてフルスロットルで江ノ島へと帰還していった。

 

「さて、で?どうする?まだ続けるか?」

 

オイゲンに向かって、大声で聞いてみる。

 

「いいえ、遠慮しておくわ。あんな戦いを見せられちゃ、絶対に戦いたくないもの。もし戦ったら、私達が死んじゃうわ」

 

「そうかい。そりゃ残念だ、Süße Freyline(可愛いお嬢さん)?」

 

「あら、口説かれちゃった。またね、アズールレーン」

 

また安定の謎ワープで消えるレッドアクシズ。深海棲艦の介入こそあったものの、圧倒的勝利を手に入れたのであった。

 

 

 

その夜 長嶺自室

「フゥ」

 

一人酒を飲み、ぼんやりと海を眺めていると、とある気配がした。

 

「コイツは.......」

 

窓の外をよく見てみると、姿こそ見えないが人の気配を感じる。試しに狐面を被り、サーマルで見てみると完全武装の人影が無数にあった。

 

(何処の国だ、全く。だがまあ、面白くなりそうだ)

 

そう言うと無線機を手に取り、江ノ島鎮守府へ通信する。

 

「俺だ。グリム、何処ぞの国の工作員が上陸しやがった。全大隊完全武装で、明日正午、こっちに来い。久しぶりのスパイ狩りだ、機動本部車以下、全兵器持ってこい」

 

『了解しました』

 

「さあ、楽しませてくれよ。スパイ共?」

 

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